環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌の含有量リスク評価検討会

土壌の含有量リスク評価検討会(第6回)会議録


1.日時

平成13年8月2日(木) 14:00~15:50

2.場所

経済産業省別館8階817号会議室

3.出席者

(1)委員
大野 泰雄 委員、櫻井 治彦 委員、佐藤  洋 委員、
鈴木 庄亮 委員、中杉 修身 委員、永沼  章 委員、
林   裕造 委員、米谷 民雄 委員
(平田 亜古 委員、吉永  淳 委員は欠席)
(2)事務局
石原 一郎 水環境部長、
伊藤   洋 水環境部土壌環境課長 他

4.議題

(1)土壌の含有量リスク評価検討会報告書「土壌の直接摂取によるリスク評価等について」(案)について
(2)その他

5.配付資料

資料6-1 土壌の含有量リスク評価検討会委員名簿
資料6-2 土壌の含有量リスク評価検討会報告書「土壌の直接摂取によるリスク評価等について(案)

6.議事

【事務局】 ただいまから第6回土壌の含有量リスク評価検討会を開催させていただく。
 まず、本日の資料の確認をさせていただく。(配布資料の確認)
 なお、本日は、平田委員と吉永委員から欠席の連絡をいただいている。
 それでは座長に議事進行をお願いする。

【座長】 本日は議事が2つあるが、まず本検討会の報告書「土壌の直接摂取によるリスク評価等について」(案)について最終確認を行いたい。報告書については、本日の検討会終了後に必要な修正等を行った上で公表する予定であるので、本報告書の最終確認ができた時点で、事務局の方で最終的な報告書として公表できる資料を作成いただく。
 次に、その他として事務局から平成12年度に各委員の御指導・御協力をいただき実施した調査結果について簡単に紹介した後、次いで別に先生方に御意見をいただきたい。
 それでは事務局の方から、本検討会の報告書(案)について説明をお願いする。

【事務局】 資料の6-2については、前回の検討会以降2回ほど修正案を各委員にお送りしており、それらの御意見等を踏まえ、前回から修正等の部分について簡単に御説明する。(資料6-2に基づき説明)

【座長】 報告書(案)について何か御意見があればお願いする。

【E委員】 水銀の要措置レベルについて、3つの案をできれば1つにまとめてほしいということだったが、まとめたらそれが要措置レベルになるということか。

【事務局】 そういうことである。

【E委員】 今の案だと3つの数字が並んでいて、その中から30をとったということになるのか。

【事務局】 とりあえず30でとらえている。

【E委員】 30については、許容量から計算した値だが、この許容量というのは水銀の場合はたしか魚だったか、食品絡みの話での許容量だったと思う。他の項目についてはすべて飲料水の許容量を引用しているが、そこのところの整合はどうするのか。

【事務局】 我が国ではメチル水銀のTDIがあり、魚介類中のメチル水銀と総水銀の比率を参考に総水銀の値を決めている。一方でWHOでは総水銀とメチル水銀それぞれ数字の比率があり、我が国の許容量をもとにWHOの比率を勘案すると30という数字が出る。2つ目の方法として、総水銀を全てメチル水銀とみなすと20になる。どういった考え方によるべきか一部の先生方に御指摘をいただいており、今回各委員の御意見をいただきたい。

【座長】 3つある総水銀の値を、1つにまとめることができるか。

【G委員】 水銀に関しては私の方からも意見を出したのだが、WHOのPTWIを決めるときには魚介類中の総水銀とメチル水銀の存在比がたしか4対3ぐらいだということで、出てきた値の5と3.3については毒性の比ではなくて存在比である。今回の最初の事務局の案では、あたかも土壌中にも4対3の比で入っているように議論が展開されていたため、指摘した。魚介類中でも総水銀に対してメチル水銀がどれぐらいかというのは、以前は4分の3または3分の2くらいだと言われていたが、環境省の水俣病研究センターの赤木先生が魚の中の水銀は殆どメチル水銀だという報告を出されて、当時の厚生省でも、国内の魚介類に対する暫定の基準値を変えないといけないと騒ぎになったことがある。そういう経過があり、事務局に連絡させていただいた。

【座長】 併記するのがよいか統一するのがよいか。

【G委員】 WHOのPTWIの総水銀の値を引用すればよいのではと思ったのだが、事務局としては、国内に基準値があるものについては、まず国内の基準値を引用するという大前提があるようなので、このような3つの案が出てきているのだと思う。

