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化学物質と環境円卓会議 関西地域フォーラム議事録

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■日時:平成14年4月19日(金)14:00~17:00
■場所:琵琶湖研究所2階ホール
■出席者:(敬称略)
<ゲストスピーカー>
  中地 重晴 びわ湖リスクコミュニケーションネットワーク副代表理事
  中村 満 NPO湖南環境理事長
  梶間 加弘 三菱樹脂株式会社 長浜工場環境安全部長
  堀野 明 日本電気硝子株式会社 環境管理部
  深田 冨美男 滋賀県琵琶湖環境部環境政策課
  木村 康二 滋賀県琵琶湖研究所
  加賀爪 敏明 滋賀県立衛生環境センター
  <学識経験者>
  北野 大 淑徳大学国際コミュニケーション学部 教授
  <市民>
  有田 芳子 全国消費者団体連絡会 事務局
  崎田 裕子 ジャーナリスト、環境カウンセラー
  角田 季美枝 バルディーズ研究会 運営委員
  中下 裕子 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 事務局長
  村田 幸雄 (財)世界自然保護基金ジャパン シニア・オフィサー
  <産業界>
  出光 保夫 日本石鹸洗剤工業会環境保全委員長
  河内 哲 日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員長(代理 岩本 公宏)
  瀬田 重敏 (社)日本化学工業協会広報委員長
  田中 康夫 日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員
  橋本 伸太郎 日本電機工業会環境政策委員会委員長(代理 倉水 勝)
  <行政>
  岩尾 總一郎 環境省 総合環境政策局環境保健部長
  大森 昭彦 農林水産省 大臣官房技術総括審議官(代理 黒木 弘盛)
  片桐 佳典 神奈川県環境科学センター 所長
  鶴田 康則 厚生労働省 大臣官房審議官(代理 吉田 淳)
  増田 優 経済産業省 製造産業局次長
   (欠席)  原科幸彦 東京工業大学 工学部教授
 安井 至 東京大学 生産技術研究所教授
 後藤敏彦 環境監査研究会 代表幹事
 山元重基 日本生活協同組合連合会 環境事業推進室長
 仲村 巖 (社)日本自動車工業会 環境委員会副委員長
 小林珠江 日本チェーンストアー協会 環境問題小委員会委員
  司会(事務局)   安達一彦 環境省 総合環境政策局環境保健部環境安全課長
■資料:
○ゲストが使用した資料
中地資料 滋賀県における有害化学物質問題とNGOの取り組み [PDF(759KB)]
中村資料 特定非営利活動法人 NPO湖南環境 [PDF(2,664KB)]
梶間資料 三菱樹脂の環境保全活動 [PDF(5,465KB)]
堀野資料 化学物質と環境に関する取組 [PDF(565KB)]
深田資料 [PDF(106KB)]
木村資料 [PDF(155KB)]


■発言要旨

(1)開会
北野 :開会挨拶

(2)化学物質と環境円卓会議の紹介
安達 :化学物質は生活や産業に欠かせないものである一方、環境を汚染してきた経緯がある。また、近年環境ホルモンやダイオキシン類など新たなタイプの問題が提起されており、、化学物質の環境リスクに対する国民の不安が高まっている。そこで、市民・産業界・行政が情報を共有し、相互理解を促進する場として円卓会議を設置した。これまでに円卓会議を2回開催して各委員の考え方を共有し、リスクコミュニケーションについて議論を行った。また、関東地域フォーラムを3月に1回開催するとともに、インターネットや地域フォーラムによって国民の意見・要望を収集しているところであり、これらを踏まえて円卓会議で議論し、得られた共通認識を発信していく予定である。

(円卓会議メンバー紹介)

(3)滋賀県における市民・産業・行政の化学物質と環境に関する取り組みの発表
北野 :本日の進行をつとめます。さっそく議題3に入ります。
中地 :(資料にしたがって説明)
びわ湖リスクコミュニケーションネットワークは、高校同級生の呼びかけで設立された異業種交流の場となっており、2001年にNPO法人化した。テーマを環境問題とリスクコミュニケーションとしている。
滋賀県における化学物質問題として、水上バイク問題とMTBE(メチルターシャルブチルエーテル)添加ハイオクガソリンの問題がある。水上バイクによりトルエン、キシレンのようなVOC(揮発性有機化合物)が排出され、水質の汚濁につながっている。また、燃料にMTBEが添加されたハイオクガソリンが使用され、MTBEは石油業界が自主規制して2001年度末に生産が中止されたが、このような未規制物質への環境影響についてどのように調査するかなどのルール作りが課題といえる。
また、栗東市の産業廃棄物安定型処分場で高濃度の硫化水素が発生したが、不適正処理の実態把握が不十分な状況である。本件では、問題解決のために法的手段によらずに住民と県(または市)が協議して進めていることが特徴的である。課題として、協議に事業者も含めること、県と市の調査委員会を一本化して総合的な対策をとること、円滑なリスクコミュニケーションの実施が必要と思う。
有田 :栗東市で協議を行うにあたって住民と行政の間に立っているのは誰か。
中地 :栗東市の協議ではファシリテータは入っておらず、報告や意見などを市民と行政が直接行っている。
片桐 :栗東市の協議に事業者は入っていないのか。
中地 :事業者と行政は話し合っている。住民は事業者に対して調停申し込みを行ったが埒があかなかった。事業者も含めた協議が課題である。
北野 :次の方に移ります。
中村 :(資料にしたがって説明)
NPO湖南環境では、環境保全の知識と経験のネットワークを活かし、地域社会に貢献することを目指している。企業を退職した技術者集団の組織であり、企業・行政・地域のパートナーシップを促進する考えである。具体的には、ISO14001認証取得推進支援を行っており、講師を派遣したり、10日間の研修会の実施、コンサルタント業務を行っている。甲賀流域環境保全行動計画作成の支援では、住民・事業所のアンケート調査をベースとした行動計画を策定した。また、湖南・甲賀ミニ湖沼会議を開催するなどの活動を行っている。
岩本 :NPOは中立と思われるが、企業退職者の集まりであるがファシリテータなどとしてどのように受け止められているか。
中村 :地域に加わるようにしている。企業代表ではないという立場である。
角田 :中小企業の化学物質管理、リスクコミュニケーションに対してどのようにアドバイスしているか。
中村 :中小企業のISO14001はまだこれからである。PRTRは大企業でも難しく、中小企業ではまだ対応できない。
北野 :次、梶間さんからお願いします。
梶間 :三菱樹脂では国内に5工場あり、塩ビ製品製造などを行っている。1970年代には公害問題への対応、その後環境管理体制の確立、環境経営を図ってきた。ISO14001認証を各工場で取得し、産業廃棄物の埋立処分を大幅に削減しており、長浜・浅井工場では2001年にゼロエミッションを達成した。PRTR法に対応して「三菱樹脂化学物質評価基準」を策定し、化学物質を「禁止」「削減」「管理」の3段階に分けて取扱いを管理している。また、「三菱樹脂環境保全基準」で化学物質の排出に関する自主的な基準を作り厳しく管理している。環境保全への取り組みについてインターネットで公表しており、環境報告書は全社版と工場サイト版を発行してコミュニケーションを図っている。社内向けとして環境ISOニュースを発行している。
崎田 :実際にはどのように市民とのコミュニケーションをとっているか。
梶間 :4つの方法がある。1つは、小学生に対して長浜市の環境教育では年に1時間だけ時間をもらって説明している。2つ目、環境フェアを2年に1度工場内で2日間開催している。3つ目に環境報告書のサイトレポートがある。4つ目、工場入り口に環境発信展示場が設けられており、いつでも市民が入れるようにしている。
崎田 :参加人数はどれくらいか。
梶間 :環境発信展示場については把握していない。環境フェアは、市民が150人、企業250人であった。
有田 :埋立処分しているものは何か。
梶間 :廃プラスチックがあった。また、陶器類など毎月200トン埋め立てていた。
北野 :次、堀野さんからお願いします。
堀野 :日本電気硝子は大津市に本社があり、液晶ディスプレイ用ガラス、超耐熱ガラス等の特殊ガラスを生産している。ガラスは地球に近い組成と類似した成分からなる。化学物質については、大きく原料管理と廃棄物管理がある。鉛ガラスの無鉛化の研究開発、高温による化学物質の飛散防止、埋立処分量の削減などを行っている。原料には10種類以上用いている。工程のダストは電気集じん機で回収される。また、工程中に発生するガラスカレット、研磨スラッジなどはすべて原料へリサイクルするようにした。また、高品質のガラスについてガラスの設計段階で化学物質の管理を考慮している。
岩本 :酸素燃焼方式は安全上難しいと思われるが、どう対応しているか。分かりやすく説明してほしい。
堀野 :当社は空気中の酸素を回収して使用している。
北野 :塩素系溶剤はどのように代替したか。
堀野 :以前、松脂で接着していて固めていたものを塩素系溶剤で溶解していたが、接着剤を水溶性にものにして塩素系溶剤を削減した。
北野 :次、深田さんお願いします。
深田 :滋賀県の県境と琵琶湖の集水域がほぼ一致していること、約1400万人の広範囲に水を供給しているという特徴がある。
琵琶湖での化学物質問題については、1950年代には農薬により琵琶湖沿岸や河川で魚類の大量死が発生し、農家が農薬の使用を自粛する運動を行った。1960年代の経済発展の時代にはPCB汚染が発生した。PCBは真空ポンプで引くときにガス中にPCBが含まれて排出されていた。化学物質は廃棄するだけでなく、使用するだけでリスクが発生することが分かる。また、有害物質について取扱い施設は設置許可制としている。1970年代以降、人間の生活そのものが環境に負荷を与えるということが明らかになってきた。滋賀県で始まった石鹸使用運動は、富栄養化防止条例策定に至り、全国レベルで環境問題解決に影響を与えた。1990年代にはダイオキシン、環境ホルモンなど各主体が集まって行動する環境自治の時代になった。
角田 :有害物質取扱い施設設置許可制度実施後、県外に出て行った企業などなかったか。
深田 :琵琶湖を守るために、事業者の協力が得られた。規制が厳しいことによって他県より競争力が劣るが、行政とも一緒に取り組もうとしている。
村田 :どのようなリスクコミュニケーションの場を想定しているか。
深田 :具体的にはない。リスクコミュニケーションあり方検討会が設置されており、一定の結論が出た後それを受けて、県民の意見を取り入れてどう指導するか、2002年度に実施する。
崎田 :滋賀県は、環境教育と普及啓発によく取り組んでいる。どのような考えによるものか。
深田 :琵琶湖について特徴的な取り組みとして、小学校の2クラス以上が組んで、琵琶湖について学ぶことにしている。多くのNGOが取り組んでいるが、連携して提言できればいいと思う。住民との接点を持って事業を進める姿勢が必要である。
瀬田 :雨水が最終的に琵琶湖に入るとき、その水のきれいさの維持、例えば健全な山林の維持、土壌の混入防止、農地からの濁りの流入防止等の地域努力についてどう評価するか。
深田 :山から里山を通じて流れ込むため、流域全体の管理をみんながどう考えて取り組むかが重要で、マザーレイク琵琶湖をスローガンに掲げてから取り組んでいる。
北野 :次、木村さんお願いします。
木村 :1980年代から喘息患者が増えている。また、喘息にかかってから治るまでが長期化しており、免疫力が低下していると思う。化学物質に関するアンケートでは、市民の不安に思う事項が見えてきた。例えば、化学物質について直接口に入れるものへの不安感を示す人が多い。安全基準以下であっても化学物質による複合汚染へ配慮することが必要という意見が67%と多い。住民参加のあり方について、十分な情報公開と説明が求められており、住民の問い合わせに応じる窓口となる住民支援センターなどの設置を望む意見が多く、住民本位の参加のあり方が求められている。家族に何らかのアレルギー性疾患をもつ人がいる世帯が全体の6割を占めた。琵琶湖研究所では調査研究の中で、自発性、予防原則、環境自治がキーワードとしてあがってきた。野洲川流域では「自分のまちの化学物質研究会」を設置し、自分の住む町をフィールドとして身の回りの化学物質の現状と問題点を見つけだし、解決方法を一緒に考え判断し実行する活動をすることを特徴としている。
岩本 :住民は生活レベルが落ちてもいいか聞いてはどうか。自分は物があふれていていいものかと思っている。
木村 :類似の質問を行っている。安全性に関するチェックを行いながら慎重に開発をしてほしいという回答がもっとも多く、51.7%であった。化学物質を使わないわけにはいかないという認識がある。一方、化学物質を使わないライフスタイルを確立すべきという回答も38.7%と多いのも事実である。
瀬田 :円卓会議メンバーの一人である安井さんも同様の調査を行った。それによれば、一般の人と医者とでは、化学物質に対する不安に思う回答パターンが異なっている。アンケートでは回答者の多様性を踏まえないといけないと思う。
北野 :アンケートの見方にはいろいろあると思う。
有田 :アンケートは3000人を対象に、回答率60%ということから、結果は平均的な回答であると思われる。質問として、予防原則の定義についてどう考えているか。
木村 :(資料から読み上げ)ある活動が人間の健康や自然環境に対して害を及ぼす危険性が危惧される段階で科学的に因果関係が証明されていない場合であっても予防的手段を講じるべきとする原則のことである。
崎田 :野洲川のNGO活動は参加者66人の内訳はどうか。
木村 :野州川流域の住民が8割で、そのほか京都の人などが参加している。参加者はいずれも個人とし参加し、50-60歳代が多い。

(休憩)

北野 :前半で残った質問があったらどうぞ。
岩尾 :化学物質を開発するときに、どれくらいの確率で製品化されるのか。
岩本 :農薬では1/1000くらいと思われる。これまでの歴史で代替品を開発してもそれが新たな有害性が判明することがあり、開発しても商業規模にいたる確率は低い。
瀬田 :一般化学品では、既存化学品をモディファイする場合に20~30%くらいの確率もあり得るが、新規化学物質では安全や環境面での評価を行い、1/100を相当下回る。
北野 :議題の4にはいる。円卓会議への要望や意見があるか。
木村 :4点ある。1点目、化学物質については、その健康被害は大きな要素である。カネミ油症など重大な経験を今後に活用するべきである。被害の未然防止、拡大防止、救済の観点からの見直しをしてほしい。2点目に、被害者は多くおり、社会全体でどう救済するか、予算措置や協力体制について検討することが望まれる。3点目、規制のあり方について、次世代を守る観点で今何をすべきかを考え、環境基準等を検討する必要がある。4点目、リスクコミュニケーションのあり方について、各個人がどう行動すべきか、見直すための議論を深めることが必要。地域レベルでも進め、人のせいにするのはやめたほうがいいと思う。
北野 :負の遺産から学ぶこと、一人の人間としてどうかかわるか考えることなどが提案された。他に。
中地 :3点ある。1点目、政策等に地方の意見を反映してほしい。2点目、化学物質の削減・管理のルール作りが求められる。3点目、この会議の目的とは異なるかもしれないが、低レベルの放射性廃棄物を一般廃棄物と一緒に扱う考えがあるが、議論してほしい。
堀野 :安全性に案する調査研究を早く行ってほしい。対策を取るにも資金面での限界がある。効率的に対策をとるために、何が危険で優先順位はどうであるかがわかれば、対応が取れることがある。
梶間 :PRTRに係る物質を13項目使用しているが、当初無害であったものが有害になったりする。市販される前の調査を充実し、調査方法を確立することを考えてほしい。また、小学校を訪問するが、小学校では公害の結果は教えても化学物質について学習機会がない。法律の解釈なども含めて簡単に教えられるように考えてほしい。
中村 :今後もパートナーシップを図って、展開したい。企業はNPOに対する理解が不足している。理解と支援が求められる。
北野 :市民活動への支援、社会がどう考えるべきかについて提案をもらった。
深田 :各個人とも立場はさまざまで化学物質への認識も異なる。まずは、情報を伝えることが必要で、一般の人に化学物質は分かりにくいため分かりやすく伝えるシステムが必要と思う。その意味でマスメディアの役割を議論してほしい。
出光 :化学製品から環境負荷が生じるが、一方、日本の下水道普及率は60%程度であり、それは行政の責任といえる。それぞれの役割を認識し、互いに理解するよう話し合うことが重要である。

