目次に戻る平成15年度(2003年度)版 「化学物質と環境」
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● 調査結果の評価

 
{ }内は平成14年度調査実施媒体の略称。水:水質、底:底質、生:水生生物、大:大気
 
   [1]イソプレン {水底}
   [6]ジニトロトルエン {大}
   [11]ポリ塩化ターフェニル {水底生}
   [2]エピクロロヒドリン {大}
   [7]臭化メチル {水}
   [12]メタクリル酸 {大}
   [3]1-オクタノール {水底生}
   [8]テレフタル酸 {水底}
   [13]メチル-tert-ブチルエーテル {水底}
   [4]クロロジフルオロメタン {大}
   [9]2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール {水底生}
   [5]p-クロロニトロベンゼン {生}
   [10]ニトロベンゼン {水底大}
 
   平成14年度の調査結果の概要は次のとおりである。
 

 今回の調査では、水質8物質(群)中5物質(群) (1-オクタノール、テレフタル酸、ニトロベンゼン、ポリ塩化ターフェニル、メチル-tert-ブチルエーテル)、底質7物質(群)中4物質(群)(1-オクタノール、テレフタル酸、ニトロベンゼン、ポリ塩化ターフェニル)、水生生物4物質(群)中2物質(群) (1-オクタノール、ポリ塩化ターフェニル)が検出された。また大気では調査した5物質(群)(エピクロロヒドリン、クロロジフルオロメタン、ジニトロトルエン、ニトロベンゼン、メタクリル酸)全てが検出された。

   調査結果に対する評価を物質(群)別に示せば、次のとおりである。
   
 [1] イソプレン 【平成14年度調査媒体:水質、底質】
 
選定理由
 

 イソプレンは、化学物質審査規制法指定化学物質(→用語集)および化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質(→用語集)であり、平成13年度の出荷量が約80,000tと非常に多く、これまでの累計出荷量も多い。昭和53年度に実施した水質及び底質の環境調査では不検出であった。イソプレンについては化学物質審査規制法における第2種特定化学物質に該当するかどうかを優先的に検討するため、水質及び底質の残留状況における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.1μg/L、14地点で調査を実施し、全ての地点で検出されなかった。

 

 底質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 10ng/g-dry、14地点で調査を実施し、全ての地点で検出されなかった。

 
評価
 

 水質は、昭和53年度は検出下限値 1μg/Lにおいて4地点の調査を実施し不検出であった。平成14年度は、検出下限値 0.1μg/Lにおいて調査が実施され、全地点で不検出であった。過去の調査においても不検出であり、大きな濃度の上昇は無いと判断される。

 

 底質は、昭和53年度は検出下限値 1ng/g-dryにおいて4地点の調査を実施し不検出であった。平成14年度は、検出下限値 10ng/g-dryにおいて調査が実施され、全地点で不検出であった。過去の調査においても不検出であり、大きな濃度の上昇は無いと判断される。

 

 以上より、水質及び底質とも不検出であり、今回調査した検出下限値の範囲内では水質及び底質のいずれにもイソプレンが残留していないことが確認された。

 
   ○  イソプレンの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和53年度 0/12 0/4 不検出 1
平成14年度 0/42 0/14 不検出 0.1
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和53年度 0/12 0/4 不検出 1
平成14年度 0/42 0/14 不検出 10
 
  【参考:イソプレン】(→文献一覧)
 

用途 : 主として合成ゴム原料、ゲラニオール、リナロール等の原料、香料原料、菊酸等の農薬中間体原料、イソフィトールの原料 15)

生産量 : 平成13年 約80,000t 10)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 122,140kg/年、公共用水域への排出量 0kg/年 27)

分解性 : 難分解(化審法) 16)

濃縮性 : 低濃縮(化審法) 16)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) :

 
媒体 大気 水質 土壌 底質  
質量割合(%) 0.8 96.9 0.0 2.3 (水系へ排出の場合)

反復投与毒性 : 吸入暴露(マウス) 70ppm脊髄白質変性 17),18)

発がん性、催腫瘍性 : IARC(1996年)グループ2B

生態影響 : 
  魚類(ブルーギル) 96h LC50 = 42.5mg/L 1),20)

規制・基準 :(→略名解説)

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[化審]指定化学物質 21)
[消防]危険物別表第4類(引火性液体)特殊引火物
[労働安全] 施行令別表第1危険物(引火性の物) 21)
[海洋]有害液体物質(施行令別表第1第3号イC類物質) 21)
[船舶][危規則]第3条危険物等級3引火性液体類(正3容器等級1) 10)
[航空]施行規則第194条(輸送禁止の物件)第1項第3号引火性液体(G等級1) 10)
[港則] 施行規則第12条危険物(引火性液体類) 10)
 
 [2] エピクロロヒドリン 【平成14年度調査媒体:大気】
 
選定理由
 

 エピクロロヒドリンは化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質であり、平成13年度の生産量が119,806tと多い。昭和61年度に実施した環境調査では水質、底質から不検出であった。大気の調査を過去に実施していないため、最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 大気は環境中濃度の把握を目的として、検出下限値 0.14ng/m3、6地点で調査を実施し、5地点中4地点、10検体中7検体で検出され、検出範囲は 1.0~2.8ng/m3であった(欠測扱い(→用語集):1地点)。

 
評価
 

 大気は、平成14年度が初めての調査である。検出下限値 0.14 ng/m3において調査が実施され、5地点中4地点で検出され、最大検出濃度は 2.8ng/m3であった。過去に調査されていないため、環境中濃度の傾向は判断できないが、今回調査した検出下限値の範囲内では大気中にエピクロロヒドリンが存在していることが確認された。

 
   ○エピクロロヒドリンの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和52年度 0/3 0/1 不検出 10
昭和61年度 0/27 0/9 不検出 0.5
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和52年度 0/3 0/1 不検出 60
昭和61年度 0/27 0/9 不検出 20
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成14年度 7/10 4/5 1.0~2.8 0.14
 
  【参考:エピクロロヒドリン】
 
用途 : 
 

 エポキシ樹脂、合成グリセリン、グリシジルメタクリレート、界面活性剤、イオン交換樹脂などの原料、繊維処理剤、溶剤、可塑剤、安定剤、殺虫殺菌剤、医薬品原料、有機合成中間体 10)

生産量・輸入量 :
 

 平成13年度の国内生産量は 119,806t、輸入量は 12,431t、輸出量は 26,570t 10)。推定される国内流通量は 105,667t。また、OECDに報告している生産量は 10,000t以上 24)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 95,247kg/年、公共用水域への排出量 1,869kg/年 27)

分解性 : 良分解(化審法) 16)

