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化学物質と環境円卓会議(第8回)議事録

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■日時:平成15年12月25日(木)13:00〜16:00
■場所:主婦会館プラザエフ 9階「スズランの間」(東京都千代田区六番町15)
■出席者:(敬称略)
<ゲスト>
  大竹千代子 化学物質と予防原則の会
  早水 輝好 千葉市環境保全部長
  <学識経験者>
  北野 大 淑徳大学国際コミュニケーション学部教授
  安井 至 国際連合大学副学長
  <市民>
  有田 芳子 全国消費者団体連絡会事務局
  後藤 敏彦 環境監査研究会代表幹事
  崎田 裕子 ジャーナリスト、環境カウンセラー
  角田季美枝 バルディーズ研究会運営委員
  中下 裕子 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長
  村田 幸雄 (財)世界自然保護基金ジャパンシニア・オフィサー
  <産業界>
  吉村 孝一 石鹸工業会環境安全専門委員会委員長(大池弘一代理)
  鳥居 圭市 (社)日本化学工業協会常務理事(河内哲代理)
  瀬田 重敏 (社)日本化学工業協会広報委員長
  田中 康夫 レスポンシブル・ケア検証センター長
  横山 宏 (社)日本電機工業会地球環境委員会副委員長
  大野 郁宏 (財)チェーンストア協会環境委員
  <行政>
  片桐 佳典 神奈川県環境農政部技監
  朝倉 健司 農林水産省消費・安全局総務課食品安全危機管理官(染英昭代理)
  滝澤秀次郎 環境省環境保健部長
  中尾 禎男 厚生労働省医薬食品局化学物質安全対策室長(鶴田康則代理)
  福水 建文 経済産業省製造産業局次長
   (欠席) 原科 幸彦  東京工業大学工学部教授
大沢 年一  日本生活協同組合連合会環境事業推進室長
菅 裕保   (社)日本自動車工業会環境委員会副委員長
   (事務局) 安達 一彦  環境省環境保健部環境安全課長 
■資料:
○事務局が配布した資料
資料1  リスクコミュニケーションに係る議論について [PDF(885KB)]
資料2−1  予防的取組方法(Precautionary Approach)と予防原則(Precautionary Principle)(大竹さん講演資料) [PDF(470KB)]
資料2−2  予防的な取組方法と予防原則に関する国際会議等における議論の状況(早水さん講演資料) [PDF(168KB)]
○事務局が配布した参考資料
参考資料1  化学物質と環境円卓会議リーフレット [HTML]
参考資料2  第7回化学物質と環境円卓会議議事録(メンバーのみ配布) [HTML]
○円卓会議メンバーが配布した資料
滝澤さん資料 化学物質アドバイザーの派遣状況について [PDF(94KB)]


■議事録

(安達) 本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。時間になりましたので、第8回化学物質と環境円卓会議を開催いたします。本日は北野さんに司会をお願いしております。北野さんよろしくお願いいたします。

(北野) ただいまから第8回化学物質と環境円卓会議を開催したいと思います。今回はまず1時間ほど、これまでのリスクコミュニケーションに関する議論の整理を行います。その後、化学物質対策に関する予防(Precaution)、予防的な取組方法(Precautionary Approach)、予防原則(Precautionary Principle)という用語について、今日は主として勉強したいと思います。それについて、本日は化学物質と予防原則の会の大竹千代子さんと千葉市役所の早水輝好さん、お二人の専門家をお招きしております。お二人からはそれぞれ20分程度レクチャーいただき、その後議論をしたいと思います。では事務局から配布資料の確認等をよろしくお願いいたします。

(安達) まず、メンバーの交代についてご報告させていただきます。産業界から、日本チェーンストアー協会の小林珠江さんに代わりまして、大野郁宏さんにご参加いただきます。次に出欠状況について報告させていただきます。日本石鹸洗剤工業会の大池弘一さんの代理として吉村孝一さん、農林水産省の染英昭さんの代理として朝倉健司さん、厚生労働省の鶴田康則さんの代理として中尾禎男さん、日本化学工業協会の河内哲さんの代理として鳥居圭市さんにご出席いただいております。なお、本日は大沢年一さん、管裕保さん、原科幸彦さんがご欠席です。
 次に資料の確認をさせていただきます。まず、1枚紙の議事次第がございます。資料1として「リスクコミュニケーション係る議論について」という若干厚めの資料、資料2−12−2として、それぞれお話しいただきます大竹千代子さんの資料、早水輝好さんの資料をお配りしております。また、メンバーからの資料として、滝澤さん資料が1枚入っております。それ以外に参考資料1として円卓会議のリーフレット、参考資料2として第7回の議事録をメンバーのみにお配りしております。
また、お手元の資料について、簡単にご説明させていただきます。まず、資料1「リスクコミュニケーションに係る議論について」ですが、前回のビューロー会合におきまして、これまでの円卓会議においてリスクコミュニケーションについて出た意見を整理しておこうということとなりました。これまでの円卓会議の議事録についてはご案内のとおり、すべて環境省のホームページに掲載しておりますが、今回はその中から、特に直接リスクコミュニケーションに係るようなご発言を事務局で抜粋し、要約しました。それが資料1の5ページ以降になります。これだけでもかなり厚みがありますので、さらにできるだけ類似のご意見をまとめて作成したものが、同じく資料1の1ページから4ページまでの表になります。まとめる際に、4つのカテゴリーに分けました。まず、必要となる関連情報の不足についての議論の現状と対応についてまとめました。さらに、市民側メンバーからの意見、産業側メンバーからの意見、行政側メンバーからの意見、学識経験者メンバーからの意見で分けております。同じように2つ目のカテゴリーとして、市民と企業の信頼関係というテーマに基づくご発言をまとめ、3つ目として市民参加についてのご発言をまとめ、最後はその他についてまとめてあります。内容については、メンバーの方々にはあらかじめお送りいたしましたので、説明を省略いたします。なお、市民側メンバーの意見の欄に記載されておりましても、市民側メンバーの総意ではなく、一人、あるいは複数の方のご意見であることにご留意いただければ幸いです。次に、メンバーからの資料として1枚紙の「滝澤さん資料」がございます。環境省は、化学物質についての通訳的な役割をする化学物質アドバイザーについて、パイロット事業を実施しております。その化学物質アドバイザーの派遣に関して、本年4月22日から11月末までの約7ヶ月間の実績について取りまとめました。「1」に書いてありますように、派遣回数はこれまで16案件、延べ18回の派遣を行っております。派遣依頼者の所属は、案件数で行政が2件、企業等が4件、NGOが2件、NPOが5件、その他公益法人が2件、その他1件は大学の講師で、合計16件になります。また、依頼内容については、表2のように、「PRTR制度について」が13件、「PRTRデータの読み方について」が8件とかなりの部分を占めております。それ以外に「リスクコミュニケーションについて」が7件、「化学物質のリスクの考え方について」が7件、「個別化学物質の最新の知見について」が2件という内容でした。簡単ではございますが、資料の説明は以上でございます。

(北野) ありがとうございました。安達さんから「滝澤さん資料」の説明をいただきましたが、この内容についてご質問がありましたら受け付けたいと思います。

(瀬田) この化学物質アドバイザーが設定された目的から考えて、派遣回数や依頼内容はその目的に沿っているのでしょうか。もう1つはこの派遣回数が多いと見るか少ないと見るか、その辺りの自己評価はいかがでしょうか。

(安達) 事務局が行っている事業ですので、事務局でお答えしたいと思います。まず、事業そのものが15年度と16年度をパイロット期間としております。派遣実績は16件ですので、この段階で評価を出すのは早いのではないかと思います。事業をもう少し進めた上で、必要な評価を行っていきたいと考えております。
目的に添った派遣ができているのか、というご質問に関しては、それぞれ要望があった時点で適切なところに派遣しており、今までのところは、当初の目標に従った派遣を中心に行っていると考えております。いずれにしましても、このような制度がどのような効果を上げるのかについては、事業の結果を踏まえて評価し、今後の対策につなげていきたいと思います。

(北野) ありがとうございました。では崎田さんどうぞ。

(崎田) このような化学物質アドバイザー制度ができるだけ広まっていけば嬉しいと思います。今、評価というお話がありました。例えば、化学物質アドバイザーが話す前後で同じアンケートをとり、聞いた方の意識がどのように変化するのか等の評価を行い、リスクコミュニケーションの意味がはっきりわかるような調査をしていただきたいと思います。今、そのような取組は行われているのでしょうか?

(安達) 事前のアンケートは行っておりませんが、事後には必ず派遣要望のあったところに、その結果についてのアンケート調査を行っております。その結果の1つはアドバイザー自身に直接お渡ししておりますし、その結果をある程度まとめて評価につなげていきたいと思います。

(後藤) 質問ではなく意見になります。私は環境省の環境カウンセラー制度の設立以来、ずっとお手伝いしております。環境カウンセラーの中にも化学物質の専門家で、アドバイザーやファシリテーター(注:リスクコミュニケーションにおいて必要な人材であり、中立的な立場から議論を整理する司会の役割をする人のこと。)のようなことをしている方もおられます。同じ環境省の中で、15年度と16年度にパイロット事業としてのデータをとられることは素晴らしいことだと思いますが、日本の中には他の省庁の制度もありますし、市町村にも何らかのアドバイザー制度をつくっているところがあります。私は重なってもいいと思いますが、せめて環境省内くらいは、どのようなタイアップをするのか等を整理していただきたいと思います。

(北野) 他によろしいでしょうか?それでは本日の議題に入りたいと思います。資料1「リスクコミュニケーションに係る議論について」ですが、これは前回、第7回の会議の時に、事務局においてこれまでのリスクコミュニケーションに係る議論を整理し、メンバーの方には事前にご覧いただき、意見をいただいたものです。この資料1をもとにこれまでのリスクコミュニケーションに関する議論を整理したいと思います。内容についてはすでにお読みいただいておりますので、特に今日はこの内容について補足するもの、例えば空欄を中心に補足することがありましたら意見をいただきたいと思います。先ほどもお話にありましたが、市民側メンバーの意見と書いてありましても、市民側メンバーの総意ではなく、市民側メンバーから出た意見という意味で捉えていただきたいと思います。

(安井) これを拝見した段階では気づかなかったことについて、1つ補足したいと思います。「4.その他(各主体に望まれること)」の、「学識経験者メンバーから産業界側に望まれること」になりますが、最近、化学物質のリスクについて、いくつかの混同が行われている気がします。1つのきっかけはEUのRoHS規制です。RoHS規制の捉え方は人によって違いますし、日本でこの規制を適用するかについても問題ですが、最大のリスクはヨーロッパとの貿易問題、つまりビジネス上のリスクが非常に大きいことです。RoHS規制によって救われる人の健康被害や生態系への被害は、これから検討しなければいけませんが、物によってはそれほど効果があるものではないことが、既に明らかになっています。ビジネスリスクの議論と化学物質の健康や生態系への被害は切り離して議論をしていただきたいと思います。

(北野) 化学物質自体のリスクとビジネス上のリスクを分けて議論しようというご提案ですね。ありがとうございました。

(瀬田) 今、この資料の中の空欄部分やそれ以外で追加することがあるか、というご指摘を受けました。確かに空欄がいくつかありますが、議論の中ではある程度言わずもがなのところがあります。もしこれを充足するような意見を出すように希望されるのならば、次回にお時間を頂いてお話させていただきたいと思います。

(北野) 事務局の考えとしては、本日口頭でご意見をいただき、必要があれば書面でいただいた上で肉厚な内容にしていきたいようです。それをメンバーの皆様に読んでいただいて、ご了解をいただいた後に、環境省のホームページに載せるという計画があります。本日だけで議論を終わらせるつもりはありません。

(瀬田) 例えば「化学物質のマスフローやリスク情報等の不足」について産業界から意見がないことはあり得ないですし、その次のページについても信頼や環境報告書について色々なことを言ってきたので、空欄だからといって意見がないとわけではありません。是非そのような時間をいただきたいと思います。

(北野) わかりました。意見がないというわけではない、ということですね。後でまた、十分ご意見をいただきたいと思います。いずれにしても最終的にはメンバーの皆様方のご了解をいただいた上で、ホームページで一般に公開するという手順を考えております。事務局どういたしましょうか。次回に議論しますか?それとも書面でコメントいただきますか?