北野 :会場からの質問用紙にしたがってできるだけ多く回答したい。
木村 :野洲川の取り組みについて参加者が正確な知識を得ていないと偏りがちになると思う、専門家の意見を取り入れているか、という意見をいただいた。4月20日に専門家を交えてシンポジウムを開催するなど活動している。専門家から学ぶことばかりが学習ではなく、被害者から実際の事例から学ぶべきことも多い。企業や行政への働きかけについては、今後の課題としており、批判・要望するばかりではなく、いいところを見つけていくことが重要である。
深田 :滋賀県内でのPCB管理、処理の進展状況、処理量、いつまで行うかという質問をもらっている。担当ではないので詳しいことは知りえていないが、保管義務が県にあることは知っている。しかし、処理の見通しがなく当分は保管状態が続くと思われる。
堀野 :研磨スラッジのリサイクルについて質問をもらった。研磨スラッジは、酸化アルミと鉄が主な成分で、有害物質が入っていない場合はセメント原料とする。セメント原料にできない場合には、埋立を行う。
梶野 :ゼロエミッションの定義について質問をもらった。当社では、塩化ビニルの廃棄物処理が問題になるが、その60%は食塩である。塩化ビニルは優れた製品であり、リサイクルがしやすい素材である。リサイクルできないものは電気炉で処理を行う。
中村 :持続可能性についてどのような見解かと質問がきている。ISO14001は継続的改善を行うものである。滋賀県では、県が取得し家庭版14001を提唱するなどチャレンジしている。
中地 :リスクコミュニケーションに必要なものは何か質問がきている。所属する会として統一された見解はないが、公害調停が有効な場合があるが、それより小さいことを積み重ねることが重要。常設の公的機関でリスクコミュニケーションを醸成することが必要であると思う。
加賀爪:滋賀県は琵琶湖があるが、地域住民が共有できるシンボルが必要と思われるか、という質問がきている。関西では瀬戸内海がある。問題を共有化して解決していく小さい積み重ねが大きな力になると思う。
片桐 :化学物質について責任はどこになるのか、市民は何も知らされていない、という意見をもらった。それぞれの責任があるが、例えば、汚染の除去には行政がリーダーシップをとることになる。どの時点で情報交換するかも重要である。そのタイミングは早い段階で情報開示されればいいとされる。行政は、研究機関から情報収集し、早い段階で情報提供することが役割と思う。
有田 :同様の質問がきている。行政訴訟などの検討を行う中で、行政に情報が少ないため行政訴訟が少ないという話がある。行政は、情報提供するとともに市民の調査活動を調整していく取り組みが求められる。予防原則のシステムをどうするか議論しければ進展しないと思われる。
田中 :滋賀県での石鹸化市民運動などの成功例に学んでいくことが重要だと思う。
村田 :製品を生産、使用したあとで危険だといわれて困るのは市民も同じである。予防原則関係について円卓会議で議論すべきテーマだと思う。
黒木 :有機農作物の認証について、周辺農家が農薬を使用しているために認証されないので改善してほしいという意見があるようである。要望を持ち帰りたい。
瀬田 :関西フォーラムに参加するに先立って、旭化成ではたまたま守山に工場があるので、水質維持に関し、どのように取り組んでいるか見てきた。更に、その水が住宅地を通り、農地を通り琵琶湖に入るところ、そしてその琵琶湖の周囲を一部ではあるが、自分の眼で見ながらここにやって来た。先程からの地域の方々のプレゼンテーションをより理解できたと思う。円卓会議メンバーも折角地域に来たのだから現地の対環境文化や努力の様子を自分の眼で見てから議論するとよいのではないか。
安達 :PRTR法での1tでの裾切りは、妥当かという質問がきている。PRTR制度の目的を達成するために検討してきた中で、また、これまでパイロット事業を通じて事業者の負担等も考慮して裾切りを決めてきたものである。その他、次の意見や質問があった。
  • リスクコミュニケーションの進め方のルールつくり
  • 企業が使っている物質の標準品の提供が求められる。
  • 母乳やおもちゃに含まれる化学物質による影響、生態系への影響について調査を求める。
  • 研究者を円卓会議メンバーに加えるべきではないかという意見がある。
  • 埋立中止について、議論が求められている。
  • 飲み水の安全性について
  • 市民の化学物質管理について
  • 教育、コミュニケーション基準つくりについて
  • 農業、林業などの原点(生産量の確保と産業としての保全)について

北野 :本日の会議では、パートナーシップが重要であることがわかった。教育や役割分担をどうするか、リスクコミュニケーションを大げさなものにせず、小さい対策を積み重ねることが必要である。
関西地域フォーラムを閉会する。

(以上)



■議事録

1.開会

(司会) 時間がまいりましたので、ただいまから「化学物質と環境円卓会議 関西地域フォーラム」を開催させていただきます。
 私は本日の司会・進行を務めます淑徳大学の北野でございます。今日は休憩をはさんで3時間、5時までを予定しており、長丁場ですがどうぞご協力をお願いいたします。なお、この場のルールとしてすべての方を「さん」で呼ぶことになっておりますので、○○さんと呼ばせていただきます。
 まず、資料の確認をしたいと思います。「化学物質と環境円卓会議」の事務局の環境省から、確認をお願いいたします。

(事務局) それでは、資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第ですがA4の1枚紙でお配りしております。それに続いてこの関西地域フォーラムのメンバー紹介、今回出席されますゲストの方、円卓会議のメンバーの方をご紹介した資料です。加えて、スピーカー資料という、とじてあるものです。これは、本日6名のスピーカーに来ていただき、ご講演をしていただきますが、発表の際にお使いになるOHP等をとじたものです。
 それから、参考資料として「化学物質と環境円卓会議」のパンフレット、これは、目的や構成メンバーの方のご経歴等を書いたものです。そして、座席表、どの方がご発表されているのかをご確認いただけるようにお配りしております。それから、第3回会議のお知らせがあります。もし不足等ありましたら、ご連絡いただければと思います。
 なお、最後に1枚紙で「ご意見・ご質問をお聞かせください」というのをお配りしております。後程趣旨等の説明をさせていただきますが、この円卓会議で今後議論してほしいご要望事項、あるいは今回の講演等に対するご質問などを記入していただくためにお配りしております。休憩時間に回収し、その後、議論あるいは質疑の時間にご紹介させていただきたいと思っておりますので、ぜひ、ご意見、ご要望、ご質問がありましたらご記入いただければと思います。1枚で足りない場合は事務局にお申し出いただければ追加の紙をご用意させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(司会) ありがとうございました。資料はよろしいでしょうか。
 では、続きまして「化学物質と環境円卓会議」と本日のフォーラムについて、事務局の環境省からご説明いただくことにします。お願いします。

(事務局) 本日はお忙しい中をお集まりいただきましてまことにありがとうございます。事務局を務めさせていただいております環境省環境安全課長の安達でございます。最初にこの円卓会議の趣旨につきまして、ごく簡単にご説明させていただきます。

2.化学物質と環境円卓会議の紹介

(事務局) 今日、私たちの身の回りには、プラスチック、合成洗剤、殺虫剤、電気製品といった多くの製品が存在しておりますが、これらにはさまざまな化学物質が使用されており、その点から申し上げますと、化学物質は私たちの生活を豊かにし、生活の質の維持・向上に欠かせないものとなっております。
 しかし、一方では、こういった化学物質はものの製造・使用・廃棄の各段階、あるいは日常生活のさまざまな場面を通じ、環境を汚染し人の健康や生態系に有害な影響をもたらすこともあります。ことに近年では、内分泌かく乱化学物質、いわゆる環境ホルモンと呼ばれているものですが、そういった新しいタイプの問題も提起されており、化学物質の環境リスクに対する国民の方々の不安は大きなものになっております。
 こうした化学物質と環境の問題に対処するためには、社会の構成員であります市民と産業界と行政が情報を共有し、可能なかぎり共通の認識に立って環境リスクの低減のためにともに行動していくことが重要であると考えます。このため、市民・産業・行政という立場の異なる方々が円卓を囲んで対話し、化学物質の環境リスクに関する情報の共有および相互理解を促進する場といたしまして、昨年12月にこの「化学物質と環境円卓会議」が設置されました。
 「化学物質と環境円卓会議」では、インターネットの活用や、今回行っておりますような地域フォーラムの開催により、国民各界の意見や要望を集め、これらを踏まえた対話を通じて、環境リスク低減に関する情報の共有と相互理解を深め、会議での議論やそこで得られた共通認識を市民・産業・行政に発信していくことにしております。
 これまで、すでに2回の円卓会議が開催され、参加メンバーの意見表明、あるいはリスク・コミュニケーション手法の説明などが行われました。また、先月は、横浜で関東地域フォーラムも開催されております。
 この円卓会議では、運用面におきましても従来の役所が開く会議とは全く違った手法を取っております。化学物質と環境問題のうち、この円卓会議において何を取り上げどう議論していくかということも会議メンバーで決定することから始まるという新しいかたちの会議であると考えております。
 このような円卓会議で議論するテーマの選定にあたりましては、まず、地域での取り組みや意見・要望を集約することも必要です。そのため、先程申し上げましたように関東地域フォーラムを開催し、神奈川県において地元で活動している市民・産業・行政の方々を交えた意見交換も行ったところです。
 今回の関西地域フォーラムにおきましても、「化学物質と環境円卓会議」で何を議論すべきか、地域の実状はどうなっているかといったことについてご意見をいただきたいと考えております。このフォーラムを通じましてさまざまな意見が出されるかと思いますが、それらをもとに、今後、円卓会議において活発な議論がなされ、ゆくゆくは化学物質にかかわる環境リスク・コミュニケーションの促進、ひいては安全と安心な暮らしの実現に貢献されることを期待しております。
 最後になりましたが、今回の関西地域フォーラムの開催にあたりましては、滋賀県および琵琶湖研究所の皆様方に大変お世話になったことを、この場を借りまして御礼申し上げます。
 引き続きまして、この円卓会議のメンバーの方々のご紹介をさせていただきたいと思います。参考資料ということで、「化学物質と環境円卓会議」という絵を書いた資料が封筒の中に入っているかと思いますが、そこにメンバーの方々の簡単なプロフィールを紹介してありますので、それに基づきましてご紹介させていただきます。
 まず、全国消費者団体連絡会事務局の有田芳子さんです。環境監査研究会代表幹事の後藤さんは、おみえになる予定ですが、少し遅れておられるようです。ジャーナリストの崎田裕子さんです。バルディーズ研究会の角田さんです。ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の中下さんは本日ご欠席です。
 続きまして、(財)世界自然保護基金ジャパンの村田さんです。日本生活協同組合連合会の山元さんはご欠席です。続きまして、日本石鹸洗剤工業会の出光さんです。河内さんの代理で、同じく日本レスポンシブルケア協議会の岩本さんです。(社)日本化学工業協会の瀬田さんです。日本レスポンシブルケア協議会の田中さんです。仲村さんについてはご欠席でございます。橋本さんの代理で、日本電機工業会の倉水さんです。小林さんにつきましてはご欠席でございます。
 続いて、環境省の岩尾さんです。大森さんの代理で、近畿農政局の黒木さんです。神奈川県環境科学センターの片桐さんです。鶴田さんの代理で、厚生労働省の吉田さんです。経済産業省の増田さんです。北野さんはご案内のとおりで、原科さんと安井さんについてはご欠席でございます。
 本日は、ゲストスピーカーとして、地域のNGOあるいは企業、行政の方々にご出席いただいております。お名前だけご紹介させていただきます。まず、中地さんです。中村さんです。梶間さんです。堀野さんです。深田さんです。木村さんです。加賀爪さんです。どうぞよろしくお願いいたします。

3.滋賀県における市民・産業・行政の化学物質と環境に関する取り組みの発表

(司会) それでは、議題3に早速入りたいと思います。滋賀県の市民・産業・行政の方々から、化学物質と環境に関する取り組みについてそれぞれお話しいただくことになっております。本日は6名の方からお話しいただきますが、スケジュールとしては10分間ご講演いただき、そのあと、お話についてより内容を明確にするといった5分間の質問を予定しております。
 1時間半ほどかかるかと思いますが、ここは学会ではありませんので、鈴を鳴らすなど失礼なことはしませんので、それぞれスピーカーの方が自主管理ということで10分間を守っていただければと思っております。
 では、最初に、びわ湖リスクコミュニケーションネットワークの中地さんにお願いいたします。

<NGOの取り組み>


(中地) 皆さん、こんにちは。びわ湖リスクコミュニケーションネットワークの中地と申します。
(以下OHP併用)

 今日は、滋賀県における有害化学物質問題とNGOの取り組みということでお話しさせていただきますが、私は今年で46歳になりますが、リスクコミュニケーションネットワークというのは、ここの近くにありますが、膳所高校の同級生20人ぐらいでやっております。高校を出て20年、あるいは25年たって、少し社会に貢献するようなことをしようということで、いろいろな職業の人が集まって異業種交流のような場でやっております。
 あとでお話ししますが、私は環境問題の調査をやっております。弁護士や税理士、プロのカメラマン、商社、化学関係の製造業の人なども入った場で、1999年の11月に発足し、2000年12月にNPO法人を取得しました。年に1回ぐらいですが、不定期に学習会や交流会を開催しておりますほか、滋賀県立大学や滋賀大学の環境問題をやっている学生さんとも交流会をして、主に環境問題やリスクコミュニケーションについて話ができたらということでやってきております。
 この会は自然発生的というか、例えば、自分の家のすぐそばにごみの処分場ができて反対運動をしなければいけないというような必然性にかられた会ではありませんので、リスクコミュニケーションということをテーマにしても、実践的な活動というのはこれからの課題だと思っております。

 私どもの普段の仕事は、市民のための調査ということでやってきております。1988年3月に設立しまして、今日の「朝日新聞」の朝刊に出ていましたが、第3回「明日への環境賞」をいただくことになりました。滋賀県の環境生協と同時に受賞ということになっております。