【F委員】 総水銀と言っても結局はやはりメチル水銀を想定している。

【G委員】 魚介類ではそうだ。

【C委員】 どれにしても無理があるのかなという気がする。一つはメチル水銀の場合、例えば一生涯の健康影響として考えるべきものだとするとやはり神経系への影響がある。ところが無機水銀というのはむしろ腎臓への影響である。特に糸球体腎炎という糸球体のアレルギーの反応みたいなものを考えるべきということになっているようだ。全然ターゲットが違うところのを一緒にしてしまうというのはかなり無理があるという気がするが、ほかにないことも事実。
 EPAのIRISを見てみたが、我々とは違って化合物でRfDを出しているから随分と楽なのだが、それでもやはり水道から引用してRfDを決めているようだ。今回は、他の項目との整合性ということを考えると水道の基準を引用するということかと思う。
 メチル水銀の値を引用するというのは、割合からも無理だし、毒性からやっても無理だし、その割合がゆれているというところからも問題があるだろう。赤木氏の魚介類中の水銀のうちメチル水銀が100%に近いという話は可食部の話だと思う。生態系の中でどうあるのかというのは別の話なので、100%という値を引用していいのかというのはかなり難しいところがある。

【F委員】 土壌中だけ考えればほとんど無機水銀、ただ人為的にメチル水銀が廃棄される可能性もあり、メチル水銀を想定しなければならない気もして、難しい。無機水銀だけ考えれば、微量長期暴露で腎臓に障害が出るという話はそんなにあるわけではない。
 カドミウムが150となっているが、カドミウムは微量長期でもどんどんたまっていって何か影響が出る可能性があるが、無機水銀は蓄積性はそう高くないので、無機水銀の方がカドミウムよりも軽くていいという気がする。

【E委員】 今の水質環境基準自体はメチル水銀と総水銀の二本立てなわけで、それぞれ分けてやっている。

【F委員】 その経緯はよくわからないが、総水銀とメチル水銀で毒性とかを別個に考えているのではないのではないかと思う。メチル水銀を測定できる人はほとんどいないので、総水銀で測定するしかなくて2本立てになっているのではないか。

【E委員】 多分、土壌の環境基準を決めたときの溶出試験という観点ではメチル水銀というのは余り関係ないというか、それを測ることは難しいということをやったかどうかわからないが、まとめてしまったのだろう。30だと2サンプルが超過しているが、飲料水の基準値を引用した値の9を超過するサンプルはどのくらいあるか。

【事務局】 11サンプルになる。

【E委員】 1けた増える。単純にこれを3つ並べたときに、どうして一番緩い数字をとったのかというのは非常に議論を呼ぶと思う。3案あれば、やはり安全側をみることになるのではないか。安全側をとった場合にそれで過度になるといけないので、サンプルはいくつぐらい超えるのかというのを聞いたのだが、なぜ一番緩いのを選んだのかというその論拠もまた必要になる。我が国の許容量が決まっているからだと説明があったが、逆に言うと、他の項目は水道の基準を引用しているが許容量ではないか、どちらを選択するかの問題ではないかという話になりかねない。

【C委員】 0.7というのが甘いのではないか。今、EPAでは0.1ではないか。

【F委員】 EPAは特に厳しい。妊婦を特に対象と考えているようだ。

【C委員】 ただ、先ほどF委員が言われたように9にすると、カドミウムと比べて厳しいという感じはする。ただ、腎臓は結構蓄積するのではないか。

【F委員】 硫化水銀のような形で局所的に水銀がたまっているようなことはないか。

【座長】 先ほど腎臓で無機の水銀で糸球体と言われたが、ごく一部の集団にはそういうこともあり得るが、普通一般にはやはり尿細管だろう。

【C委員】 そうだ。動物実験でもブラウン・ノルウェー・ジャンラットというのでしか起こらないようだし、人の中でもフランスのドゥエという腎臓内科の方が、かなり報告しているが、やはりごく一部のポピュレーションだと思う。

【座長】 その場合には非常に微量でもそういうことが起こるかもしれないけれども、尿細管の場合には無毒性量というのはもっと低くなるだろうか。

【F委員】 そうだと思う。尿細管障害はどちらかというと急性毒性によるものである。

【C委員】 考え方としては非常に難しいが。

【座長】 この30、20というのを一つに決めることは、異なった性格のものを一つにまとめるという非常に難しいことになる。一方、水道の理論最大摂取量ということから考えた9というのは、いかにもそれがないように見えるが、水道の基準を決めるときにもやはり同じような議論をしているわけで、やはり二つの異なったものを一つにまとめているというようなことにもなっているのではないかなという気がするが。

【C委員】 水道の根拠はよくわからないのだが、どなたかわかる方がいれば教えていただきたい。

【座長】 30と20の違いは、計量できるものは水銀であって、メチル水銀という特定はできないから、非常に毒性が高いメチル水銀に全て換算するか、あるいは4対3で割り振るかということか。