濃縮性 : BCF : 3 (計算値) 22)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) :
 
媒体 大気 水質 農耕地 自然地 工業地 底質  
質量割合(%)86.6 11.2 0.35 0.44 0.03 0.037 
急性毒性 : 
 

 ヒトへの影響:眼、気道、皮膚に対して刺激性を有し、20ppm(76mg/m3)の暴露で眼や鼻粘膜に一過性の焼灼感をもたらし、40ppm(151mg/m3)の暴露では、咽頭への刺激性も認められる 24)

生殖・発生毒性 : ヒトの生殖への影響(精子数等)は認められていない 18)

発がん性、催腫瘍性 : 

 

 雄のWistarラットに 750ppm(換算値:52mg/kg-day)を飲水に添加して81週間投与した結果、前胃の乳頭腫及び扁平上皮がんの発生を認めた 23)

生態影響 : 

 

 PNEC:水質:11μg/L
甲殻類と魚類のLC50の知見が得られ、アセスメント係数として1,000を用い、急性毒性値のうち最も低い値(魚類の 10,600μg/L)にこれを適用することにより、急性毒性値によるPNECとして 11μg/Lが得られた 24)

規制・基準 :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[消防]危険物別表第4類(引火性液体)第2石油類 非水溶性液体(1,000リットル) 10)
[毒劇]劇物(製剤を含む) 10)
[バーゼル]特定有害廃棄物等(0.1重量%以上のもの。平成10年環・厚・通告示第1号別表第3の41イ) 10)
[労働安全]施行令別表第1危険物(引火性の物)、施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕 10)
[外為][輸出令]別表第2の35の2項 10)
[海洋]有害液体物質(施行令別表第1号イA類物質) 10)
[船舶][危規則]第3条危険物等級6.1毒物(P)(正6.1副3容器等級2) 10)
[航空] 施行規則第194条(輸送禁止の物)第1項第3号引火性液体(MG等級1) 10)
[港則] 施行規則第12条危険物(毒物) 10)
 
 [3] 1-オクタノール 【平成14年度調査媒体:水質、底質、水生生物】
 
選定理由
 

 1-オクタノールは、化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質であり、生産量が 100,000t以上(平成13年度PRTR集計結果 PRTR法指定化学物質有害性データの製造・輸入量区分)と多い。昭和54年度に実施した水質及び底質の環境調査では不検出であったが、その後調査が行われていない。また、水生生物の調査を過去に実施していないため、水質、底質及び水生生物における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.002μg/L、19地点で調査を実施し、17地点中8地点、51検体中24検体で検出され、検出範囲は 0.002~0.046μg/Lであった(欠測扱い:2地点)
 底質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.24ng/g-dry、19地点で調査を実施し、17地点中11地点、49検体中31検体で検出され、検出範囲は0.94~24ng/g-dryであった(欠測扱い:2地点)。
 水生生物は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.77ng/g-wet、8地点で調査を実施し、7地点中4地点、21検体中12検体で検出され、検出範囲は 2.4~62ng/g-wetであった(欠測扱い:1地点)。

 
評価
 

 水質は、昭和54年度は検出下限値 5~50μg/Lにおいて9地点を調査し、不検出であった。平成14年度は検出下限値0.002μg/Lにおいて調査が実施され、17地点中8地点で検出され、最大濃度は 0.046μg/Lであった。過去の調査の検出下限値 5~50μg/Lは今回の最大検出濃度 0.046μg/Lより高いことから、過去は不検出で今回は検出であったが環境中濃度の傾向は判断できない。
 底質は、昭和54年度は検出下限値 300~1,000ng/g-dryにおいて9地点を調査し、不検出であった。平成14年度は検出下限値 0.24 ng/g-dryにおいて調査が実施され、17地点中11地点で検出され、最大濃度は 24ng/g-dryであった。過去の調査の検出下限値 300~1,000ng/g-dryは今回の最大検出濃度 24 ng/g-dryより高いことから、過去は不検出で今回は検出されているが環境中濃度の傾向は判断できない。
 水生生物は、平成14年度の調査が初めてである。検出下限値 0.77ng/g-wetにおいて調査が実施され、7地点中4地点で検出され、最大濃度は 62ng/g-wetであった。
 以上より、水質、底質及び水生生物のいずれも環境中濃度の傾向は判断できないが、今回調査した検出下限値の範囲内では水質、底質及び水生生物のいずれにも1-オクタノールが存在していることが確認された。

 
   ○  1-オクタノールの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和54年度 0/27 0/9 不検出 5~50
平成14年度 24/51 8/17 0.002~0.046 0.002
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和54年度 0/27 0/9 不検出 300~1,000
平成14年度 31/49 11/17 0.94~24 0.24
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
平成14年度 12/21 4/7 2.4~62 0.77
 
  【参考:1-オクタノール】
 

用途 : 溶剤(香料、化粧品、有機合成)、合成原料(可塑剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤) 21)

生産量・輸入量 : 100,000t以上 21)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 1,924kg/年、公共用水域への排出量 49kg/年 27)

分解性 : 良分解(化審法) 16)

濃縮性 : 不詳

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 不詳

生態影響 :不詳

規制・基準 :

 
[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[消防]危険物別表第4類(引火性液体)第3石油類 21)
[海洋]有害液体物質(施行令別表第1第3号イC類物質)21)
[バーゼル] 特定有害廃棄物等(0.1重量%以上のもの。平成10年環・厚・通告示第1号別表第3の39イ) 10)
[労働安全] 施行令別表第1危険物(引火性の物)、施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕 10)
[外為][輸出令]別表第2の35の2項 10)
[海洋]有害液体物質(施行令別表第1号イA類物質) 10)
[船舶][危規則]第3条危険物等級9有毒性物質(P)(正9容器等級3) 10)
[航空]施行規則第194条(輸送禁止の物件第1項第3号)引火性液体(S等級3) 10)
[港則]施行規則第12条危険物 10)
 
 [4] クロロジフルオロメタン 【平成14年度調査媒体:大気】
 
選定理由
 

 クロロジフルオロメタンはフロンガスの一種であり、化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質である。生産量が 39,983t(平成5年度 既存化学物質の製造・輸入量に関する実態調査)と多く、大気への残留性が高いと予測される。過去に調査が実施されていないため、大気における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 大気は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 6ng/m3、15地点で調査を実施し、15地点中15地点、45検体中45検体で検出され、検出範囲は 340~4,600ng/m3であった。

 
評価
 

 大気は、平成14年度が初めての調査である。検出下限値 6ng/m3において調査が実施され、15地点中15地点で検出され、最大検出濃度は 4,600ng/m3であった。今回調査した検出下限値の範囲内では広範な地点の大気にクロロジフルオロメタンが残留していることが確認された。

