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平成17年度(2005年度)「化学物質と環境」(詳細版)
第3章 平成16年度モニタリング調査結果(詳細版)

<< [5] クロルデン類 [7] トキサフェン >>
 
  [6] ヘプタクロル類 (ヘプタクロル、trans-ヘプタクロルエポキシド、cis-ヘプタクロルエポキシド)
  【平成16年度調査媒体:水質、底質、生物、大気】
 
 ・ 調査の経緯及び実施状況
 ヘプタクロル及びその代謝物ヘプタクロルエポキシドは、有機塩素系殺虫剤の一種である。稲、麦類、じゃがいも、さつまいも、たばこ、豆類、あぶらな科野菜、ネギ類、ウリ類、てんさい、ほうれん草等の殺虫剤として使用された。日本では農薬取締法に基づく登録が昭和47年度に失効しており、現在では使用されていない。工業用クロルデン(シロアリ防除剤)にも含まれており、昭和61年9月、化学物質審査規制法に基づく第1種特定化学物質に指定された。
 平成13年度までの本件調査において、ヘプタクロルは平成14、15年度に本調査で水質、底質、生物(貝類、魚類、鳥類)、大気媒体の調査を実施しているほか、「化学物質環境調査(昭和49年度~平成13年度)」で昭和57年度に水質、底質及び魚類を、昭和61年度に大気を調査している。ヘプタクロルエポキシドは「化学物質環境調査」で昭和57年度と平成8年度に水質、底質及び魚類を、昭和61年度に大気を調査しているが、継続的な調査は実施されていない。
 
 環境省内の他調査としては、「内分泌撹乱化学物質に係る環境実態調査」6) において平成10年度以降調査を実施している。
 
環境省内の他調査の結果
 
 ・ 調査結果
 平成16年度のモニタリング調査において、ヘプタクロル類は多くの媒体から検出された。
 ヘプタクロルの測定結果は、水質で定量下限値 5 pg/L、検出下限値 2 pg/Lにおいて nd~29 pg/L(幾何平均値 nd)、底質で定量下限値 3 pg/g-dry、検出下限値 0.9 pg/g-dryにおいて nd~170 pg/g-dry(同 tr(2.5) pg/g-dry)、生物媒体では定量下限値 4.1 pg/g-wet、検出下限値 1.4 pg/g-wetにおいて、貝類でnd~16 pg/g-wet(同 tr(3.5) pg/g-wet)、魚類でnd~460 pg/g-wet(同 tr(1.9) pg/g-wet)、鳥類でnd~tr(1.5) pg/g-wet(同 nd)、大気で定量下限値 0.23 pg/m3、検出下限値 0.078 pg/m3において温暖期 0.46~200 pg/m3 (同 23 pg/m3)、寒冷期 0.53~100 pg/m3 (同 11 pg/m3)であった。
 trans-ヘプタクロルエポキシドの測定結果は、水質で定量下限値 0.9 pg/L、検出下限値 0.3 pg/Lにおいて不検出、底質で定量下限値 4 pg/g-dry、検出下限値 2 pg/g-dryにおいて nd~tr(2.5) pg/g-dry(幾何平均値 nd)、生物媒体では定量下限値 12 pg/g-wet、検出下限値4 pg/g-wetにおいて、貝類でnd~55 pg/g-wet(幾何平均値 tr(4.0) pg/g-wet)、魚類でnd~tr(10) pg/g-wet(同 nd)、鳥類で不検出、大気で定量下限値 0.6 pg/m3、検出下限値 0.2 pg/m3において温暖期 nd~tr(0.38) pg/m3 (同 nd)、寒冷期 不検出であった。
 cis-ヘプタクロルエポキシドの測定結果は、水質で定量下限値 2 pg/L、検出下限値 0.4 pg/Lにおいて2~77 pg/L(幾何平均値 10 pg/L)、底質で定量下限値 6 pg/g-dry、検出下限値 2 pg/g-dryにおいてnd~230 pg/g-dry(同 tr(4.0) pg/g-dry)、生物媒体では定量下限値 9.9 pg/g-wet、検出下限値 3.3 pg/g-wetにおいて、貝類でtr(9.8)~840 pg/g-wet(同 57 pg/g-wet)、魚類でtr(3.3)~620 pg/g-wet(同 46 pg/g-wet)、鳥類で190~350 pg/g-wet(同 270 pg/g-wet)、大気で定量下限値 0.052 pg/m3、検出下限値 0.017 pg/m3において温暖期0.65~9.7 pg/m3 (同 2.8 pg/m3)、寒冷期0.44~7.0 pg/m3 (同 1.1 pg/m3)であった。
 