【F委員】 換算する必要性は、土壌の場合ほとんどの場合はない。

【座長】 そうすると、土壌というのを全部メチル水銀にするということもおかしい。

【F委員】 ただ、水道水でこういう決まりがあるということを考えると、E委員の言われるように低い値にしてはどうか。

【座長】 9にしてしまうと、カドミウムとの関連から確かにおかしい部分もある。

【F委員】 むしろカドミウムの方に問題があるのではということになるかもしれない。

【座長】 併記するという選択肢はないのか。

【事務局】 課題を残すことになる。いずれ1つの数字を検討いただかなければいけない場面が必ず出てくるし、逆に3つの値を出すと一般の方から見ると、どれを見たらいいのかわからないということになる。多分、普通に見ると一番低い数字を見てしまうことになるのではないかということもあり、できる限り1つの方がよい。
 ただ、ここはあくまでも算定なので、もとのベースのデフォルト値も含めて、もちろん知見が変わることによって数字は計算上変わる。ただ、この検討会の中で考えたこの方法で計算したときにですら3つの値があるというのは、説明しにくい。カドミウムについては報告書案にもあるが、暫定許容量とさせていただいているのは、先生方も御存知のとおり、現在、評価の方が動いており、将来的にその評価が固まれば基準が動く可能性があるという意味である。要措置レベルは現在のWHOのPTWIとの比較でいうと30%を占めており、将来的に我が国の許容摂取量が現在の暫定許容量の3分の1の数字になるかもしれない。

【座長】 一つに決めるのもよいが、根拠がきちっとしていないとよくない気がする。

【事務局】 ただ、もう1年たてば根拠ができるかというと、そうではない。

【B委員】 カドミウムの許容量は多分もう少し低い数字に将来なると思う。それとの比較で考えても、これは全部メチル水銀の可能性が入っているので、そういうことを含んだ数字だということは報告書を見ればわかるので、厳しめの数字を出してよいかもしれない。

【座長】 厳しめの数字というと9ということか。

【B委員】 そうだ。

【E委員】 具体的にはここで要措置レベルと称しているから、9という数字1本にすると、それで何かの対応、要措置という話になるので、単純に低い方、安全サイドをとればいいという話では必ずしもない。そこが難しいところだ。3つ並べておくと、一般の市民の方は当然安全サイドを見るという話になるのだろうということを先ほど申し上げた。

【座長】 水道の理論最大摂取量と同程度になるような算定をするということだが、水道の理論最大摂取量から9を算出したときの根拠はかなりきちっとしたエビデンスがあるのか。

【事務局】 ここはあくまでも水道の基準があるという前提で計算しており、その先の部分は記載してあるとおりのものでしかない。
 ただ、そのときに1点気にしたのは健康影響として決めたものか、例えばにおいがあるとかで決めたものかの差異は見ているが、あくまでも水道の基準は健康で決めたという前提で計算している。水道基準の根拠についてここで再評価しているものではなく、あくまでも水道では健康のリスク等々から決めたのだという前提で計算している。
 他の項目についても水道がどういう根拠で決めたかというような論証はしていないので、できるだけ記載はさせていただいたが、例えば昔設定されたものなどもあったり、ここに記載のあるように「継続性も加味して」というようなこともある。

【B委員】 日本人の血中水銀は諸外国に比べて高いから、そういう意味ではほかの国に比べると総摂取量という意味では少ない。水でコントロールできるならば低めにしておくということを、土壌についても、悪くないのではないか。

【C委員】 最近、若い人達はあまり高くない。

【B委員】 しかし最近、高いというデータを見ることがある。

【座長】 一番低い値にするということについて、E委員いかがか。

【E委員】 私は毒性の方はわからないので先生方に決めていただきたいが、3つ並べると、やはり一番低いところに落ち着かざるを得なくなるのではないか。そのほかの対策に費用がかかるとかよほど論拠が出てくれば別だが。先ほどの話で2サンプルが11サンプルになるとすると10倍に対象面積がふえる可能性がある。そういうことを考えないで要措置レベルの方からだけ考えると、当然安全サイドを見るべきという論理になりかねないということで申し上げている。毒性の専門の先生方の御意見を伺えればありがたい。

【F委員】 9㎎/㎏という濃度は、我々の髪の毛の中の水銀濃度の10倍程度で、このぐらいの濃度の人はいる。髪の毛の固まりが落ちていて、その土壌はそのぐらいの値になるかもしれないので、意外と濃度的に低い値かもしれない。

【C委員】 最近はあまりいない。

【F委員】 平均的には低くなっている。

【C委員】 3を切っているのではないか。

【G委員】 国内にある数値をもとに決めるとすると、20か9ということになる。20だとメチル水銀が入ってきておかしな議論になるので、国内の数字をベースにするなら水道を引用するしかないと思う。
 もともとは、WHOの5から持ってきたらどうかなとは思っていたが、国内の基準値優先ということであれば、非常に厳しいとは思うが、9になるのかと思う。