 
   ○  クロロジフルオロメタンの検出状況
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成14年度 45/45 15/15 340~4,600 6
 
 【参考:クロロジフルオロメタン】

用途 : フロンガス 21)、冷媒 10)

生産量 : 平成5年 39,983t 26)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 1,190,875kg/年、公共用水域への排出量 2,400kg/年 27)

分解性 : 難分解(化審法)16)

濃縮性 : 低濃縮(化審法)16)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 

 
媒体 大気 水質 農耕地 自然地 工場地 底質  
質量割合(%) 99.9 0.00031 0.014 0.018 0.00012 0.00007

反復投与毒性 :

 

    吸入暴露(ラット) NOAEL = 1,946ppm(10ヶ月)

 

    肝臓、肺、神経組織に変化、酸素消費量の低下、中枢神経系の機能の変化 21)

規制・基準 :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[オゾン] 特定物質(施行令別表6(議定書附属書CのグループI)) 10)
 
 [5] p-クロロニトロベンゼン 【平成14年度調査媒体:水生生物】
 
選定理由
 

 p-クロロニトロベンゼンは化学物質審査規制法指定化学物質および化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質であり、平成13年の生産量が15,000t(推定)と多い。平成13年度に実施した水質、底質の環境調査では不検出であり、水生生物は平成3年度以来調査が行われていない。最近の残留状況が明らかでないため、水生生物における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水生生物は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 7.8ng/g-wet、9地点で調査を実施し、全ての地点で検出されなかった。

 
評価
 

 水生生物は、平成3年度は検出下限値 7.5ng/g-wetにおいて46地点の調査をし、不検出であった。平成14年度は検出下限値 7.8ng/g-wetにおいて調査が実施され、全地点で不検出であった。いずれの調査でも同じ程度の検出下限値で検出されておらず、大きな濃度の上昇はないと判断される。今回調査した検出下限値の範囲内では水生生物にp-クロロニトロベンゼンが残留していないことが確認された。

 
  ○  p-クロロニトロベンゼンの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和53年度 0/24 0/8 不検出 0.05~0.075
平成 3年度 0/156 0/52 不検出 0.3
平成13年度 0/150 0/50 不検出 0.087
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和53年度 0/15 0/5 不検出 2~2.5
平成 3年度 0/162 0/54 不検出 40
平成13年度 0/144 0/48 不検出 2.2
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
平成 3年度 0/138 0/46 不検出 7.5
平成14年度 0/25 0/9 不検出 7.8
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成 3年度 5/54 2/18 3.6~110 3
 
 【参考:p-クロロニトロベンゼン】
 

用途 : アゾ染料、硫化染料中間物 10)

生産量 : 平成13年 15,000t(推定) 10)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 117 kg/年、公共用水域への排出量 200kg/年 27)

分解性 : 難分解(化審法) 16)

濃縮性 : 低濃縮(化審法) 16)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 不詳

生態影響   :
 

    藻類(クロレラ)    96h EC50   = 4.9mg/L 28) (増殖)
    甲殻類(淡水エビの一種) 96h LC50 = 0.2mg/L 30)

規制・基準  :
[PRTR]第1種指定化学物質21)
[化審]指定化学物質 21)
[バーゼル] 特定有害廃棄物等(0.1重量%以上のもの。平成10年環・厚・通告示第1号別表第3の41イ) 10)
[労働安全]施行令別表第3特定化学物質等(第2類物質)、施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)、施行18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕 10)
[外為][輸出令]別表第2の35の2項 10)
[船舶][危規則]第3条危険物等級6.1毒物(P)(正6.1容器等級2) 10)
[航空] 施行規則第194条(輸送禁止の物件)第1項第6号イ毒物(M等級2) 10)
 
 [6] ジニトロトルエン 【平成14年度調査媒体:大気】
 
選定理由
 

 ジニトロトルエンは化学物質審査規制法指定化学物質および化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質であり、生産量が 10,000t以上(平成13年度PRTR集計結果 PRTR法指定化学物質有害性データの製造・輸入量区分)と多い。平成3年度に実施された環境調査では水質、底質、水生生物から不検出であった。化学物質審査規制法指定化学物質の中でも、平成12年度出荷量が非常に多いこと、これまでの累計出荷量が多いことから、第2種特定化学物質に該当するかどうかの検討を優先的に行う必要があり、大気の調査を過去に実施していないため、大気における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 大気中の2,4-ジニトロトルエンは環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.95ng/m3、8地点で調査を実施し、7地点中2地点、21検体中3検体で検出され、検出範囲は 1.0~1.5ng/m3であった(欠測扱い:1地点)。
 また、大気中の2,6-ジニトロトルエンは環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.89ng/m3、8地点で調査を実施し、6地点中1地点、18検体中3検体で検出され、検出範囲は検出下限値 5.3~14ng/m3であった(欠測扱い:2地点)。

 
評価
 

 大気中のジニトロトルエンは、平成14年度が初めての調査である。2,4-ジニトロトルエンは、検出下限値 0.95ng/m3において調査が実施され、7地点中2地点で検出され、最大検出濃度は 1.5ng/m3で、今回調査した検出下限値の範囲内では大気に残留していることが確認された。
2,6-ジニトロトルエンは、検出下限値 0.89ng/m3において調査が実施され、6地点中1地点で検出され、最大検出濃度は 14ng/m3で、今回調査した検出下限値の範囲内では大気に残留していることが確認された。
 以上より、ジニトロトルエンの残留状況の傾向は判断できないが、今回調査した検出下限値の範囲内では大気に残留していることが確認された。

 
  ○  2,4-ジニトロトルエンの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和51年度 0/70   不検出 0.08~0.1
平成 3年度 0/48 0/16 不検出 0.14
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和51年度 0/50   不検出 0.35~10
平成 3年度 0/48 0/16 不検出 9.9
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
昭和51年度 0/10   不検出 60
平成 3年度 0/45 0/15 不検出 50
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成14年度 3/21 2/7  1.0~1.5 0.95
 
  ○  2,6-ジニトロトルエンの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和51年度 1/70   0.054 0.025~0.03
平成 3年度 0/48 0/16 不検出 0.11
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和51年度 3/55   3~5.0 0.7~10
平成 3年度 0/48 0/16 不検出 11
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
昭和51年度 0/10   不検出 2
平成 3年度 0/45 0/15 不検出 5
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成14年度 3/18 1/6 5.3~14 0.89
 
 【参考:ジニトロトルエン】
 

用途 : 合成中間体(トルイジン、染料、火薬) 21)