(安達) 基本的には書面でコメントいただきまして、その内容を踏まえて次回の初めに少し議論することも考えられます。まずご意見をいただいた上で皆様にご相談したいと思います。

(北野) それでは書面でご意見をいただいてそれを資料に継ぎ足し、次回の冒頭に議論した結果、最終的なものをホームページに掲載するという手順でよろしいでしょうか?

(瀬田) 表についてはそのようにしていただきたいと思います。その他の議論についてはこれから意見が出ると思いますから、今回できるところまでは議論いただきたいと思います。

(北野) この後のPrecautionary PrincipleやApproachについてのお話を2時間ほど予定しております。この資料1については1時間くらい時間が取れますので、今日できることは十分議論したいと思います。

(角田) このマトリックスの空白は意見がないという意味ではない、という説明をつけてオープンにすれば誤解がないと思います。また、例えばマスメディアの議論など、このマトリックスにはまらない議論もあったと思います。そのようなものをどうまとめるかという話し合いがあってもいいと思います。

(北野) 確かに、マスメディアもないですね。空欄だから意見がないというわけではなく、今まで議論されなかったから空欄になっている、ということでご理解ください。

(片桐) この資料は、これまでの意見をまとめたものだと思います。例えばこの中で「中小企業の情報」について、市民側メンバーと産業側メンバーの意見が記載されていますが、どのようにしたら情報を集められるかという議論をこの会議の中で行うのでしょうか。行政にこの情報を集めて欲しいとか、今PRTR法で国が全国ベースを行っておりますが、地域の中の情報は地方自治体が集めざるを得ないという状況になっております。このような状況で、誰がどのように情報を集めなければいけないのかという議論をどのような場面で行えばいいのでしょうか。

(北野) 私の理解ですと、この資料は今まで出たご意見を網羅的に載せたものであり、この円卓会議は何らかの決定をしたり強制力を持つものではありませんので、このようなアプローチがあるのではないかという意見があれば、それを議論し、お互いに情報交換し合う場だと考えております。例えば中小企業の対応について自治体で意見があれば、それを入れていきたいという理解ですが、よろしいでしょうか。

(後藤) 先ほど北野さんがおっしゃったように、資料に書いてある市民側の意見は、全員の総意ではなく、今までの議論で出た意見が書かれており、当然反対の意見もありうると思います。産業界からご意見が出るとのことですが、私がお付き合いしている限り、産業界の中では意見がかなり分かれていると思います。特にCSR(注:Corporate Social Responsibility)が流行語大賞の候補になるように、私はCSRを企業の社会的責任ではなく社会的信頼度と訳しておりますが、企業の取組がこの1年間で猛烈に変わっています。そのような意味で、今まで出てきた意見を読み返してみると、最近は企業の方がおっしゃる意見とかなり違う意見があると思います。その辺、違う意見がたくさん文章で出てくればいいと考えます。

(北野) この会議には市民、産業、行政の方が出席されておりますが、会社や団体を代表するものではないという、最初の約束がありました。あくまで個人として意見を出す場ですから、色々な意見があってしかるべきですし、それを集約していきたいと思います。

(有田) 北野さんがまとめた後に申し訳ございませんが、疑問に思っていたことがあります。文章のまとめ方が良いか悪いかは別ですが、この資料は今までの議論で出された意見を整理してまとめたものであり、空いているところがあっても仕方がないという考えで公表することが、本来の姿だと思います。意見を出したかったけど今までたまたまだまっていたとか、少し意見が違うとは言っても、この議論で何か方向性を決めたわけではないのですから、このままでもいいと思います。

(北野) 全部埋めなければいけない、ということではありません。空欄の部分について、もし意見があれば出していただくようにお願いしています。議論しっぱなしではなく、今まで出た意見を整理する意味で、事務局には大変いいものを作っていただいたと思います。

(崎田) 私が申し上げたつもりだった意見が入っていないことやメールで送り忘れていたことがありますので、意見を出したいと思います。この資料の「その他」の部分に該当すると思いますが、先ほど安井さんから「ビジネスリスクと化学物質のリスクを分けて議論すべき」というご発言がありました。最近はビジネスリスクも視野に入れた上で、熱心に取り組んでいる業界も非常に増えています。そのような取組に対して市民がどのように理解するか、どう評価して次の行動に移すかというところも、市民側に望まれていることとしてあると思います。この内容は資料として出しましたが、議論の中ではお話しませんでした。リスクコミュニケーションのリスクに入るかどうかはわかりませんが、今後のリスクコミュニケーションの方向性の1つとして必要かと思いますので、提案させていただきます。

(北野) このマトリックスをまとめる上では化学物質のリスクに限定し、今後の必要な方向性の1つとして欄外に付記するということでいかがでしょうか。

(安井) 先ほど角田さんがおっしゃったように、必ずしもこのマトリックスに当てはまらないものがあると思います。発言の全てをこのマトリックスにまとめるのではなく、まとめきれなかったものの欄を作っていただきたいと思います。

(田中) リスクコミュニケーションの議論がこれで終わりということになると資料の空白に埋めたいことが出てくると思います。今までの議論のまとめであれば、この空白に後から意見を入れるのはおかしいと考えます。追加したい意見があれば、この場で発表していただいて、リスクコミュニケーションの続きをしていただくという手もあると思います。

(北野) この会議で何を議論するかについては、あくまでもメンバーのみなさんで相談することです。円卓会議のテーマ、例えばリスクコミュニケーションをどう進めていくかについては、この後のビューロー会合でも議論したいと思います。私自身としては、リスクコミュニケーションについての議論が終わりになるとは認識しておりません。

(瀬田) 今までの北野さんの投げかけは「この表についてどう思うか」という議論であり、さらに、次のリスクコミュニケーションについてどう思うかという話に進んでいくと理解しています。これで終わりということではないですね。

(北野) この資料は、過去7回リスクコミュニケーションに関する議論をしてきましたので、今までどのような議論をしてきたのか整理したという位置付けです。このようなマトリックスの形にすると一番理解しやすいので、事務局に作業していただきました。その際に、いくつか空欄部分がありましたので、この機会にご意見をいただきたいと思いました。決して埋めなければいけないとか、空欄だから意見がないということではありません。この会議のテーマは我々全員で相談することが原則と思っておりますので、整理した意見を今後どうするかについては、ビューロー会合で議論したいと思います。

(瀬田) 空欄を埋める意見は宿題にし、今までの議論をまとめた表をどうするかという問題と今までの議事録を読んで議論を振り返り、感じたことをこの場で話し合うことは意味があると思います。もしよろしければ、私の意見を申し上げますがよろしいでしょうか。

(北野) お願いします。もう1つ付け加えますとホームページに載せることも、皆さんの合意を得た上で行っていることをご理解ください。ホームページに載せるか載せないかについては、全体のマトリックスが出来上がった時点で議論してもいいのかと思います。では瀬田さん、感想等よろしくお願いいたします。

(瀬田) これまでの円卓会議の議事録を読み、いくつかのことを感じました。特に産業界と市民団体の対話、それに対する行政側のご意見をいただいて、このような円卓会議を開催した意味があったと思います。やむをえない話ですが、多くの点ですれ違いもあったと思います。いくつか振り返りますと1つは言葉の定義です。この化学物質と環境円卓会議で、「化学物質」という言葉を何気なく使いますが、「化学物質」の定義について皆さん違ったイメージをお持ちだと思います。我々化学の世界にいる者にとっては、どんな物質でも化学構造式で表せるので、形あるものは全て化学物質ですし、形のないガスや臭いでも全て化学物質になります。なおかつ、その化学物質には天然物もあれば、人工合成物もある。そのような多岐にわたるものを1つの言葉で表しているので、私たちはそのうちのどれを使って議論をしているのか、1度振り返ってみてもいいと思います。人工の合成化学物質だけが、人間生活に害を与える化学物質ではありません。人間生活を脅かす化学物質の99.9%は天然由来の化学物質であるという説もあります。また、その天然由来の物質が人間の体内に入る過程でも、色々な合成化学物質の処理を経て入ってくる場合もあります。例えばウールは、羊の表面に生えている状態から我々の上着になるまでに色々な処理がなされます。そのような化学物質について、言葉の整理をしておく必要があると思います。
 また、この議事録にはリスクとハザードの違いに関する議論が何度も出てきますが、リスクでは理解されにくいので、実際にはハザードの議論になっていると思います。また、リスクゼロの話も色々な意見がありました。私は最近、(株)帝人のペットボトルの再生プラントを拝見し、そこではゼロエミッションをきちんと定義していたので感心しました。また、常識と言葉の使い方の理解について、1つの世界で普段何気なく使っている言葉や常識が、他の世界では全く違った意味になることもあります。議論しながらもそこで思考が止まることもあるので、この定義の点についてははっきりさせていってはどうかと思います。
 化学物質の問題に関する関心の一過性について気がかりな点があります。また、リスクとベネフィットの問題についても、主体は何かという問題がありました。最初にこの話題が出たときは、そんなことはわかっているという雰囲気ではありましたが、このリスク&ベネフィットや費用対効果の話は、問い詰めれば優先順位という問題になりますので、リスク&ベネフィットの議論はどこかでやらなければいけないと思います。
 次に、この会議の第4回、5回くらいから行政の方の意見が活発に出てきました。例えば仁坂さん、南川さんからは非常にいいご意見を述べていただきましたし、西郷さんのご意見は皆さんに人気があったと思います。片桐さんは最初からよくご意見をいただいていると思います。その頃に議論された環境報告書に関する発言で1つ気になる点があります。今現在、私は環境に配慮した事業活動の小委員会に入り、環境報告書について議論させていただいていますが、そこでは、環境報告書や第三者認証についての法制化の動きがあります。第5回の議事録を見ていただくと分かると思いますが、この円卓会議の場では仁坂さんや南川さんからは「自主的な動きを中心にして、それを補足するあるいは加速するという意味での法制化、規制、あるいは基準を考える」という発言が何回か出ています。この2つの動きがあることから、今までの円卓会議での議論が、そのまま精神として反映しているのかということをお聞きしたいと思います。

(北野) ありがとうございました。今までの議論の中で欠けているところや今後考えるべき問題の提案ということでよろしいですね。どう取り上げるかについては、この後のビューロー会合で議論したいと思います。

(後藤) 今日は8回目の会議ですが、この円卓会議が始まった時とこの1年を考えるとくりかえしになりますが私は企業と社会との関係が猛烈な勢いで変わりつつあると感じています。実は最近、中下さんと一緒に市民参加、情報へのアクセス、司法へのアクセスを確保するオーフス条約の研究や普及を目的としたオーフスネットワークを立ち上げました。私が8月に研究会でシンポジウムをしたときに仮訳したものがありますので、必要ならば次回資料として提供できます。また、過去の議論を読み返し、CSRの議論など色々なことを考えると化学物質のみならず、企業と社会の関係が変わってきていることが感じられます。私が個別に接する限りでは、企業の意見でここに書いてあることとかなり違った意見もあると思います。この資料は今までの議論の整理として、今後はこのようなことを日本でのあり方の参考にしていきたいと思います。

(崎田) 先ほど瀬田さんから、環境報告書をもとにした法制化の動きについてお話がありました。私もその辺の委員会に、消費者側から意見を言う立場で参加させていただいております。この一連の話し合いは、環境報告書や環境レポートを実質的に出し、それを比較可能性があるような形で数字を出すことや内容を整えるという話し合いをしています。それをもとにコミュニケーションを活性化させ、環境配慮企業を評価していくような仕組みを社会に定着させる目的で参加しています。これは今回まとめきれなかった話ですが、このような化学物質に関する動きや環境に配慮する動きを公表していくことを社会全体が受け止め、信頼関係を作っていく流れが新しい課題として出ています。このような変化の狭間の時期に、全体を色々な状況で見据えながら、皆さんと話し合いをしていきたいと思います。