【C委員】 ただ、報告書案にも書いてあるとおり、0.0005㎎/Lという水道の基準は、昔の検出限界みたいな話を引きずっていて、疫学上の結果をもってすれば0.001という倍の値でもいいという、これも検討しないとわからないが、もしそういうことを考えてとりあえず水道に合わせて0.0005にするのだとすれば、実際には18でもいいのだということにもなる。水道でみんなやっているから、水銀も水道でという方が一貫性はあるのかもしれない。

【D委員】 水道水の水質基準設定時に使われた水質判定条件のデータが古すぎるし、その後の改定作業でも判定条件はいじらずに今に至っているようだ。その辺の経緯がわからないので、評価できない。それで、今回も水道の基準を採用して右にならえするとまた、確かにさっき言ったように、またまた問題先送りということになる。水銀の場合には要措置レベルとして、3通りの数値が出てるが、こうした併記の形でも悪くないのではないか。移行期というふうに考えて。例えば大気の二酸化窒素の環境基準は幅が示されて、そのゾーン内あるいはそれ以下という表記にされている。

【座長】 30、20、9が併記してあると、確かに9というのは一番安全側に立っているわけだが、実際には9の値の設定にはデータが不十分だというニュアンスが出てくる。したがって、実際の値は9よりもう少し高くなる可能性があるということを示唆しているような感じは受けるので、併記も意味はあるように思う。

【C委員】 要措置レベルというのは実際には何をするのか。

【事務局】 基本的な使い方は、これから制度の在り方検討会という場面で考えていく。ただ、最初の目的のところにあるように、何らかのリスクの低減が必要となると考えられるということから、やはり何かアプローチを始めるときの判断の一つであるというニュアンスはある。ただ、ここに書いてあるように算定という形で統一しているのは、あくまでも設定したというものではなくて、こういう考え方でやったらこうでしたというもので、制度の検討の在り方の中で検討ができるよう柔軟性は持たせた表現にはなっている。ただ、あくまでも今のような形で何か動き始めるときの判断の目安だろうと思っている。

【C委員】 例えばこの土地に入ってあまり遊ばない方がいいよというような掲示というものでもいいわけか。

【事務局】 ダイオキシンのときに、土壌の環境基準と発動対策の要件が同じ数字になっているが、そのときのレベルもおおむね同じような世界で議論しているので、それを想定してもらえればよい。ただ、世の中ではダイオキシンはかなり厳しく怖いものという形で受けとめられている。

【E委員】 要措置レベルというとらえ方が非常に難しいが、ここでは3段階に表示をしておいて、必要に応じて要措置レベル1、2、3というのもないわけではない。それに応じて措置レベルの形を変えるということも考えられるし、あるいは土壌の場合には非常にそういう設定の仕方は難しいが、段階を追って厳しくしていく方法もある。何か対策をやるのは、当然その裏にコストの話が絡んでくるので、それを勘案しながらやる。環境基準ということになると、これは費用のこと云々の話ではなくて1本の数字が出てこなければいけない、健康影響の方からぴしっと出てこなければいけないのだろうと思うが、ここで言っている要措置レベルという話であれば幾つかの段階があってもよいと思う。
 3つのレベルを併記しておくというのも一つの考え方ではないかと。それで、先ほど申し上げたようなどのぐらいのところが対象になるか、それに対するコストがどうなのかというようなことも少し踏まえながら、具体的にどこら辺に設定していくかというようなことを議論してもよいかと思う。
 もう少し言えば30㎎/㎏を超えるところは完全に浄化しなさい、それより下のところについては、例えば9を超えるところは立入禁止にしなさいとか、被覆をしておきなさいとか、そういうような区別をつくるというのも一つのやり方で、そういう意味では要措置レベルについて3つの案を併記するのは一つの答えだと思う。

【座長】 先ほどメチル水銀の測定はできないということだったが、ルーチンとしてはできないということであって、まったくできないというわけではない。

【F委員】 もちろんできないわけではない。

【座長】 9としたとして、9以上の結果が出たとして、その部分の土壌について少し詳しく見て、本当にメチル水銀であるとすればこうするとか、いくつか段階を分けて対応するということはできないか。

【F委員】 それが理想的だろう。

【座長】 そのような前提で一応9というのを最初のスタートラインに置いて、あとは20、30どちらかというのは詳しい分析の結果から決めるということはできないのか。

【事務局】 基本的にはメチル水銀の数字は出ていない。アルキル水銀、有機水銀での数字は水道でもないので、そういうことは難しいと思う。従って、総水銀でしか見ていないので、もし併記ということであれば、この検討会で御議論いただいた中で、例えば優先順位があるのであれば全体の説明ぶりから見たら、他の項目との統一からして厳し目ではあるが水道の基準を引用して9とするのも1つの考え方ではないかということを議事録として残す形で一応3つを並べるということもあり得る。
 要は、最終的に事務局がどこかで1つ拾うときに、最も妥当であるのはどれかというところで優先順位がつけばこのまま併記でもやむを得ないと思う。