生産量・輸入量 : 10,000t以上 21)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 9,960kg/年、公共用水域への排出量 3,650kg/年 27)

分解性 : 難分解(化審法) 16)

濃縮性 : 低濃縮(化審法) 16)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 

 
媒体 大気 水質 土壌 底質  
質量割合(%) 0.1 97.4 0.4 2.1 (水系へ排出の場合)

反復投与毒性 :

経口投与(イヌ)     NOAEL = 0.2mg/kg.day (2,4-ジニトロトルエン、2年) 32) 、神経毒性

発がん性、催腫瘍性 : IARC(1996年)グループ2B

生態影響 : 不詳

規制・基準 :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[化審]指定化学物質 21)
[毒劇] 劇物 21)
[消防] 危険物別表第5類(自己反応性物質)ニトロ化合物 21)
[海洋] 有害液体物質(施行令別表第1第1号イA類物質) 21)
[航空] 施行規則第194条(輸送禁止の物件)第1項第6号イ毒物 21)
[船舶][危規則]第3条危険物等級6.1毒物(P)(正6.1容器等級2) 10)
[港則] 施行規則第12条危険物(毒物)(固体を除く) 10)
 
 [7] 臭化メチル 【平成14年度調査媒体:水質】
 
選定理由
 

 臭化メチルは化学物質審査規制法指定化学物質および化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質であり、平成13年度輸入量が 1,130tと多い。昭和51年度に実施した水質、底質及び水生生物の環境調査では不検出であったが、平成10年度に実施した大気の環境調査では検出された。開放系用途への出荷量が多いことから、化学物質審査規制法における第2種指定化学物質に該当するかどうかの検討を優先的に行うために、水質における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.1μg/L、16地点で調査を実施し、全ての地点で検出されなかった。

 
評価

 水質は、昭和51年度は検出下限値 1.8~19μg/L において60検体を調査し不検出であった。平成14年度は検出下限値 0.1μg/Lにおいて調査が実施され、全地点で不検出であった。過去の調査では不検出であるが、過去の調査の検出下限値が高いため、これらの結果から残留状況の傾向は判断できない。今回調査した検出下限値の範囲内では水質に臭化メチルが残留していないことが確認された。

 
  ○  臭化メチルの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和51年度 0/60   不検出 1.8~19
平成14年度 0/48 0/16 不検出 0.1
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和51年度 0/40   不検出 24~950
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
昭和51年度 0/20   不検出 12~50
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
昭和55年度 5/27 3/8 64~130
(0.015~0.031 ppb)
64~430
(0.015~0.1 ppb)
平成10年度 36/39 13/14 49~340 41
 
 【参考:臭化メチル】
 

用途 : 食糧及び土壌燻蒸剤、有機合成 10)

生産量・輸入量 : 平成13年の輸入量 1,130 t、輸出量53 tであり 10)、推定される国内流通量は 1,077t

環境への主な放出源 : 大気への排出量 542,393kg/年、公共用水域への排出量 24kg/年 27)

分解性 : 難分解(化審法) 16)

濃縮性 : 低濃縮(化審法) 16)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 

 
媒体 大気 水質 土壌 底質  
質量割合(%) 67.2 28.7 3.7 0.3 (EUSESモデル)

反復投与毒性 :

 

    経口投与(ラット)      NOAEL = 0.14 mg/kg.day 32)
    吸入暴露(ラット)      LOAEL = 0.48 mg/m3(29ヶ月) 32)

発がん性、催腫瘍性 : IARC(1996年)グループ2B

規制・基準 :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[化審]指定化学物質 21)
[消防] 第9条の2貯蔵等の届出を要する物質制令別表第2ブロムメチル及びこれを含有する製剤(200kg)
[毒劇]劇物(製剤を含む) 21)
[バーゼル]特定有害廃棄物等(平成10年環・厚・通告示第1号別表第3の41ニ) 10)
[オゾン]特定物質(施行令別表9(議定書付属書EのグループI)) 10)
[高圧ガス]第2条(液化ガス)、一般高圧ガス保安規則第2条(毒性ガス、可燃性ガス) 10)
[労働安全]施行令別表第1危険物(可燃性のガス)、施行令別表第3特定化学物質等(第2類物質) 21)
[外為][輸出令]別表第2の35及び35の2項 10)
[船舶][危規則]第3条危険物等級2高圧ガス(正2.3副2.1) 10)
[航空] 積載禁止 10)
[港則] 施行規則第12条危険物(高圧ガス) 10)
 
 [8] テレフタル酸 【平成14年度調査媒体:水質、底質】
 
選定理由
 

 テレフタル酸は化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質で生産量が 1,000,000t以上(平成13年度PRTR集計結果 PRTR法指定化学物質有害性データの製造・輸入量区分)と多い。昭和50年度に実施した水質の環境調査では検出されたが、昭和58年度に実施した水質及び底質の環境調査では不検出であった。その後の調査が行われていないため、水質及び底質における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.048μg/L、23地点で調査を実施し、23地点中2地点、69検体中3検体で検出され、検出範囲は 0.060~0.12ng/g-dryであった。
 底質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 8.6ng/g-dry、22地点で調査を実施し、21地点中4地点、63検体中8検体で検出され、検出範囲は 10~20ng/g-dryであった(欠測扱い:1地点)。

 
評価
 

 水質は、昭和58年度は検出下限値 2~50μg/Lにおいて8地点を調査し、不検出であった。また、昭和50年度は検出下限値 20~5,000μg/Lにおいて20地点を調査し、3地点から検出されているが、検出地域は一部に限定されており平成14年度においては同地域を調査していない。平成14年度は、検出下限値 0.048μg/Lにおいて調査が実施され、23地点中2地点で検出され、最大検出濃度は 0.12ng/g-dryであった。過去の調査よりも検出下限値は下がっていること、並びに過去の調査と今回の調査では地点が異なることから環境中濃度の傾向の判断は困難である。
 底質は、昭和58年度は検出下限値 50~280ng/g-dryにおいて8地点を調査し、不検出であった。平成14年度は、検出下限値 8.6ng/g-dryにおいて調査が実施され、21地点中4地点で検出され、最大検出濃度は 20ng/g-dryであった。過去の調査よりも検出下限値は下がっていること、並びに過去の調査と地点が異なることから環境中濃度の傾向の判断は困難である。
 以上より、水質及び底質のいずれも残留状況の傾向の判断は困難であるが、今回調査した検出下限値の範囲内では水質及び底質いずれにもテレフタル酸が残留していることが確認された。