 ・ 評価
 ヘプタクロルは、全媒体において、平成14年度からモニタリングを開始した。平成16年度は、水質は38地点中9地点、底質は63地点中53地点、貝類は7地点中6地点、魚類は14地点中11地点、鳥類は2地点中1地点から検出され、残留が認められる。また大気では全地点・全検体から検出され、広範な地点で残留が認められる。
ヘプタクロル 実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
14 tr(1.1) 1.0 25 nd 1.5 [0.5] 97/114 38/38
15 tr(1.8) tr(1.6) 7.0 tr(1.0) 2 [0.5] 36/36 36/36
16 nd nd 29 nd 5 [2] 9/38 9/38
底質
(pg/g-dry)
14 3.5 3.2 120 nd 1.8 [0.6] 167/189 60/63
15 tr(2.4) tr(2.2) 160 nd 3 [1] 138/186 53/62
16 tr(2.5) tr(2.3) 170 nd 3 [0.9] 134/189 53/63
貝類
(pg/g-wet)
14 3.6 4.6 15 nd 4.2 [1.4] 28/38 6/8
15 tr(2.8) tr(2.4) 14 nd 6.6 [2.2] 16/30 4/6
16 tr(3.5) 5.2 16 nd 4.1 [1.4] 23/31 6/7
魚類
(pg/g-wet)
14 4.0 4.8 20 nd 4.2 [1.4] 57/70 12/14
15 nd nd 11 nd 6.6 [2.2] 29/70 8/14
16 tr(1.9) tr(2.1) 460 nd 4.1 [1.4] 50/70 11/14
鳥類
(pg/g-wet)
14 tr(2.1) tr(2.8) 5.2 nd 4.2 [1.4] 7/10 2/2
15 nd nd nd nd 6.6 [2.2] 0/10 0/2
16 nd nd tr(1.5) nd 4.1 [1.4] 1/10 1/2
大気
(pg/m3)
14 11 14 220 0.20 0.12 [0.04] 102/102 34/34
15 温暖期 27 41 240 1.1 0.25 [0.085] 35/35 35/35
15 寒冷期 10 16 65 0.39 34/34 34/34
16 温暖期 23 36 200 0.46 0.23 [0.078] 37/37 37/37
16 寒冷期 11 18 100 0.53 37/37 37/37
 平成14年度 H14.10.15~H14.11.22
 平成15年度 温暖期:H15.8.25~10.11、寒冷期:H15.11.4~12.18
 平成16年度 温暖期:H16.8.30~10.19、寒冷期:H16.11.1~12.13
 
 trans-、cis-ヘプタクロルエポキシドは、全媒体において、平成15年度からモニタリングを開始した。trans-ヘプタクロルエポキシドは、鳥類では検出されていないが、それ以外の媒体ではいくつかの地点で検出されており、残留が認められる。cis-ヘプタクロルエポキシドは、水質、生物及び大気では全地点・全検体から検出され、底質でもほとんどの地点・検体で検出されており、広範な地点で残留が認められる。
trans-ヘプタクロル
エポキシド
実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
15 nd nd 2 nd 2 [0.4] 4/36 4/36
16 nd nd nd nd 0.9 [0.3] 0/38 0/38
底質
(pg/g-dry)
15 nd nd nd nd 9 [3] 0/186 0/62
16 nd nd tr(2.5) nd 4 [2] 1/189 1/63
貝類
(pg/g-wet)
15 nd nd 48 nd 13 [4.4] 5/30 1/6
16 tr(4.0) nd 55 nd 12 [4] 9/31 2/7
魚類
(pg/g-wet)
15 nd nd nd nd 13 [4.4] 0/70 0/14
16 nd nd tr(10) nd 12 [4] 2/70 2/14
鳥類
(pg/g-wet)
15 nd nd nd nd 13 [4.4] 0/10 0/2
16 nd nd nd nd 12 [4] 0/10 0/2
大気
(pg/m3)
15 温暖期 tr(0.036) tr(0.038) 0.30 nd 0.099 [0.033] 18/35 18/35
15 寒冷期 nd nd tr(0.094) nd 3/34 3/34
16 温暖期 nd nd tr(0.38) nd 0.6 [0.2] 4/37 4/37
16 寒冷期 nd nd nd nd 0/37 0/37
cis-ヘプタクロル
エポキシド
実施
年度
幾何
平均値
中央値 最大値 最小値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
15 9.8 11 170 1.2 0.7 [0.2] 36/36 36/36
16 10 10 77 2 2 [0.4] 38/38 38/38
底質
(pg/g-dry)
15 4 3 160 nd 3 [1] 153/186 55/62
16 tr(4.4) tr(3.0) 230 nd 6 [2] 136/189 52/63
貝類
(pg/g-wet)
15 42 29 880 9.7 6.9 [2.3] 30/30 6/6
16 57 34 840 tr(9.8) 9.9 [3.3] 31/31 7/7
魚類
(pg/g-wet)
15 42 43 320 7.0 6.9 [2.3] 70/70 14/14
16 46 49 620 tr(3.3) 9.9 [3.3] 70/70 14/14
鳥類
(pg/g-wet)
15 520 510 770 370 6.9 [2.3] 10/10 2/2
16 270 270 350 190 9.9 [3.3] 10/10 2/2
大気
(pg/m3)
15 温暖期 3.5 3.5 28 0.45 0.015 [0.0048] 35/35 35/35
15 寒冷期 1.3 1.3 6.6 0.49 34/34 34/34
16 温暖期 2.8 2.9 9.7 0.65 0.052 [0.017] 37/37 37/37
16 寒冷期 1.1 1.1 7.0 0.44 37/37 37/37
 平成15年度 温暖期:H15.8.25~10.11、寒冷期:H15.11.4~12.18
 平成16年度 温暖期:H16.8.30~10.19、寒冷期:H16.11.1~12.13
 