【座長】 不確定な要素がかなり多いので、それを一つにまとめてしまうということはかえって禍根を残すのではないかという気はするが、要措置レベルとしてやはり1本にするとすればやはり当然安全側に立つのではないか。

【C委員】 データもないのでしかたがないが、土壌の中の水銀の化学系を考えると、メチルから持ってくるというのは無理があると思う。水道の方から持ってくるというのは、水道の基準の設定根拠がよくわからないところがあるが、一つの基準は一応あった上で、それが化学形態を明確にしていないわけで、なおかつ、今の0.0005は低過ぎるかもしれないということは書いている。そこから9を持ってくるとすれば、この9も低いかもしれないというニュアンスは残るわけで、他のものと比べてもすっきりする。20,30という値の設定は、やはり何かサイエンティフィックに正しくないのを知っていながらやっているみたいな気がして嫌な感じがする。
 もう一つは、例えば一般に普通の無機水銀よりもメチル水銀の方が恐らく毒性が高いだろうということはみんなわかっているわけなのだけれども、それを考えてやった方が数値が大きいというのも、これもいやな感じがする。水道から引用してこのような低い値(9)になるとは思ってもいなかったのだが、どの無理をとるかというと水道の無理がよいかなという気がする。

【座長】 そうすると水道の無理をとって、これが無理であるということの記載をもう少し詳しくすると、これが低過ぎる値かもしれないという意味を持つことになる。

【事務局】 ①のところの一番最後に疫学上の結果をもととすればこうであるけれども、継続するとこういう数字ということで変えさせていただくということであれば事務局として記載はしやすい。例えば要措置レベルについてはということで中ほどが飛んで、汚染土壌からの当該物質の摂取量が現行の水道からの理論最大摂取量と同程度になるように算定すると9㎎/㎏になるとする。

【C委員】 それでよいと思う。あるいは0.001というのを考慮して9から18という幅を持たせてもよいのではないか。ただ、この0.001は基準ではない。

【事務局】 ほかの項目でも継続性を少し勘案してということはある。

【座長】 18でもいいという、これは新しいデータか。

【C委員】 それの根拠はわからないが、厚生省の報告書でもその理由は書いていないのだが、疫学上の結果をもとに0.001㎎/Lが算出されるが、我が国における基準の継続性を考慮して現行値どおり0.0005とするというのを、平成4年の見直しのときに出されている。

【座長】 そうすると統一して一つの値を出すのか、現状はこういうのだということで現状のデータとか考え方が国際的にはこういうものだということで3つの数値を併記して今のままにするか。

【E委員】 私は3つ併記して、今、事務局の方で言われたここでの議論の中身として残しておくという意味では、9.0が理論的にはすっきりするのではないかと思う。
 水道の基準の見直しの際に疫学の結果をとると0.001であるのに、継続性を考える、望ましい方向というより安全を見るという意味で0.0005をとっているということから、実際に水道の基準を満たすということと土壌の浄化の要措置レベルという意味での費用対効果を考えると、ここでの議論ではなくて先の議論としては、それでは18をとるというのもあると思う。

【G委員】 3つ並べておくのが、こういう考え方をしました、こういう考え方もしましたということで、この委員会としてはいいと思う。先送りするだけだという批判は当然出るかと思うが、水道の方にげたを預けたということになる。

【A委員】 サイエンティフィックなデータが0.001となっているのに、それを0.0005にした根拠はどうもはっきりしない。しかし、そう決まった以上は何か根拠あるわけで単なる継続というだけではないと思うし、他の項目は全部水道水の基準に従ってやっているのに、水銀だけ水道水の基準に従っていないというのは整合性がおかしくなるので、この9というのは仕方がないと思う。一本化してよろしいのではないか。
 WHOの基準から算出したものと比べると水道水の基準に基づいて計算したものは低い値が出ている。そういう意味で整合性がないのではないか。

【座長】 併記しておいて要措置レベルとしては現時点ではこの値が適切ではないかとするということか。

【A委員】 そういうことになる。

【座長】 併記してとどめるのと、併記して要措置レベルとしては9が適切なものではないかということを書くというのといずれかになる。

【事務局】 事務局としては基本的には一つの値の方が説明はしやすいが、いずれにしても会議録は公開になるので、そこら辺を残していただくのも全然構わない。今のご議論だと要措置レベルについては水道からの理論最大摂取量から9になるとして、なお書きするかどうか。