 市民の依頼に応じて必要な分析をやったり、環境教育を行ったり、相談に応じるというようなことでこの間、活動をしてきております。

 「化学物質と環境円卓会議」の関西地域フォーラムとお聞きしましたので、関西におけるいろいろな化学物質の問題について挙げるべきだと思ったのですが、依頼状を見ますと「滋賀県における」という話でしたので、重要な問題だということでお話ししておかなければいけないことを挙げました。
 私も委員としていろいろとかかわっているのですが、大阪府豊能郡美化センターのダイオキシン汚染問題があります。汚染土壌と、焼却炉を解体したあと出てきた高濃度の汚染物の保管や処理ということが環境庁時代に3回ほど住民説明会が行われましたが、今のところ処理方法が確定していません。公害調停が成立して2年たち、対策協議会というかたちで話し合われておりますが、なかなか前に進んでいないという状況です。
 2つ目、和歌山県の橋本市において、日本工業所という産廃の業者ですが、小型の焼却炉の中間の処理施設だったわけですが、ダイオキシン汚染が発覚し、ダイオキシン対策特別措置法による地域指定を今回申請して、本格的に汚染土壌処理をすることになっております。来月、5月8日には地域指定にかかる公聴会も開かれる予定で、日本で2番目らしいのですが、地域指定を受けるということでは重要な問題だと思っています。
 3つ目、大阪市が受け入れを表明されましたが、PCB処理法に基づいて保管している関西地域のPCBをどう処理するのかということで、施設の建設計画などについてもこれからということになっております。このあともご報告があると思いますが、滋賀県の場合、過去にPCBの汚染土壌が環境汚染を起こしており、その処理もあわせて議論する必要があるのではないかと思っております。

 私がこの1~2年の間にかかわりました滋賀県の問題についてお話しします。1つ目は水上バイク問題とMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)ということで、1990年代前半から、琵琶湖、淀川河口、長良川等で水上バイクの走行というのが問題になっております。
 当初、騒音や遊泳者との事故ということで、昨年も死亡事故が起き、そういうことが問題だったのですが、環境問題として、水上バイクの燃料であるハイオクガソリンの中のVOC(揮発性有機化合物)、トルエン、キシレン、ベンゼンといったものが排出されるとか、あるいは、MTBEが数%含まれているということが問題になっております。
 アメリカでは、ガソリンスタンドのタンクが地下にありますが、その周辺の井戸の汚染からMTBEの規制がEPA等で取り組まれかけたということがあり、日本ではいち早くそういった動きを察知した石油業界の方が自主規制ということで、昨年度末でMTBEの入ったハイオクガソリンは使われなくなりました。そういう意味では、未然に、環境汚染が広がる前に終わった問題かもしれません。

 去年の6月、水上バイクが走行したときに、滋賀県の市民グループの人たちと一緒に採水して測定した結果ですが、彦根と能登川町と大津市に水上バイクの遊泳池があって、水上バイクが走る前は不検出か1.6μg/lと低いのですが、走行したあとは9.4や12ということで高くなっています。
 カリフォルニア州では、水道水質の基準として13μg/lというのが規制値としてありますし、水域の基準でいうと5μg/lという規制値が存在していますが、それと同じぐらい琵琶湖の水中に含まれるということがわかりました。

 これは1999年の写真です。新海浜という彦根市の海水浴場です。皆さんが遊んでいる中へ水上バイクが走っているところがわかるかと思います。

 MTBEの問題で教訓として考えなければいけないことは3つあると思います。1つは、水上バイクの問題としては、VOCガスあるいはベンツピレンなどが構造的に湖水に排出されてしまう、その汚染問題という意味でいいますと、水道原水として琵琶湖の水を使う以上やはり問題ではないかと思っております。
 もう1つは、この問題があったとき、利用者の側がレジャーとしてかなりいいかげんなことをしている、マナーが悪いというようなことがわかってきましたから、その辺は改善すべきではないか。あるいは、条例等で一定の規制というようなことも考えるべきではないかと思っております。
 MTBEが残した問題としては、未規制の化学物質への環境影響をどのように調べるのか、あるいは、外国では規制等があっても、それについて、日本ではどのようにルールを作ってスクリーニングを含めてやっていくのかというあたりが今後の課題だろうと思っております。

 あとは、滋賀県における化学物質問題として、栗東市のRDエンジニアリングという安定型最終処分場の問題があると思います。もともとは、1999年10月、あるいはその翌年、硫化水素が2万2000ppmという高濃度で出たというところから全国的な問題になってきたわけですが、昨年、滋賀県がボーリング調査等をされ、これから対策に向かうというところです。

 RD処分場ですが、ところどころに水がたまっていたり、非常に黒っぽくて有機物がたくさん捨てられていたりというようなことがわかるかと思います。県の方で調査をされましたが、硫化水素の原因は究明できなかったということがあります。

 実態把握がまだまだ不十分ではないかと私は思っております。業者が無許可で処分場内を掘削し、粘土層を突き破って廃棄物を投棄したことが地下水汚染の原因だと思うのですが、今後それをどのように修復していくのか、環境保全策をどのようにしていくのかが問題になるだろうと思っております。

 RDの問題を中心に、問題解決のために必要なこととして、今回の栗東市の処分場の問題は、訴訟や公害調停などの法的手段を取らず、住民と県、あるいは住民と栗東市との間で協議が進められているというのが特徴だろうと思います。そういう意味ではリスクコミュニケーションというのかもしれませんが、課題としては、業者も入れたかたちで、業者、住民、県あるいは市による協議ができるのかということが1つあります。
 もう1つは、滋賀県と栗東市が分担して調査委員会などを作られているのですが、最終的に総合的な対策や解決案を考える場合には、一本化して調査するなりして報告をまとめないといけないのではないかと思っております。解決を図っていくうえで、住民と県、市の円滑なリスクコミュニケーションが図られるかというのがこれからの課題だろうと思っております。
 最後にこれからのリスクコミュニケーションとの関係でいいますと、滋賀県というのはまだまだこの問題への取り組みが遅れているのではないかということがあります。端的な事例でいいますと、滋賀県のある研究所の職員の人たちが月に1回外部からスピーカーを呼んで学習会を催されていて、去年、そこに私が招待されたのですが、栗東のRDの問題で住民の味方をしているということがわかり、そんなやつはけしからんというので幹部の方が呼ぶなと言われて断られたという経過があります。
 せっかくこういった円卓会議の事務局等を運営されている滋賀県ですが、組織としてはまだまだリスクコミュニケーションに関して理解されていないのではないかと思っております。

(司会) どうもありがとうございました。
 今、中地さんから2つの提案があったと思いますが、1つは琵琶湖水中のMTBEに伴う汚染の問題で、未規制の化学物質をこれからどのように規制していくか。それから、ごみの処分地の話に関連して、規制ではなく協議をして行う、そうするとリスクコミュニケーションが非常に大事であるということで、5分ほど時間を取ってありますので、メンバーの方から、今の中地さんのご講演に対して質問がありましたら、議論はまた後程したいと思いますので。
 では有田さん、どうぞ。

(有田) ありがとうございました。1つは、資料の7ページに「問題解決のために必要なこと」と書いてあり、訴訟や公害調停などによらずに、ということですが、そのときには間に立つ方がいらっしゃるのかどうか。どういう方が間に立っていらっしゃるのか。
 それと、5ページ、今後の課題として2に「マナーの改善」と書いてあるのですが、これについて、例えば、「どう調査するのか」「ルール作り」とも書かれているのですが、もし何かすでにお考えがありましたら、きっと何かお考えがあるだろうと思っているので、お聞かせいただければと思うのですが、よろしくお願いいたします。

(中地) まず、栗東市のRDの方は、今のところ、住民と県の間に立ってだれかがファシリテーター的な役割を担って議論されているというかたちではありません。直接交渉といったかたちで、住民から要望事項があれば、県、場合によって栗東市に協議を求める、あるいは県から調査の報告をしたいという問いかけがあるというようなかたちで進んでいると聞いております。
 5ページのマナーの問題というのは、琵琶湖岸から400メートル離れて走行しなさいということには一応なっているのですが、実際そうではなく、かなり湖岸に近いところ、遊泳者の近くで走行している場合が多いです。去年も水泳中の子どもさんが巻き込まれて亡くなったという事故があり、そういうことがいまだに続いているという意味では、水上バイクの使用を認めつづけるかぎり、もう少し利用者にマナーを守ってもらわないといけないのではないかと思っております。
 個人的には、水道原水になるようなところでこの手の排気ガスを水中に吹きつけるというかたちで走行するようなものは使うべきではない。完全に閉め出せとは言いませんが、そういうことも含めて考えるべきではないかと私は思っております。
 それと、未規制の化学物質の調査の方法などについては、一つ一つの物質を調べるのは難しい話なので、生体リスクや生物指標などを使ったかたちで何種類かを一緒につかまえられるような手法も検討したらどうかと思っておりますが、それ以上のことはまだまだです。

(司会) ありがとうございました。有田さん、よろしいですか。
 では、片桐さん、どうぞ。

(片桐) 今のお答えに対してですが、7ページで、県と市との協議で進められている、ここには事業者の方は入っていないということでよろしいわけですね、今の特徴として書かれているのは。

(中地) 事業者と県、あるいは市は協議されているようですが、直接的なかたちでは、問題が起きた当初、住民は業者を相手取って県に公害調停を申し立てたのですが全然話にならない、不調ということで、その手段は今使っていないという経過があります。

(片桐) それは特徴というかたちですが、課題の中に、業者、住民、県による協議ができるのかというのは、これが三者全部一緒になってやるという意味合い、それが課題であると考えているわけですか。

(中地) はい、私たちはそう思っております。

(片桐) そうすると、ファシリテーターは今のところいないということで、ここで行政側が話し合いを取り持つというような役割を考えているのですか。それとも、全然違った意味合いで考えているわけですか。

(中地) やはり公害調停のようなかたちで、何らかのかたちで間を取り持つような方、あるいは機関が登場しないと、この話は難しいのではないかと個人的には思っております。

(片桐) そうしますと、業者と住民と、県と書いてありますが、県でも市でもかまわないと思いますが、それ以外に、その三者は全部同じ立場でいろいろと意見を言って、それをまた取り持つためのだれか調停者が必要というふうに?

(中地) 最終的にはそうではないかと私は思っております。

(片桐) わかりました。ありがとうございます。

(司会) ありがとうございました。
 それでは、次に移りたいと思います。次のご講演は、NPO湖南環境の中村さんです。43分ぐらいをめどにお願いいたします。


(中村) こんにちは。NPO湖南環境の中村と申します。我々NPO湖南環境が成立した背景とこれまで活動してきた内容についてご報告させていただきます。
(以下OHP併用)

 私たちNPO湖南環境は、環境保全の知識と経験のネットワークを生かし、地域社会に貢献することを目指しております。

 NPOとは、民間非営利活動組織、より地域のニーズに合った専門的サービスの提供の担い手、21世紀民間活力の新しい社会サービス、利益拡大のためでなく使命実現のため、こういう項目を掲げてやっております。

 NPOがなぜ注目されているのか。これは、先程の「NPOとは」の内容と同じです。

 NPO湖南環境で私たちが目指しているものとして、環境保全の経験豊富な技術者集団組織、環境保全を通じて地域社会に貢献する、企業・行政・地域の接着剤という役割、いわゆるパートナーシップをいかに組んでいくか。それと、企業を定年退職したOBの方が多いので、ここに個人の生きがい、楽しくということで考えております。

 設立経過としては、1999年8月、「気軽にトーク」という番組でこの活動団体の源流である湖南環境協会の役員と知事が懇談した際、企業で60歳定年を迎えた人たちが持つ経験やノウハウが社会に埋もれてしまうということから、これら企業のOBたちの生きがいを引き出して社会に貢献しようということから提案し、そのシステムづくりについてアドバイスをいただきました。
 2000年7月、滋賀県の関係機関から活動具体化のための法人化のアドバイスを受けて設立しました。県下で17番目のNPO法人、環境団体では初めてだと思います。

 これは設立趣意書です。

 2000年10月に「中日新聞」の取材があり、ここに紹介をしております。「環境保全をとおして社会貢献、NPO湖南環境、今秋に本格始動」ということで、まず手始めに、中小企業のISO14000取得のための支援活動ということから入っていきました。

 NPO湖南環境はいろいろな人材を抱えており、企業の枠を超えて結集した個の集団で、また、環境保全経験豊富な専門技術者です。ただ、環境保全だけでなく、工場管理の経験を持つ幅広い人の集まりです。それと、企業の60歳定年を過ぎたOBの方たち、あるいは現役の方たちの融合ということで、OBの豊富な経験と技術力と自由度、それと、企業第一線の情報収集力とを融合させております。現在、会員は37名で、事務所は草津市の旧庁舎を借用しております。

 会員のキャリアとしては、環境関係の業務経験ではISO14001認証取得経験、公害防止設備管理経験、行政との各種折衝経験、省エネ・廃棄物削減推進等々あります。工場管理・安全衛生では、エネルギー供給管理、工場建設・維持管理、消防、建築、高圧ガスなどあります。

 会員は資格をたくさん持っております。例えば、環境関係ではISO14001の審査員補・内部監査員、公害防止管理者では、大気、水質、騒音・振動等々の資格を持っております。また、エネルギー管理士、廃棄物(特管物)の管理責任者、環境測定士等々があります。設備管理では、電気の主任技術者、高圧ガス、ボイラー、消防等々あります。労働安全衛生の関係では、作業環境測定士、安全衛生作業主任者の特化、有機、酸欠等々あります。あるいは衛生管理者、技術士の方もおられます。

 これらの事業内容ですが、先程一部紹介しましたが、ISO14001認証取得の支援を行っており、これは支援講習風景です。

 シルバー人材センター連合会というのが滋賀県にあり、シニアのISO14001の研修ということで、我々湖南環境から講師を派遣し、年2回ほど10日間コースで実施している、その光景です。

 地域とのコミュニケーションの事業ということで、2つご紹介したいと思います。1つは甲賀流域環境保全行動計画作成の支援でということで、琵琶湖総合保全計画、いわゆる「マザーレイク21計画」という中での行動です。甲賀地域は、延長61キロメートル、流域面積387平方キロメートルの野洲川を有し、県下最大の工業団地を抱え、自然や文化が大きく変わってきて、行政だけではなく住民参加の活動が急務です。
 こういうことから、住民や事業所に環境に関するアンケートを取り、これをベースとした行動計画を策定するための支援を行いました。これからいかに実践していくか、14年度の事業になってこようかと思います。

 湖南、甲賀の位置です。

 湖南流域環境保全行動計画作成の支援というのは、これも「マザーレイク21計画」の関係で、野洲川流域の下流に位置しておりますが、この地域では直接野洲川に流入する河川がほとんどなく、家棟川、赤野井湾流域、葉山川の3流域を、甲賀流域と連携を取りつつその特性を活動に生かしています。
 それと、琵琶湖の湖辺の土地利用の変化に伴い、琵琶湖の総合保全を計画的に進める必要がある。このような背景から、住民のアンケート調査と3流域の水質調査、生物生き物調査を実施し、行動指針の策定に結びつけるべく進んでおります。

