目次に戻る平成15年度(2003年度)版 「化学物質と環境」
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● 調査地点及び実施方法

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  調査地点及び実施方法
   1.調査担当機関名
   2.調査地点及び調査対象物質
表1-1-1調査地点及び調査対象物質一覧【水質・底質・水生生物】
表1-1-2同 【大気】
図1-1-1平成14年度 初期環境調査地点(水質・底質)
図1-1-2同 (水生生物)
図1-1-3同 (大気)
   3.試料の採取方法
   4.試料採取にあたっての留意事項
   5.試料に関する調査項目
   6.試料の保管等
   7.分析法の概要  分析フロ-
     
  本調査は全国の都道府県および政令指定都市に検体採取・調整及び分析を委託して実施した。
 
 1.調査担当機関名(名称は平成14年度調査実施当時)
 
    ・水質(23自治体)、底質(22自治体)
北海道環境科学研究センター 大阪府公害監視センター
茨城県公害技術センター 岡山県環境保健センター
栃木県保健環境センター 山口県環境保健研究センター
埼玉県環境科学国際センター 福岡県保健環境研究所
東京都立衛生研究所 佐賀県環境センター
新潟県保健環境科学研究所 熊本県保健環境科学研究所(水質のみ)
石川県保健環境センター 川崎市公害研究所
長野県衛生公害研究所 大阪市立環境科学研究所
愛知県環境調査センター 神戸市環境保健研究所
三重県科学技術振興センター 北九州市環境科学研究所
滋賀県立衛生環境センター 福岡市保健環境研究所
京都府保健環境研究所
 
    ・水生生物(9自治体)
北海道環境科学研究センター 大阪府公害監視センター
埼玉県環境科学国際センター 岡山県環境保健センター
東京都立衛生研究所 山口県環境保健研究センター
新潟県保健環境科学研究所 高知県環境研究センター
滋賀県立衛生環境センター
 
    ・大気(17自治体)
茨城県公害技術センター 山口県環境保健研究センター
埼玉県環境科学国際センター 香川県環境研究センター
千葉県環境研究所 広島市衛生研究所
神奈川県環境科学センター 福岡県保健環境研究所
長野県衛生公害研究所 仙台市衛生研究所
岐阜県保健環境研究所 名古屋市環境科学研究所
三重県科学技術振興センター 京都市衛生公害研究所
京都府保健環境研究所 北九州市環境科学研究所
兵庫県立健康環境科学研究センター  
 2.調査地点及び調査対象物質
 
 

 調査地点及び調査対象物質は表1-1-11-1-2に示すとおりである。また、調査地点を図1-1-1(水質・底質)図1-1-2(水生生物)図1-1-3(大気)に示した。平成14年度は、水質は29地点で1~8物質(群)、うち8地点で全対象物質である8物質(群)を、底質は27地点で1~7物質(群)、うち8地点で全対象物質である7物質(群)を、水生生物は10地点で1~4物質(群)、うち2地点で全対象物質である4物質(群)を、大気は18地点で1~5物質(群)、うち4地点で全対象物質である5物質(群)を実施した。

  • 表1-1-1調査地点及び調査対象物質一覧【水質・底質・水生生物】
  • 表1-1-2同 【大気】
  • 図1-1-1平成14年度 初期環境調査地点(水質・底質)
  • 図1-1-2同 (水生生物)
  • 図1-1-3同 (大気)
 3.試料の採取方法
 
(1) 水質
A.採水の時期
  採水の時期は、採水日前において比較的晴天が続き、水質が安定している日を選んだ。
B.採水部位
  採水部位は、原則として調査地点の流心において表層水(水面下0~50cm)を採取した。ただし、表面の浮遊ゴミ、浮遊油類を混入しないよう表層1~2cm避けて採取した。
C.前処理
 ゴミ等を除去した上澄み水を用いた。この際表面水が入らないように心掛けた。ろ過、遠心分離等の処理は行わなかった。
 
(2) 底質
A.採泥方法
 

 調査地点において底質の性状を考慮したエクマンバージ型採泥器またはこれに準ずる採泥器によって採取した底質を清浄なバットに移し、小石、貝類、動植物片などの異物を除いた後、孔径1mm(16メッシュ)のふるいでふるったものを分析に供した。なお、その際、泥分率((ふるいを通過した試料の重量)/(ふるいにかける前の試料の重量))(%)を測定した。また、試料の一部について乾燥重量(105~110℃、2時間程度)及び強熱減量(600±25℃、2時間程度)を求めた。

