水質汚濁防止法に基づき、都道府県知事は、公共用水域の水質の汚濁状況を常時監視することとされており、都道府県ごとに毎年作成される測定計画に従って、国及び地方公共団体が公共用水域の水質の測定を行っている。
これは、平成10年度に国及び地方公共団体が実施した、公共用水域水質の測定結果の概要を取りまとめたものである。
1.測定地点数及び検体数
- (1) 健康項目
- 5,409地点 (286,697検体)
- (2) 生活環境項目
- 7,290地点 (433,861検体)
〔3,258水域〕
2.測定結果の概要
(1) 健康項目
健康項目に係る環境基準の達成率(測定地点数に対する達成地点数の割合)は、99.5%となっている(平成9年度は99.5%)。
(2) 生活環境項目
[1] 有機汚濁の代表的な水質指標(河川についてはBOD、湖沼及び海域についてはCOD)に対する環境基準の達成率(環境基準類型が当てはめられた水域(以下「当てはめ水域」という。)に対する達成水域の割合)は、次のとおりである。
- 全体
- 77.9% ( 3,258 水域中 2,539 水域で達成。平成9年度は78.1%)
- 河川
- 81.0% ( 2,527 水域中 2,046 水域で達成。平成9年度は80.9%)
- 湖沼
- 40.9% ( 137 水域中 56 水域で達成。平成9年度は41.0%)
- 海域
- 73.6% ( 594 水域中 437 水域で達成。平成9年度は74.9%)
[2] 湖沼における全窒素及び全燐の環境基準の達成率は、38.3%(60水域中23水域で達成。平成9年度は42.6%)となっている。
[3] 海域における全窒素及び全燐については、平成7年度から測定が開始されており、環境基準の達成率は、70.5%(112水域中79水域で達成。平成9年度は55.1%)となっている。
3.汚濁状況の推移
(1) 健康項目の環境基準達成率は、前年度に引き続き99.5%とほとんどの地点で環境基準を満足している。
(2) BOD又はCODの環境基準達成率は、公共用水域全体で見ると、平成5年度までわずかずつ上昇し76.5%であったが、平成6年度には渇水の影響により68.9%まで低下した。しかし、その後は再び回復傾向が見られ、平成10年度は77.9%であった。
水域別では、河川の達成率は近年着実に向上してきたが、平成6年度には渇水の影響により67.9%まで低下した。しかし、その後は再び向上し、平成10年度は前年度に引き続き80%を超えている。
湖沼の達成率は、ここ数年は40%前後と低いレベルで推移している。
海域の達成率は、近年は80%前後で推移していたが、平成10年度は、河口付近海域の水質悪化等もあり、前年度(74.9%)と同程度にとどまっている。東京湾等の広域的な閉鎖性海域における達成率も、近年ほぼ横ばいで推移している。
(3) 全窒素及び全燐の環境基準達成率は、湖沼では、ここ数年は40%前後と低いレベルで推移しているが、海域では、新たに当てはめ水域となった海域の達成率が高いことから、70.5%と前年度より上昇した。
4.水質保全対策の推進
これまで、水質汚濁防止法等に基づく事業場に対する排水規制の強化、生活排水対策等に係る下水道の整備、及び広域的な閉鎖性水域を対象とする総量規制(現在は平成11年度を目標とする第4次総量規制)の実施、並びに湖沼水質保全計画に基づく施策等の水質保全対策が進められてきた。中でも、生活環境項目の環境基準の達成率は未だ満足できる状況ではなく、生活排水が主要な汚濁源となっていることから、産業排水対策と併せて、生活排水対策の一層の推進を図っていく必要がある。
また、健康項目については、環境基準を達成していない地点が見られることから、今後とも公共用水域の水質監視を十分に行うとともに、排水規制等の水質保全対策の一層の推進を図る必要がある。なお、健康項目の環境基準を超えた地点については、関係都道府県に対し、その原因を究明するとともに適切な対策を講じるよう指導している。