環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌の含有量リスク評価検討会

土壌の含有量リスク評価検討会(第4回)会議録


1.日時

平成13年3月8日(木) 14:00~16:00

2.場所

合同庁舎第5号館共用第11会議室(7F)

3.出席者

(1)委員
林   裕造 座長
櫻井 治彦 委員 鈴木 庄亮 委員 中杉 修身 委員
永沼 章 委員 吉永 淳 委員
(大野 泰雄 委員、佐藤 洋 委員、平田 亜古 委員、米谷 民雄 委員は欠席)
(2)事務局
石原 一郎 水環境部長、
伊藤 洋 土壌環境課長 他。

4.議題

(1)土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価等について
(2)その他

5.配付資料

資料4-1 土壌の含有量リスク評価検討会委員名簿
参考資料4-1 関連資料(追加資料)
(再配布資料)
資料3-2 土壌の有害物質の含有量によるリスク評価について(改訂案)
資料3-3 土壌汚染の環境リスクのとらえ方について

6.議事

【事務局】 ただいまから第4回の土壌の含有量リスク評価検討会を開催する。
まず、本日の配付資料の確認をさせていただく。
               (配付資料の確認)
なお、本日は、大野委員、佐藤委員、平田委員、米谷委員から欠席の連絡をいただいている。
 また、前回の会議録については、事務局の方で作成中であること、委員限りの資料でいただいた発言における資料中の具体的な数字については伏せることを事前に了承願う。
 それでは座長に議事進行をお願いする。

【座長】 本日は、前回の検討会に引き続き、土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価等について議論を進める。
 まず、資料について事務局から簡単に説明いただく。

【事務局】 前回、議論の中で資料3-3について、いくつか修正意見をいただいており、それらを反映させたものを本日配布している。
 参考資料4-1について簡単に説明させていただく。
(参考資料4-1に基づき説明)
 参考資料4-1に「日本における環境汚染物の1日摂取量の推定およびその由来の解析」という論文を添付している。要望のあったトータルダイエットスタディそのものの個別のデータを入手することを試みたが残念ながら個別のデータは入手できず、現時点ではそれ以上の情報は得られなかった。
 次に委員限りの資料「汚染された土地に係る健康リスク管理の考え方」について、簡単に説明させていただく。
 これについては、前回の検討会で配布している資料をもとに、さらに具体的にご議論いただけるようまとめたものである。
(資料に基づき説明)
 水環境部長が参ったので、ごあいさつさせていただく。

【水環境部長】(あいさつ)

【座長】 それでは、参考資料4-1についてご意見をお願いする。化学物質の皮膚吸収率については、あまり資料がないということだが、OECDが皮膚吸収のガイドラインをつくっている。そのガイドラインをつくるに当たっての資料があれば見せてほしい。

【事務局】 OECDのガイドラインについて、早速資料を見てみる。

【座長】 参考資料4-1についてほかにご意見はないか。

【B委員】 13ページに化学物質の皮膚吸収率についてとあるが、塩化カドミウムのところを見ると土壌と水溶液があるが、測り方によって随分変わるのではないか。単にカドミウムの場合はたんぱく質が付着してなかなか離れない形になっているため、これを吸収ということにしている可能性は非常に高いと思われる。常識的に、このような皮膚吸収率というのはあり得ない。吸収というのは、この場合は血中に取り込まれるという意味だが、おそらくこれは測定方法が特殊か、問題があるかと思う。

【事務局】 吸収率については、文献調査をしているところで今、ご指摘のあった測定方法についても、今後ほかの物質とあわせて整理したい。

【座長】 よろしくお願いする。

【A委員】 これでは土壌と水溶液に限定しているのか。

【事務局】 これしかないということである。

【A委員】 労働環境のいろいろな化学物質の皮膚吸収はそう多くはないが、専門家がいて実験等をたくさんやっている。

【座長】 どういう文献があるのか。

【A委員】 労働衛生関係の冊子にたくさん出ている。

【座長】 産業医学総合研究所に問い合わせればよい。

【A委員】 今、私のところに研究者がいるので、連絡いただければ対応できる。たくさん文献があると思う。

【事務局】 では、後日打ち合わせさせていただきたい。

【座長】 よろしくお願いする。

【A委員】 このデータ収集は、ヒトに限ったということなのか。

【事務局】 マウスや猿でもデータがあるが、動物種によって同じ物質でも吸収率が違っているので、ここでリストアップしたのはヒトに限ったものにしている。

【A委員】 塩化カドミウムに関してさきほどお話があったが、この実験をやるとある濃度を超えると急に吸収率がふえる。それで障害が出て、たくさん付着するというようなデータの解釈の仕方というのも大事だと思われる。

【座長】 ほかになければ次に汚染された土地に係る健康リスク管理の考え方についてにご意見をお願いする。事務局としては、4番目の健康リスクを管理するに当たっての基本的考え方が重要ということだと思う。一つの考え方であるけれども、いかがか。

【C委員】 その前の資料の確認だが、最初に汚染された土地の健康リスク、暴露形態等については、いろいろな経路があり、物質毎の摂取の実態を踏まえながら検討する必要があるだろう。まずは、汚染土壌の直接摂取による暴露の経路と、汚染土壌から溶出した汚染地下水の飲用等の暴露経路があるが、その他にも2番目のところで、もう一つの要素として汚染の深さというものが重要である。深さについても絶対的な深さと、地下水の深度との関連での深さといういろいろな意味がある。4の議論には直接絡む話ではないが、もう一つの軸として出てくるのではないか。