【E委員】 順番は入れないということか。

【事務局】 なお仮に我が国の暫定摂取量に基づく値は・・・ということを併記するということでいかがか。読ませていただく。
 以上のことから、要措置レベルについては、汚染土壌からの当該物質の摂取量が現行の水道からの理論最大摂取量と同程度になるように算定すると9.0㎎/㎏になると。なお、仮に我が国のということで、以下ずっとこの記載と、なるというところと30㎎/㎏となり、また我が国の等々やると20㎎/㎏となるという形で記載をさせていただくということでよろしいか。

【座長】 いかがか。
(異議なし)

【事務局】 では、そのように修正させていただく。 また、これと連動して表層土壌の汚染の実態の記載は9を超過するサンプルが11ということで並行して修正させていただく。

【座長】 今の修正で本検討会の報告書として公表することとしたいがよろしいか。

【D委員】 土壌中の金属元素等の測定方法のことは何も入っていないが、どう扱うのか。

【事務局】 測定については、これが何か基準となる場合には当然公定法をつくるということになるので、それは今後の検討ということになる。ここはあくまでもリスク上の数字なので、これから改めて、公定法の詰めはさせていただくことにしており、それは何か基準をつくるときに並行して出るような形で準備をさせていただく。

【D委員】 例えばカドミウムなどは、土壌から容易に溶け出す部分と、なかなか溶け出さない部分とあり得るので、どちらをとるべきかというあたりも考慮していただきたい。

【事務局】 了解した。

【B委員】 カドミウムの①の4行目から8行目ぐらいまでの間に「第2に」という、これが水道の水質基準を決めるときの理由の一つとしてここに紹介されているが、これは常識と違うことが書いてある。

【F委員】 確かにそうだ。

【B委員】 これは削除した方がよいのではないか。本当にこういう理由で決めたとも思えない。

【座長】 そうするとここをどのように修正したらよいか。

【D委員】 そのことについては、ファックスで修正すべきだと申し上げたが、これは水道水質基準を決めるときの根拠なので変えられないということだった。

【事務局】 不適切であれば「第1」というのを削除し、1969年、地表水等々と続けて、推定されることで、またということでこのWHOの方につなげるということで、中を全部削除するということでよろしいか。なるべく引用部分の記載はそのままにして、不適切な記述は削除することでいかがか。

【B委員】 それでよいと思う。

【事務局】 第2の部分は全部削除して、「第1」、「第3」というのを削除し、「また」でつなぐ。

【座長】 「第1」の部分の「推定されること」の次に「またWHO」と続けるということでよいか。

【事務局】 そういう形で、「第1」、「第3」の言葉を削除する。

【座長】 ほかにカドミウムに対して何かあるか

【D委員】 記載の方法だが、単位の記載の場合は数字と単位の間は半角あけているがパーセントの場合はあけていない。14ページの水銀の要措置レベルのところの記載は、パーセントと数字の間があいているがほかはあいていない。整合をとった方がよい。

【事務局】 ワープロソフト上の問題であいた形になってしまっている。よろしければこのまま、あいているところは確認をして詰める形にするということにさせていただきたい。

【座長】 ほかに何かなければ事務局で修正したものを本検討会の報告書として公表するということにしたいがよろしいか。 では、事務局の方で修正の作業をお願いする。

【事務局】 では、3カ所について修正をした上で公表させていただく。

【座長】 次に議題2のその他について、事務局の方から説明をお願いする。

【事務局】 土壌摂食量調査と吸収率調査の結果について簡単に説明させていただく。
(資料に基づいて説明)
 説明させていただいた調査は、検討会の当初に各委員から御指導いただいたもので、それなりに相当難しかったというのが結論で、いいデータが出たかどうか、いろいろと評価はあると思う。その辺も含めながら今後の調査の進め方としていろいろな角度から最後に御意見をいただきたい。
 一つは、今後の検討対象項目ということで、今回は現行の土壌環境基準、溶出基準を決めた項目を中心に検討させていただいているが、さらに土壌汚染というものに関して何か最近話題になっているとか、少し気にしたらいいのではないかという項目等あれば御意見をいただきたい。
 それから、今回、暴露経路をいろいろと取りまとめいただいたが、例えばこういう経路についてはやはり優先的に調査研究をしたらどうかというような御指摘があればいただきたい。
 さらに、今回このような二つの調査をやっているが、今後さらにこんな部分をやることで土壌の汚染、あるいは土壌環境保全にかなり資するのではないかというような御指摘があれば、調査研究あるいは技術開発等含めて御議論あるいは御意見をいただきたい。