 
  ○  テレフタル酸の検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和50年度 6/100 3/20 200~700 20~5,000
昭和58年度 0/24 0/8 不検出 2~50
平成14年度 3/69 2/23 0.060~0.12 0.048
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和58年度 0/24 0/8 不検出 50~280
平成14年度 8/63 4/21 10~20 8.6
 
 【参考:テレフタル酸】
 

用途 : 合成原料(ポリエステル系合成繊維(テトロン)、エンプラ(ポリアリレート)) 21)

生産量・輸入量 : 1,000,000t以上 21)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 274kg/年、公共用水域への排出量 25,044kg/年 27)

分解性 : 良分解(化審法) 16)

濃縮性 : 不詳

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 

 
媒体 大気 水質 農耕地 自然地 工業地 底質  
質量割合(%) 0.022 97.2 0.013 0.019 0.0013 0.096  

反復投与毒性 : 不詳

規制・基準 :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[労働安全] 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕 10)
 
 [9] 2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール 【平成14年度調査媒体:水質、底質、水生生物】
 
選定理由
 

 2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールは、平成12年12月に化学物質審査規制法第1種特定化学物質に指定され、製造、輸入、使用が禁止された。平成13年度に実施した水質及び底質の環境調査では水質からは不検出であったが底質から検出された。規制の効果を確認するとともに、特に生物濃縮性が高い物質であり、過去に水生生物の調査が実施されていないことから、水質、底質及び水生生物における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.020μg/L、20地点で調査を実施し、16地点全てで検出されなかった(欠測扱い:4地点)。
 底質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 6.5ng/g-dry、19地点で調査を実施し、全ての地点で検出されなかった。
 水生生物は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 21ng/g-wet、7地点で調査を実施し、全ての地点で検出されなかった。

 
評価
 

 水質は、平成13年度は検出下限値 0.020μg/Lにおいて51地点を調査し、不検出であった。平成14年度は検出下限値 0.020μg/Lにおいて調査が実施され全地点で不検出であった。いずれの調査でも同じ程度の検出下限値で検出されておらず、大きな濃度の上昇は無いと判断される。
 底質は、平成13年度は検出下限値 7.0ng/g-dryにおいて53地点を調査し、53地点中1地点から検出され、検出範囲は 9.3~14ng/g-dryであった。平成14年度は、検出下限値 6.5ng/g-dryにおいて調査が実施され全地点で不検出であった。なお、設定した検出下限値以下ながら検出を示唆する報告(名古屋港、0.86ng/g-dry、1.0ng/g-dry、0.83ng/g-dry)もあった。また、平成13年度は1地点2検体(四日市港、9.3ng/g-dry、14ng/g-dry)で検出されているが、平成14年度は同地点の調査を実施していないため、残留状況の傾向は判断できない。
 水生生物は、平成14年度が初めての調査である。検出下限値 21ng/g-wetにおいて調査が実施され、全地点で不検出であった。なお、設定した検出下限値以下ながら検出を示唆する報告(大和川、0.68ng/g-wet)もあった。
 以上より、水質、底質及び水生生物いずれの媒体からも2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールは不検出であったが、本物質は化学物質審査規制法に基づく第1種特定化学物質であり、平成13年度には底質から検出されていることから、モニタリング調査の候補物質とする必要がある。なお、大気については平成15年度の初期環境調査対象物質である。

 
  ○  2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和59年度 0/30 0/10 不検出 0.04~0.08
平成13年度 0/153 0/51 不検出 0.020
平成14年度 0/48 0/16 不検出 0.020
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和59年度  3/30  1/10 2.3~8.2 0.4~1.9
平成13年度  2/159  1/53 9.3~14 7.0
平成14年度 0/57 0/19 不検出 6.5
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
平成14年度  0/21  0/7 不検出  21
 
  【参考:2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール】

用途 : ゴム、プラスチック製品の老化防止剤 34)

生産量 : 11,305t(昭和56年、トリアルキルフェノールとして) 34)

環境への主な放出源 : 不詳

分解性 : 難分解(化審法) 16)

濃縮性 : 高濃縮(化審法) 16)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 不詳

反復投与毒性 :

 

  経口投与(ラット)    NOEL = 約1.5 mg/kg.day未満(2年)

急性毒性 :

 

    LD50(ラット、経口)    890 mg/kg
    LD50(マウス、経口)   659 mg/kg
    LD50(マウス、腹腔内) 138 mg/kg

生態影響 : 不詳

規制・基準  :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[化審]第1種特定化学物質 21)
 
 [10] ニトロベンゼン 【平成14年度調査媒体:水質、底質、大気】
 
選定理由
 

 ニトロベンゼンは化学物質審査規制法指定化学物質および化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質で、生産量が 100,000t以上(平成13年度PRTR集計結果 PRTR法指定化学物質有害性データの製造・輸入量区分)と多い。平成13年度に実施した水質及び底質の環境調査で検出され、また平成3年度に実施した水生生物及び大気の環境調査でも検出された。開放系用途への出荷量が多いことから、第2種特定化学物質に該当するかどうかの検討を優先的に行うために、水質、底質及び大気における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.037μg/L、18地点で調査を実施し、18地点中2地点、54検体中6検体で検出され、検出範囲は 0.12~0.23μg/Lであった。
 底質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 1.4ng/g-dry、17地点で調査を実施し、17地点中1地点、51検体中3検体で検出され、検出範囲は 1.6~1.8ng/g-dryであった。
 大気は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.7ng/m3、6地点で調査を実施し、6地点中5地点、18検体中15検体で検出され、検出範囲は 1.4~14ng/m3であった。