 あとは、環境保全に関する情報提供として、環境管理の手引きなどを発行して行政や会員にお配りしております。

 各種団体、特に湖南環境協会等、事業の支援活動を広げているところです。

 昨年11月に第9回世界湖沼会議が開かれ、甲賀のサテライト会場で湖南環境協会とNPO湖南環境の支援により、湖南・甲賀ミニ湖沼会議を開催しました。その冊子づくりなどもこのNPOで受け、それを行政や参加メンバーに配付しました。

 このときは、ISO14001関係のパネル展示と環境報告書の展示等々を行いました。

 これからまだまだ地域に根ざした活動を続けていきたいと思っておりますので、ますますのご協力・ご支援をお願いしたいと思います。ありがとうございました。

(司会) どうもありがとうございました。主としてNPO湖南環境の活動内容についてご紹介いただいたのですが、ご質問をいただきたいと思います。岩本さん、どうぞ。

(岩本) 環境問題というのは、日本でいいますと1960年代の終わりは最悪の状態で、これは規制で切り抜けてきたと思っているのですが、これから、例えば微量化学物質等の問題は、やはり、行政、産業、市民を含む一般社会の人々、みんながある一定の役割と責任を担って取り組んでいかなければいけないのではないかと思っています。
 その中でこういったコミュニケーションが必要になってくるのですが、調停役といいますか、ファシリテーターというか、そういう意味でNPOの方々の活動には非常に興味があるのですが、質問は、そうはいってもやはり市民から見たとき、元企業の立場の人なのだという見方で取られるのか、ある程度中立、あるいは技術を持った集団と受けとめていただけるのか、私自身も先々非常に関心がありますのでお答えいただければ。

(中村) 今までの環境団体といいますと、我々NPOの源流である湖南環境協会というのは企業の集団です。だんだん企業はそういうところへ出にくくなってくる、会社の合理化などで会合になかなか出席できなくなる。そういうことで、企業の集団であるということは、そこへ出てくる人も会社人間としてわりあい活動しているということですが、今、そんな時代ではなくなってきたということを我々はいち早く感じ、個の集団ということで、企業OBに目をつけて、情報が乏しいといけないので現役も少し入れながら展開しました。
 ですから、むしろ、地域へ入って一緒にコミュニケーションしたい、その行政とのつなぎ役もある。行政に言いにくいことも、我々が代弁してそのあたりを言うべきではなかろうか。だから、決して企業代表ではないということは申し添えておきたいと思います。

(司会) ありがとうございました。では、角田さん、どうぞ。

(角田) お話ありがとうございました。中小企業のコンサルティングをやっておられるという話だったのですが、中小企業の化学物質管理やリスクコミュニケーションについてやっておられるようなことがありましたら紹介いただければと思うのですが。14001のコンサルティングの中で、どのように指導されているのかを教えていただけないでしょうか。

(中村) ISO14001ということになりますと、基本的には順法ということなので、法・条例に対して従わなければそういう認証はいただけないということですが、ただ、今、中小企業を支援しておりまして、滋賀県でもまだほとんどが、大企業がISO14001を取得したというところなので、これから中小企業への支援を我々も広げていきたい。言い方は失礼ですが、中小企業は、銭もない、人もいない、という中でグローバル・スタンダードな認証を受けようと思うと、今話題になっているPRTR法などでも、もっと具体的に支援していく必要があろうかと思います。
 ただ、PRTR法はこの4月から報告(届出)義務ができましたが、大企業でも非常に難しい、専任者を置かないとなかなか片手間では管理できにくい。何せ(物質)数が多いので、そういう状況で、これから中小企業にはいろいろな支援をISOなどを通じてやっていければと思っていますが、まだあまりできておりません。

(司会) ありがとうございました。まだご質問があるかと思いますが、また後程時間を取っておりますので、次に移りたいと思います。これまでおふたかたに市民活動という観点からご報告いただきました。次は産業界からお願いいたします。最初に三菱樹脂の梶間さんから、3時過ぎぐらいをめどにお願いいたします。

<企業の取り組み>


(梶間) 三菱樹脂の梶間でございます。私どもの会社は、国内に5工場と国外に5工場を持ったプラスチックの加工メーカーです。塩化ビニールをはじめとして、最近は生分解性のフィルムまですべて作っているということになります。
(以下OHP併用)

 私どもが今まで環境に対して行ってきた活動をまとめてみました。まず、1970年代につきましては公害対策を主に活動し、ここで一番問題になりますのは、やはり公害についての環境分析をいかに早くするか、そういうことがわかり、最初に環境計量事業所を取得しております。ここで分析機器や技術者の育成を図って現在に至っているわけです。
 1998年からは、国際規格でありますISO14000の取得に努力してきました。1999年12月に認証を取得し、現在、そのシステムで運用しています。その中で、マネジメントシステムの導入に際し、ゼロエミッション活動にまず取り組みました。当初、200トンばかりの埋立廃棄物があり、目標は0.03%まで落とし込もうということで、2000年1月にはこれを達成することができております。2001年4月からは、浅井と長浜の2つの工場は完全埋立ゼロ化の工場になっております。ですから、廃棄物の中で埋め立てられるものは一切ありません。
 PRTR物質については、2000年後半から取り組み、PRTRの教育、物質の調査、2000年4月にはPRTRの物質管理規則を作り、それによって削減計画を行っております。あと、コミュニケーションというかたちで、環境報告書を近隣自治体を含めて出しており、主にサイトの環境報告書を発行しており、全社的な環境報告書も発行しております。
 一番上にわかりやすく赤色で書いてあるのですが、私どもはトリクロロエチレンでのサイト内の土壌汚染を起こしてしまっており、この対策をいろいろやってきております。1999年10月から2000年3月までは、一番濃いところの土壌入れ替えを行い、そのあと、地下水の表層の中水と呼ばれる水の浄化を現在やっております。浄化装置は自分のところで開発し、簡易にやれるものを使ってやっております。

 これは国内の工場の配置を示しております。表には印は4つですが、滋賀県には2つ工場があるので、トータル5工場がISOを取得しております。

 これはゼロエミッション活動による埋立処分率の実績で、ゼロエミッション宣言をしようというのが2003年の予定だったのが、全社では2001年に、2年前倒しで宣言をいたしました。長浜・浅井工場については4年前倒しで宣言しております。年間完全ゼロ工場も達成しております。

 次は企業を取り巻く社会の要請と環境会計ということで、私どもは環境会計についても取り組んでおり、目的としては、1つは、環境投資、施策の意思決定の判断材料として経営層への情報提供ということで社内活用を図っております。2つ目、外部に対しては、環境に与える社会的責任があるわけですが、社外に情報を公開して明確にしております。3つ目、利害関係者に対して情報を提供し、企業の姿勢を公表する活動を行うのが環境会計ということで、こういうかたちの結びつきでいろいろ活動しております。

 私どもの化学物質評価基準です。PRTR法に対応して作ったわけですが、PRTRができる前、日本化学工業会の化学物質使用実績集計というのが以前からあり、そこにいろいろ集計して出しておりましたので、化学物質の使用量その他はすべて把握しておりました。それで、PRTR法には簡単に入れたということです。
 それと、1998年に神奈川県のPRTRのパイロット事業が行われたのですが、平塚工場がそれに参加しており、そこでもシステムというのが大体わかっておりましたので、現在どういうものが使われていて何がどれだけの量あるかも完全に把握しております。

 もう1つ環境保全に必要で、環境測定を行うために基準をどうしようかということでいろいろやったわけですが、これにつきましては、全国の工場を滋賀県条例を基準にしております。例えば、地下水等も含め、滋賀県条例の基準値の2分の1、一般項目、鉛、カドミなどについては2分の1を実施基準としています。その他の項目についてはすべて10分の1の自主基準値で運用しております。これは、国内の設計思想と工場基準を統一するためということで、基準値を決めております。

 化学物質も含めた新商品の開発のため、どういう環境アセスメントをしようかということで新商品開発アセスメント要領を決め、これを商品設計や開発する商品について適用します。新商品を開発するとき、デザインレビューというので、対象製品をすべて、テーマを乗せたときから市場に出るまでに計5回レビューしますので、その間に3回、環境についてのアセスメント評価を行います。この中で、すべての化学物質について一つ一つ、MSDS(化学物質等安全データシート)を含めて検討しております。

 これはグリーン購入管理要領制定ということで、現在グリーン購入をやっており、工場の50%以上はこれですべて賄っております。

 これが環境計量証明事業の概要です。

 私どもの情報公開として環境ホームページを出しておりますので、一度見ていただければと思います。

 コミュニケーションということでは、全社の環境報告書と各サイトの環境報告書を毎年定期的に出しております。社内のコミュニケーションとしては「環境ISOニュース」を定期的に発行しております。

(司会) ありがとうございました。それでは質問をいただくことにします。崎田さん、どうぞ。

(崎田) 環境保全活動についてきちんとご説明いただいてありがとうございます。少し伺いたいのですが、コミュニケーションということをすごくおっしゃってくださっているのですが、例えば、ホームページ、環境報告書、環境会計のいろいろなデータを使い、実際に市民とどのような交流をされているか、その辺の具体像をもう少し教えていただければありがたいのですが。

(梶間) まず、市民とのコミュニケーションは4つほどやっております。1つは、長浜市の環境教育ということで、小学生のPTA主催の教育で年に1時間だけいただいており、そこに参加し、私どもの環境保全の進め方と一般的な簡単な説明を行ったりしております。見ていただいたように環境報告書も出しております。あとは、2年に1回ですが、環境フェアを工場内で行い、だれでも入っていただける部屋を、2日間、いろいろな活動を含めてやっています。それから、常設の環境発信展示場があり、ここも市民の方が自由に入れるようになっております。この4つの方法でやっています。

(崎田) 展示場にはどのくらいの市民が見学にいらっしゃいますか。

(梶間) 統計は取れていないのですが、環境フェアを去年の秋に開催し、市民の方が150名、民間の会社に勤めておられる方が250名ほど来ていただいております。

(司会) よろしいでしょうか。

(崎田) ありがとうございます。

(司会) 有田さん、どうぞ。

(有田) 変な質問ですが、19ページで埋立処分率がゼロと書かれているのですが、廃棄物がゼロというわけではないですよね。

(梶間) はい。

(有田) 埋立の主な中身というのはどういうものだったのか教えていただけますか。

(梶間) 主に、以前はプラスチック類の廃棄物もあったのですが、びん類、陶器類、あとは多少のプラスチック類が入っていたのですが、そういうものを含めて、ISOを始める前は月200トンぐらいあったのをISOを取ったあとはなくしたということになります。

(司会) いいですか。
 では、後程また時間がありますので次に移りたいと思います。次は、日本電気硝子の堀野さんです。3時15分ごろをめどにお願いします。


(堀野) それでは、化学物質と環境に関する取り組みということで、日本電気硝子株式会社、環境管理部の堀野が発表いたします。
(以下OHP併用)

 当社は滋賀県大津市に本社があり、滋賀県内に4工場、福井県、神奈川県藤沢市にそれぞれ1工場、全部で6工場あります。主に取り扱っている製品を紹介しますが、特殊なガラスを製造しております。テレビのブラウン管用のガラス、皆さんお使いのノートパソコンの液晶ディスプレイ用の薄板ガラス、強化プラスチックのEファイバ、超耐熱結晶化ガラス(ネオセラム)、火にかけても割れないガラスです。それと、照明用ガラス、魔法瓶用ガラスなどです。
 ガラスの製造というのは、高温の窯にガラスの原料を入れ、どろどろに溶けたガラスを成型するわけですが、私どもの化学物質の管理といいますと、ガラスの原料の管理、溶融や成型における廃棄物の管理になろうかと思います。

 これは、ガラスと地球の地殻の組成の類似性を表したものです。SiO2で見ますと、地球の地殻が65%なのに対してソーダ石灰ガラスは74%です。酸化カルシウム、酸化マグネシウムは10%前後ということで、地殻に似た組成です。ただ、ソーダ石灰ガラスだけを製造しておりますと、原料にしても廃棄物にしても比較的管理は容易だと思うのですが、最近は高品質のガラスや特別な機能を持ったガラス等の要求が出て、原料にいろいろな化学物質を入れる必要が出てきます。

 ガラスの製造工程を簡単に表した図式です。窯に原料を投入します。原料には十数種類の化学物質を混ぜて投入します。燃料として重油あるいはガスを燃やし、その熱でガラスを溶かします。電力というのは、ガラス溶融炉の底に電極を設け、直接ガラスに電気を流してジュール熱でガラスを加熱するということです。
 ガラスの表面部分は1500度ぐらいの高温になっており、これくらい高温になるとガラス中の化学物質が飛散します。それを電気集じん機で取り、ダストが発生します。加工のところではカレットが発生します。カレットというのはガラス屑のことです。それから、加工で廃棄物が出ます。主に、ガラスを研磨するとスラッジが発生します。当社では、電気集じん機のダスト、研磨スラッジなどの廃棄物、カレット等をほとんど原料にリサイクルするシステムができており、かなりの部分をリサイクルしております。

 社内のリサイクルをまとめたものですが、電気集じん機で集めたダストは原料化しております。研磨スラッジは除鉄後、原料化しております。ガラスに入っているホウ酸、揮発するものに関しては、捕集後、原料化しております。

 化学物質管理の取り組みということで、当社がこれまでやってきたこと、現在もやっていること、さらに今後もやろうとしていることをまとめております。
 まず、ガラス原料の環境負荷物質の削減ということで、鉛ガラスの無鉛化の開発を実施してきております。テレビのブラウン管のパネルガラスはすでに鉛を抜き、ストロンチウム、バリウム系のガラスに変えております。自動車用のランプ、蛍光灯のサークライン、粉末ガラスなど、すでに無鉛化を達成したもの、さらに無鉛化という方向で研究開発を進めております。清澄剤というのはガラス中の泡を取るために入れるものですが、フッ素の使用はやめました。酸化アンチモン、亜ヒ酸等は削減の研究開発を実施しております。
 高温による飛散抑制。電気溶融を併用することで表面温度が下がり、ガラス表面からの化学物質の飛散を抑える効果があります。先程図で示しましたように、ガラスの溶融炉の底に(抜けあり。要確認)温度を下げることができ、化学物質の飛散を抑えることができます。そういうことで、電気溶融の割合を増やす方向でやっております。
 ガラス溶融炉、通常は空気で重油やガスを燃やすわけですが、酸素燃焼方式を取り入れることで排ガス量を減らせる。酸素を作り、それで燃やすと排ガス量が4分の1ぐらいに減ります。すると、集じん機の捕集効率が上がるということで、非常に効果があります。

 加工工程の脱脂ということで、洗浄用の塩素系有機溶剤を使っておりましたが、1989年に使用を禁止しております。廃棄物管理では、カレットを含む全廃棄物に対する埋立処分量の割合は現在2~3%であり、さらに削減の努力をしております。管理システムですが、1999年にISO14001を6事業所全社一括して取得しました。

 まとめとして、ガラス溶融・加工工程での廃棄物のミニマム化および発生した廃棄物の回収、リサイクルを徹底すること。要は、私どもは、廃棄物はできるだけもう一度、窯に戻そうということで努力しており、これを徹底していきたいということです。それから、高品質のガラスの要求に対して、ガラスの設計において化学物質の管理を考慮すること。いろいろな要求に対して設計するわけですが、そのときにも、単によいガラスができたということだけではなく、化学物質の管理のことも考えて設計しなければならないと考えております。