【E委員】 暴露経路についてだが、やはり土壌が流出して表流水を汚染してという経路というのは考えなければいけないと思う。ターゲットしては、一番最初はダイオキシンなのだが、昨日もある自治体の委員会で検討したのだが、現場を見ていくと汚染源は特にない、昔の農用地に散布した農薬ぐらいしかないような川でやはり水質環境基準を超える汚染が出ている。それは過去に散布された農薬がそこの底質にたまってということもあるが、やはり土壌粒子が流れ出して、それを拾っているという問題が出てくるだろうと。底質の環境基準というようなものを今検討を始めているが、それとの整合を考えると、そういう経路を考えなければいけなくなってくるのだろう。
 揮発の話はそんなに大きな問題ではないのだろうと思うが、流出に伴うものというのは今回の直接口に入れる問題と同じような意味合いで、問題になってくるかと思う。
 それから、今後の検討対象項目だが、これも実はこれからという話ではないのだが、過去の問題がやはり残っていて、今年の5月にPOPs条約が発効して、環境中のストックはどこにどれだけあるのかという話をすると、PCBを除いて今まで化審法で製造使用が禁止されたDDTだとかクロルデンだとか、そういうふうな禁止されているから環境基準もなければ排出基準もないということになっている。しかし、生態影響みたいなことを考えるとリスクをかなり低いところへ持ってこないとだめになってくると。そうすると、ダイオキシンと同じようなものなのだが、結構いやらしいレベルにあるのではないか。新たなものというよりは、どうしても土壌というのは過去の遺産みたいな話が残ってくるのかなと思っている。

【座長】 揮発というと経路としては経皮になるか。

【E委員】 呼吸だと思う。一応、検討はしなければいけないということを報告書には記載しているが、感覚的にはあまり問題にはならないと考えている。そこを確かめるということで検討は必要だと思うが。申し上げたのは、むしろそれよりも実際に検討して、ひょっとしたらそういう観点からの基準をつくる必要があるのではないかということである。

【座長】 ほかに何かないか。

【C委員】 あまりポジティブな意見ではないが、土壌そのものというか、こういう検討というのも人の健康から考えていったらあまりしなくてもいいような気がする。むしろ人の健康を考えるとすると、口に入るものの方が大事なので、そういう意味では土壌、100mgとか200mgが入るとかミリグラムオーダーで入るということになっているが、あまり重い意味を持たないのではないか。
 そういう意味では、E委員が言われたように水の溶出基準というものもあるわけだが、水との関係とか、あるいは食べ物の中にどう行くのかという方が大事で、そこからもう一回考え直していった方がよい気がする。そういう意味ではまだいろいろなやらなければいけないことというのはたくさんあると思うが、土壌そのものの汚染というのは何かいま一つ重要性が薄い気がする。
 そういう意味で今回御紹介になった2つの調査研究を見てみると、人での土壌摂食量の調査というのはかなり難しいとは思うが、最後の御紹介のあった95%タイルの値を見ると、元素ごとにはかなりのばらつきがあるが、地域別、成人と幼児、それぞれを比べてみるとほとんど同じである。結構よい結果が出ていると思う。元素の挙動がよくわかっていないから絶対値としては違うのだが、95%タイルの値を見る限り、違う地区の成人同士の値はよく似ているし、子供はちょっと違うというのがまたよく似ているので、そういう意味では評価をし直せる研究だと思う。
 また、ラットの吸収実験については、非常に大事な、特に口に入るという意味では大事な基礎的な実験だと思う。硫化物にしては随分吸収率が高いと思う。アイソトープなんかでやった実験から見ても、水溶性のものから見てもかなり高いので、腸管に残った部分はどうなっているのかと気になるが、そういう食べ物との関連での研究というのをやっていかないと、人の健康とはなかなかつながっていかないのではないかという感じがする。

【座長】 ほかに何かあるか。

【A委員】 この検討をしていて最後に気になったところがシアンのことだが、土壌中に含まれているシアンが酸性雨が入ってきたときに、どれぐらい空気中に出るのかが気になった。文献か何かでも確認した方がよいのではないか。

【座長】 特にアルミニウムなどもそうか。

【A委員】 アルミニウムは問題ない。セレンや砒素はどうか。

【座長】 シアンは当然だが、アルミについては、例えばアルミそのものだと溶けないけれども、酸性になると少し溶け出す。だからアルツハイマーというのはアルミプラス酸性雨だというような考えになる。

【A委員】 それはもろに食べないのでよいが、シアンの場合は気体として出てくる可能性がある。

【事務局】 実はいくつかの現地の土壌汚染の問題でそういった問い合わせがあり、酸性雨の研究を行っている国立環境研や農水省に聞いたところ、ヨーロッパの場合は酸性雨が降ってそれが蓄積していくと、御存じのように湖のpHが変わるというようなことでかなり直接的に影響が出ているが、日本の場合は意外と出ていない。
 なぜ出ていないかというと、一つは粘土鉱物自体が日本の場合は全くヨーロッパと異なり、かなりバッファーが高いことと、日本の場合は、バイオマスが相当多くて、そこでもバッファーがあって、せいぜい食物の根のところまでは影響が及ぶが、土壌まではほとんど影響がなく、pHが下がることはあまり考えなくてもよいのではないかということを聞いている。