(北野) ありがとうございました。今、後藤さんと崎田さんから、企業と社会との関係がドラスティックに変化してきているというご意見がございました。確かに、この化学物質と環境円卓会議の目標には、「化学物質による環境リスク低減のための国民的参加による取組を促進する」というものがあります。当然企業と社会とのあり方も大きく影響してくるものだと思います。私自身はこの場の議論を化学物質自体のリスクに限定する必要はないと思います。次の方向としては、先ほど崎田さんがおっしゃったような企業リスクについてですとか、幅広い議論も将来的には必要だと思います。これは私個人の考えですので、進め方についてはビューロー会合で議論したいと思います。先を急ぐようで恐縮ですが、もしご意見がありましたら書面等で出していただき、次回の円卓会議の冒頭でリバイスしたところについて議論したいと思います。その上で、ご了解いただければ、ホームページに載せる等の議論をしたいと考えております。期限については、次の円卓会議の日程が決まった時点で決めたいと思います。
 では次に、2つ目の議題になります。化学物質対策における予防(precaution)のお話です。予防的な取組方法(Precautionary Approach)と予防原則(Precautionary Principle)という用語について勉強していきたいと思います。本日はお二人の専門家をお招きしております。最初に、化学物質と予防原則の会の大竹千代子さんに、予防的な取組方法(Precautionary Approach)と予防原則(Precautionary Principle)について、20分程度お話いただきます。その後10分ほど休憩してから議論し、千葉市役所の早水輝好さんのお話に続いていきたいと思います。では、よろしくお願いいたします。


(大竹) ただいま紹介いただきました、大竹と申します。私は専門家ではありません。この5年間、予防原則について勉強しながら皆さんに知っていただくための情報活動をしてきました。にわか専門家と思って下さい。勉強することがたくさんあるので、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。今日はこの2つの言葉について、そのバックグラウンドも含めてお話させていただきたいと思います。

私たちは日常の生活で予防という行為を行います。それは個人や家族が、予防することで健康であったり、痛い思いをしなかったり、経済的にマイナスにならなかったりと、プラスになるから予防をします。しかし、自治体や国家、EUのような地域、世界のようにコミュニティーが大きくなると、予防されると困るという人が現れるので、予防することに関して何かしらのルールや基準が必要になります。

今現在、予防、あるいは予防原則が既に適用されている対象やこれから適用されていくものには次のようなものがあります。まず、身の回りのものや食品に関して適用されているものや適用していくものが考えられます。環境に放出される化学物質でも同じです。一番の問題は、新しい技術に対する私たちの不安です。遺伝子組み替え食品やバイオテクノロジーによる医薬品や添加物、クローン牛などの新しい技術に対して、それが科学的に安全という結果が出る前に使われます。技術が先行し、科学的な説明は後からくるので、とても不安になります。また、環境法を専門にされる方たちによると、生態系ではずっと前から予防という言葉を使っていたそうです。例えばレッドデータブック(注:今にも絶滅して(この世からなくなって)しまいそうな生き物を記した本)に載っているものは、予防しなければいなくなりますから、当然のこととして予防の考え方が使われています。最近のレッドデータブックをつくる基準も、予防原則に基づいた数値でつくられているようです。感染症でも電磁界でも放射線でも予防的に手を打った方がよいと考えられているようです。

一方で学問領域を見てみますと国際環境法の先生方は以前からprecautionaryを、Principleではないにしても使っていたようです。また、環境倫理、生態学、リスク学、環境政策、予防医学でも、予防的なものの考え方や概念が使われてきています。

principleの他にもapproach、measures、actionという言葉があります。precautionary principleとは、その他のapproach、measures、actionなどの背景にある、ほとんど世界共通の概念であり、その実践において手順や制度が異なる場合にapproachやmeasuresが使われます。precautionary principleという概念は世界では比較的共通の土壌になりつつあります。それは今年、WHOが電磁界のレポートを出した後で、人の健康のためのprecautionary framework(予防的枠組み)を出した時に、これまで色々な言葉の混乱はありましたが、このような概念が今後必要であるという考えでWHO自身が予防に関するレポートを出しています。

今回、以下の8項目についてお話いたします。皆さんは既にご存知かもしれませんが、緑色で書かれているのがprecautionary approach、赤字がprecautionary principle、黄色がprecautionary measuresという言葉が主として出てきます。1998年頃から第2回と第3回のNorth Sea会議がありましたが、このあたりで言葉が使われ始めています。そしてオゾン層のモントリオール、OSPARはヨーロッパの海の関係です。私たちが拠り所にしている1992年のUNCEDリオ宣言の15原則の中に出てきます。気候変動枠組み条約、EUのマーストリヒト条約とありますが、この2年前の92年にヨーロッパの環境政策は予防原則に基づかなければいけないとあったようです。ここで少し系統が違いますが、アメリカのウィングスプレッド、ローウェル声明がありました。これは私がずっと追ってきましたリスクアセスメントに基づく予防原則ではない流れのものです。これが98年と2001年に出されています。2001年の方はかなり具体的なものです。一方企業の方でも予防原則をにらんでおり、2000年にガイドラインが出る前にCEFIC(注:European Council on Chemical Industry Federation。欧州化学工業連盟)などが予防原則をどう考えるかという政策文書を出しています。カナダはかなり早くからEPAとヘルスカナダで予防原則を取り入れ、ここではapproachとprincipleを同じ意味で使っています。それからEUのコミュニケーションペーパーが2000年に出ました。これが、予防原則を使う条件について一番詳細に述べているものだと思われます。このコミュニケーションペーパーが出たところで、EUでは予防原則のプロジェクトが2年間で組まれました。PRECAUPRIと言っておりますが、今年の2月に行われたワークショップを見ますとかなり具体的にpreventionとprecautionを分けて説明をしています。また、今年になってサンフランシスコやカリフォルニアのようなローカルなところでは、precautionary principleに係る考え方を法律の中に取り入れています。WHOでは1996年から10年間のプロジェクトで電磁界の子供への影響を調べています。まだ続いていますが、今年の2月にルクセンブルグで発表があり、秋には筑波で発表があったようです。スライドに記述が抜けていますが、ここで「公衆への健康の保護のための予防的枠組み」が出されています。(注:上記の記述の抜けについて、スライド6は会議当日のものから差し替えました。(事務局))

Precautionary Principleは予防原則と訳したほうがいいと思います。The Principle of Precautionary Actionも同様に予防原則と訳していいと思います。Precautionary Approachはこれまで予防的方策と訳されておりましたが、国会答弁などを見ますと環境省と外務省との協議で予防的取組方法としています。92年のUNCEDに関しては、「予防的取組方法」と訳すことに決まっていますので、それに関してお話しするときは「予防的取組方法」といたします。Precautionary Measuresは予防的対策と訳します。Precautionary Actionも予防的対策と訳す方がいいと思います。一方で、Preventive Actionという言葉があります。最近の予防原則の議論に入る前は、比較的PrecautionaryもPreventiveも区別なく使われていましたが、最近の議論でPrecautionaryという概念、つまり科学的因果関係がはっきりしないものも手を打たなければ21世紀の化学物質管理や環境保護がやっていけない、という議論が進んできました。そこで、これまで因果関係がわかっていたものに関して使ってきたものをPreventionといい、因果関係がはっきりしないものに関してはPrecautionを使うように、特にEUでは定義して使っております。マーストリヒト条約の中にも、Precautionary Principleという言葉とPreventive Actionという2つの言葉が同じ文章の中に登場します。

これはWHOの電磁波に関する報告書の中から抜粋したものですが、特にヨーロッパのWHOのバージョンでは、健康に関してかなり早い時期からPrecautionary Principleという言葉を使って表現しています。後でゆっくり読んでいただきたいと思います。

EUによる言葉の区別ははっきりしています。Precautionary Principleは脅威の深刻さや不確実性の特性をスクリーニングする際に用いられる一般原則であり、上位概念です。Precautionary Approachとは、そのスクリーニングによって科学的確実性の欠如が明らかになった場合に採用されるアプローチの下位概念です。Preventionとは脅威が深刻で確実であると確認された場合に用いられるアプローチというようにはっきり分けています。深刻な脅威が確実にある場合にはPreventiveな方法で処理する。脅威が不確実な状況であったり、あいまいであったり、大きかったり、新しかったりする場合には、多くの選択肢があるPrecautionaryの方法で行います。後は普通の化学物質でリスクアセスメントを行い、OKであればその化学物質を使う、というように大きく3つに分けて議論しております。

この後の早水さんのお話にも登場いたしますUNCED(注:United Nations Conference on Environment and Development。国連環境開発会議)のリオ宣言はこのようになっております。

Precautionary Approachは予防的取組方法と訳して、「環境を保護するために、各国の能力に応じて広く適応されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な危害の脅威にある場合には、完全な科学的確実性の欠如を理由に、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期してはならない」とあります。この中で、「深刻な」や「不可逆的な危害」や「費用対効果の大きな対策」の定義が難しいところですが、UNCEDではこのような定義を掲げています。

次にPrecautionary Principleのルーツを探ります。ドイツの大気汚染法の中にVorsorgeprinzipが74年に登場してまいりました。これは大々的に書かれているのではなく、法律の中にほんの1行あったと言われています。それは石炭が多く産出している周辺の森林が石炭の燃焼によって痛んできたので、その黒い森を守るための交渉をバックアップする目的で入れられたと聞いております。その後、ドイツではこのような予防が義務として考えられるように発展しています。同じ時期にスウェーデンでも化学物質政策、化学物質の安全性が説明できないものは安全ではないとみなす、というルールが69年、70年に法律に入れられました。ここでは立証責任が開発者に移転しています。この2つの国の言葉から、Precautionary Principleという言葉に直されて、広く使われるようになりました。1987年のローマ条約の中には、Preventive Actionに基づいて環境政策を行うようにと書いてあるようです。その後、92年ではPrecautionary Principleに基づくようにと書いてあるようです。また、94年のマーストリヒト条約の時には、Precautionary PrincipleおよびPreventive Actionやその他のルールによって環境を守るように書いてあります。

これは2000年2月に出されたコミュニケーションペーパーという、ガイドラインに近いものです。ここでは、予防原則はリスクアセスメント、リスクマネージメント、リスクコミュニケーションの枠組みの中でマネージメントに位置付けられます。予防原則に基づくアプローチは、可能な限り完全な科学的リスク評価から始めるべきとしています。許容できないリスクや科学的不確実性がある場合、公衆の不安に直面したとき、これに対する答えは様々あり、アクションをとらないところからアクションをとる場合、プロジェクトを立ち上げて研究する場合から禁止する場合まで広範囲の内容があります。対策が必要になった場合は、以下のルールで予防原則に基づいた対策をとらなければならないと考えます。

6つの簡単な言葉にまとめてあります。入手できる最良の知識とデータを得るための、科学的専門的技術の利用をしなさい。それで新しい知見が得られたら、必ず修正しなさい。また、立証責任の移行については、この段階では可能性があると書いてあっただけです。その後のPRECAUPRIのドラフトでは、立証責任の移行ありと書いてあったように思います。次に、提案された予防的対策と既存のリスクアセスメント、突然ここで予防原則を用いるからといって一貫性がなくなるということを避けるようになっています。また、似た案件に対して、一方は予防原則に対応し、もう一方は対応しないという差別はしない。リスクの大きさに対応した比例性がなくてはならない。最後に、対策を取った場合と取らなかった場合のコストベネフィットの試算をしなさい、という6項目を掲げています。