 ヘプタクロル類は、POPs条約の対象物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。
 
○ 平成16年度ヘプタクロル類の検出状況 (経年変化図)
ヘプタクロル
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
nd nd nd tr(3) tr(4) 20 29 5 [2] 9/38 9/38
底質
(pg/g-dry)
tr(2.5) tr(2.3) 5.1 8.6 25 44 170 3 [0.9] 134/189 53/63
生物:貝類
(pg/g-wet)
tr(3.5) 5.2 8.9 12 15 16 16 4.1 [1.4] 23/31 6/7
生物:魚類
(pg/g-wet)
tr(1.9) tr(2.1) tr(2.7) tr(3.1) 4.1 5.1 460 4.1 [1.4] 50/70 11/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
nd nd nd nd tr(1.5) tr(1.5) tr(1.5) 4.1 [1.4] 1/10 1/2
大気
(pg/m3)
温暖期 23 36 52 69 78 120 200 0.23 [0.078] 37/37 37/37
寒冷期 11 18 25 35 45 71 100 37/37 37/37
trans-ヘプタクロルエポキシド
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
nd nd nd nd nd nd nd 0.9 [0.3] 0/38 0/38
底質
(pg/g-dry)
nd nd nd nd nd nd tr(2.5) 4 [2] 1/189 1/63
生物:貝類
(pg/g-wet)
tr(4.0) nd 2 10 52 52 55 12 [4] 9/31 2/7
生物:魚類
(pg/g-wet)
nd nd nd nd nd nd tr(10) 12 [4] 2/70 2/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
nd nd nd nd nd nd nd 12 [4] 0/10 0/2
大気
(pg/m3)
温暖期 nd nd nd nd tr(0.21) tr(0.34) tr(0.38) 0.6 [0.2] 4/37 4/37
寒冷期 nd nd nd nd nd nd nd 0/37 0/37
cis-ヘプタクロルエポキシド
媒体
()内は単位
幾何
平均値
中央値 70%値 80%値 90%値 95%値 最大値 定量[検出]
下限値
  検出頻度
検体 地点
水質
(pg/L)
10 10 20 32 61 72 77 2 [0.4] 38/38 38/38
底質
(pg/g-dry)
tr(4.4) tr(3.0) 7 12 58 76 230 6 [2] 136/189 52/63
生物:貝類
(pg/g-wet)
57 34 120 420 690 790 840 9.9 [3.3] 31/31 7/7
生物:魚類
(pg/g-wet)
46 49 71 110 300 400 620 9.9 [3.3] 70/70 14/14
生物:鳥類
(pg/g-wet)
270 270 320 320 350 350 350 9.9 [3.3] 10/10 2/2
大気
(pg/m3)
温暖期 2.8 2.9 3.9 5.3 6.8 9.1 9.7 0.052 [0.017] 37/37 37/37
寒冷期 1.1 1.1 1.6 1.8 2.1 3.9 7.0 37/37 37/37
 
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