 
評価
 

 水質は、昭和52年度は検出下限値 0.1~30μg/L において39地点を調査し、39地点中10地点で検出され、検出範囲 0.13~3.8μg/Lであった。平成3年度は検出下限値 0.15μg/L において51地点を調査し、51地点中1地点で検出され、検出範囲 0.17μg/Lであった。平成13年度は検出下限値 0.037μg/L において49地点を調査し、49地点中2地点で検出され、検出範囲 0.046~0.51μg/Lであった。 平成14年度は検出下限値 0.037μg/Lにおいて調査が実施され、18地点中2地点で検出され、最大検出濃度は 0.23μg/Lであった。過去の調査と検出範囲を比較すると、残留状況の傾向に特段の変化は見られない。
 底質は、昭和52年度は検出下限値 1~1,000ng/g-dryにおいて39地点を調査し、39地点中9地点で検出され、検出範囲 9~1,500ng/g-dryであった。平成3年度は検出下限値 23ng/g-dry において54地点を調査し、54地点中1地点で検出され、検出範囲 47~70ng/g-dryであった。平成13年度は検出下限値 1.4 ng/g-dry において48地点を調査し、48地点中3地点で検出され、検出範囲 1.4~2.3ng/g-dryであった。平成14年度は検出下限値 1.4 ng/g-dryにおいて調査が実施され、17地点中1地点で検出され、最大検出濃度は 1.8ng/g-dryであった。過去の調査(昭和52年度)と比較すると、検出範囲および検出地点数において残留状況は減少傾向にある。
 大気は、平成3年度は検出下限値 2ng/m3において17地点を調査し、17地点中16地点で検出され、検出範囲 2.2~160ng/m3であった。また、調査検体の中央値は 6.1ng/m3、平均値は 17.7ng/m3、幾何平均値は 6.8ng/m3(平均値計算における不検出データは検出下限値の半分とした。)であった。平成14年度は検出下限値 0.7 ng/m3において調査が実施され、6地点中5地点で検出され、最大検出濃度は 14ng/m3であった。また、調査検体の中央値は 4.1ng/m3、平均値は 4.6ng/m3、幾何平均値は 2.8ng/m3であった。過去の調査と比較すると検出頻度の変化は認められないが、検出範囲、平均値及び幾何平均値を比較すると、環境中の濃度は減少傾向にある。
 以上より、底質及び大気の残留状況のうち検出頻度は変化が無く、大気は広範に存在するが環境中濃度に減少傾向が見受けられる。水質媒体の残留状況の傾向に変化は見られない。今回調査した検出下限値の範囲内では水質、底質及び大気のいずれにもニトロベンゼンは残留していることが確認された。

 
  ○  ニトロベンゼンの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和51年度 27/70   0.1 ~1.4 0.03~0.4
昭和52年度 22/115 10/39 0.13 ~3.8 0.1 ~30
平成 3年度 1/153 1/51 0.17 0.15
平成13年度  5/147  2/49 0.046~0.51 0.037
平成14年度  6/54 2/18 0.12 ~0.23 0.037
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和51年度 15/47    9.5~1,900 2~3.5
昭和52年度 19/117 9/39 9 ~1,500 1~1,000
平成 3年度 2/162 1/54 47~70 23
平成13年度  6/144 3/48 1.4~2.3 1.4
平成14年度 3/51 1/17 1.6~1.8 1.4
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
昭和51年度 10/10   3~580  
昭和52年度 9/85 2/29 3~5 1~200
平成 3年度 4/147 2/49 11~26 8.7
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
昭和61年度 1/73 1/24 140 100
平成 3年度 42/49 16/17 2.2~160   2
平成14年度 15/18 5/6 1.4~14 0.7
 
  【参考:ニトロベンゼン】
 

用途 : 合成原料(染料・香料中間体(アニリン、ベンジジン、キノリン、アゾベンゼン))、
            溶剤(硝酸セルロース)、その他(塵埃防止剤、酸化剤) 21)

生産量・輸入量 : 100,000t以上 21)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 9,273kg/年、公共用水域への排出量 5,402kg/年 27)

分解性 : 難分解(化審法) 16)

濃縮性 : 低濃縮(化審法) 16)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 

 
媒体 大気 水質 農耕地 自然地 工業地 底質  
質量割合(%) 95.6 4.3 0.034 0.042 0.0031 0.038  

反復投与毒性 :

    吸入暴露(ラット)NOEL = 26 mg/m3(90日間、メトヘモグロビン血症) 21)
  吸入暴露(マウス)NOEL = 16 ppm(90日間) 35),36),37)
  吸入暴露(ラット)NOEL = 5 ppm未満(90日間) 35),36),37)
  経口投与(ラット)20 mg/kg.day(40-41日間)血液、肝臓への影響 35),36)

発がん性、催腫瘍性 : IARC(1996年)グループ2B

生態影響 : 

     藻類(セレナストラム) 96h NOEC = 3.2 mg/L 38)(増殖)
   魚類(ヒメダカ)     48h LC50=20 mg/L 35),39)
   エビの一種       96h LC50 =6.7 mg/L 38)

規制・基準  :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[化審]指定化学物質 21)
[消防]危険物別表第4類(引火性液体)第3石油類 非水溶性液体(2,000リットル) 10)
[毒劇] 劇物 10)
[バーゼル] 特定有害廃棄物等(0.1重量%以上のもの。平成10年環・厚・通告示第1号別表第3の39イ) 10)
[労働安全]施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕 10)
[外為][輸出令]別表第2の35の2項(0.1重量%を超えるもの) 10)
[海洋] 有害液体物質(第2号イ施行令別表第1B類物質) 10)
[船舶][危規則]第3条危険物等級6.1毒物(P)(正6.1副3容器等級2) 10)
[航空]施行規則第194条(輸送禁止の物件)第1項第6号イ毒物(M等級2) 10)
[港則]施行規則第 12条危険物(毒物) 10)
 
 [11]ポリ塩化ターフェニル(総量、1~14塩化物及び9異性体(群))
  【平成14年度調査媒体:水質、底質、水生生物】
 
選定理由
 

 ポリ塩化ターフェニルはPCB類似物質である。平成12年度に実施した大気の環境調査では8地点中7地点で検出された。昭和53年度に実施した水質、底質および水生生物の環境調査では、水質からは不検出であったが、底質及び水生生物から検出された。水質、底質及び水生生物における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.013ng/L、10地点で調査を実施し、10地点中1地点、30検体中1検体で検出され、検出値は 0.44ng/Lであった。
 底質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.0091ng/g-dry、10地点で調査を実施し、10地点中9地点、30検体中27検体で検出され、検出範囲は 0.59~140ng/g-dryであった。
 水生生物は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.0078ng/g-wet、2地点で調査を実施し、2地点中2地点、6検体中6検体で検出され、検出範囲は 0.015~0.54 ng/g-wetであった。

 
評価
 

 水質は、 昭和53年度は検出下限値 2~2,500ng/Lにおいて25地点の調査を実施し、不検出であった。 平成14年度は検出下限値 0.013 ng/Lにおいて調査が実施され、10地点中1地点で検出され、最大検出濃度は 0.44ng/Lであった。過去の調査においては不検出であるが過去の検出下限値が高いため、これらの結果から残留状況の傾向は判断できない。
 底質は、昭和53年度は検出下限値 1~1,000ng/g-dryにおいて25地点の調査を実施し、25地点中15地点で検出され、検出範囲は 1~4,700ng/g-dryであった。平成14年度は検出下限値 0.0091ng/g-dryにおいて調査が実施され、10地点中9地点で検出され、最大検出濃度は 140ng/g-dryであった。過去の調査と検出範囲で比較すればやや減少傾向にある。
 水生生物は、昭和53年度は検出下限値 0.2~100ng/g-wetにおいて66検体の調査を実施し、3検体が検出され、検出範囲は 0.3~3ng/g-wetであった。平成14年度は検出下限値 0.0078ng/g-wetにおいて調査が実施され、2地点中2地点(東京都東京湾、岡山県水島沖)で検出され、最大検出濃度は 0.54ng/g-wetであった。両地点とも過去の検出下限値が今回の最大検出濃度より高いことから残留状況の傾向は判断できない。
 以上より、底質の環境中濃度はやや減少傾向にあり、水質及び水生生物は残留状況の傾向は判断できないが、今回調査した検出下限値の範囲内では水質、底質及び水生生物いずれにもポリ塩化ターフェニルが残留していることが確認された。