(司会) どうもありがとうございました。それでは、質問をいただきたいと思います。岩本さん、どうぞ。

(岩本) 若干産業界的な質問で恐縮ですが、皆さんにわかりやすく答えていただければと思います。
 酸素燃焼方式を取り入れられたのは非常にすばらしいことだと思うのですが、こういった環境の時代になりますと、私ども化学産業では一般的に酸化反応をやるときに空気を使うわけですが、いってみれば投入したガスの8割がロスとなって大気に出ていくわけです。そうすると、これからの時代の技術としては、酸素燃焼というのは非常に望ましいことではないかと思いますが、同時に安全上の問題がものすごく大きいと思うので、安全上どういう配慮をされたか、ぜひ皆さんにわかりやすく簡単にご説明いただければと思います。

(堀野) 酸素の供給法は2つあり、液体酸素を購入するという方法はなかなか大変です。私どもがほとんどやっておりますのは、空気中から酸素を取ってそのまま現場へつなぐという方法です。私は設備屋ではないので詳しくはわかりませんが、要は、配管からの漏れなど、酸素を使うあたりまえのことをやっていくということです。

(司会) ほかに質問はありますか。今まで、4人の方、きちんと時間を守っていただきまして、非常にオンタイムで、私としては楽です。
 1つだけ、27ページの加工工程の脱脂で塩素系有機溶剤をやめたということですが、どういうものに代えたのですか。

(堀野) ガラスを切る前に松ヤニのようなもので固めておりました。それを切ったあと、塩素系有機溶剤で溶かしてガラス製品を作ったわけですが、接着するものを水やお湯で溶けるものに代えました。

(司会) なるほど、わかりました。ありがとうございます。それでは、次の発表に移らせていただきます。次は行政からですが、滋賀県の深田さん、お願いいたします。

<行政の取り組み>


(深田) ありがとうございます。滋賀県環境政策課の深田と申します。
(以下OHP併用)

 最初に、滋賀県が置かれています地理的な条件からご理解をたまわればと思っております。今ご覧いただいているのは滋賀県の地図ですが、真ん中に県面積の6分の1を占める琵琶湖を抱えており、琵琶湖を取り巻くように平野が広がっており、さらに、県境には800メートルから1000メートルの山が控えております。
 もう1点ご理解いただきたいのは、色のついている部分が滋賀県の地域ですが、赤いラインが琵琶湖の集水域です。したがって、滋賀県の区域と琵琶湖の集水域がほぼ一致しているという非常に特異な県です。そうしますと、琵琶湖の周辺に住んで何らかの活動をされて汚濁物質が出ると、それはすべていったん琵琶湖を経てからしか出ていかないという特徴があります。

 もう1点、琵琶湖が非常に広範囲にわたる人たちの水の利用をいただいているということです。上流側に琵琶湖があり、そのあと、瀬田川、宇治川、淀川と名前を変えながら大阪湾へ水が進むわけですが、その間に、京都、大阪、神戸といった具合に、1400万人の方々の上水源、工業用水、農業用水源になっております。おおむね日本人の10人に1人の方が琵琶湖の水を利用していただいているという位置づけになるわけです。

 このような条件の琵琶湖ですが、琵琶湖の環境問題を振り返りながら、化学物質に焦点を当てて少しお話しさせていただきたいと思います。1950年代、日本が戦争に負けたあと、食料を得るための施策が行われました。農地を拡大するための干拓と、一定の面積からたくさんの収量を得るための農薬の使用が行われたわけですが、農薬がたくさん使われた結果、沿岸や川でたくさんの魚が死んだというのが琵琶湖の環境問題の発端ではなかったかと思います。
 このとき何が起こったか。農民の方、あるいは漁業をやっておられる方もいますので、たくさんの県民の方々が、魚がたくさん死ぬ姿を見てどういう相談ができたかといいますと、琵琶湖の湖岸に近いところでの農薬の使用はやめようではないかという合意形成ができたと伺っております。

 食料が確保されたあと、経済発展の時代になるわけですが、日本全国で、所得倍増と生活水準の向上に向けてさまざまな努力がなされたわけです。滋賀県は、おかげさまで中京・阪神の大きな経済圏のちょうど中央にありますし、比較的土地が安い、労働力がある、交通の要衝があるといった条件が整っておりましたので、工場の立地が相次ぎ、現在では内陸工業県としての地位を確たるものにしているわけです。
 一方では、当然のことながら、全国で社会問題になりました公害問題が起こったのと同じように、琵琶湖でも公害問題が起こっております。このとき一番大きな問題になりましたのがPCB汚染でした。当然、農薬が農業だったのに対して、このときは工場が原因だったわけですが、琵琶湖で起こったPCB汚染の最大の原因のものは、PCBを封入するときに真空ポンプで引く、その真空ポンプの排ガスからPCBが出て、それが琵琶湖に到達したという状況でした。したがって、だれもが排出されていないと思っていたものが実は琵琶湖を汚していたのだという結果になったわけです。ですから、このときに教訓として残りましたのが、有害物質を排出する以前に、使うこと自体が非常にリスクを持っているということです。
 その後できました公害防止条例では、有害物質の使用工場を設置許可にするという定めの入った条例を作らせていただき、排出基準は、当時、そのまま飲んでもよいという環境基準と同じレベルにさせていただいたという経緯があります。

 公害問題の時代が終わり、豊かな生活が保障されるようになった時代になったときに生じてきました問題が、現在も続いております富栄養化問題です。これまで工場や農業が原因者だったわけですが、富栄養化問題というのは、窒素やリンという人間あるいは生物が生きていくためになくてはならない物質、必須元素が原因物質です。
 そうしますと、すべての人間活動が原因になるわけですが、私たちの生活も琵琶湖の赤潮の原因になっている、では何かを始めようということで始めていただいた石鹸使用運動というのがありました。このときには、リンを含む合成洗剤とリンを含まない石鹸の2つの選択肢があったわけですが、琵琶湖の周りの主婦の皆さん方は、琵琶湖にやさしい、リンを含まない石鹸を使おうではないかといって運動を始めていただいたわけです。
 その後、そういった県民運動の後押しもあり、富栄養化防止条例ができたわけですが、この条例の特徴は、工場排水の規制をやるだけではなく、さまざまな人間活動すべてからの窒素やリンの排出を抑制するという意味で、総合的な対策が必要だということを打ち上げた条例ではなかったかと思っております。
 その後、石鹸使用運動は全国に広がり、霞ヶ浦条例に引き継がれ、あるいは湖沼水質保全特別措置法といった総合的な対策を実施する法制度も作っていただいたところです。したがって、琵琶湖の周りで始めていただいた主婦の皆さん方の石鹸使用運動という住民運動が日本の洗剤の製造方法と環境問題への対応方法を変えたのではなかろうかと思っております。

 そういった時代を経まして、現在は、今日も話が出ておりますダイオキシンや環境ホルモンといったきわめて微量の化学物質が取りざたされる時代になってきたわけで、さらに原因者が特定できない、あるいは、その対応について方向性をどうやって決めたらいいかというのが課題になっているのではなかろうかと思っております。
 すべての関係者が議論して決めて行動するというのが基本ではないかと思いますが、こういった市民、研究者、行政、企業の関係者が一堂に会して議論していこうではないかというのは、1984年に開催させていただいた湖沼会議のコンセプトでもありました。昨年11月に第9回の湖沼会議も開催させていただいたところですが、21世紀にふさわしいやり方は、やはりすべての関係者が集まって決めて行動していくというパターンではなかろうかということを再確認していただいたのではないかと思っております。
 ここまでお話し申し上げましたように、琵琶湖の環境問題に対して、それぞれの時代に応じた、住民の皆さんあるいは関係者の皆さんが参加してこれからの行動の方向を探るというスタイルが、琵琶湖流域では育ってきているように思っております。それを、我々は「環境自治」と呼ばせていただいております。そういう土壌を生かしながら、現在、リスクコミュニケーションのあり方についてご議論を進めていただいているところです。

(司会) どうもありがとうございました。琵琶湖での環境問題について時系列的にご説明いただきました。
 それでは質問をいただきたいと思います。角田さん、どうぞ。

(角田) 滋賀県の歴史的な話も踏まえてお話しいただきましてありがとうございました。1つ、ちょっと変な質問で答えにくいかもしれませんが、もしわかったら教えていただきたく。29ページで、かなり厳しい規制になると思うのですが、有害物質使用工場の設置許可ということをを定めたあと、工場としては、「これは大変」と滋賀県から逃げていったところが多いのかそれとも、「よっしゃ、頑張るぞ」と頑張ったところが多いのか、どちらだったのでしょうか。

(深田) 皆さん非常にご協力をいただいておりまして、琵琶湖を抱えております関係上、非常に厳しい基準を適用させていただいておりますので、他府県の同じ企業とでは競争力がやはり低くなる面があるのですが、大切な琵琶湖を守るために一緒にやっていこうというお話をいただいておりますので、大変ありがたく思っております。

(司会) ほかに質問はありますでしょうか、村田さん、どうぞ。

(村田) 30ページで、お話の最後に、リスク・コミュニケーションにこれから取り組んでいかれるということだったのですが、今の段階で、具体的にどのようなリスク・コミュニケーションの場を、どういう目的で設定しようとお考えなのか、その辺をもう少しお話しいただければと思います。

(深田) まことに申し訳ないのですが、現時点では、そこまでの具体的な議論が進んでいるわけではありません。市民の代表者の方や有識者の方のご参加をお願いしまして、リスク・コミュニケーションのあり方の検討会を現在開催させていただいており、そこのご議論をお願いしているところです。
 そこの一定の結論をいただいて、それをもとに、場の設定なり議論の方法なりを提示させていただくのがまず私どもの仕事でしょう。それに対して、当然のことですが、県民の皆さん方のご意見を取り入れながら、制度をどう構築していくのかということを今年度手がけさせていただきたいと思っているところです。

(司会) 崎田さん、どうぞ。

(崎田) 本当にこちらの県の皆さんはかなり早くからこういう問題に取り組まれ、いろいろすばらしい活動をしていらっしゃるのですが、その中で、これからどうしようかというとき、環境教育や普及・啓発にも大変取り組まれてらっしゃるように感じております。例えば、琵琶湖博物館に行ったときも、参加型の展示形態など大変工夫された先進的な取り組みだと思うのですが、そういう環境教育や普及・啓発に関して、今、特に化学物質のリスク・コミュニケーションという視点で強く感じてらっしゃること、成果として感じてらっしゃることなどあれば教えていただきたいのですが。

(深田) ありがとうございます。環境教育の部門で申し上げますと、滋賀県は非常にユニークな制度を持っておりまして、小学校5年生が琵琶湖の湖上で、2つ以上の学校が交流しながら環境学習をするというフローティングスクールという制度です。これが15~16年になると思いますので、非常にたくさんの方が、少なくとも人生の中で琵琶湖の環境問題について考える、それも比較的若い世代のうちにそういう機会を持っていただくというのが1つの特徴ではなかろうかと思っております。
 それと、NGO、NPOの方々も、環境問題について熱心にお取り組みいただいているグループがたくさんありますので、そういった方々がうまく連携していただき、一緒に私どもへのご提言もいただけるようなことがますます盛んになるようであれば大変ありがたいと思っているところです。
 啓発・普及に携わる部門というのは、私ども琵琶湖環境部の中にエコライフ推進課というのを設けており、環境問題の啓発・普及、特に住民の皆さん方との接点を中心に事業展開をするという課です。そこを中心にパイプ役になっていただいているところです。

(司会) ありがとうございました。それでは瀬田さん、どうぞ。

(瀬田) 先程の最初の地図で、大変興味深く見せていただきました。分水嶺が完全に県境と一致しているということですが、天からの雨が非常にきれいなかたちで湖の中に入ってくるということについての問題、つまり、途中の土壌などが一緒に流れ込んでくるとか、そういうことがないように山林の保全、或いは生活の中での水の文化の歴史など、そういうことは今の琵琶湖の環境論議の中で議論されていないのでしょうか。

(深田) 以前はあまりそういう観点は強くなかったのですが、現在は、一番上流にあります山から琵琶湖まで、途中にいろいろな人間活動を反映した里山が琵琶湖流域には広がっているのですが、そういったものも含め、流域全体をどうやって管理するかを考えようとしております。
 「マザーレイク21計画」というのができており、流域管理のあり方を流域の関係者全体が考えながら、どういう事業が適切なのかという取り組みをやっていこうという試みがスタートしたところです。それぞれの河川の流域単位ごとに河川特性がありますので、その特性に応じた対策のあり方を皆さんでご議論いただくような方式がいいのではないかと思っているところです。

(司会) ありがとうございました。では、最後の発表に移りたいと思います。滋賀県の琵琶湖研究所の木村さん、45分ごろをめどにお願いします。


(木村) 木村です。
(以下OHP併用)

 グラフを見ていただきたいと思うのですが、これは全国の男子の平均になりますが、ぜん息の罹患率、5歳から17歳まで、1967年から2000年までの推移を見たものです。1980年代ぐらいから急速に増加していることがわかると思います。
 オーダーは、一番上が4%ですので3.5%、やはり年齢の若いうちはぜん息にかかる割合が高く、この間、0.5%から3.5%ですから、7倍増えていることになります。先程からお話がありますように、公害対策基本法などさまざまな規制が行われているにもかかわらず増えてきている、子どもの健康は悪化しているということがわかると思います。

 これも同じデータですが、今度は出生年別に見たものです。1962年生まれから1983年生まれまで、現在の40歳から20歳ぐらいまでの5歳から17歳までの推移を見ています。上に行くにしたがって最近生まれた世代ということになります。
 以前は、ぜん息になってもそのあとずっと減ってきているのですが、最近は罹患率も上昇していますし、高学年での悪化傾向、長期化というのが出てきています。私は医学の専門ではないのではっきりとしたことは言えませんが、免疫力が低下してきているということが言えるのではないかと思います。

 こうした問題意識を踏まえ、滋賀県の野洲川流域で、昨年9月に「化学物質に関する住民意識調査」を行いました。有効回答率63.2%と非常に高かったのですが、質問の1つに、こういったものの安全性について気になるものがあるかというのがあります。そうしたところ、第1位が食品添加物、続いて水道水、食品中の残留農薬、水田に散布される農薬など、直接口にするものへの不安感が非常に高いという傾向が出てきました。

 これも同じくアンケート調査の1つです。化学物質の対策について、これからは安全基準以下でも複数の化学物質による影響を考慮していくべきだという意見に対して、「そう思う」と「まあそう思う」を合わせると91%、ほとんどの方が複合汚染への配慮を求めているという結果になりました。

 これもアンケート調査の結果からですが、住民参加のあり方について聞きましたところ、十分な情報公開と説明がまず前提になるというのが非常に高かったということと、住民からの問い合わせに応じる住民支援センター、行政と市民が率直に話し合う対話集会、住民が運営する協議会で決まったことの政策への反映、こういったところに対して非常に関心が高い、希望が高いということで、現在よく行われております住民参加というのは、行政が運営する協議会に住民代表が参加するということなのですが、これはあまり高くないということで、現在の住民参加のあり方よりもより住民本位の参加のあり方を求めているという結果が出てきました。