予防原則に関してはEUが進んでいるという世間の声を聞いてアメリカは、BSEでは圧倒的にヨーロッパより優れた予防をしていたと言っていましたが、残念ながら昨日の発表ではBSEが出てしまったようです。アメリカの歴史を遡ってみますと予防をやっていないのではありません。20世紀の始めに四エチル鉛を導入するときの情報を見てみますと鉛を撒き散らすことになるので、予防原則に基づいてアメリカの厚生省から反論がありました。しかし、メーカー側が設定した疫学調査で影響が出なかったので導入されています。そして、1980年にベンゼンの産業衛生基準1ppmに対して、明らかなリスクが証明されなければ規制できないという判決があったため、リスクアセスメントの手法が確立され、世界的にリスクアセスメントが使われるようになりました。これは、新しい知見が出てくるたびに、この方法を改善していきました。化学物質の導入やその継続的な使用に予防は基本であるということは、カナダとの越境汚染の問題で予防の言葉が出てきております。また、96年の大統領の諮問委員会文書でも科学的不確実性があっても対策を取るということを述べています。EUでは成長促進剤のホルモン剤や抗生剤をある時期で禁止しましたが、アメリカでは比較的甘く使われていますので、WTOに提訴するなど、もめごとが現在も続いています。今年になってEUでも一部GMOを禁止している部分がありますが、それに対しても提訴しています。アメリカの場合はヨーロッパとやり方が少し違いますが、法律の中にはもちろん予防的な考え方を生かしています。しかし政府は頑としてPrincipleという言葉は使いません。

行政財政局のグラハム(Graham)という方は、よく予防原則の代弁をされています。日本でも議員会館でお話をされたようです。最近のレポートを見ますとEUの予防原則に対して、自分たちの考え方を下記のように書いています。「予防は有益な概念ではあるが、それは主観的であり、行政立案者による貿易目的のための乱用に影響されやすい。科学的で、かつ手続き上のセーフガードがないと予防原則は入れたくない。予防的対策の採用は、リスクアセスメントと代替のベネフィットコスト分析を必ず含む。また、客観的な科学的評価によって先行されるべき」としています。

4番目には、先ほどEUでもありましたが、予防的対策には、製品の禁止から研究計画まで広い予防的対策があります。5番目に一般の人の参加、アメリカでもステークホルダー(注:利害関係者)が参加して議論し、決めていこうと言われています。

EUもアメリカもリスクアセスメントをきちんと行い、EUの1985年と1988年の成長促進剤としてのホルモン剤の禁止に関して、「EUの科学委員会(CSTEE)や国連のJECFAにサポートされたものではなく、物質の安全性を確定する科学的根拠が充分ではない」というのがアメリカ側の意見でした。その時、EUの委員会は、リスクアセスメントにおける不確実性の質や大きさの説明を求められなかったと言いますが、アメリカ側は政治的なリスクアセスメントであるという意見です。しかし、EEA(欧州環境局)などヨーロッパの報告では、当時は政治的かもしれないが、その後の様々な危険をより集めれば禁止したことは妥当であったし、現在それを継続していることも正当であったと述べています。

この背景には、次のことがあります。DESというホルモン剤が妊婦に使われ、600万人以上が被害を受け、1971年にアメリカで禁止されました。その後、動物の飼料の中に、このホルモン剤を入れて使いたいという傾向がありました。USは1972年にデラニー条項で禁止しましたが、また復活して、その後禁止しております。EUは比較的早めに6種類のホルモン剤を禁止しています。この少し前の段階でリスクアセスメントが行われましたが、EUとUSのそれぞれのアセスメント結果に違いがあったので、そのマネージメントにも違いが生じたという経緯があります。

6番目としてWHOの、公衆の健康保護のための予防的枠組みがあります。これは電磁波の研究をしたメンバーが、それを進展させて作ったので、WHOとEUとアメリカのNIEHS(注:National Institute of Environmental Health Sciences。米環境健康科学研究所)の人たちが作ったもので、これはアメリカの意向が強く入っていると感じました。丸い枠自体が、96年の大統領諮問委員会のリスクアセスメントとリスクマネージメントから引用しており、さらにEUの考え方も入れているものです。最初にステークホルダーが集まって相談することが力説されていましたが、立証責任については触れておりません。

これは私が調べたものです。WHOのレポートや96年の大統領諮問委員会文書(これは予防原則ではありませんが、この後、予防原則を語る時によく引用されます)、EUのコミュニケーションペーパー、ウィングスプレッド会議の声明、ローウェル声明、最近のサンフランシスコ法令、カリフォルニア州環境正義、カナダ政府、このようなものをリストするとリスクの概念に基づいているものとそうでないものがあります。リスクに基づいているものは、リスクアセスメントを行っていますが、そうでないものは行っていません。このように見ると大きく2つの流れがあるということで、このウィングスプレッド声明が出てきた背景について考える必要があると思い、調べました。

ウィングスプレッド声明では、有害物質はこの20世紀に、人の健康と環境に重大な影響を及ぼしたと言っています。それはリスクアセスメントを行っただけでは十分ではなく、別のシステムが必要ではないかということで、予防原則が出てきます。立証責任は公衆ではなく、開発側が負うべきである、代替案を選択すべきである、お金がかかろうとリスクがあれば費用対効果は考慮しないとされております。(注:費用対効果を考慮しないことについては、会議後にご本人が記載がない旨を確認されましたので、スライド22は会議当日のものから差し替えました。(事務局))

これは98年の声明ですが、その前の97年にマサチュセッツ州議会法ができています。ここではPrecautionary Principleという言葉が使われています。この州の環境政策とその質的基準を開発するためのガイドラインとして、“the Principle of Precaution Action”を確立するための法律とうたっています。深刻で不可逆的な環境への脅威を防ぐために、予防原則は当局のすべての政策と規制の決定に適用されなくてはならない。手続や開発が州の大気、土壌および水にこれを適応する。十分な科学的確実性がないことを理由に、環境破壊の保護のための対策を費用対効果を理由に延期してはならない。

原料の選択や長期的結論を含む代替手段、長期的にすべきことを資料のように述べております。

89年にMassachusetts Toxics Use Reduction Actがあります。これはスウェーデンの方が非常に評価しています。この中には一言もPrecautionaryやPreventiveという言葉が登場しませんが、ウィングスプレッドの活動を推進する上でよく引用されます。ここでは、900種類の化学物質を使いすぎないように削減しようとしています。目標を設定し、50%削減する目標を掲げて、あるプログラムを組み、それに従って徐々に減らしていくということです。

色々決めてやってきたため、1990年から1995年の間にマサチュセッツ州の企業からの化学物質の排出が3分の2未満に減りましたし、全化学物質の廃棄物は30%以上、また、使用量は20%以上削減されました。このようにして、経済的にも費用を削減したので、ウィングスプレッドの予防原則の流れのたった1つの事例として引用されています。

色々な資料を見てきましたが、Principleを嫌う理由として、国際的にコンセンサスを得られた定義がない、定義があいまいである、広義でありすぎることが挙げられます。また、環境法の専門家のお話では、Principleにすると適用範囲が広がることや、Principleという言葉が法律の中で非常に強い拘束力を持つ向きがあるので、海洋法ではPrecautionary Approachという言葉で用いるようです。漁業ではPrincipleという言葉は、魚が全然捕れないというモラトリアムの印象が大きいので使わないと聞きました。

アメリカの場合は、予防の極端なアプローチに関して、二つの主な危険があるとしています。その1つとして、これまで経済を担っていたのは技術革新であり、皆さんはこの予防原則を適応した後でそのことに気づき、経済が停滞すると述べています。次に公衆の健康と環境は規制官の指導が名目で悪くなり、規制が行われた社会では既知の危険があるもっともらしい危険が注目されず、推論的で正当な理由のない危険に注意を逸らされると言います。これら2つの理由から、「アメリカがもし予防原則を行い、先ほど言った2つのことが起こったとしても読者は驚かないで下さい」ということが書かれてありました。

このようにして5年の間に色々な資料を見たり、聞いたりしてきました。私はもともとリスクアセスメントに関っておりましたから、リスクアセスメントをしないで予防原則を取り入れる事に関してどのように企業の賛同を得るのだろうか、という疑問がありました。結果として、予防原則には次元の異なる2つの流れがあるようです。1つは特定の有害性の存在の可能性が疑われた場合に、リスクの概念でリスクアセスメントに基づき、科学的に検証します。それでも多くの不確実性が登場しますので、透明性を持って不確実性を議論し、ある要件が満たされた場合に予防原則に基づいてマネージメントを行うという方法。もう1つは、不特定な未知の有害性が潜んでいることを前提にした場合、可能な限りの有害性を削減あるいは回避し、そのために長期的な視野で予防原則に基づいて社会システムを構築する。このような2つの流れがあるのではないかという結果に到達しました。では、ここで終わりにしたいと思います。

(北野) ありがとうございました。ここで10分間休憩したいと思います。

―― 休憩 ――


(北野) では時間になりましたので、始めたいと思います。今、大竹さんからご説明がありましたが、プレゼンテーションに関する質問を受け付けます。その後、早水さんに説明していただき、それに関する質問の時間にします。最後に全体としてPrecaution、Principle、Approachをどう考えるかについて議論したいと思います。では、今の大竹さんのお話に関して質問はございますでしょうか。

(村田) スライドの22番でウィングスプレッド声明の要約があります。「費用対効果は考慮しない」について、このような表現を記憶していませんでした。具体的にどのような表現でしょうか。費用対効果を否定しているような表現がありましたか。

(大竹) 今すぐに資料は出ませんが、費用対効果という言葉が項目としてあったと思います。(注:費用対効果を考慮しないことについては、会議後にご本人が記載がない旨を確認されましたので、スライド22は会議当日のものから差し替えました。(事務局))


(有田) 3点質問したいと思います。まず1点目は、大竹さんがリスクアセスメントをやってこられたというお話がありました。大竹さんのホームページを拝見しておりますが、大竹さん自身、どのような経歴の方か存じ上げませんでした。先入観を持っているわけではありませんが、経歴を教えていただきたいと思います。2点目は、12枚目のスライド「4.欧州のPrecautionary Principle」の欧州のルーツと歴史で「ドイツの大気汚染法の中に」と書かれています。これについて文献で見たり、聞いたりしたことがあるので正しいと思いますが、10数年前に生活協同組合で食品添加物を議論するときは、必ず予防原則という言葉を使っていました。1972年のストックホルムで行われた人間環境会議で酸性雨の問題があり、その時初めて予防原則という言葉が出てきたように、ずっと記憶しておりました。3つ目は質問ではなく意見ですが、別の勉強会で22枚目のスライドの「費用対効果は考慮しない」という文章を見た記憶があります。

(大竹) 私は今年の3月まで、国立医薬品食品衛生研究所という、厚生労働省の研究所の非常勤をしていました。11年間その研究所にいましたが、IPCSやWHOの翻訳や英文を作るお手伝いをしていました。インターネットが登場し、ここで情報を発信することになり、手作業で資料を作成していました。その間も関澤さん(注:関澤純氏。現徳島大学総合科学部教授)のお手伝いとして、IPCS関係の情報を日本語に訳して、ホームページに載せる仕事をしました。そこでたくさんの論文を読んできたので、自分でリスクアセスメントしたわけではありませんが、何となく理解してきました。98年にはヨーロッパの役所を回る企画がありました。当時の話題は内分泌かく乱物質でしたが、デンマークやスウェーデン、イギリスなど、行ったところがすべて予防原則に基づいて手を打っていました。そこで、日本でこの情報を紹介しようと思い、今年の3月に研究所をやめて、前年立ち上げた「化学物質と予防原則の会」の代表として、活動をしています。2番目のご質問について、72年のストックホルムの会議はドイツやヨーロッパに影響を及ぼしたと書いてあります。しかし、これを誰も引用していません。最初に引用されたのがドイツの大気汚染法ですので、私もそれを引用しています。(注:後日、大竹さんより「人間環境宣言」中に「予防原則」の文言はないことを確認した旨ご連絡頂きました。(事務局))
(早水) 最後のスライドで、大きな2つの流れがあることが分かりました。この中で、ハザードとリスクという言葉を意図的に使い分けているのでしょうか。ハザードも物質の性質としてのハザードとして使われているのか、リスクという意味で使われているのか、その辺も含めてお尋ねしたいと思います。また、2つの流れの中で、1つ目のケースは恐らく動物実験の結果がある、もしくは類推できて有害性があるだろうと思われた場合には、リスク評価を行った上で、透明性を持って不確実性を議論するという理解でよろしいでしょうか。また、2つ目の方は、例えばフタル酸エステルの2物質ではないケースのように、実験結果が何もない、もしくは有害性がよくわからない場合と考えられます。その場合には、有害性がわからないのに「可能な限りの有害性を削減し、」という文章がよくわかりません。リスクがあるかもしれないので排出量を減らす、という意味での予防原則という理解でよろしいでしょうか。リスクとハザードの意味を明確にしていただきたいと思います。

