環境省水・土壌・地盤環境の保全

農薬環境懇談会報告書

平成14年12月
農薬環境懇談会


■はじめに

現在の社会経済は、多様な化学物質の利用を前提としており、その成長は化学物質により支えられてきた部分が大きい。その反面、極めて多くの化学物質に人や生態系が複合的に長期間曝露されている状況にある。今後、持続可能な社会を構築していくためには、化学物質の有用性を基盤としながら、他方で、その有害性による悪影響が生じないようにする必要がある。
化学物質のひとつである農薬も、農作物等を病害虫・雑草等から防除するために必要な資材として農業生産の安定や作業の省力化のために効果を上げてきた。しかしながら、農薬は、水田をはじめとした農地等で栽培される農作物に対し広範な開放系で使用されることから、その使用に伴う農産物や水の安全性、周辺の野生生物や生態系への影響について、従来から消費者を中心に多くの国民から大きな関心が持たれてきた。
さらに、最近の内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン、BSE(牛海綿状脳)症)問題、無登録農薬問題を契機として、これまで以上に人の健康や生態系への影響に対する国民の関心が高まっている。このような状況を踏まえ、安全(リスク評価・リスク管理)及び安心(情報開示により相手に「知らせる」だけでなく相互理解を深めるためのリスクコミュニケーション)の観点から、農薬の環境保全対策についての現状と課題について検討し、今後の施策の推進方向についてまとめた。


本文 [PDF(142KB)]

目次

1 はじめに

2 農薬リスク管理の現状・評価・課題

(1)農薬のリスク管理の現状
ア 上市前段階のリスク管理
イ 使用段階等のリスク管理
ウ 再登録時におけるリスクの再評価等
(2)環境中における農薬の検出状況等
ア 食品中の残留農薬の検出状況
イ 水における農薬の検出状況
ウ 魚類の被害状況
エ 航空防除農薬の気中濃度評価値
(3)農薬のリスク管理の課題
ア 生態系を保全する観点からのリスク管理
イ POPs条約への対応
ウ 安全性評価の課題
エ 農薬に該当しない殺虫剤、除草剤等に対する対応 
オ 微生物農薬、天敵農薬のリスクの管理

3 農薬のリスクコミュニケーションの現状と課題

(1)リスクコミュニケーションの現状
ア 行政機関
イ 農薬製造業者
ウ 農家等農薬使用者
(2)リスクコミュニケーションの課題

4 今後の施策の推進方向

(1)農薬のリスク管理対策の充実
ア 登録保留基準の充実
イ 使用段階等の的確なリスク管理措置のためのモニタリングの充実
ウ 農薬取締法で規制できない化学物質に対する対応
(2)リスクコミュニケーションの推進

5 おわりに

農薬環境懇談会検討委員名簿
農薬環境懇談会開催状況

●参考資料

参考資料目次 [PDF58KB]

  1. 農薬取締法に基づき農薬登録申請者に提出が義務付けられている毒性及び残留性にかんする試験成績 [PDF 252KB]
  2. 作物残留及び水質汚濁に係る登録保留基準の設定方法について [PDF 264KB]
  3. 農薬の種類と土壌残留 [PDF 61KB]
  4. 国産農産物における残留農薬の検査結果 [PDF 49KB]
  5. 水における農薬の検出状況 [PDF 229KB]
  6. 農薬による魚類被害 [PDF 62KB]
  7. 気中濃度評価値が設定されている農薬についての航空防除実施後5日間の農薬気中濃度の推移及び平均気中濃度調査結果 [PDF 84KB]
  8. 食品中の残留農薬における毒性評価の原則
    全てダウンロード [PDF1,940KB]
    P31~36[PDF333KB] / P37~39[PDF319KB] /P40~42[PDF298KB]
    P43~46[PDF347KB] / P47~51[PDF425KB]
  9. Effects of ingesting combination of 20 or 40 pesticides at ADI levels on carcinogenesis in rats.
    全てダウンロード [PDF716KB]
    P52~55[PDF384KB] / P56~58[PDF334KB]
  10. 全農安心システムのしくみ [PDF 382KB]
【お問い合わせ先】

環境省環境管理局水環境部
土壌環境課 農薬環境管理室