 このアンケートの中では、最後にこういう質問もしております。何らかのアレルギー性疾患というのは、具体的には、花粉症、アトピー性皮膚炎、ぜん息について聞いているのですが、その他のアレルギー性疾患を合わせて、何らかのアレルギー性疾患を持つ人が家族の中にいるかどうかという質問です。
 そうしますと、全体の6割にあたる人たちが何らかのアレルギー性疾患を持つ家族がいるという数字が出ています。

 こういう結果を踏まえ、琵琶湖研究所では、平成13年度から4年間の計画で、環境基準以下の、または未規制の微量の化学物質の削減を住民参加で、あまり参加という言い方は好きではないのですが、住民の自発性に基づいてどのように社会的な仕組みを作っていけるのか、そういう研究を始めています。
 そのときのキーワードは3つあると思います。まず、予防原則、基準値以下であるとか、未規制のものを削減するにはやはり予防原則で対応していかなければいけない。もう1つは住民参加ということですが、住民の自発的な活動、自発的な判断というのが必要になってくる。ここで、科学的な見地とそこに住む人たちの自発的な判断力、主体的な判断というものがあって初めて社会的に仕組みが動いていく、それが環境自治の確立につながっていく。そういう3つのキーワードをうまく発揮していくにはどういう条件が必要なのか、そういったことにこの研究会で住民の方と一緒に取り組もうと考えています。

 去年の1月、野洲川の流域を対象にして、「自分のまちの化学物質研究会」、みんなで一緒に考えませんかという呼びかけをいたしました。住民の方から自発的に参加申し込みをいただき、現在66名の方に入会していただいているのですが、2月と3月に発足準備会を行い、4月から正式に発足というかたちになっております。その議論の中で、私たちの目指すものは水と子どもの未来を守るということで、この1点に集中してこれから化学物質の問題を考えていこうとしております。
 研究会のあり方ですが、批判ではなく提案をしていこう、対立するのではなく対話をしていこう、要求をするのではなく協働していこう、そういう活動ができないかと考えています。

 研究会の1つの特徴は、自分の住む町が研究や学習のフィールドであるということ、自分の住むまち、地域にどういう問題があるのか、身の回りの化学物質の現状と問題点を自分たちで探していこう、その中で見つけた問題点の解決の方法を、住民、企業、行政、地域に住む人たち全員で一緒に考えて判断し、実行していきましょう、そういう活動を目指しています。
 つまり、こういったものができるということは、あたりまえですが、結局自分の町は自分でよくする、自分で守るという意識を一人一人が持つこと、これが前提だと思います。それが環境自治が確立される道筋につながっていくと思っています。

 最後に、私事で恐縮ですが、私は1964年の生まれで、たぶん私よりも上の年代の方がたくさんいらっしゃると思うのですが、1964年といいますと、東京オリンピックが開催され、東海道新幹線が開通した、高度経済成長の花盛りのときでした。私は高度経済成長とともに育ってきたわけですが、同時に公害問題が60年代に激化し、そういった社会問題がずっと尾を引いていく、そういう世代に生まれた人間でもあります。個人的に私は自分の世代を「公害世代」と呼んでいるのですが、その私たちの世代からのメッセージということで、後ろに「♪」が付いているのには意味がありまして、この話をいただきましたあとに、ふと思い浮かんだ替え歌がありますので、それを最後に歌わせていただいてメッセージに代えさせていただきたいと思います(笑)。
 ♪公害が起こって僕らは生まれた、毒垂れ流しで僕らは育った、大人になって精子減少、ぜん息、アトピー、化学物質過敏症、僕らの名前を覚えてほしい、健康を知らない子どもたちさー♪(拍手)(戦争を知らない子どもたちの替え歌)。

(司会) どうもありがとうございました。歌が出るとは・・・。それでは、今のご発表に対し質問をいただきたいと思います。岩本さん、どうぞ。

(岩本) 冒頭の住民意識調査というのは、私も一市民として大体同じようなことかなと思って自覚いたします。
 そこで1つお聞きしたいのですが、住民の方々に、今よりも多少生活レベルは落ちていい、あるいは、もっと文明が発達すべきだ、多少後戻りしてもいい、何かそういう質問をされたかどうか。私など、スーパーに行ったりするとこんなに物があふれていていいのかという実感を正直いって持つのですが、その辺はいかがでしょうか。

(木村) たぶんそれに類似するかと思うのですが、聞いたものがあります。化学物質と私たちの生活のかかわりということで、今後どんどん化学物質を開発してほしいと考えているのか、それとも、安全性をチェックしながら慎重にやってほしいのか、これ以上の開発はやめるべきと考えているのか、化学製品を使わないライフスタイルに転換すべきと思っているのか、そういう質問をしたことがあります。
 その中で一番高かったのが、やはり安全性をチェックしながら慎重に開発してほしいということで、化学物質を全くゼロにすることはできませんので慎重な開発をお願いしたいというのが51.9%でした。ただ、もう1つ、化学物質を全く使わないライフスタイルに転換すべきだという積極的な意見も38.7%と非常に高かったというのが今回の大きな特徴だと思っております。

(司会) ほかにご質問はありますか。瀬田さん、どうぞ。

(瀬田) 産業界から質問が2つ続くということにあまり意味はありませんが(笑)、私も市民の一人ですので、そういう立場でお聞きしたいと思います。まさに今の岩本さんのお話と同じ表で、32ページの上です。実は、この円卓会議をご指導いただいている3人の大学の先生方のお一人、安井先生がやはり同じようなアンケートを取っていらっしゃるのです。
 そのときに先生がおっしゃったことで非常に考えさせられたことがあります。我々一般の人間に対するアンケートとお医者さんなど専門家に対するアンケート、このパターンが全然違うという結果を出しておられて、そういったことをよく考えて多様性をもって判断しないと実態を取り違えてしまうのではないかということを指摘されたと私は記憶しているのです。これが1点です。
 もう1つ、これはちょっと記憶が定かではないのですが、最近読んだ本の中で、「少年犯罪が今、激増していると思うか」ということが最初に書いてあるのです。普通はそうだなと思うのです。確かにそうだと自分も思ったのですが、実際に統計的に見ると必ずしもそうではない。都市部の少年犯罪はむしろ減少しているということを書いてあるのです。
 やはりそういったデータの取り方、この話は私もはっきりデータを見たわけではありませんので確たることは申し上げられないのですが、ちょうどたまたま安井先生のような指導者がこの円卓会議にいらっしゃいますので、そういったご意見も入れて考えてみたらどうだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。

(司会) これはまた後程やりましょうか。アンケートの見方というのはいろいろあると思うので、例えば有効回答率の問題や、どういう方を対象にしたとかいうことで、今回はこういうデータが出ているのですが、その見方についてはまた後程議論したいと思います。
 では、有田さん、どうぞ。

(有田) アンケートもお聞きしたかったのですが、ただ、やはり3000世帯で63%というのはすごいなと、平均的な意見なのだろうなと思って見ていました。34ページの上の「予防原則」というのは三菱樹脂の方の20ページにも書いてあって、私たち消費者運動は予防原則というのが大好きでずっと言ってきたのですが、予防原則というのはこういう考え方なのだというのがもしありましたら、木村さんの方でお考えの予防原則を教えていただきたいと思うのですが。

(木村) そこを出たところに「自分のまちの化学物質研究会の入会案内」というピンクのパンフレットを置いてあるのですが、興味のある方はぜひ持って帰っていただきたいと思います。この中に若干私の思っているところを書いてありますので、それを読ませていただきます。
 「ある活動が人間の健康や自然環境に対して害を及ぼす危険性が危惧される段階で、科学的に因果関係が証明されていない場合であっても予防的手段を講じるべきとする原則」と考えています。

(有田) 考え方はそうなのですが・・・、わかりました。

(司会) 予防原則の取り方にまたいろいろレベルがあると思うのですが、崎田さん、どうぞ。

(崎田) 全く別のテーマの質問です。34ページの下の方で、新しく化学物質研究会というのを呼びかけて、66人の方が参加されたというお話ですが、66人の内訳は、大人、子ども、いわゆる住民、主婦の方、企業人で住んでいらっしゃる方、あるいは企業として参加されている方、いろいろあると思うのですが、その辺を教えていただきたいのです。
 なぜ伺ったかといいますと、その次のところで、解決の方法としては、市民や企業、行政、皆さんで一緒に考えていくとおっしゃったので、この研究会自体がそういう構成をうまく作っていらっしゃるのかどうか伺いたかったのですが。

(木村) 66名のうち、野洲川流域と設定したところが約8割の方、あとの2割はその周辺の都市、京都の方もいらっしゃいます。多くは地元の住民の方、一個人として参加していらっしゃいます。年齢でいいますと、50代、60代の方が結構多い。あとは、20代の学生さんが多い。30代、40代の忙しい世代はなかなか集まってくれていないということになります。
 ただ、今回の特徴は、組織として参加しているということではなく、例えば、勤めに行っていたとしても、個人として参加していただいており、個人個人が自分の思いで話しあうことが重要だと思っていますので、特に企業の人や行政の人を入れてということでは今のところ考えておりません。個人の意見を大切にしたいというような研究会です。

(司会) よろしいでしょうか。まだまだご質問があるかと思うのですが、とりあえずこれで6人のスピーカーの発表を終わらせていただきます。どうも本当にありがとうございました。
 このあと休憩を取りまして、議題4でまたご質問があればいただきながら、パネルメンバーやゲストの方からの円卓会議への要望等についてお伺いしたいと思っております。では、15分休憩して、4時10分から再開したいと思います。どうもありがとうございました。

<休憩>


(司会) それでは、時間になりましたのでフォーラムを再開させていただきます。5時までの予定ですので、あと50分ほどあります。
 このあと、議題4、議題5と2つあるのですが、私の考えている時間配分として、議題4で、先程6人のスピーカーからお話しいただきましたが、若干質問が残っているかと思いますので、その質問についてお伺いし、そのあと、メンバーおよびスピーカーの方から円卓会議についての要望やご意見を伺いたいと思っております。
 それは15~20分で終わらせて、そのあと35分ぐらい、今日おいでの皆様方から質問や要望について紙に書いて出していただけたと思いますので、それを整理できしだい質問についてはそれぞれお答えいただくというかたちで、できるだけ皆様方からの質問やご意見を反映させたいと思っております。
 それでは、議題4に移ります。

4.円卓会議メンバーおよびスピーカーからの要望・意見

(司会) 先程6人のスピーカーの方からお話がありました。5分ずつ質問時間を取ったのですが、まだ質問が残っているようでしたら10分弱でお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。岩尾さん、どうぞ。

(岩尾) メーカーの方にお伺いしたいのですが、より環境に負荷のないもの、より無害なものを新製品として開発していくとき、それに代わる化学物質を用いていくだろうと思うのですが、企業秘密でなかったら教えていただきたいのですが、どのくらいの確率で製品化されるものなのですか。

(司会) 3名みえていますので、どうでしょうか、岩本さん、よろしいですか、どうぞ。

(岩本) どの程度というとちょっと答えにくいのですが、端的にいいますと、例えば農薬あたりですと100に1つぐらいです。もう1つは、今、問題になっている化学物質レベルでいろいろな疑わしいことをずっと調べていきますと、代替品を開発したつもりがまた別のところで引っかかるというケースが多々出てきます。
 そういう意味では、問題になっている物質というのは、ある意味ではよってたかってみんなが調べていろいろな問題が出てきた。むしろ、逆にこれから新しく何か作ろうという問題を同じレベルまで調べ上げると、やはり何かほこりが出てくるという感じもあります。そういう意味で、農薬でいうとせいぜい100に1つとか、そんなレベルです。

(瀬田) 一般的な農薬以外の化学製品で考えますと、たぶん開発には2種類あると思います。1つは、全く新しいものを作るということ、もう1つは、新しい製品ではあるけれども既存の製品の周辺でモディファイしたものを作るということです。後者の方ですと、2~3割の確率ぐらいは十分あると思うのですが、前者の方ですと、せいぜい1%か2%、普通はそれを相当下回ることも多い、ということではないでしょうか。
 そのとき、先程ありましたように、やはり安全問題や環境負荷の問題で引っかかるということは結構多いのです。したがって、私の担当は研究開発であったわけですが、それにかかわる人間としては、そういうことで開発が失敗するという確率を開発の早い段階からいかに排除するか、それが研究開発マネジメントの1つのポイントです。

(増田) 環境省の方からお答えいただいてもいいのかもしれませんが、環境省と我々の方で一緒に所管しています化学物質審査規制法という法律がありまして、新しい化学物質をマーケットに出すときは事前に安全性の確認をすることになっています。手元にデータがないのでうろ覚えですが、担当していたときの記憶で、マーケットに出すために審査を受けた化学物質のうち、10年後に生産量が多いものはそうはなかったと思います。
 先程、岩本さんから農薬で100分の1かなというお話がありましたが、たしか、一般化学品でも、10年後にマーケットで生き残っているものはそういうイメージだろうと思います。さらにいうと、100トンというオーダーのボリュームで生産されるかたちで生き残っているものはさらにその何十分の1ということになります。
 化学物質審査規制法を30年ほど施行していますが、多くの生産量があるような新規化学物質は非常に数が少ないとご理解いただいていいのではないかと思います。

(司会) ありがとうございました。

(岩本) すみません。農薬は1万に1つですね。

(司会) 農薬が1万に1つぐらいだということです。ほかに質問はよろしいですか。では、議題4ということで、今日は特に6人の方をお招きしてお話しいただいたのですが、円卓会議についての要望、どういうテーマをこれから議論してほしいとか、どうあってほしいとか、その辺を6人の方からいただきたい。もちろんメンバーの方からも適宜ご発言いただきたいのですが、どうでしょうか。木村さん、どうぞ。

(木村) 私から4点ほど、こういった会議についての要望といいますか、意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、化学物質と環境ということで今回開かれているわけですが、化学物質の場合、やはり健康被害というのが非常に大きな要素としてあるわけです。これまで、水俣病、カネミ油症などの大きな健康被害を日本では経験しているわけですが、やはりその再検討を必要としているのではないかと思っています。
 次の3つの観点から必要だと思っているのですが、1つは被害の未然防止、もう1つは被害の拡大防止、そして、起こってしまった場合の被害の救済、これがはたして正しかったのかどうか。それから、社会全体としてまだやり残していることがあるのではないか。こういった教訓から学ぶべきことは大きいと思うのです。そういう経験を貴重な負の遺産として検討していく必要があると思います。
 2点目は、現在の健康被害の対応についてですが、化学物質過敏症で現在苦しんでらっしゃる方はかなりの数に上っていると思います。私の方にもいくつか問い合わせが来ていまして、考えるのですが、こういった問題は、社会全体が連帯してどうやって救済していくかということをやっていく必要があると思います。
 そのためには、ある程度の法的な措置も必要になってくると思いますので、そういった具体的な対策について検討していただきたい。例えば、化学物質フリーの生活空間をどうしたら作っていけるのか。予算措置や協力体制といったものを早急に整備していく必要があるのではないかと思っています。そうすることが、将来予想されるような被害の未然防止にもつながっていくと思います。
 3点目は、規制のあり方の検討についてですが、やはり次世代の視点に立った規制のあり方を検討すべきだと思います。現在いる子ども、赤ちゃん、これから生まれる胎児の健康を守る、そのために私たちは何をすべきなのか、そして何をやめるべきなのか、これを真剣に考えていかないといけないと思います。便利さを追求して子どもの健康をないがしろにするのはばかげていると思いますので、次世代にとって私たち全員加害者であるという認識に立ち、環境基準や安全基準の改正、学校や家庭内の室内汚染の問題にも踏み込んだ規制強化が必要ではないかと思います。
 4点目、リスクコミュニケーションのあり方について、私たち一人一人が環境問題の当事者意識を持つことが大切だと思います。組織や立場を超えた一人の人間としてどう行動していくべきなのか、現在のあり方でいいのかという視点で見直す、そのための議論を深めていってほしいと思います。
 また、私たち自身もそれぞれの地域でそういった議論や活動を積極的に進めていきたいと思っています。環境問題の責任について、人のせいにするのはやめにした方がいいというのが私の意見です。ありがとうございました。