 
  ○  ポリ塩化ターフェニルの検出状況(総量)
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和49年度 0/60   不検出 0.1
昭和51年度 0/156   不検出 0.01~1
昭和53年度 0/75 0/25 不検出 0.002~2.5
平成14年度 1/30 1/10 0.00044
(0.44 ng/L)
0.000013
(0.013 ng/L)
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
昭和49年度 0/60   不検出 50
昭和51年度 21/151   1~330 1~200
昭和53年度 37/75 15/25 1~4,700 1~1,000
平成14年度 27/30 9/10 0.59~140 0.0091
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
昭和49年度 3/11   50~120 100
昭和51年度 0/39   不検出 1~200
昭和53年度 3/66   0.3~3 0.2~100
平成14年度 6/6 2/2 0.015~0.54 0.0078
※ 昭和49年度は鳥類
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成12年度 21/24 7/8 0.00092~0.0060 0.001
  ○  ポリ塩化ターフェニルの検出状況(平成14年度1~14塩化物及び9異性体(群))
水質 検出頻度 検出範囲
(ng/L)
検出下限値
(ng/L)
検体 地点
 1塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.013
 2塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.016
 3塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.022
 4塩化ターフェニル 1/30 1/10 0.045 0.024
 5塩化ターフェニル 1/30 1/10 0.39 0.024
 6塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 7塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 8塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 9塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 10塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 11塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 12塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 13塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.42
 14塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.33
 4-モノクロロ-o-ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.023
 4-モノクロロ-p-ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.013
 2,5-ジクロロ-o-ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.021
 2,5-ジクロロ-m-ターフェニル 0/27 0/9 不検出 0.016
 2,4-ジクロロ-p-ターフェニル
 + 2,5-ジクロロ-p-ターフェニル
0/24 0/8 不検出 0.023
 2,4,6-トリクロロ-p-ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.022
 2,3,5,6-テトラクロロ-p-ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.024
 2,4,4”,6-テトラクロロ-p-ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.026
 2,3,4,5,6-ペンタクロロ-p-ターフェニル 1/30 1/10 0.39 0.024
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
 1塩化ターフェニル 12/27 4/9 0.052~0.84 0.019
 2塩化ターフェニル 11/27 4/9 0.040~2.6 0.019
 3塩化ターフェニル 6/30 2/10 0.068~0.53 0.0091
 4塩化ターフェニル 6/30 2/10 0.086~1.0 0.017
 5塩化ターフェニル 3/30 1/10 0.044~0.41 0.020
 6塩化ターフェニル 17/30 6/10 0.17 ~2.9 0.039~0.19
 7塩化ターフェニル 27/30 9/10 0.078~5.7 0.039~0.19
 8塩化ターフェニル 27/30 9/10 0.080~41 0.039~0.19
 9塩化ターフェニル 27/30 9/10 0.25 ~72 0.039~0.19
 10塩化ターフェニル 27/30 9/10 0.17 ~22 0.039~0.19
 11塩化ターフェニル 16/30 6/10 0.10 ~1.6 0.039~0.19
 12塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.039~0.19
 13塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.039~0.19
 14塩化ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.031~0.19
 4-モノクロロ-o-ターフェニル 7/24 3/8 0.031~0.18 0.029
 4-モノクロロ-p-ターフェニル 6/24 3/8 0.032~0.098 0.019
 2,5-ジクロロ-o-ターフェニル 0/21 0/7 不検出 0.019
 2,5-ジクロロ-m-ターフェニル 2/21 1/7 0.023~0.13 0.019
 2,4-ジクロロ-p-ターフェニル
 + 2,5-ジクロロ-p-ターフェニル
2/21 1/7 0.022~0.12 0.021
 2,4,6-トリクロロ-p-ターフェニル 0/24 0/8 不検出 0.0091
 2,3,5,6-テトラクロロ-p-ターフェニル 2/24 1/8 0.017~0.10 0.017
 2,4,4”,6-テトラクロロ-p-ターフェニル 3/24 1/8 0.041~0.31 0.019
 2,3,4,5,6-ペンタクロロ-p-ターフェニル 0/30 0/10 不検出 0.020
水生生物 検出頻度 検出範囲
(ng/g-wet)
検出下限値
(ng/g-wet)
検体 地点
 1塩化ターフェニル 3/6 1/2 0.015~0.017 0.0078
 2塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.016
 3塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.0078
 4塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.020
 5塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.021
 6塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.077~0.096
 7塩化ターフェニル 3/6 1/2 0.20~0.26 0.077~0.096
 8塩化ターフェニル 3/6 1/2 0.12~0.17 0.077~0.096
 9塩化ターフェニル 3/6 1/2 0.084~0.11 0.077~0.096
 10塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.077~0.096
 11塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.077~0.096
 12塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.077~0.096
 13塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.077~0.096
 14塩化ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.061~0.076
 4-モノクロロ-o-ターフェニル 3/6 1/2 0.015~0.017 0.078
 4-モノクロロ-p-ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.026
 2,5-ジクロロ-o-ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.016
 2,5-ジクロロ-m-ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.016
 2,4-ジクロロ-p-ターフェニル
 + 2,5-ジクロロ-p-ターフェニル
0/6 0/2 不検出 0.016
 2,4,6-トリクロロ-p-ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.0078
 2,3,5,6-テトラクロロ-p-ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.020
 2,4,4”,6-テトラクロロ-p-ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.020
 2,3,4,5,6-ペンタクロロ-p-ターフェニル 0/6 0/2 不検出 0.021
 
  【参考:ポリ塩化ターフェニル】
 

用途 : 電気絶縁体 40)、PCBの代替品として使用されたこともある 41)

生産量・輸入量 : 不詳

環境への主な放出源 : 不詳

分解性 : 不詳

濃縮性 : 不詳

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 不詳

慢性毒性 : 
  本物質は肝臓の薬物代謝酵素を誘導し、腫瘍を含む肝障害を引き起こす。内分泌系や免疫系にも障害が
  起こることも明らかにされている 41)

