環境省>水・土壌・地盤環境の保全>水環境関係>水循環に関する中間まとめ
別紙:環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策の事例
1.一体的な取り組みの方向
(1)流域を単位とした環境保全上健全な水循環の診断・評価の実施
[現在取り組まれている施策等の推進]
◇水循環影響予測手法の開発等に係る調査研究の推進
◇流域を単位とした水量回復、水質改善、生態系保全等、計画目標や指標の適切な設 定に係る調査研究の推進
◇流域水循環の機構の解明、流域の水収支の把握、地下水涵養域や地下水脆弱地域の 把握
[検討課題]
- ◇国レベル
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- 水循環の診断・評価手法の確立
- 水循環マップ(仮称)作成基盤情報整備
- 水辺や水生生物等の保全に係わる基準及び良好な水環境の尺度としての生物指標 の確立
- 環境アセスメントに際しての「健全な水循環」項目の組み込み
- ◇流域(地域)レベル
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- 流域を単位とした地下水、地表水を通じた水循環機構の定量的把握
- 流域水循環マップ(仮称)の作成
- 流域水循環アセスメントの実施
- 流域水循環維持回復施策の一体的取組
(2)環境保全上健全な水循環に資する連携と役割分担
[現在取り組まれている施策等の推進]
◇上下流住民、各種団体、行政等の連携、支援
- 例)農業団体、漁業団体、利水団体、行政による矢作川沿岸水質保全対策協議会
- 流域住民、事業者、行政による桂川・相模川流域協議会
- 地下水保全事業の支援のための(財)熊本地下水基金
- 漁民による森林植樹「牡蠣の森を慕う会」(気仙沼)
- ナショナルトラスト
◇行政と流域住民、市民セクター、企業、研究者等の各主体間のスムーズな連携、交 流の場の確保
◇行政内部の水循環にかかわる各施策の効率的な実施のための部局間の連絡・調整の 場の確保
[検討課題]
◇流域を単位とした関係者間の協議のための組織づくり、連携施策の推進
◇流域ごとの健全な水循環の回復計画の策定
◇上流と下流、国と地方、行政と住民、市民セクター、企業、研究者等各主体間の役 割分担の明確化、ルールづくり
◇流域を単位とした環境保全上健全な水循環の確保に要する財源負担のルールづくり
◇関係省庁の環境保全上健全な水循環についての共通の認識の醸成と、これを踏まえ た総合的、体系的な施策の展開
(3)水循環に関する情報の蓄積、共有、伝達、活用
[現在取り組まれている施策等の推進]
◇白書等による水循環に関するデータの公表
◇インターネットを利用した情報提供
◇各種啓発活動
[検討課題]
◇省庁、地方公共団体、個人、団体それぞれの保有する情報の共通利用データベース 化の推進
◇流域住民等に対する水循環関連情報提供の推進
(4)水循環回復のための技術開発及び技術の国際活用
(5)人と水のふれあいの確保と多様な水の文化の振興
2. 地域別の取組の方向
(1)森林地域について
[現在取り組まれている施策等の推進]
◇森林の水源涵養機能の保全や汚濁負荷排出抑制を図るための、天然林の保全、人工 林の管理の推進
◇水源涵養、生物多様性の確保、レクリエーション空間の確保等、森林のもつ多面的 機能の解析・評価
◇各種補助制度による森林整備の推進、分収林制度、森林整備協定等による森林の維 持管理の推進
◇国土保全対策制度(地方財政措置)等による施策の推進等
[検討課題]
- ◇森林のもつ機能に応じた適切な森林管理の推進
- ◇流域単位での水循環の機構の解明
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- 流域でみた水源涵養と水質浄化の両面での森林の役割・効用等
- ◇流域における森林保全施策の効果把握
(2)農村地域について
[現在取り組まれている施策等の推進]
- ◇土地利用等における配慮
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- ◇既存の農地や用水路を有効利用した、休耕田や冬期の水田における湛水等による地下水涵養を進めるための施策の推進
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- 冬期の水田、休耕田水張りの試験実施
- 浸透性の河床をもつ用排水路の整備
- ◇水の有効利用の促進
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- ◇水質汚濁の防止対策の推進等
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- 環境保全型農業の推進
- 畜産廃棄物対策の推進
- 生活排水対策の推進
- 有害物質の水域への排出・地下浸透規制
- 集落排水施設等の整備の促進
- 農業排水路や休耕田を利用した自然浄化機能の活用による排水の水質浄化対策
- ◇潤いのある水辺環境等の創出
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- 農業用水路、ため池等を活用した親水空間、生態系保全環境(ビオトープ)の創出
- 環境(生態系)に配慮した農業用水利施設の整備
- 農業農村整備事業による水辺・緑地空間のネットワーク化
- 農業用水の持つ地域環境保全等の多面的機能(地域用水機能)の増進対策
[検討課題]
- ◇土地利用等における配慮
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- 農地の宅地化等に伴う水循環への影響把握の実施とそれを踏まえた対策の検討