(司会) ありがとうございました。円卓会議への要望として4点、木村さんからご提案いただきました。1つは負の遺産から学ぶべきことということで、被害の未然防止、拡大防止、救済。2つ目は、現在実際に起きている健康被害について何らかの法的な手段を取るべきではないか、具体的な対策を取るべきではないかというご提案でした。そして、3つ目が規制のあり方について議論すべきだ。4つ目はライフスタイルとも関係してくるのですが、一人の人間としてどうかかわっていくか。そのような観点から議論してほしいというご提案でした。ありがとうございました。
 ほかの方、どうぞ、中地さん。

(中地) 3点お願いしたいと思います。1点は、円卓会議の委員の構成が首都圏に偏っているような感じがして、市民というセクターでいうと地方の選出の方がおられてもいいはずなので、もっと地方の意見を出してもらって検討に反映させていただきたい。2点目は、私の報告でも言いましたが、未規制の化学物質を削減していくとか、あるいは管理していくというようなことについて、もう少しルールづくりを提案していただきたい。
 3点目は、少し環境省の所管から外れるかもしれませんが、今、市民運動の中では放射性廃棄物の「スソ切り問題」という言い方をしていますが、福島の1号炉など、老朽化した原発が廃炉になって解体ということがあります。それで、放射線のレベルの低いものは一般の廃棄物と一緒にしようということで、原発周辺のコンクリートの廃棄物や鉄骨など、場合によってはリサイクルに回すというようなことも考えておられるようで、そういったものは今まで化学物質という範ちゅうでは取り扱われてこなかったわけです。原発の中で使われているものは全部原発の放射性廃棄物というかたちで管理してきた、文部科学省の所管だったわけですが、それが、一定のレベル以下は全部一般の廃棄物と同じ扱いになりますので、環境省や経済産業省の所管というかたちになってくるわけですから、その辺も一度議論していただきたいと思います。

(司会) ありがとうございました。この場は議論する場ではないのでご要望ということで伺っておきたいと思います。3点、中地さんからご提案がありまして、1つは円卓会議の委員がどちらかというと中央に偏っているのではないか、地方の意見を出せる人を考えていただけないかということ。2点目は、未規制の化学物質に対してどうするか、何らかのルールを検討していただけないか。3点目として放射性廃棄物についてのご意見がありました。ありがとうございました。
 ほかに、どうぞ、ご自由に。

(堀野) 安全性の調査研究というパンフレットをいただいているのですが、ハザード評価、リスク評価、こういうものをできるだけ早くしていただきたい。といいますのは、先程私から発表しましたが、例えば、電気集じん機などを付けて外へ出ないようにしているわけですが、少なくしようと思うと、限りなく投資がいるわけです。やはりお金の面でも資源に限度がありますので、何が今一番危険なのかがわかれば、優先順位を決めて投資できるということです。その物差しを早く知りたいということです。

(司会) ありがとうございました。堀野さんから、安全性の調査研究を早くやって、優先的に改善すべきものを指摘してほしい、そういうご意見だったと思います。
 それでは、梶間さん、どうぞ。

(梶間) まず、化学物質の中で、現在無害ということで発売され、PRTR法に含まれる物質の中で13項目について使用しているわけですが、そのうちいくつかは、当初無害、そのあといろいろ問題が発生して有害物として取り扱われたものはたくさんあるわけです。そういう意味から、こういうものが市販される前に、もう少し事前調査の充実を図っていただき、使用したあとで問題が発生しないように何らかの方法を考えていただきたいということです。
 もう1点、私は、小学校高学年を対象に環境問題について教えによく行くわけですが、その中で感じることは、教科書には公害の結果だけが載っていて、公害や化学物質についての教育は何もされていないということです。小学生と話していますと「私たちは結果しか知らないので、悪いことしかわかりません」ということで、最初にかえって、法の解釈など、どういう法がどういうかたちであるのかということを簡単なものでも教えてもらいたい、そういうのが小学生の意見でもありますので、その辺も含めて検討願えればと思っております。

(司会) ありがとうございました。梶間さんからは、当初問題がないということで使っていてあとから問題が出てきた、非常に混乱が生じるということで、事前にいろいろ審査をしてくれないかというご意見。もう1つは、広い意味の環境教育だと思うのですが、環境や安全の教育を小中学校でぜひやってほしい、そういう意見と承りました。
 ほかにいらっしゃいますか、中村さん、どうぞ。

(中村) 化学物質とは直接関係ないかもしれませんが、私たちNPO湖南環境というのは、こういう場所で紹介されたのは初めてで、行政なり、あるいは市民団体がいろいろありますが、そういうところとパートナーシップを組みながら今後とも展開していきたいと思いますので、声をかけていただくことと、いろいろ教えていただくことがあればどんどん声をかけていただければと思っております。
 それと、NPOというと、産業界、企業のこの活動に対する理解がちょっと不足しているのではないかという気がしているのですが、もっと産業界のトップやミドルのNPO活動への理解と支援をいただき、賛助をしていただければさらに活発に活動できるのではないかという気がしております。

(司会) ありがとうございます。そうすると、円卓会議への要望としては、市民活動をいかに活性化していくか、社会的位置づけをどう考えていくか、その辺の議論をしてほしいという理解でよろしいですか。
 それでは岩本さん。

(岩本) 先程瀬田さんの話にもあったのですが、今こういった微量化学物質の問題というのは、学者の中でもいろいろ意見が分かれていると思うのです。データの見方にしてもいろいろな見方がある。そうすると、やはり市民の方が一番困るのはそこではないかと思うのです。
 いろいろな意見を聞く場をうまくセットし、その中で皆さん一人一人が、予防原則といいますか、それぞれの立場で判断していくことが必要ではないかと思います。どうもその辺の末端までの情報の伝わり方が不十分ではないか。あるいは、共通の勉強する場といいますか、そういった場をこれから作っていくことが必要ではないか。社会の人々の役割が大きくなってくると思うので、その人たちに正しい理解をしていただくことが一番大切ではないかと思います。

(司会) ありがとうございました。自己責任、そういう時代で、判断できるようなデータ、いかに情報を流していくか、そういう場を持つべきだというご意見を伺いました。どうぞ。

(深田) ありがとうございます。今のご意見に対して、もう少しお願いしたいと思っております。今日、私は行政という立場で出させていただいておりますが、当然地元に帰れば一市民でございます。
 そのようにいろいろな立場がそれぞれあるわけですし、化学物質の問題に対する理解あるいは認識もそれぞれ違うわけですので、そういった立場や認識の違いを超えてみんなで議論していかないことには方向付けというのは出てこないと思っております。
 そのためには、今お話がありましたように、広くそういった情報をきちんとお伝えするものが必要だと思っておりますし、特に化学物質というのは、一般という言い方は語弊があるかもしれませんが、普通の人間には非常にわかりづらい部分がたくさんあると思いますので、そういった情報をわかりやすく共有できる具体的なシステムを作ることが非常に大切だと私も思いますし、そのためには、情報発信者としてのマスメディアの役割というのがあるのではないかと思うのです。そういった面でのご議論をお願いできれば私としては大変うれしいと思います。ありがとうございます。

(司会) ありがとうございました。深田さんからは、いかに情報を共有していくか、その中でマスメディアの力が非常に大きいので、マスメディアをどのように利用するか、マスメディアのかかわりというものを議論してほしい、そういうご意見だったと思います。
 出光さん、どうぞ。

(出光) 私の業界は、深田さんの発表の資料の中にもありましたが、同じように考えると、深田さんと意見は同じなのですが、例えば、水資源という議論をした場合、私たちが作る製品から環境に負荷を流している、これはそのとおりだと思うのです。もちろん、私たちはできるだけ削減する努力もしています。
 同時に、例えば下水処理、下水の負荷は、私どもの商品より、当然のことながらし尿や残飯の方が多いといわれているわけです。そうすると、個人の生活の中で、台所からどのように処理するのか、これはやはり一人一人の問題です。それから、下水の普及率を考えても、滋賀県は当然ご存じだと思いますが、日本でもせいぜい60%です。イギリス、フランス、ドイツと比べてどうなのか、これは行政の責任も考えなければいけない。木村さんの34ページは私も同感なのですが、やはり批判ではなく提案、対立ではなく対話、要求ではなく協働という言葉が、この円卓会議のキーになる考え方だろうと思うのです。
 ですから、部分の最適を要求するのではなく、全体の中でどうやるかというのが本来この円卓会議の趣旨ではないかということで、お互いに何ができるのだろうかというのを、どれだけお互い提案し、理解しあえるか。おそらく、納得できないところはお互いにあると思うのです。立場も認識も違うところがあるということで、ただ、理解しあうことはできるのではないかと思います。

(司会) わかりました。まだご意見はあると思いますが、そろそろ時間ですので、せっかくですから、フォーラムにおいでの皆さん方からこの円卓会議についてのご意見なりご要望なり、また、先程6人の方に発表いただき、その方への質問も書いていただいておりますので、残り30分ほどをそちらに使いたいと思います。

5.フォーラム参加者からの要望・意見

(司会) では、順番に質問にお答えいただけますか。

(木村) お名前はお読みした方がよろしいのでしょうか。(名前の公表の可否は書いていないので、)では、お名前は呼ばずに。
 先程説明しました「自分のまちの化学物質研究会」について、「参加者の方がほとんど住民ということで、正確な知識をちゃんと理解していないとマスコミ等で報道されて危険視されているもののみに注目してしまうおそれがある。専門家を招いての勉強会や環境学習・教育をどのようにされようとしているのか。また、企業や自治体にどのように働きかけようとされているのか」というご質問をいただきました。ありがとうございます。
 これもまた宣伝になるのですが、受け付けに黄色のビラがあります。実は、明日、この時間、同じこの場所で、中南先生という方の研究会があります。そこで、「命、暮らしと化学物質」というタイトルで特別講演を予定しております。無料ですので皆さんぜひご参加ください。
 こういったかたちで講演会などもしようと思っているのですが、1つ重要だと思うのが、専門家の方から学ぶことだけが環境教育や環境学習ではないということで、健康被害を受ける人というのは社会的な弱い立場の人であったり身体的に弱い人であったり、実際に被害のある方から学ぶというのは、これまでの公害問題も含めて非常に重要なことだと思っていますので、実際の事例に学んでいく、材料は日本各地にありますので、そういったものを生かして学習会の場で一緒にやっていきたいと思っています。
 また、特定の化学物質に偏ってしまうのではないかというのは、私もそのように思っており、例えば、化学物質過敏症の方であれば、隣の方の化粧や整髪料で近づけない、この会場に来ること自体が難しいわけです。そういった方から、自分が実際使っているものについても問題があるのだという認識を持っていくこともできると思いますし、そういうかたちで進めていきたいと思っています。
 企業や自治体にどのように働きかけていくかということですが、これはこれからの宿題で、みんなと一緒に考えていくのですが、悪いところや問題点を見つけていくのではなく、できればよいところを、今日ご発表いただいたいろいろな方がさまざまな取り組みをしていらっしゃいます、そういういいところを見つけていくのも環境運動の1つの重要なことだと思いますので、優良企業のランキング調査や、行政でいえば優良な行政マン、個人個人、非常にすばらしい活動をしている、そういう人をピックアップして広めていくというのも環境運動を進める1つの材料かと思いますので、そんなことができればと思っています。

(司会) ありがとうございました。それでは、深田さん、お願いします。

(深田) 会場の方だと思いますが、「滋賀県行政の方で管理責任を知っている人」ということになっているのですが、「1、滋賀県下におけるPCBの保管・管理状況は十分把握できているか。2、その処理の進展状況はどうなっているか。3、未処理の量は何トン残っているか。4、その最終処分は何年までに完了する計画になっているか」という質問です。
 申し訳ございませんが、所管しておりませんので詳しくは存じ上げません。保管責任があることは知っておりますが、私の知る範囲で答えさせていただきます。処分方法が決定されるまでは保管責任があることは私も承知しておりますし、県議会でも数年前に取り上げられたことがありますので、そのときの答弁としましては、県内の保管量は把握できているということです。
 ただ、問題が発生した昭和40年代ごろの保管量に比べると、不明量が出てきているのも事実です。今、国の方で処分方法や具体的な処分場所などが検討されておりますので、それが決定されたあと具体的な処分に移っていくと思っております。したがいまして、まだ当分は現在保管されている状況が続くのではないかと私は思います。

(司会) ありがとうございました。
 それでは堀野さん。

(堀野) 1点だけ質問が来ております。かなり専門的なことで恐縮ですが、私の説明の中で、「研磨スラッジを除鉄後原料化」と書いておりますが、「その除鉄したものはその後どのようにされるのでしょうか」という質問です。
 研磨剤は酸化アルミニウムで、それに鉄が半々ぐらい含まれると考えてください。それを脱水・乾燥したあと、有害物質の入っていないものに関してはセメント会社が引き取って、セメントの原料にしていただいております。セメント会社が使えないものは埋立処分です。

(司会) では、梶間さん、どうぞ。

(梶間) 私の方は2点いただいておりまして、まず、ゼロエミッションの定義ということですが、私どもでは、総排出物の0.03%以下がゼロエミッションの達成というかたちで定義しています。
 もう1点は塩ビ系の産廃プラスチックの処理についてです。まず、塩ビは皆さんご存じだと思うのですが、60%が食塩だと考えてもらって結構かと思います。ですから、塩素系プラスチックということになるのですが、低温で燃やすと確かにダイオキシンは発生します。大体、今、800度以上で燃焼させますと90%以上のダイオキシンがなくなるとされております。
 塩ビはプラスチックの中でも非常に特性のいいプラスチックで、耐光性がよく加工性がよく、耐薬品性に富んでおり、これに代わるものはあまりありません。そういうことから、処理時の問題点が非常に発生してくるわけです。
 処理はどうされているかというところに「分別していますか」ということなのですが、まず分別してリサイクルをします。塩ビは非常にリサイクルしやすいプラスチックで、構内でも95%はリサイクルしております。分別がまず必要なものですから、徹底してやっております。その後どうしても処理できないものが発生するわけですが、それは高温処理しています。2000度以上の電気炉ですべて処理します。そうなるとダイオキシンは全く発生しません。