(大竹) 最後のスライドは、非常に短くまとめましたので誤解を招くかもしれません。(1つ目については、早水さんのご理解で間違いありません。)予防原則で予防の手を打たなければいけない状況にある時とは、1つは既に何らかの被害、つまりリスクが顕在化している場合です。もう一つは、例えば赤ちゃんが口に入れるおもちゃの中の可塑剤は、特に被害が出ていなくても、ハザードからリスクアセスメントを検討してみると既に1日耐用摂取量を超えていたということがあります。(EUの場合は、2種類の可塑剤は明らかにMOS<100であって予防原則で規制する性格のものではありません。むしろ未然防止なのです。この2種類の他に4種類の可塑剤が使われる恐れがあり、これらはMOS>>100ではあったのですが、それを予防原則で禁止した経緯があります。)もともとハザードがあるかもしれない状況で、既にリスクもあり、それなりの影響が出ていることもあるので、両方を含んでいる可能性があります。優先順位をつけてリスクアセスメントをする時に、そのような両方含めた物質をリスクアセスメントに基づいて検証します。このような時には、データが足りないことがあり、不確実性が大きくなります。その不確実性をどのように判断するか、その例を説明しますので、追加のスライドをお願いします。

これは、ヨーロッパのリスクアセスメント、Penta-BDE(注:Penta-Bromo Diphenyl Ether。ペンタ臭素化ジフェニルエーテル。ポリウレタン・フォーム製品に含まれる臭素系難燃剤)です。環境も大人の摂取量もやりましたが、これは母乳を通した赤ちゃんの摂取量です。Penta-BDEのMOSを見ると4万の数字が出ています。この場合に、種差10、個体差10、試験期間の短さ10、これはねずみを用いた28日の試験でした。また、授乳期の感受性10を考慮してMOSを求めると104であったとしても、4万という数値は対策を取る必要があるという結論に達しました。Penta-BDEの場合はシェアが6%と経済性も低く、2003年に禁止することが決まりました。これも、子供が特にBDEで何かの影響が出たというわけではありませんが、このような結論になりました。禁止ではありませんが、MTBEもそうです。これはガソリン中の濃度を減らすとか、他にもいくつかEUの結果でオフィシャルジャーナルに載せてリスクアセスメントをした後に、何らかの規制をしたものがいくつかあります。
 2つ目の例の方ですが、マサチュセッツ州の議会法やスウェーデンの方によるスウェーデンの法律など、色々なところで引用されています。もちろん、複合のものなどわからないものもあります。

では追加の2枚目のスライドをご覧下さい。国際的な必要性と述べている中、今までのリスクアセスメントでは現に多くの被害が出ているので、充分ではなかったものもあります。人の暮らしのレベルですが、21世紀に入って、小さなリスクでも減らしたいという要求がある。また、技術的なこと、今まで無視されていた子供たちのこと、複合汚染があります。この複合汚染を減らしていくことは、リスクアセスメントではほとんど不可能です。全体として網をかけて、不必要なものは減らしていくというマサチュセッツ州の考え方がありますが、これを予防原則というかは別として、1つの流れとしてあるとしてまとめました。

(北野) よろしいでしょうか。次に早水輝好さんにお話をいただいて、全体の議論に入りたいと思います。


(早水) 今、千葉市役所に勤めております、早水と申します。私は6月まで環境省にいました。その前は化学物質関係でOECDに勤務し、帰ってきてからはPRTRや化審法を担当するなど、化学物質関係を取り扱ってきました。また、本日お話いたしますストックホルム条約の交渉会議でPrecautionary ApproachかPrincipleかという議論がありました。当時の議論について事実を中心に、自分の感想を含めて述べさせていただきたいと思います。

最初のスライドはPrecautionary Approachについてです。これは最初「予防的方策」と訳していましたが、POPs条約を訳すときに、「予防的な取組方法」に統一することになりました。環境基本計画にも書かれている「予防的方策」という言葉と「予防的な取組方法」は同じ意味になります。リオ宣言の第15原則ですが、2重下線のところ、lack of full scientific certainty(完全な科学的確実性の欠如は)とは、裏を返せば、「ある程度分かっていれば」という意味になります。その場合には費用対効果の大きい対策を延期する理由として使わなければならないという理解です。後の話でこの部分が大事になりますので、覚えておいていただきたいと思います。その前の部分、threats of serious or irreversible damage(深刻な、あるいは不可逆的な被害の恐れ)がある場合は、完全な科学的確実性が欠けていたとしても、対策を延期してはならないという意味と理解しています。

これに対して予防原則には特定の定義がありません。EUのコミュニケーション文書も読みましたが、抽象的でよくわかりませんでした。EUの考え方を一言でまとめれば、「リスクについて科学的に確定していなくても何らかの対応策をとろうとする考え方」になると思います。最近のEUの考え方には「挙証責任の転換」という言葉が入ってきます。つまり、安全性の証明を企業側がすべきである、という考え方もプラスされています。グリーンピースなどでは、安全と証明されていない物質は使用しない、つまり挙証責任を転換して事業者が安全であると言わなければ基本的には使わないという考え方だという人もいます。科学的リスクが確定しないという意味から安全だと証明されなければ物質を使わないという意味まで幅が広いように感じます。いずれにしても、これは、先ほどのPrecautionary Approachとは相当違うようで、POPsに関するストックホルム条約では、この議論が最後の最後まで続きました。以下ではそれについて紹介させていただきます。PRTRの議論をしている段階では、予防原則の話は全く出てきませんでした。その後にPOPs条約のまとめの会議がありました。私は人事異動の関係で、交渉会議の最後の段階で参加し、まとめの会議にも参加しました。その時すでにPrecautionary PrincipleかPrecautionary Approachかの議論が始まっていました。私は理論ではなく現実の議論から入りましたので、大竹さんとは全く逆のアプローチになります。事実として議論されていたことを私なりの解釈でご説明したいと思います。ちなみにその会議には、この円卓会議のメンバーでいらっしゃる中下さんがNGOの立場として参加されました。

次にPOPsに関するストックホルム条約について見ていきます。POPsとは、難分解性、高蓄積性、長距離移動性、毒性又は生態毒性を有する化学物質、例えばPCBのような物質について、地球的規模の汚染を防止するため、国際的に廃絶・削減するための条約です。その中身は、PCBのようなものは基本的に製造・使用を禁止する、DDTはマラリア対策に一部必要なものを除いて製造使用を制限する、非意図的に生成されるダイオキシンやフランのようなものは排出を可能な限り削減する、POPsを含む廃棄物、あるいはストックパイルのような作られているが使われていないものは適正に処理するということについて、各国が実施計画を策定して実行するものです。規制対象物質は当初12物質ですが、その後適宜追加するようになっています。

条約化交渉会議は98年から始まりました。私が参加しました2000年12月の第5回のヨハネスブルグ会議で最終的に合意し、翌年の外交会議で採択されました。ストックホルムで採択されたので「ストックホルム条約」という名前になりました。この中で、大きく戦わされた議論は、Precautionについてどのように記載するか。また、Precautionの考え方に基づいて条約の対象物質が追加されると説明しましたが、その追加手続きについて、不確実性の考慮をどの程度するのか。科学者による検討委員会で議論した上で、締約国会議で議論しますが、政治的な議論はどの程度入ってくるか、つまり締約国会議はどの程度関与してくるか。これらを中心に議論がなされました。最後の条約交渉会議は月曜日から土曜日までの会議でしたが、土曜日の夜中まで決着しないで、最終的には日曜日の未明まで議論が続いた上で、日曜朝の8時くらいにやっと決着がついたという会議でした。

ここでの対立ですが、EU側の主張は、前文、「目的にPrecautionary Principleを記述すべきである。対象物質の追加に当たっては、あらゆる段階で予防的な考え方を導入すべきであり、科学的議論だけで結論を出すのではなく、締約国会議で必ず政治的な判断のプロセスを入れるべきである。」という議論でした。対象物質追加に関する条文の最後に、以下の項目を設けるべきとありました。下線部分、“Lack of scientific certainty due to insufficient relevant scientific information”は、“full”という単語が入っていません。「不十分な科学的な情報により科学的確実性がない場合は、物質追加の手続きや化学物質を追加のリストに入れることを妨げてはならない。」つまり、科学的確実性がなくても手続きを進めなければならない、という文章を入れなさいという議論でした。

それに対して、気候変動枠組条約ではアンブレラグループと言われていた、JUSSCANNZと呼ばれていますグループ−日本、US、スイス、カナダ、ノルウェー、ニュージーランドの頭文字をとって名づけられましたが−そのグループの主張は以下になります。1つ目は、Precautionary Principleは国際的に合意されておらず、定義がないので、個別の条約に、ここで新たに導入することは不適当である。当時あったリオ宣言のPrecautionary Approachを利用すべきであるということ。2番目は、追加物質の検討に当たっては、科学的議論を尊重すべきであり、特に最初のスクリーニングレベルまで政治的判断を持ち込むべきではないという議論がありました。EUの主張にあった最後の文ですが、“Lack of scientific certainty・・・”は、科学的議論を無視することにつながるので、条文の項として書くのは不適当であるというものです。

対象物質追加の手続きは基本的には以下のように考えられています。※印が、今申し上げた論点です。最初の段階で、まず締約国から提案がある。第2段階で一部の国の専門家から構成される検討委員会で、POPsのスクリーニングのクライテリア、分解性ですと何日以上分解しないですとか、蓄積性ですとlogPow(注:オクタノール−水分配係数の対数表示)がいくつ以上ですとか、長距離移動性、毒性、生態毒性などのクライテリアに照らして、次の段階に進むべきか検討していきます。ここで予防的という言葉を入れるべきか、スクリーニング段階から締約国会議にすべてお伺いを立てなければいけないのかどうか、という議論を戦わせていました。検討委員会で次の段階に進むと判断したものに関しては、第3段階で、各国からリスクに関する情報、すなわち、生産量、用途、モニタリング情報などを集めて、検討委員会がリスクプロファイルを作成し、次の段階に進むべきかどうかを検討します。ここでも締約国会議にかけるかどうかという議論があります。

次に、社会経済的分析のための情報、例えば対策や代替品やコストの情報を収集し、検討委員会がリスク管理手法の評価を行い、対象物質の追加を決定すべきかどうかを締約国会議にお伺いを立て、最終段階で締約国会議で対象物質を追加することになります。ここでは最終的には政治的判断が入りますが、全体的に最後の一文を書くべきかどうかという議論がありました。

交渉の結果、Precautionary PrincipleかPrecautionary Approachかについての結論は、「ここではPrecautionのあり方を議論する場ではなく、Precautionary Principleを新たに定義する場でもない。POPsは蓄積し地球に不可逆的な影響をもたらすので、これはまさしくリオ宣言のPrecautionary Approachに該当する物質である。物質の追加については、予防的考え方も導入するが、今までリスク評価を行ってきたので、これを無視することはおかしい。」という考え方から、基本的にはPrecautionary Approachでいくことになりました。目的の書き方に関しては、Mindful of the precautionary approachとなり、日本語では「留意して」と訳します。最後、正確には“Principle 15 of the Rio Declaration on environmental development”(環境と開発に関するリオ宣言第15原則)となり、「この条約の目的は」とつながります。

