II. 地球温暖化対策を総合的に推進し、京都議定書に定める排出量の削減目標を達成するために

2. 京都議定書の意義

(1)国際社会における意義
 IPCCにおいては、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすことにならない水準において大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるとの気候変動枠組条約の究極的目的を達成する方途を考察する上での一つのケースとして、大気中の二酸化炭素濃度を産業革命前の二倍程度に安定化させるケースを描いている。このケースで許される21世紀の累積排出量を実現する上では、2100年には一人当たりの二酸化炭素換算排出量を1炭素トンを相当に下回る水準とすることに向けての対策が必要である。
(参考) 国連環境開発特別総会における橋本総理大臣演説
「もとより、地球温暖化問題の解決のためには、中長期的視点からの努力も必要です。 例えば大気中の二酸化炭素濃度を産業革命前の2倍程度に安定化させるためには、2100年には世界全体の一人当たりの排出量を1トン以下にすることが必要です。」
  (注) 1990年における一人当たり二酸化炭素排出量は附属書T締約国平均で約3.2炭素トン、全世界平均で約1炭素トン。途上国平均で約0.5炭素トン。全世界の人口は2100年には113億人と推計(IPCCIS92のシナリオ)。

 地球温暖化防止のためには、2013年以降の先進国における一層の温室効果ガス排出量の削減、途上国を含めた形での世界全体の温室効果ガスの排出抑制が前提とはなるものの、京都議定書に定める附属書T締約国の取組は、地球温暖化防止のための意味のある第一歩となると考えられる。

(2)我が国における意義
 我が国は、先進国の一員であり、さらには、COP3の議長国を務めた立場にあることから、京都議定書を確実に、かつ率先して履行するとともに、21世紀前半及びそれ以降の地球温暖化防止に向けた世界的な取組の進展のための礎を築き、国際社会に貢献していかなければならない。
 また、京都議定書に定める我が国の排出量の削減義務は6%である。一方、国内においては、既に1996年度には1990年度に比べて約9%以上も二酸化炭素の排出量が増加しているなどの現状にある。このことに鑑みれば、この目標の達成には、厳しい対策を実施することが避けて通れない。
 しかしながら、このことは、環境基本法の基本理念である環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築にとって不可欠であり、むしろその具体化の好機ととらえて積極的に対応するべきである。人々の生産や消費の活動その他の活動が地球温暖化をもたらし、他方で地球温暖化防止対策が人々の社会経済活動その他の活動の在り方に変化を求めるという関係にあることから、地球温暖化問題は、経済問題でもあり、人々のライフスタイルの問題でもある。このような広い視点から地球温暖化問題をとらえていくことが必要である。


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