(司会) ありがとうございました。中村さん、どうぞ。

(中村) 2点ありますが、そのうちの1点についてお答えしたいと思います。
 質問の内容は、「環境コミュニケーションの手法として持続可能ということがコンセプトになっているということで、グローバルスタンダードになりつつあります。このコンセプトについて、環境保全だけでなく、社会的公正や経済発展という側面についてもバランスよく考慮していくことが必要となります。環境NPOという立場から、持続可能についてどのような展望を持たれるか、見解を持たれるか。さらに、持続可能性について、業者や行政に対する期待があればお聞かせください」。
 的確な答えでないかもしれませんが、お答えしたいと思います。ISO14001の中には、キーワードとしては、継続的改善をしていく、スパイラルアップしていくということが基本なので、それをやっていくにはPDCAも回しながら改善していく、これが基本です。我々のメンバーにはそういう経験者が非常に多くいるということと、例えば「マザーレイク21計画」におきましても、2020年に琵琶湖の水が昭和40年代前半の水質にと、あるいは、あるべき姿は2050年には30年代の水質にと、こういうことがありますが、これぞまさに継続的改善をやらないと、いくら行動計画を立てて実践に移しても3~4年でへたってしまうようではいけない。やはり、継続的改善を基調に生かしていかなければ達成できないものだと思っております。
 事業者や行政も、滋賀県は特に行政もISO14001を取得し、さらに家庭版ISO14001を推進していこうとしておりますが、こういうことを常に行動しているということが持続可能ということにつながってくるのではないかと思っております。

(司会) ありがとうございました。中地さん、お願いします。

(中地) 「NGOびわ湖リスクコミュニケーションネットワークでは、市民対行政、市民対企業、行政対企業の間のリスク問題のトラブルの仲裁にはどのような組織がよいと考えられますか」という質問ですが、まだまだ私どもの会で共通の見解というのはありません。
 公害等調停委員会というのがあり、公害被害の問題については裁判より迅速に解決する方法というかたちで、法律も作られてやっているのですが、実際私どもがかかわった経験からしますと、例えば香川県の豊島のように、公害調停を申請してから7年かけてようやく調停成立というようなところもありますし、大きな事件ですと非常に時間がかかるというのは同じだと思います。
 こういったリスクコミュニケーションを図るような問題というのは、もっと小さなことでなるべく早く短期間に解決しなければいけないことがあると思いますので、できれば常設の何らかの中立の機関、例えば、地方労働委員会のようなものを私は考えているのですが、そういうかたちの行政と企業と市民の代表が入った公的な機関を作っていただき、そこで非常に小さな問題も含めて調整を図るようなことをしないといけない。
 例えば、学識経験者の方にファシリテーターを依頼するにしても、数が多くなると、例えば、北野先生が毎日ほかのところに出かけるような話になりますと研究もできませんから、そういう意味で、専門的な方を養成することも必要ではないかと思っております。

(司会) ありがとうございました。この円卓会議で議論していただきたいテーマ、要望、それについてはまた後程事務局から発表していただきますので、まだいくつか質問が残っていますから、加賀爪さん、どうぞ。


(加賀爪) どなたでもいいので回答をということで、「滋賀県には、我ら共有の財産、琵琶湖がある。それ以外の関西地域で化学物質の環境リスクを下げるには、このような共有できるシンボルが必要なのだろうか」というご質問です。
 難しい質問ですが、おそらく、シンボルがあった方が取り組みやすいし、取り組みの成果が検証できるということになると思います。そういう意味で、関西地域でと考えますと、山陰地方を除けば、瀬戸内海がやはり共有の場として考えられるのではないかと思います。
 ただ、そういうシンボルが重要なのか、もしくは、何か問題を共有化して市民なり行政なり企業なりがそれぞれの役割を持ちながら、小さなことでも解決していったという一つ一つの積み重ね、経験、記憶、そういうものの方が大きな力になっていくのではないか。そういうものの積み重ねでしかないのではないか。地域で現場を預からせていただいている立場からはそういう気がしております。

(司会) ありがとうございました。では、もう4~5分時間を取りまして、片桐さん、どうぞ。

(片桐) 私は、ほか2名の方に質問が来ていまして、かなり手厳しい質問ですが、「質問と答えを聞いてもかみ合わない、方向性が見えない。責任者が不在、だれが責任を持って解決するのですか。企業と行政ですよ、住民には技術的にも困難です。データも公開されていない。行政の代表の話を聞きたい。このような問題がこれからも発生する。リーダーシップを取る責任者、腰が引けている印象を受けます」ということです。
 7ページの「問題解決のために必要なこと」という中でお話ししたことだと思うのですが、まず、こういうかたちでリスクコミュニケーションをやっていく段階で、いろいろな課題があろうかと思います。私も行政にいたときにいろいろやっていましたが、汚染事件に向けての解決の方法や廃棄物処分場の問題といったものについては、当然行政はリーダーシップを取ってやっていかなければいけない、それはあたりまえのことです。それをやっていく段階で、どこで情報を公開するのか、どの時点で公開するのかというのが一番難しいと思います。
 この前、第2回(化学物質と環境円卓会議)ですか、浦野さんが来ていろいろ話したときに、できるだけ早い時期に情報を公開すればスムーズに話し合いが進むでしょうという意見もありましたし、この会議では、今後その中でリスクコミュニケーションをどういうかたちでもっていくか、これから詰めていきたいと思いますが、要するに、どういう問題についてはどういうかたちで進めていくかということ。住民と紛争が生じてしまうような問題については、解決のしかたがまたちょっと違ったかたちになるかもしれません。汚染事件のようなかたちになりますと、化学物質全般についてのリスクコミュニケーションとは違ったかたちで考えなければいけないかもしれませんので、今後この円卓会議の中でその辺の切り分けができるかどうかですね。
 行政には行政の責任がありますし、企業には企業の責任があります。また、市民の方々、個々の市民の方々、NGOの方々、少し役割が違うかもしれませんが、その辺の役割分担ということについてもいろいろ議論していかなければいけないのではないかと思います。私自身いろいろやってきていますし、行政の方としては、市民の団体の方々、個々の市民の方々、どうやってバックアップしていくか、それも非常に大きな問題になろうかと思います。
 私どものセンターでも養成講座等をやりまして、市民の方々をいろいろバックアップするような体制を取りつつありますが、まだまだ十分でないとは思います。そういう中では、地方の研究機関ですとどうしてもすべての研究をできるわけではありませんので、大学や国の研究機関からいろいろな情報を収集し、それをいかに早い段階で市民の方々にどういうかたちで知らせるか。それが地方の研究機関の役割ではないかと考えております。

(司会) ありがとうございました。有田さん、どうぞ。

(有田) 片桐さんと同じ質問が私のところにも来ていまして、これについてはたぶん今日のスピーカーに、意見ではなく、私は質問というかたちで聞きましたので、会場にみえている方で、なぜあんなことを聞くのだろうと思われた方がいらっしゃるのだろうなとは思います。
 ただ、「問題解決のために必要なこと」ということで出されていたペーパーでしたので、今、私は、ちょっとこことは関係ないのですが、行政訴訟と司法制度改革の方も研究しており、その中で、要するに情報が少ないから行政訴訟が少ないというようないろいろなデータもあるのです。
 そういう中で、情報公開がないではないか、データが公開されていないではないかというご意見とはよくわかるのですが、リスクコミュニケーションの中で、ファシリテーターという役割を今後どういうかたちで養成するか、1つは、そういう部分もあったのでお聞きしたということです。
 もう1つ、これは片桐さんのセンターが関係しているのですが、私は1990年ごろから大気汚染測定も水質調査もずっとやってきていますが、そのときに、行政のデータも含めて出していただいています。それで比較しながらやっていますので、そういう意味では一緒にやっていけることもあるし、というような意味もあって、中地さんにはそのように質問しました。
 それから、これは質問ではなくご意見で、「木村さんのご健闘を祈ります」とお書きになっていて、NGO代表の市民が何とふがいないのだろう、何を聞いているのかわからないというご意見かもしれませんが、やはり話し合いの中で、私たちNGOはもちろん科学的な知識の少ないところもあるのですが、その中で、経験や勘で変だなというのは確実にあります。
 そういう中で改善していくものと、私が先程、予防原則のことを質問しましたのは、そのシステムをどのようにしていくかがはっきりしないと、感覚だけで言っていても先に進まないというのがあってお聞きしました。

(司会) ありがとうございました。田中さん、どうぞ。

(田中) 今日、いろいろ聞いていますと、リスクコミュニケーションということで若干感じたことがあるのですが、特にこの地に来まして、滋賀県では、その当時そういう言葉があったかどうかわかりませんが、石鹸を使うようになったとか、農薬を減らすとか、市民運動の中から成功した例だと思うのです。
 この当時、滋賀県がどのような苦労をされたのか、そういった成功例もぜひ聞いて、やはりリスクコミュニケーションに、我々は今どうやるべきかということを考えているのですが、その1つの参考になっていくのではないかと思います。

(司会) ありがとうございました。村田さん、どうぞ。

(村田) 1つ前のセッションで、三菱樹脂の梶間さんでしたか、初めは無害だというので問題なく使えていたものがあとになって有害だとわかるのは困る、これは、市民側にとっても全くそのとおりです。これはこの円卓会議の大きな議題の1つになるかもしれません。今まで、行政がこれは害だというのを証明してきたわけです。その立証責任がどちらにあるのか。供給する側が安全を確かめてから供給するのが市民にとって一番ありがたいわけです。
 これは予防原則の話と関連しますが、だから明日からそうしろという簡単な問題でないことは理解していますが、この問題はやはり円卓会議で話すべき1つのテーマだと思います。

(司会) はい、わかりました。黒木さん、どうぞ。

(黒木) 農林水産省あてに2つ要望が出されています。1つが有機農産物の認証について、それと、農薬の空中散布を廃止するようにと。これにつきましては、ご要望ということで農水本省に伝えたいと思います。
 ただ、ちょっとお断りしておきますと、有機農産物の認証につきましては、消費者に本物の有機農産物を食べていただこうということから導入しており、この方は、一生懸命作っているが周りの土地で普通の農業が行われていてなかなか認証されないということでお悩みのようです。そういう話を多々聞いておりますので、本省の方に検討するように伝えておきたいと思います。
 また、農薬につきましても今研究しており、無毒化されるようなものを開発したり、病害虫に強い農作物を作るというようなことでやっておりますので、日々の農作業が大変でしょうが、研究開発が進むまでもうしばらく待っていただきたいと考えております。

(司会) ありがとうございました。ほかに質問は来ていますか。瀬田さん、どうぞ。

(瀬田) 実は、私は旭化成ですが、滋賀県に支社があります。ここに来る前、昨日の夜入って工場に行き、この地区でどういうことが問題になっているか、地域の皆さんがどういう活動をしておられるのか、旭化成としてどうしているのか、つぶさに聞いてきました。あわせて、伏流水の出てくるところや、そこから住宅地を通り、農地を通って琵琶湖に至る水の流れ、一部ではあるが湖岸の状況も一通り見てきましたので、先程からのお話をお聞きして、多分よりよく理解できたと思っています。
 したがって、こういうフォーラムはもう終わりかもしれませんが、折角地域に来たのですから、現場の対環境文化や努力の様子を自分の眼で見てから、議論するとよいのではないかと思います。

(司会) ありがとうございました。まだいくつか質問が来ているのですが、時間になってしまってすべてお答えできなくて申し訳ありません。次は、この円卓会議について、どういうものを議論してほしい、どうあってほしいという要望をいただいていますので、事務局からご説明をお願いいたします。

(事務局) その前に1つご質問が来ておりまして、PRTRの届出につきまして、いわゆる1トンでのスソ切りについて、この1トンが妥当なのかどうかというご質問です。もともと法律そのものの目的が、化学物質の排出量等を把握することにより、ひいては化学物質の管理の適正化、改善を図っていこうということです。その中で、当然これはメンバーからもお話がありましたように、化学物質の排出量を把握することは大変な負担を伴うことですので、目的とそれに伴う負担のバランスを考えながらこの限度が定められている。この限度につきましては、パイロット事業あるいは自治体独自の調査等を踏まえ、その結果について国の審議会等での議論、さらにはパブリックコメント等を通じて定められたもので、現時点における知見上はおおむね妥当なものであろうと考えております。
 そのほかたくさんのご要望・ご意見、あるいはこの円卓会議で議論していただきたいことというのが来ておりますので、時間の関係で、項目のみご紹介させていただきます。
 リスク・コミュニケーションの進め方についてのルールづくりについて議題として扱ってほしい。
 企業が製品中に使っている物質の公開と標準品の提供について議論してほしい。
 母乳による乳児への影響、あるいは乳児や幼児用のおもちゃや食器に対する化学物質規制、さらには生態系への影響について議論してもらいたい。
 人体や生態系への影響に何がわかっているのか、わかりやすく国民に伝えることについて。また、円卓会議の運用について、今の人体や生態系への影響について専門に研究している研究者をメンバーに数名は入れるべきではないかというご意見もあります。
 化学物質の削減について、また、廃棄物の埋立処理を中止することについてというご意見もあります。これは中地さんのご意見等にもありましたが、未規制あるいはグレーゾーンの化学物質、影響の不確実な化学物質の削減への取り組み方法について議論してほしい。あるいは、個々の事業所の化学物質使用削減が地域的なリスクの総体への削減にどのように効果があるのかということについて議論してほしい。
 飲み水の安全性と化学物質にフォーカスしたテーマについて議論してほしい。
 技術が後退しても有害物質は厳しく制限するのかどうか。化学物質管理の今後のあり方について議論してほしい。あるいは、5年、10年と長期ビジョンにおける企業の化学物質管理のあり方について議論してもらいたい。
 市民に対する化学物質リスク・コミュニケーションのあり方について議題として扱ってほしい。
 化学物質を削減した生活、あるいは経済等を明らかにして、そのうえで化学物質とのつきあい方を議論してほしい。
 システムや教育といったコミュニケーションのための基盤づくりについて議論してほしい。
 農業や森林保全といった環境問題の原点とは何かという議論もしてほしい。
 最後に、紹介する必要はないということですが、この円卓会議はゲストとメンバーのかけあいがうまくとても感心しました(笑)。時間配分も絶妙と感じました(笑)というご意見もいただいております。

(司会) どうもありがとうございました。

6.閉会
(司会) 残念ながら時間になってしまいました。メモには私が最後に一言総括しろと書いてあるのですが、やはり化学物質を安全に賢く使っていくには、企業と行政と住民のパートナーシップの確立が必要だと思っております。そのためにはもちろん教育も大事ですし、それぞれの役割分担をどうするかということも議論が必要だと思っています。
 その1つの手段として、今日盛んに出てきたリスクコミュニケーションというものがあるのではないか。ただ、リスクコミュニケーションとあまり大上段に構えないで、例えば住民との対話集会など小さなものから始めていき、最終的には本来のリスクコミュニケーション、例えばファシリテーターを置くなど、そのようなかたちが必要だろうと思っております。
 今日は長時間にわたり本当にありがとうございました。それでは、これにて閉会させていただきます。どうもありがとうございました(拍手)。