追加手続きについて、最初のスクリーニングレベルでは科学的な審査を基本とし、Precautionという言葉を入れません。ここで科学的な議論を無視すると、スクリーニングする意味がなくなるという議論が相当ありました。特にこの条約化交渉会議の1回目、2回目で、科学者グループがわざわざクライテリアグループを作って議論した経緯もあり、ここでは科学的に行うことになりました。ただし、検討委員会が却下した場合、提案国がもう一度検討委員会に提案できるようになっています。検討委員会は一部の国で構成されているので、例えばメンバーではない国からも再提案できます。それでもだめな場合は、締約国会議に異議の申し立てができる。つまり、全てに締約国会議が関与するわけではないが、却下されて提案国が納得しない場合にはチャレンジするようなプロセスを設けました。これは、第2段階、第3段階のどちらにも設けられました。また、リスクプロファイルの議論になった場合、“Lack of full scientific certainty shall not prevent the proposal from proceeding”と、この文には“full”を入れています。科学的に完全にデータが揃っていない、あるいは不確実な部分があったとしても、手続きを次に進めてもよい、という言い方をしています。これはリスクの段階です。最後の締約国会議で決定するときには、scientific certaintyを含めてPrecautionary mannerで決定することが書いてあります。つまり最後の段階で予防的考え方を入れることで決着しました。

この過程で議論された予防的な取組方法と予防原則の違いを私なりに整理しました。予防的な取組方法はlack of full scientific certainty、完全に科学的に確実だと言えなくても、対策を講じる。また、基本的には科学的なリスク評価を尊重する。EUの方が言っていた予防原則は、科学的確実性がなかったり不確かであっても、対策は講じるという意味になります。また、科学的なリスク評価よりも政治的な判断を尊重するのが、予防原則だと思いました。ここでは条約の話だったので、挙証責任の転換の議論は全くありませんでした。

このような議論がいくつかありましたが、議論の途中やカクテルパーティーで、EUの人から聞いた予防原則の話を具体的な例に即してお話しします。まず、政治的判断にこだわった理由は、BSEで科学者の言う事を聞きすぎたので対策が遅れた。だから科学的に不可欠であっても、政治的な判断で対策を講じるべきであったというのが第1点。第2点で、フタル酸エステル類を含有するPVC製玩具について、市場に出すことの禁止を検討していましたが、有害性情報は2物質しか得られていませんでした。しかし、同じようなフタル酸エステル類が代替品として使用される可能性があるので、それを含めて禁止しました。厳密には禁止ではなく、溶出試験法やリスク評価が確立していないので、3ヶ月間の暫定的な禁止を10数回更新し続けています。なお、このフタル酸エステルは環境ホルモン作用で禁止しているのではなく、内臓に対する有害性が根拠です。3番目に、PrecautionとPreventionはリスクが未知か既知かで違います。1つの例として次の話を聞きました。道路を渡る前に、右と左を確認します。これは自動車が来ると想像しているからです。これはリスクが既知だからPreventionであって、Precautionではないと言われました。その時は納得したような気がしましたが、後でよく分からなくなってしまいました。

問題点を再整理すると「予防的な取組方法」に基づく判断と「予防原則」は具体的にはどう違うのか。PrecautionとPreventionはどの程度違うのか。それを日本語にした「予防」と「未然防止」はどの程度違うのか。日本ではずっと「未然防止」をやってきた、向こうでは「予防」といっているが、これはどう違うのか。もう1つは、日本はリオ宣言に賛成したので、「予防的な取組方法」には賛成したはずです。今まで日本でやってきた「未然防止」と違いはあるのか。これらの疑問について、これらを自分なりに整理しました。

まず第1点のPrecautionary approachとPrecautionary Principleの違いについては、世界的には大きく違うと議論されていました。有害性やリスクのデータがない場合には、類推をします。どの程度まで類推して安全側で規制するかという違いが大きい場合があります。その例がフタル酸エステルです。日本では厚生労働省で2物質の有害性が判明し、このおもちゃへの使用を禁止しました。EUでも2物質の有害性が判明しましたが、他の4物質のフタル酸エステル類も何かあるかもしれないので、暫定的な禁止をしているという違いがあります。ここの注目点は、他もフタル酸エステル類だということです。他の化学物質に広げていない、つまりフタル酸エステル類について、類似の毒性を有していると類推したのだと思います。次に、EUでは臭素系難燃剤を禁止をしています。日本では有害性のデータが揃っていないこともあり、難分解性、高蓄積性の物質でもあるので、一部の物質については事業者側で自主的に生産されていない状況になっていると思います。同じように、類推で規制している例として、ダイオキシンを出しました。ダイオキシン類はすべての異性体についてTEF(注:Toxic Equivalency Factor。毒性等価係数)で規制をしています。これは異性体ごとの毒性データがすべて揃って、実験的に証明したわけではありません。科学的な計算をし、作用の強さを類推してTEFをあてはめて使っているので、日本でも毒性データがなくても規制をしていると思います。一方、類推で規制していないのが4番目の例です。日本ではトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンは発がん性物質として地下水でも規制をしました。その結果、同じような有機塩素系溶剤のジクロロメタンに移っていきました。もう1つ、1,1,1-トリクロロエタンという類似物質がありました。これは毒性が低かったのですが、オゾン層保護の関係で使われなくなりました。PRTRデータを見るとこの3物質の中で一番排出量が多いのはジクロロメタンになっています。しかし実際に発ガン性は、IARC(注:International Agency for Research on Cancer。国際がん研究機関)で2Bという同じようなレベルでしたので、それほど違いがあるようの思えません。有機塩素系溶剤全体で有害性を比較した上で、どのような規制にするか検討すべきでしたが、トリクロロエチレンとテトラクロロエチレンの毒性が先行して叩かれた結果、ジクロロメタンに移行したようです。これは日本だけではなくEUでもこの3物質をグループとして評価していないと理解しています。フタル酸エステルのような類似毒性を持つ物について、毒性データを集めて、一部類推をしているということは、EUでも必ずしも全部やっているわけでもないだろうと思います。このような違いはありますが、最後の「挙証責任の転換」は全く違う次元で、政策的な要求と思います。日本でいう既存化学物質対策について、EUでは今後、事業者にすべてやらせるようですが、ある意味政策的な要求なので、別の話だと認識しています。

次にPrecautionとPreventionの違いですが、日本ではPrecautionを「予防」と訳し、Preventionを「防止」や「未然防止」と訳します。先ほど言ったように、リスクが未知か既知かで分けていないように思います。例えば「予防接種」というのは、リスクがあると思って予防接種しますし、「予防措置」もリスクがわかっている場合に使われます。「未然」だとわかっている状態での防止という意味で「未然防止」としただけで、「予防」と同じ意味になるのではないか、というのが私の考えです。

日本では公害被害の反省から、公害対策については重大な環境汚染や健康被害が生じないように「未然防止」施策を実施してきました。日本は「予防的な取組方法」を含むリオ宣言の採択に賛成しています。これをよく読むと同じような考え方になるので、「未然防止」において「予防的な取組方法」を適用してきたと思います。予防的な取組方法の例の1つとして、オゾン層破壊防止のためにフロンを規制するとか、地球温暖化の温室効果ガスの排出量削減、あるいはカルタヘナ議定書による遺伝子組み換え生物の規制があります。これらはすべて科学的には証明されていないが、危ない可能性が高く、気づいたときには手遅れになるから先に予防する、という考え方なので「予防的な取組」といえます。しかしある意味では「未然防止」であるという整理もできます。

最後に私なりの結論をまとめました。「予防的な取組方法」と「予防原則」は、世界的に異なる概念として使われています。「予防原則」とは予防的なものを広くとらえていることを使われる方は充分留意すべきだと思います。有害性リスクのデータがないとどの程度まで類推して安全側で規制をするかによって、予防の程度がかなり異なる場合があります。さらに予防原則には「挙証責任の転換」という考え方が入っています。これが入ると全く違う次元の話になると考えられます。そうでなければ、予防をどこまで類推するか、安全側で考えるかという程度問題になりますが、予防原則にこれが入ると程度問題ではなく政策議論になると思います。次のPrecautionとPreventionの違いについては、はっきりしていませんが、日本ではだいたい同じような意味で使われてきたと思います。最後の結論ですが、概念の議論については、抽象的でよくわかりません。結局は、十分証明できないけれど、リスクや有害性が懸念されるようなケース、例えばフタル戦エステルは2物質の有害性情報だけで他の4物質も危ないと思うのか思わないのか、また、先ほどのトリクロロエチレンとテトラクロロエチレンを規制したらジクロロメタンも規制しなければいけないのか、といったように類推できる場合にどうするかということです。化学物質の管理方法ついてPRTRや化審法改正など、法的には整備されましたが、具体的な物質の議論になると思います。その中で、このようなケースはどこまでやればよいか、具体的に経験的に積み重ねていくことが大事になってくるというのが私の結論です。

(北野) ありがとうございました。最後の方でいくつか問題提起されていますが、その議論はこの後にしたいと思います。主に前半部分についてご質問があればお願いします。

(中下) 先ほど早水さんが言われたように、同じ会議に出ていました。この2つの違いについて、EUとスウェーデンに調査したときなど、色々なところで尋ねてみました。その結果、EUでは、私たちが日本で議論しているほど、皆さんが2つの議論の違いを認識しているわけではなく、どこに行っても2つの意味は変わらないと言われました。EUでは、彼らがどのような場面でどんな形で予防原則を適応するか、というのが大きな議論になっています。どういう形でという中に、一番極端な適応の仕方として、挙証責任の転換を一部含みます。これは、先ほどガイドラインがありましたが、場合によっては挙証責任の移行の可能性までいくと思います。また、CEFICにも瀬田さんのご尽力で訪問させていただきました。産業界では予防原則自体は異論がない、approachも同じだ言っています。では、どこが一番懸念されているかというと、ここでいうと5番目です。取っている規制が、避けなければいけないリスクと比べてどの程度のものか、についてです。EUでは予防原則の適用を裁判所が決めておりますが、裁判所の結論の中で、取られた対策が避けなければいけないリスクに比べて規制が非常に厳しいことを盛んに問題にしています。具体的に、どのように適応していくのかが一番大きな議論になります。結論としては、早水さんのまとめて下さった結論とほぼ同じでした。概念の整理よりも、具体的な場面でどのような形で適用していくのかが議論されていくべきだと思いました。もう1つはEUでREACHという新しいシステムの話を聞いたときに、vPvB(注:very Persistent and very Bioaccumulative。難分解性と高蓄積性)という高懸念物質という扱いがありました。毒性を問わず、物質の性状で難分解性と高蓄積性があれば、高懸念物質にしています。代替の物質がないとか、いくつかの条件があり、その条件の中でしか使えないようになっています。これも挙証責任の転換の1つになると思いますし、適用の形だと思います。そうすると有害性が十分に証明されないというよりも、ある物質については、そのような形で大きく網を掛けてしまう。先ほどの大竹さんの話でいくと2つ目の考え方に非常に近いことを導入していると思いました。最後に質問です。スウェーデンでよく強調されたのは、代替原則ということです。代替物質があるなら、予防原則を適用すればいいという考え方が当たり前のように話されていて、2つの原則がどのように関係しているのか尋ねたところ、一応違うが適用の場面ではほとんど同じような形で適用されているという回答でした。この代替原則と予防原則ならびに予防的取組との違いについて、大竹さんと早水さんのお二人に教えていただきたいと思います。

(早水) POPsの議論の中でも、alternativeという言葉を入れるかどうかの議論がありました。A物質が危なくなった場合、より安全なBにすればいいという意見でしたが、一方で、Aのリスクを抑える方法があればいい、Aが危ないとなぜすべてBにしなければいけないのか、リスクを抑える手法とリスクがありそうなら他の物質に移行するという手法とどちらもありえるという意見もありました。私は個人的には代替に賛成する感じがあります。たとえば、昔OECDで、「発がん性のある農薬は代替物質にして発ガン性がないものにすべきだ。なぜなら発ガン物質ではない物質もあるのだから、リスクが少しでもある物質は使うべきではない。」という議論がありました。日本でもそのようにしていると思います。ただ、代替物質の有害性が、もとの物質と同じ程度わかっていればいいのですが、有害性がどの程度わかっているのかによって判断が違うと思います。代替物質と比較した解析がどれだけできるかにかかっていると思います。