発がん性、催腫瘍性 : 
  マウスに本物質を24週間経口投与した実験では、肝細胞がんの有意な増加がみられる 42)

規制・基準 : なし

 
 [12] メタクリル酸 【平成14年度調査媒体:大気】
 
選定理由
 

 メタクリル酸は化学物質排出把握管理促進法第1種指定化学物質であり、生産量が 10,000t以上(平成13年度PRTR集計結果 PRTR法指定化学物質有害性データの製造・輸入量区分)と多い。昭和62年度に実施された環境調査では水質及び底質から不検出であった。大気の調査を過去に実施していないため、大気における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 大気は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.77ng/m3、11地点で調査を実施し、9地点中3地点、27検体中6検体で検出され、検出範囲は 1.1~4.6ng/m3であった(欠測扱い:2地点)。

 
評価
 

 大気は、平成14年度が初めての調査である。検出下限値 0.77ng/m3において調査が実施され、9地点中3地点で検出され、最大検出濃度は 4.6ng/m3で、今回調査した検出下限値の範囲内では大気にメタクリル酸が存在していることが確認された。

 
   ○   メタクリル酸の検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
昭和62年度 0/75 0/25 不検出 6
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(μg/g-dry)
検体 地点
昭和62年度 0/75 0/25 不検出 140
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成14年度 6/27 3/9 1.1~4.6 0.77
  
  【参考:メタクリル酸】
 

用途 : 合成原料(熱硬化性樹脂、接着剤)、加工剤(ラテックス改質剤、プラスチック改質剤、紙・
      繊維加工剤、皮革処理剤) 21)

生産量・輸入量 : 10,000t以上 21)

環境への主な放出源 : 大気への排出量 95,000kg/年、公共用水域への排出量 20,353kg/年 27)

分解性 : 良分解(化審法) 16)

濃縮性 : 不詳

用途 : 合成原料(熱硬化性樹脂、接着剤)、加工剤(ラテックス改質剤、プラスチック改質剤、紙・
      繊維加工剤、皮革処理剤) 21)

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 

 
媒体 大気 水質 農耕地 自然地 工業地 底質  
質量割合(%) 1.4 96.3 0.027 0.033 0.0022 0.043  

反復投与毒性 : 

 

  経口投与(ウサギ)    NOAEL =0.05 mg/kg.day(6ヶ月間)、反射低下、赤血球減少 21)

規制・基準 :

[PRTR]第1種指定化学物質 21)
[毒劇]劇物 21)
[消防] 危険物別表第4類(引火性液体)第3石油類 非水溶性液体(4,000リットル) 10)
[労働安全] 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕 10)
[海洋] 有害液体物質(施行令別表第1第4号イD類物質) 10)
[船舶][危規則]第3条危険物等級8腐食性物質(正8容器等級3) 10)
[航空]施行規則第194条(輸送禁止の物件)第1項第8号腐食性物質(Q等級3) 10)
 
 [13] メチル-tert-ブチルエーテル 【平成14年度調査媒体:水質、底質】
 
選定理由
 

 メチル-tert-ブチルエーテルは一部のガソリンに添加されている。平成11年度に実施した環境調査では大気の検出率が高かった(15地点中13地点)。水質、底質及び水生生物の調査を過去に実施していないため、水質及び底質における最新の実態把握が必要である。

 
調査内容及び結果
 

 水質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.006μg/L、18地点で調査を実施し、15地点中4地点、45検体中11検体で検出され、検出範囲は 0.007~0.025μg/Lであった(欠測扱い:3地点) 。
 底質は環境中の残留状況の把握を目的として、検出下限値 0.70ng/g-dry、18地点で調査を実施し、17地点全てで検出されなかった(欠測扱い:1地点)。

 
評価
 

 水質は、平成14年度が初めての調査である。検出下限値 0.006μg/Lにおいて調査が実施され、15地点中4地点で検出され、最大検出濃度は 0.025μg/Lで、今回調査した検出下限値の範囲内ではメチル-tert-ブチルエーテルが水質に残留していることが確認された。
 底質は、平成14年度が初めての調査である。検出下限値 0.70ng/g-dryにおいて調査が実施され、全地点で不検出で、今回調査した検出下限値の範囲内ではメチル-tert-ブチルエーテルが底質に残留していないことが確認された。
 以上より、水質及び底質の残留状況の傾向は判断できないが、今回調査した検出下限値の範囲内ではメチル-tert-ブチルエーテルが水質に残留していること、および底質に残留していないことが確認された。

 
   ○  メチル-tert-ブチルエーテルの検出状況
水質 検出頻度 検出範囲
(μg/L)
検出下限値
(μg/L)
検体 地点
平成14年度 11/45 4/15 0.007~0.025 0.006
底質 検出頻度 検出範囲
(ng/g-dry)
検出下限値
(ng/g-dry)
検体 地点
平成14年度 0/51 0/17 不検出 0.70
大気 検出頻度 検出範囲
(ng/m3)
検出下限値
(ng/m3)
検体 地点
平成11年度 33/41 13/15 22~330 20
 
  【参考:メチル-tert-ブチルエーテル】
 

用途 : ガソリンのオクタン価向上剤、アンチノック剤、低沸点溶剤・ラッカー混合剤の混和性改良剤。
      高速液体クロマトグラフの溶媒 2),10),43)

生産量・輸入量 : 不詳

環境への主な放出源 : 不詳

分解性 : 難分解(化審法) 16)

濃縮性 : 不詳

媒体別分配予測(フガシティーモデル) : 

 
媒体 大気 水質 農耕地 自然地 工業地 底質  
質量割合(%) 33.10 66.1 0.0 0.0 0.00 0.043  

急性毒性 : 

 

     LD50(ラット、腹腔内)148mg/kg 44)
     LC50(ラット、吸入)23,576ppm/4hr 44)

規制・基準 :

[消防]危険物別表第4類(引火性液体)第1石油類
[労働安全] 施行令別表第1危険物(引火性の物)、施行令第18条の2[名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)] 21)
[バーゼル] 特定有害廃棄物等(0.1重量%以上のもの。平成10年環・厚・通告示第1号別表第3の37イ) 10)
[外為] [輸出令]別表第2の35の2項 10)
[海洋] 有害液体物質(施行令別表第1第4号イD類物質) 10)
[船舶] [危規則]第3条危険物等級3引火性液体類(正3容器等級2) 10)
[航空] 施行規則第194条(輸送禁止の物件)第1項第3号引火性液体(G等級2) 10)
[港則] 施行規則第12条危険物(引火性液体類) 10)
 
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