【座長】 そういうような話は初めて聞いたが、かなり一般に知れ渡っていることか。

【事務局】 昨年の新しい研究の成果で、まだあまり知れ渡ってはいない。

【座長】 早く出していただきたい。

【E委員】 今までの話に絡めて、吸収率の調査でも一般の環境の濃度ではカドミウムは硫化物、水銀も硫化物であるとされているが、これは一般の土壌に多いから使っているのだと思うが、我々が問題にしなければいけないのは、必ずしもそういう土壌ではなく汚染土壌である。汚染している土壌というのは一般にあるものとは違う形で存在している可能性が高いと考えた方がよいと思うので、A委員が言われた話もシアンがあるところで、表層のところでそういうのがあれば、下まで行くか行かないにかかわらず、たまたま酸性雨が降って、そこが部分的に気化するという話で考えると汚染土壌と一般の土壌というのは違うのだという目で見ていかなければいけないだろう。

【座長】 ほかに御意見あったら、どうぞ。

【D委員】 カドミウム中心だが、スウェーデンなどでは30~50年単位の長期に一般の農用地で、ベースラインデータをとり続けている。50年後どうなるかということは今からやっておかないといけない。非常に長期の蓄積あるいは酸性雨による流出などもあると思うが、そういうことを将来を見据えて着手しておくというのも必要ではないか。最近はニッケルカドミウムの電池が使われなくなって、特にリチウムや水素電池がふえてきたが、日本では過去30年ぐらい、これを非常にたくさん使ってきた。結局、リサイクルされる率は半分以下なので、韓国なんかにも2~3年前からだいぶ持っていってリサイクルしているようだが、焼却灰の中に入ってそれが廃棄されて埋め立てられている。それからまた過去に塗料として赤電話の顔料、道路の黄色いライン、コピー機の中など非常に薄く広く日本全国をカドミウムによって、今なお微量だけれども汚染されつつあるということも言えると思うので、それが30年、50年後にどうなるかというのはかなり興味があり、監視すべきものである。スウェーデンでは、ふつうの小麦畑で50年たって大変増えたというデータがある。それでカドミの大量使用は一切やめようではないかということは、1980年ごろ既に国の政策として決められた。それ以後も日本では「大量使用」をし続けたので、そのつけが何十年後にどのようにあらわれるのか、今から準備してベースラインをはっきりさせておくというプロジェクトは、国のプロジェクトとしてあってよいのではないかと考えている。

【C委員】 カドミウムだけでなく、金属はみんなそうだと思う。

【D委員】 壊れないし、捨て場がないので。

【C委員】 やはり生態の中での循環みたいなのを考えておかないといけないということだと思う。

【B委員】 いつもいろいろな人が言うことで実行は難しいのだが、いろいろなところのサンプルをきちっととって保存しておいて、何年かごとに同じ方法で測定することによって減っていっているのか増えていっているのかというモニタリングが正確にできるようにしたらどうだと。それで、臓器をという話もよくあるが、これは倫理の点で非常に難しいという話を最近聞いて、なるほどそれは難しいと思うが、土壌や水などについては、どこかきちっとためておく場所を、予算を設けていただければと思う。

【E委員】 一応取り組みはしている。改正した環境基本計画の中でもそういうものが重要であるという言い方をしている。年限的に蓄積していくものを見ていくとか、そういう研究もやられていて、そういう取り組みは細々と行われている。ただ、もう少し国の仕事として充実していく必要があるということは我々も一生懸命声高に言っている。環境省の方でも応援をしていただきたい。

【座長】 G委員のところはスペシメンバンクというのは食物についてやっておられるだろうか。

【G委員】 土壌中の有害物質というのは量的なことも大事なのだが、御存知のように化学形態が非常に大事なので、汚染土壌が見つかったときにその金属の化学形がどうかということを検査する体制づくりが必要と思う。どういう化学形態の分析法があって、あるいはそれをどこが持っているかとか、すぐに解析できるような体制をつくれば非常にいいのではないか。化学形態がわかることによって後の対策が変わってくると思う。
 食品の方の汚染だといろいろな指定検査機関で解析しているが、土壌の方でも環境関係のいろいろな指定機関があると思うのでその分析の体制づくりをきちんとされたらよいのではないか。

【座長】 議論の方はこの辺で終了させていただきたい。

【事務局】 最後に石原水環境部長よりごあいさつを申し上げたい。

【水環境部長】(あいさつ)

【事務局】 これをもって検討会を終了させていただく。

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