(大竹) 代替物質は、予防的な方法の一つの大きな柱だと思います。代替物質が簡単に見つかる場合はいいですが、必ずしもそうではない場合が多いです。例えば、ポリスチレンが紙に変わったとき、紙の処理に大変手がかかってきます。突然ポリスチレンが禁止されて、中小のメーカーが一斉に紙に移行されるとき、本当に安全かどうか難しいところだと思います。また、代替物質は一つの選択肢ですが、総合的に考える必要があると思います。言葉の問題ですが、代替物質にはsubstitutionとalternativeとoptionがよく出てきます。物質を変えること、方法を変えること、全体の政策を変えることの3つを上手に使い分けているように思います。

(福水) 1つだけ教えていただきたいことがあります。15枚目のスライドで、EUと日本が比べられています。予防原則と禁止につながりはありますか。approachというと、measureにも色々な手法があると思いますが、予防原則というと「禁止」がほとんど書かれてあり、それ以外のことが書かれていないように思います。

(大竹) なぜprincipleを使いたがらないか、という説明にもありましたように、広く強く規制されるイメージがあるようです。海洋法ではapproachを使っているようですが。EUでもMTBEなどはガソリンに入れる量を減らす、パーセンテージを下げる、という方法も一つの規制ですし、ノニルフェノールに関しては90年代から手を打っているので、予防原則に基づいて規制する必要はない、という結論もあります。ノニルフェノールの場合、ヨーロッパは早く手を打ちましたので、農薬のノニルフェノールも減らし、新たな予防原則を用いて禁止する必要はないという結論に達しました。ビスフェノールAに関しても、リスクアセスメントが行われましたが、まだ低用量に関してはわかっていないことがたくさんあるので、色々なプロジェクトで研究し、予防原則は適用しないように決めています。適用するものとしないものと、PBDEのように明らかにban(注:禁止)というものもあります。

(福水) 言葉の議論はいくらしてもしょうがない話かもしれませんが、100人いれば100人同じような結論に達するのが「原則」のように思えます。「予防」と「原則」は言葉として非常に難しいですから、日本語に訳すときに、「コンセプト」や「概念」や「考え方」と言えば、何となくわかるような気がします。「原則」というと違和感を覚えます。Approachというと納得するように世の中変わってきているとは思います。

(有田) 以前から「予防原則」を議論の中に入れて欲しいと希望していましたのですっきりしました。言葉の抽象的な議論をするつもりはありませんが、「予防原則は無い」と行政の方によく言われます。私たちは、「予防的措置」という意味で「予防原則」と言っている場合もあります。産業界の方は「予防原則」について、強い規制のイメージを持っていらっしゃるようです。言葉の概念を議論するつもりはありませんでしたが、今回まとめでとして議論された事が大事だと感じています。

(北野) それでは意見も出ておりますので、質問も含めて議論しましょう。あくまでも予防的な取組方法なり原則を行政に入れるべき等の議論ではなく、予防をどう考えるかについて議論したいと思います。

(鳥居) 早水さんの6枚目のスライドについて質問です。EUの主張の2番目、「締約国会議による政治的判断のプロセスを組み込むべき」とありました。もし可能であれば、何についての予防原則か、POPsだけでなく色々なところでこの話があるという理解でしょうか。
 もう1点は、同じく早水さん資料の18枚目のスライドです。まとめとして大変いいことが書かれていると思いますが、3番目、概念の違いを抽象的に議論するより、「リスクや有害性が十分証明されないが・・・」とあります。リスクと有害性は大きく違いますので、この辺についてご意見があれば伺いたいと思います。

(早水) まず、6枚目のスライドについて、これはあくまでもPOPs条約において、科学的な検討委員会だけでなく、それぞれの段階で締約国会議が関与するべきだ、というPOPs条約だけの議論です。他の条約は知りません。
 18枚目のスライドについては、先ほどお話にありましたvPvBも入れなければいけませんので、リスクと有害性の両方の意味を入れました。有害性が十分証明されていないというのは、毒性試験の結果がないというケースです。vPvBは毒性が不明ですから、毒性があるか分からない。わからないけれども、もし少しでもあった場合に、重大なリスクになりえます。証明されていないが懸念されているという意味で、両方ありえると思いここでは区別しませんでした。

(鳥居) この会議で議論すべきかどうかわかりませんが、大変重要なポイントだと思います。

(北野) 要するにリスクと有害性の違いを確認しようということですね。

(角田) 大竹さんに2点質問したいと思います。1つは先ほど福水さんが「原則」というと「禁止」になるのではないか、という意見に対して、大竹さんから様々なレベルがあるというお話がありました。EUで原則を適応するときに、例えば、これにはこれが対応する、というような議論がありましたか?もう1つは、アメリカのグラハムさんの話には、経済的な要因が入ってきます。また、ウィングスプレッド声明でも経済的な話が入ってきます。EUの場合、政治的な要因のお話がありましたが、費用対効果とか貿易問題とか、経済的な判断や要因が議論されているのか、教えていただきたいと思います。今日の最初の議論でもビジネスリスクと環境リスクをどのように議論するかという話があったので、今後の参考になると思いました。

(大竹) 後の質問からお答えしたいと思います。コミュニケーションペーパーの中にはそのような項目があり、議論されています。最初の質問は、追加資料の5枚目のスライドでお答えします。

EUでのリスクアセスメントとマネージメントの関係をケミカルビューローの方が説明してくださいました。リスクアセスメントを行い、委員会が意見を述べ、マネージメントに移るときに、それまでのリスクアセスメントの中身、不確実性を検討します。本来MOS(注:Margin of Safety。安全係数)が100以下であれば規制されるのに、先ほどのBDEをよく見れば、赤ん坊に対する試験やもともとの試験の時間が短かったことを考慮して、マネージメントに回します。そうすると政策の専門家がどのようなマネージメントをするか、原案をつくります。それに関しては個々の物質でリスクアセスメントの結果に違いがあります。ノニルフェノールの場合はたくさんの情報がありますし、BDEは少なかった。ペンタはまだ情報があったほうですが、オクタやデカに行けば、ほとんどデータがないような状況でした。つまり、個々の物質をどうするか、類似のものも判断しながら決めてマネージメントの方に回ると思います。

(安井) 今日、色々なことが明確になりましたし、考え方も2種類あることがわかりました。早水さんのお話では、いわゆるアンブレラグループとEUとの対立の構図が明確に記述されていました。私自身の個人的な感触では、確かにJUSSCANNZとEUとの対立の構図はありますが、本当の境目はEUの内部にあるような気がします。私は実態に直面したことがないのでわかりませんが、中下さんのお話でスウェーデンの話を聞きますとスウェーデンと他の国が違うように感じました。その辺で何か知見がありましたら教えていただきたいと思います。

(早水) 国際交渉の場合では、EUは一枚岩です。議論によって担当の国を分担していますので、その国の主張ではなく、EUの主張をしていると思います。例えばBSEの話を最初にしたのはイギリスの人でした。OECDにいたときに、確かにスウェーデンは厳しいと聞きましたが、それは化学産業がないからで、自国で作っていないので輸入を止める、輸入を止めても自国に影響しないから規制ができる、ということを個人的な意見として言っている人がいました。そのような意味でも、EUの中でスウェーデンやオランダは厳しい方で、ドイツやイギリスは緩い方、という考えはあると思います。

(大竹) スウェーデンの方の文献を読むと、国内ではスウェーデンのやり方に対する産業界の反発はありますが、世界的には非常に評価されている、という言い方をしています。原発の問題もそうですが、人の健康や環境に関して現実にできるかどうかではなく、理想を先に出すような政策のあり方があるのかもしれません。

(後藤) 言葉は正確に使用すべきである、という意見は一般論として当然だと思います。私は早水さんが出された結論は妥当だと思いますが、その中で、リスクや有害性という言葉が出てきます。私は現在NGOですが、もともとリスクマネージメントの専門家であると自負しております。リスクマネージメントといった場合、冒頭に安井さんが言われたように、ビジネスリスクもあれば化学物質の物質としてのリスクもあります。リスクという言葉の中には、ハザード、リスク、ペリル、ロス、すべての意味が含まれており、リスクマネージメントといった場合には、ハザードマネージメント、リスクマネージメント、ペリルマネージメント、ロスマネージメントも含まれています。これに関しては、アメリカのリスクマネージメントも全く同じで、あいまい言葉としています。このような円卓会議で「リスク」という言葉を使ったときに、アメリカも日本も使っている「リスク」というあいまい言葉で使う場合もあれば、厳密にハザードとリスクを使い分ける場合もあります。常に、リスクは「ハザード」×「エクスポージャー」であり、それ以外の意味で使うべきではない、とすると日常会話と離れてしまいます。言葉は正確に使う必要がありますが、場合によっては違うということを申し上げたいと思います。

(北野) 前半の議論で、瀬田さんから化学物質の定義についてのご発言がありました。私自身はこの場で細かく定義しなくとも、自然と合意ができてくるという見方をしております。

(崎田) 私は「未然防止」等の言葉の議論に加わってきた経験がありませんが、最近の化学物質対策に関する状況を見たいと思い、中下さんと同じ頃にスウェーデンへ行き、取材をしてきました。その中で記憶に鮮明に残っていることは、化学物質に熱心な市民団体に取材したときのことです。政府は化学物質の有害物質ゼロを打ち出していますが、ゼロの意味を政府に尋ねたところ、「リスクゼロ」との答えを得ました。しかし、市民団体側の意見は「ハザードゼロ」と考えて取り組んで欲しいとの言い方をしていました。現実の進め方に関しては、市民グループも積極的に取り組んだ企業の商品を消費者が選択するとか、取組に積極的な企業がエコファンドで評価されるなどの仕組みを作っていくことが市民の役割であり、そのような状況を作って多くの企業が積極的に、取り組むような社会を作っていくことが、自分たちの役割であると言っていました。産業界に何かを言うのではなく、多くの市民に化学物質に関する情報提供を熱心に行っているという状況がはっきりありました。そのような意味で、概念の細かい議論よりも、現実の中でどのように応用しながら対策を広げていくか、というところに社会の関心があると思います。

(中下) 崎田さんと同じ頃スウェーデンに行き、同じような感想を持ちました。先ほど、EUとスウェーデンは違うという話がありました。スウェーデンという国は実現できるかどうかを考えずに、社会の方向性を大きく掲げます。ものすごく進んでいると思って見ていましたが、スーパーマーケットに粉石けんがなかったり、エコマークがついているのに合成洗剤であったり、日本の方が進んでいるという実感を持ちました。ただ、政府の役人や産業界に伺うと持続可能な社会や環境技術に転換していくことを当たり前であり、大前提としていることを皆さんが語っていました。日本は決められたことは必ず守る、というまじめな国民性があると思います。そのような意味で見るとスウェーデンやEUは目標が高いわりには、現実にやっていることはそれほどでもないと思うことが多々ありました。しかし、コンセンサスを得てその目標に向かっているところは、日本も見習うべきであり、まじめすぎると身動きが取れなくなり、いつの間にか技術革新の点でも、遅れをとってしまうことがあり得ると思います。EUで感心したことは、調査に行ったとき、EUの経済担当の方から「環境もさることながら、持続可能な技術への転換のために技術革新を行っている」と聞いて、私たちは予防原則を考える上でも、考えていかなければいけないと思いました。
 少し紹介させていただきたいと思います。今年の日弁連で「蓄積する化学汚染と見えない人権侵害」と題するシンポジウムを開きました。その時に安井さんや日化協の小倉さんにもご協力いただきました。その時の議長報告書に、今お話した調査を書いている部分があります。入り口に報告書の申し込み用紙があるので、よろしければ読んでいただきたいと思います。
 また、議論に戻ります。早水さんの提案は賛成です。“full”という言葉が重要と言われていたように、資料には「十分」という言葉が入っています。先ほどの福水さんの質問と関連しますが、予防原則を適用すると必ず規制しなければいけないと思われがちですが、必ずしもそうではありません。EUでも聞いてきましたが、予防原則の本当の原則とは、科学的な不確実性があっても、それを理由に対策を講じないわけではなく、できることをやるという姿勢が原則であり、何をやるかについてはシチュエーションによって変わってきます。それが合意形成です。危険度が高い、代替物質があるなど、色々なことを勘案して規制すると思いますが、規制までいかない部分については自主的な取組でもいいでしょうし、とりあえず削減策を行うなどのバリエーションがあると思います。つまり、科学がベースにあると思いますが、予防原則を“full”や“serious”で区切らずに、わからないものでも何か対策を講じることが原則だと思います。また、科学的な知見がどのくらいあるかによって、対策の取り方が全然違ってくると思います。そのようなバリエーションの中で考えていくことが必要だと思います。