B.その他
 

 分析用検体の場合は原則として風乾または加熱乾燥を行わないものを使用し、計算で乾燥重量当りの測定値を算出した。

 
(3) 生物
A.採取試料
 

 試料は調査地点で再生産される魚類とし、海域にあってはスズキまたはセイゴ(採取できなければハゼ、ボラ、カレイ又はコノシロでも可。但し、可能な限り前年度と同じ生物種を用いた。)、湖沼及び河川にあってはウグイ(採取できなければコイ、フナまたはオイカワでも可。但し、可能な限り前年度と同じ生物種を用いた。)を標準とした。検体としては同一個体を用いることが望ましいが、同程度の大きさのものを複数混合しても差し支えないものとした。ただし、小動物にあっては十分洗浄して用いた。

B.前処理
 (ア) 魚類
 

 魚類については、可食部(筋肉)を検体とした。採取部分は問わないが、片身を単位とし、約100g以上になるように複数単位を削ぎホモジナイズしたものを検体として用いた。さらに、小魚の場合には、100g以上になるように魚体全体を何匹かとりホモジナイズしたものを検体とした。

 (イ) 貝類(魚がいない場合のみ)
 

 貝類にあっては、所要の重量分の個数の可食部を集め、ホモジナイズしたのち検体とした。この際、貝類中の含有泥質を含めないようにできるだけ取除いた。

C.その他
 

 生物試料については、次に示す方法により、脂質重量(%)を算出した。試料5gをホモジナイザーカップにとり、クロロホルム 20mL、メタノール 40mLを加えて、2分間ホモジナイズする。さらに 20mLのクロロホルムを加えて、2分間ホモジナイズする。ブフナーロートでろ過し、沈渣は再びクロロホルム・メタノール(1:1)80mLとともにホモジナイズする。全クロロホルム、メタノール層を分液ロートにとり、60mLの蒸留水を加えてゆるく振り混ぜる。下層のクロロホルム層を集め無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、残渣を五酸化リンデシケータ中で乾燥し、ひょう量する。

 
(4) 大気
A.採取時期
 

 天候の安定した時期に、連続した3日間において、1日1回、環境省環境保健部環境安全課編「化学物質と環境平成13年度化学物質分析法開発調査報告書」に示す時間帯(採取開始時間が明記されていない場合は、原則として午前10時から採取を開始することとした。)に採取した。

B.採取方法
  試料は樹脂又はガラス繊維ろ紙等への吸着、あるいはキャニスターでの大気捕集により採取した。
 
 4.試料採取にあたっての留意事項
 

(1)

 本調査は一般環境中に残留する化学物質を検索し、環境中に異常に存在するかどうかの知見を得ることを第一義とした。したがって、調査対象化学物質が排出されているような地点(例えば当該化学物質の製造または使用事業所等の排水口付近及び交通機関の通過する付近等)及び汚染の直接的影響を受ける地点は試料採取地点としなかった。

 

(2)

 水質、底質の調査ではおよそ 500m四方の範囲を一つの地点として、できるだけ分散された状態となるように採取点を選び3検体を採取した。このとき、底質の検体採取にあたっては周囲50m内の地点で3カ所程度から採取した底質を均質に混合したものを1検体として調製することが望ましいものとした。魚類の調査では該当地点内において3検体採取すればよいものとした(問題があった場合を考え余分に冷凍保存用を配慮しておくことが望ましいものとした)。

 

(3)

 大気試料の採取地点は、その付近における大気の状況を把握し得るような場所とし、特定の発生源からの影響を強く受けたり、直接交通機関等の影響を受けるような場所は避けるものとした。

 5.試料に関する調査項目
 
(1)  水質試料:水温、肉眼観察による色相及び透明度、濁度
(2)  底質試料:外観、臭気、夾雑物、採取点の水深、含水率、強熱減量及び泥分率
(3)  生物試料:標準和名、体長(尾部を除く)、体重及び脂質重量
(4)  大気試料:試料採取時の天候、気温、湿度、風向、風速、大気採取量、周辺の地形・道路等の状況(例:主要な道路からのおおよその距離、交通量)
 6.試料の保管等
 
 

 環境省環境保健部環境安全課編「化学物質と環境 平成13年度化学物質分析法開発調査報告書」に示す方法による他、採取した試料は、調査物質等が溶出または吸着しない袋や容器等に入れ、できるだけ速やかに分析に供した。保存する場合には変質しないように冷蔵または冷凍等の方法で保管した。