- 流域における水循環の視点を土地利用計画に反映
- ◇既存の農地や用水路を有効利用した地下水涵養や水質保全を進めるための施策の推進
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- 休耕田等を利用した地下水涵養の実施、水質浄化機能の維持
- 排水路等における自然浄化能力の維持回復
- コンクリートライニング水路整備の見直し
- ◇流域単位での水循環の機構の解明
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- 農村地域における水収支の見通しと水質浄化機構の把握
- 地下水涵養域の把握
- 地下水涵養目標量、汚濁負荷削減目標の設定等
- ◇水質汚濁の防止対策
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- 農地と河川、湖沼との間の窒素、燐等の物質循環機構の把握
- 広域的な非特定汚染源対策の推進
- 木炭等の地域資源を活用した地下水水質保全対策
- ◇潤いのある水辺環境等の創出
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- 農村地域における環境用水(地域用水)の確保
- 農村地域における生態系保全、親水空間回復のための事業の推進
(3)都市地域について
[現在取り組まれている施策等の推進]
- ◇雨水浸透ます設置や透水性舗装等の促進
- ◇雨水貯留浸透の推進
- ◇雨水利用、水道漏水防止対策、節水活動の推進
- ◇下水処理水の再利用、ビル内再生水利用、高度下水処理の推進
- ◇工業用水の循環利用
- ◇有害物質の水域への排出・地下浸透規制
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[検討課題]
- ◇流域単位での水循環機構の解明
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- 都市地域における地下水流動、涵養域の把握
- 水循環機構の解明によるヒートアイランド現象緩和の効果の把握
- ◇都市計画における市町村マスタープラン(市町村の都市計画に関する基本的な方針) や、都市緑地保全法に規定される緑の基本計画での地下水涵養や水へのふれあいな どの盛り込み
- ◇都市計画の緑地保全地区、風致地区、生産緑地地区等、地域地区制度(地域制緑地) における雨水浸透機能維持の位置づけ
- ◇都市計画における地下水涵養の観点からの公園、緑地、広場等の都市施設の適正な配置
(4)沿岸域について
[現在取り組まれている施策等の推進]
◇自然海岸、干潟、藻場の保全
◇砂浜海岸等の侵食対策の推進
[検討課題]
◇浄化機構、生態系への影響等の解明
◇広域的な沿岸漂砂管理手法の確立
◇侵食対策としての流域土砂管理の検討
(5)河川、湖沼、地下水等について
[現在取り組まれている施策等の推進]
- ◇河川の水量の確保
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- 減水区間におけるダム放流の促進
- 高度処理下水の環境用水への利用促進
- ◇河川・湖沼等の水質の改善
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- 各種水質改善策の高度化・総合化、河川浄化等の推進
- 事業場、非特定汚染源及び廃棄物対策の強化
- 有害物質及び感染症を引き起こす病原性微生物等に対する取り組みの強化
- 未規制有害物質に関する情報・知見の集積等
- ◇地盤沈下等障害の防止
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- 地下水採取の規制及び自主規制
- 代替水源の確保
- 地下水位等のリアルタイム監視システムの導入
- ◇水辺、水生生物の保全
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- 魚道など河川構造物の改善
- 遊水池のビオトープ等利用、整備
- 自然植生帯の回復の促進
- 湿地の保全回復策
- 河川生態系に配慮した河川整備
- 河川生態系に配慮した流域の土砂管理の検討
[検討課題]
- ◇水辺、水生生物の保全
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- 河川生態系を踏まえた近自然的河川水流の復活
- 河川生態系を踏まえた流域土砂管理の実施
- 流域における維持回復目標の設定
- 河川や土地改変時等における代償措置
- ◇河川・湖沼等の水質の改善
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- 生態系バランスを活用した水質改善
- 下水処理場放流口位置の見直し等
- 未規制事業場等に対する規制
- 未規制有害物質の規制等
- ◇地下水の利用の適正化と水質の保全
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- 地下水涵養域での涵養目標の設定と誘導策の導入
- 地下水の利用域での地下水利用指針の改善強化と総合的な涵養策の導入
- 地下水の水質規制の強化と保全、浄化対策の推進
- ◇地盤沈下等水循環に係る障害防止のための地下水利用の適正化方策
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- 地盤沈下対策の基礎情報としての地域別・用途別の地下水利用に関するデータの 整備
- 渇水時におけるきめ細かな(例えば、地域別・用途別の)対策への取組
- 消雪用地下水利用に関する対策及び代替技術の開発