(北野) ありがとうございました。まだご発言されていない方、「予防」に対する考え方やイメージについて意見がありましたらお願いします。

(中尾) 個人的意見として、「予防原則」や「予防的取組」がなかなか広がらない理由に関して、科学的な知見が多くの場合において十分でない現実の中で評価しなければならないという実体論があります。先ほど、いくつかの化学物質に関してデータがないという話がありましたが、その責任を事業者が負うかについて議論しても、お金や時間の問題もありますので直ちにはできません。そのような現実の問題の中で、どのように判断していくかが、皆さんの総意だと思います。具体的には各省庁、学者の先生方、業界の方、市民の方、全ての方のコンセンサスは、科学に基づいた規制や取組だと思います。しかし、完全な科学的根拠は現実的には難しい。このような問題には原因があり、結果があり、その間の因果関係があります。化学物質の場合には人への健康影響や生態系への影響になりますが、それが証明できる時点になれば、健康が犯されたり、生態系が犯されたり、全てがジ・エンドの状態になります。ある学会においては、“regulatory science”、行政科学や規制科学と訳しますが、アメリカでは20年間くらいこの取組を行っています。これを一言でいうと正確なデータ、最新の知識、広い視野を根拠とした適切な評価を目指す独自の自然科学ということで、ある学会ではBSE問題を含めて具体的に“science”をベースにどのように取り組むか、多くの場合、不確実性を含んで最終的にはどのような評価をして、対策をとるべきか議論しています。

(大野) 私たちの業界は、お客様に近いところで、全体的な合意ができていないところを右往左往し、最終的にCSR的な観点から企業としてどう考えるか、今も問われているところかと思います。科学的な知見の部分は弱い業界ですので、全体的な方向性が固まってくる中で、消費者、業界、政府の方針が決まってくるような、このような合意形成の場があれば嬉しいと思います。

(横山) 企業としてやるべきことは、本日のお話で十分わかりますし、企業も現実の問題としてリスクコミュニケーション、リスクマネージメントを進めております。現在は、大竹さんのスライドにありました、最後のまとめのうち、2番目「有害性が潜んでいることを前提にした場合、社会システムを構築する」ということが、現実的に色々な試行錯誤が進んでおります。我々電器産業の場合は、部品屋さんや取引先の方にしわ寄せを持って行ってしまいます。部品屋さんは材料屋さんの方に持っていく。遅い形かもしれませんが、どのようなルールに基づいて行うかについては、現実に進んでおります。そのためにも、業界や企業が判断をする場合、判断基準を作っていますが、データベースは何よりも不足しているように思います。データがなくて判断ができないケースが多いので、企業が得られた化学物質に関する情報を国に報告するという義務付けも、今度の化審法にあります。そのようなデータが揃うに従って、社会システムの構築が進んでくると思います。色々な努力はしていますが、まだやるべきことは多いといった感触です。

(福水) 大竹さんの最後のスライドにあるまとめの2番目の話は、横山さんがおっしゃったような話ですか?むしろ前者の方で理解していました。後者の話は、今電機業界がやっていることとは違う話だと思います。これを日立製作所はじめ、色々なところで行われているとしたら、私にとって驚きなのですが、いかがでしょうか。

(横山) 社会システムを作っていくという意味で2番目の方だと思いました。

(福水) まとめの2番目の話について、具体論があれば教えていただきたいと思います。

(大竹) この事例は、マサチュセッツ州で化学物質の削減の法律が89年にでき、それに基づいてプログラムを作って取り組んだら、実際に削減したという例だけです。その流れを引いているのがウィングスプレッド声明です。複合汚染の場合、あるいは私たちが知らないものの組み合わせでもっと有害なものもあるかもしれません。そのためには全体として化学物質を減らす方向で社会システムを作ろうという考え方です。それを予防原則と呼ぶかは別です。

(福水) 私の後者の理解は「アーミッシュ」という世界をイメージしてしまいました。

(大竹) 無駄なものは使わないようにしようという考え方です。

(福水) 無駄なものは使わないようにしようとする概念を突き詰めていくとアーミッシュという世界を思い浮かべました。横山さんがやっているとおっしゃったので、驚いた次第です。

(鳥居) 横山さんのご発言に対する質問です。先ほどのお話は、電機電子工業会の皆さんが取り組んでいる協議会のことでしょうか。そうであれば、化学工業会の素材業界での理解は、セットメーカーがRoHS規制を含む懸念物質をリストアップされて、リストアップされた物質が、製品の中、製品を構成する部品、部品の原料となる化学物質の中に入っているか、入っているとすればどのくらいの量か、という数量や入っていないことの証明を求めています。従って、私は予防原則の概念とは違うように理解していますがいかがでしょうか。

(横山) 予防原則の言葉の問題もありますが、何か起こらないうちに手を打つという未然防止の観点から、同じとは言いませんが、それも含んでいると考えています。

(吉村) 今日は大竹さんと早水さんのお話を聞いて、予防原則と予防的なアプローチについての整理ができてよかったと思います。企業も、その中の活動において予防的な取組を当然行っています。今日の議論で1つ気になった点としては、予防原則や予防的なアプローチについて議論するときに科学的な議論を尽くすことが大原則だと思います。BSEの対策が開始されるときもそうでしたが、科学的な議論や政策的な議論をする場合、我々の意見を言う場がありません。今回の化審法の改正についての審議会には、産業界の代表が出ていましたが、科学的な議論や政策的な議論をする時に、産業界のメンバーも入れてもらえるかというと、入っていないケースの方が多いです。BSEの時は、厚生労働省、学術経験者、消費者団体は入っていましたが、その中で回収指令が出ました。今回の化審法の改正の時に、産業界が、ヒアリングとしてではなく意見や考え方を述べさせていただける場を設けて欲しいという希望を出しています。そのような場がないと一方的に政策が決められてしまうというところに危惧を感じます。

(大竹) 予防原則であれ予防的措置であれ、これだけで世の中全ての安全安心が守れるわけではありません。今までリスクアセスメントの結果、科学的ではないからといって規制が行われなかったものに関して、予防しているだけです。これまで出てきたガイドラインのほとんどのものは、ステークホルダーが一つのテーブルに集まって議論するということがあります。これはリスクコミュニケーションとは根本的に違うと思います。ヨーロッパではディスコースという言葉を使っていますが、一つのテーブルでその人の背景も十分理解した上でディスカッションすることが、予防原則の第一条件と言ってもいいくらいだと思います。

(朝倉) BSEの話が出ましたので、環境分野ではなく食品安全の分野から発言したいと思います。今年の7月に食品安全委員会が設立されました。食品安全の施策の根本としてリスクアナリシス、リスク分析という概念で行っていくことになりました。それにはリスクアナリシス、すなわちリスク評価、リスクマネージメントを行う際にあらゆるステークホルダー(利害関係者)が参画したリスクコミュニケーションで意見交換した上で、意思決定することです。先ほどBSEの話が出ましたが、私たち農水省もリスクマネージャーとして既に農薬や抗菌性の飼料添加物、最近ではトレーサビリティーに関連してBSE関係でリスクコミュニケーションの機会を作って、消費者団体や産業界の人にもオープンにて意見交換に来ていただくような取組をしています。今、Precautionary Principleのお話がありました。EUのFood Lawでは、先ほどのリスクアナリシスという概念の中にリスクアセスメントとリスクマネージメントがあり、リスクマネージメントの一部としてPrecautionary Principleがあるとしています。従って、食品安全のリスクマネージメントを行うに際して、科学的な評価を行った結果、リスクが大きいと予測されるけれども、科学的情報が十分集まらず、リスクの不確実性が大きいときに、科学的な状況だけでなく、政治的、経済的な状況を考えた上で、リスクマネージャーが取りうる一つのmeasure(リスク管理対策)として、Precautionary Principleがあります。ただし、それでPrecautionary Principleの措置をとった場合には、見直しの作業があります。一度取った措置について、モニタリングやレビューを行い、もう一度科学的な評価をしてPrecautionaryではないリスク管理の方法を検討する。例えば、食品安全の分野ですとALARA principle(注:as low as reasonably achievable。合理的な範囲で可能な限りリスクを低減するという原則) これはコーデックスという国際的な機関でも、そうすべきだと言っています。合理的に無理なく達成可能な範囲でできるだけ食品汚染のレベルを低くしていきましょう、ということです。ALARA principleというのもEUのfood lawの中に入っています。つまり、どのようなリスクマネージメントをとるかというリスクマネージャーの判断の問題です。そのような意味で、今回のアメリカのBSEも、“abundance of caution”という言葉を使っておりまして、preがつくかつかないか、だけですが、そのようなPrecautionの認識があります。当然リスクマネージメントをしますから、未然防止の考え方の下で、どのようなリスクマネージメントをしていくか、その際にリスクコミュニケーションを行ってステークホルダーから意見を聞いてリスク管理を行っていこうというリスクアナリシスの枠組みで、日本も食品安全行政を行っていきます。食品安全委員会がリスク評価し、厚生労働省と農水省がリスクマネージメントを行うという機能的な分担の中で、リスクコミュニケーションも行う取組が行われつつあります。ご関心のある方は、是非ご出席いただき意見を述べていただきたいと思います。

(滝澤) まず前半の議論ですが、資料1はこれまでの議論のまとめですので、言ったはずだけど載っていないものに関して整理すればいいと思います。後藤さんがご発言されたように、この1年で企業の実態も変わってきています。半年前、1年前の議論がホームページに載っていますが、円卓会議の議論が2月にホームページに載ったときに、こんな議論かと思われるかもしれないご懸念はごもっともだと思います。これまでの議論として実直にまとめるのも1つの選択だと思います。そうではなく、もう少し肉付けをして出そうとするならば、それは幅があるように思います。これに関しては後でご意見をいただいて調整したいと思います。後半のお二人のお話、ありがとうございました。先ほど中下さんから、原則をどう適応するのか、どう進めてくか、というお話がありました。早水さんの紹介にありましたように、実際に条約の場で、色々な国の政策や国としてのスタンスを背負いながらやっているように思います。ここは勝った負けたではなく、譲るという考え方を認識できましたし、溜めにする議論ではなく、選択するなら見通しをつけてやっていかなければいけない、重大な基本的なスタンスに関係する問題だと思いました。

(北野) 時間になりましたが、本日は改めて大竹さんと早水さんにお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。議論を聞いていますと、予防的な考え方は必要であると皆さんも考えていらっしゃると思います。科学的根拠やデータがない場合に、それをどう適応するか、そこのコンセンサスをどう作っていくかが、テーマとして残ったとように感じました。
 これで第8回の化学物質と環境円卓会議を終わらせていただきたいと思います。

(安達) ありがとうございました。次回についてはメール等で日程調整をさせていただきたいと思います。概ね3月中下旬を考えております。また、資料1について、追加のご意見、修正のご意見、取扱いについてもご意見等ございましたら、1月中を目処に送っていただいて、その時点でまとめたものをメール等でご相談させていただくようにしたいと思います。