 
 7.分析法の概要
 
 

 平成14年度の環境調査対象物質の分析法は主として平成13年度に開発検討が行われた。水質・底質については、分析法の開発に先だち環境分析法としての適否を確認するため次のような方法で分解性スクリーニング試験を行っている。

 
(1) 分解性スクリーニング試験 (簡便法)
 

 化学物質は各種環境条件下において分解するものがあり、分析法開発に当たっては、想定される環境条件を設定し、分解性のスクリーニングを行い、的確な分析技術開発を行う必要がある。環境中における分解では、水または光によるものが大きな要因と考えられることから、この両条件を同時に設定してスクリーニングを行う (光が関与する分解の観察では、pH条件は一条件についてのみ行う) 。また、揮発性の性状を有する物質については、分解したと見誤らないために、バイヤルびんの空間部について適宜濃度を把握する。

A.準  備
 

 あらかじめ撹拌子 (マグネティック・スターラー用)を入れた130mLのバイヤルびんに、pHが5、7及び9に調製した蒸留水蒸留水 100mLを加えてシールする。ついでこのバイヤルびん中へアセトンなどの親水性溶媒に溶解した標準品(%オーダー程度の濃度が望ましい)をマイクロシリンジにより 100ppm以下の濃度とするように加え、10分間マグネティック・スターラーで撹拌する。

 
B.実  験
 
a)

 調製1時間後にそれぞれのpH値の検液をバイヤルびんから取り出し、直ちに分析する (濃度A)。

b)

 さらに暗所にて5日間放置後分析する(濃度B)。

c)

 光による分解の有無をみるため、pH7の検液については、太陽光が入ってくるような室内に5日間放置したものも分析する(濃度C)。

  以上の実験は20±5℃の温度条件下で行う。
 
C.結  果 
 

それぞれのpHについてB/A× 100、C/A× 100を算出し、分解性を検討する。
実験の組み合わせは以下のとおりである。

pH 初期濃度
(μg/mL)
1時間放置後の
残存率(%) 
5日間放置後の残存率
暗所(%) 光照射(%)
 
 

 また、水質及び底質についての分析法の開発にあたっては、検出下限及び回収率を定めるため、次のような方法で回収実験を行っている。

 
(2) 低濃度添加回収実験 
A. 蒸留水 
 

 分析機器の感度を実用上さしつかえない範囲で高感度にセットし、検量線を作成する。直線回帰が成立する濃度範囲の最下限濃度を含む3種類の濃度に相当する量の対象化学物質の標準試料を溶解した試料を調製し、各濃度について4回の全分析を行い、測定値を求める。

  また、この結果をもとに各濃度における測定値の標準偏差を求め、次式により検出力Dを求める。
 
  D=t(n-1、0.05) σR dC
─────
dR
 σ;R:標準偏差 C:濃度 R:応答値
 
  3種類の濃度条件における検出力Dの平均値Dを求め、設定した分析法における検出力とする。
 検出力の3倍(3×D)を検出下限値、10倍 (10×D)を定量下限値とする。
 
B.底  質
 

 A.の方法で求めた、検出限界値(3×D)に相当する底質での濃度を、仮に検出下限推定値とし、この検出下限推定値の2~5倍に相当する濃度になるように対象化学物質での標準試料を共通底質に添加し、一夜4℃で密栓して保存したのち、まず2回、底質試料の全分析工程を実施し、対象化学物質が正しく検出されることを確かめる。検出が可能の場合は、同一濃度でさらに5回の添加回収実験を行い、計7回の分析値を用いて次式により共通底質における検出下限値を計算する。

  検出下限値(DL)=t(n-1、0.01)Sc
 Scは標準偏差の推定値
 
C.河川水及び海水
 

 河川水 (環境基準B類型の水域のもの)及び海水(環境基準B類型の水域のもの、ない場合はA海域の水または人工海水)に標準品を検出限界の10倍になるように添加し、直ちに分析する(各2回以上)。また、標準品を加えない同じ河川水及び海水についても分析する(各2回以上)。添加水の測定値から無添加水の測定値(各平均値)を差し引いた値により、回収率を算出する。

 

 実際の調査に際しては、分析に際して妨害となる物質も存在することから、抽出法、分離法、測定条件など種々の検討も並行して行う。
環境調査実施物質の分析フローを章末に示す。フローチャートは物質群毎に示されており、備考欄には分析条件の一例及びその場合の標準的な検出限界を掲載している。

 環境調査物質の分析方法のフローチャートはこちら

 
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