【A委員】 管理するに当たっての基本的考え方だが、その管理の主体はいろいろある。この場合、地方自治体が主かと思うが、一般の個人の家とか、工場とかは、その土地の所有者が管理するだろう。選択というのは規制的な選択なのか、全く自由な自主的な選択なのか。

【事務局】 基本的には、ご指摘のように、健康リスクの管理の実施主体はだれかという議論もあるが、ここではあえてふれていない。基本的には汚染原因者が行うということを原則に検討しなければいけないが、行政の場合もあれば、私有地の居住者個人の場合もあれば、工場・事業所の事業者の場合もある。そこをあえて健康リスク管理を行うとされた者つまり制度として行わなければならないとされた者が自由に選択できるということで整理している。こういう人の場合にはこんなことができないとか、こういう人だったらできるというご議論があると思われるので、ご意見をいただきたい。

【座長】 ほかにご意見等ないか。

【土壌環境課長】 委員からのご指摘のいろいろな経路についての考え方だが、事務局としても土壌を介してその後の経路が多様であることは認識しているが、例えば魚介類を経由して人間に至る間に当然のことながら、淡水、あるいは海水を通って、さらに底質を経由する場合もあれば、途中でプランクトンを経由して、魚介類に行き着くこともあるが、その間に少なくとも一度は水が入る。そうなると、水の基準であるとか、底質の基準であるとかいった話になるため、今回あえて入れていないが、そのあたりはいかがか。

【座長】 基本的にはそのとおりである。魚にどれだけ移行するかというところまで議論してしまうと、水の環境基準の議論になるので、必要ないと思う。そういう意味では、水の環境基準との対応ということでは、溶出だけで済むのかなという感じを持っており、含有量という観点でも見なければいけないかもしれない。

【事務局】 大気への揮散に関しては、最終的には大気の環境基準なり、ある種の指標が一つの目安になって、例えば地下水への溶出と同じように大気への揮散も、それを目安にある考え方ができるのではないか。つまりこの程度の土壌の濃度レベルだったらこの程度揮散する可能性があるということからどの程度にすべきだというような整理ができるが、先ほどの流出の概念は、ここに入っていない。どのような状態のときにどのように流出するかというのは、拡散防止の措置として見た方がいいのか、そもそもかなり気にすべきものなのかというのは、ダイオキシンの話もあってあえて入れていないが、やはり含有量基準として、水も含めて、あるいは別の観点で別途、整理した方がよいかどうか。将来の課題としては当然あると思うが、どの程度考慮しなければならないのか、ダイオキシンのときにもいろいろ議論があったように聞いているが、コメントがあれば、例えばPCBみたいなものがどうかというあたりでご意見をいただけないか。

【C委員】 ダイオキシンのときも中環審で大分議論したが、そこのところは十分わからないということでペンディングになっていて、今の1,000とか250については安全サイドを見るとそれで十分なのかという議論になり、気にしている。多分PCBも同じような話が当然出てくるだろう。先ほど金属等を分けるべきだと言ったが、金属も当然そういう議論はあり得る。魚の体に取り込まれるときにどういう形態、吸着した形態のものが取り込まれるのか、水に溶けたものが取り込まれるのかというところがわかっていない。その両方を考えなければいけないかという議論になるだろう。こういう問題についてダイオキシンの方では将来の課題としているので、同様に今後の課題という意味で申し上げたものである。

【座長】 この土壌環境基準のところで、①、②で健康リスク管理の要否の判断基準、汚染地登録管理の要否の判断基準として、環境基準ということだが、1を考えずに2を考えることはできないのではないか。

【事務局】 特にそこは細かく両方でなければならないということではなくて、両方あれば、例えばこれは別ではないかという議論があってもよいのでは、ということである。ここで意図しているのは、前回お示ししたような要リスク管理の基準案を出しているが、それを土壌環境基準と考えた場合に、少なくとも健康リスクの管理の要否の判断の目安になる。その場合、あわせて登録管理の要否という判断基準をもう一つ入れ込むことで後ろの方の議論が少し進むのではないかと考えている。

【C委員】 この①、②というのは、土壌環境基準を超える超えない、超えた場合に汚染地として登録しておく必要があるものは何か、健康リスクを管理しなければいけないものは何か、その組み合わせがあるということだ。汚染地として登録しておかなればいけない、健康リスクの対策をしなければ完全に汚染地として登録するというわけではなく、そこは難しいところである。浄化対策をやったら汚染地の登録は要らないよと言ってもどの時点で見るかで違ってくるのでそこは気をつけなければいけないと思う。
 そのほかに、気になっているのは、例えば1ページのところで一番下のところに暴露人口・濃度レベル・汚染状態の継続等の広がり等、このようなものを勘案してという話だが、これはあくまでも優先順位を決定するための判断根拠ということでよいか。そこは誤解をされると非常に困る。例えば対策の必要性みたいなものに対しての判断根拠というふうに誤解されるとよくない

【事務局】 それはないと考えている。

【C委員】 汚染状態の継続期間というのは、ほとんどの場合わからないと思う。逆に言うと、わからないものを一方的に入れるのはよくないのではないか。わかる場合もあるが、大体その事業者が記憶で過去にさかのぼって推定する程度で、あいまいな情報から始めてしまうと誤ったことが起こり得るので、あえてこれは要らないのではないか。
 また、3ページのところで気になるのが、遮断型と遮水型についての判断が必要なことである。遮断型・遮水型で封じ込めと言っているが、かなりレベルが違う話なので、遮水型、遮断型、それから完全浄化というような三つぐらいの区別があるべきで、そうでないと遮断型・遮水型というのを並べておく必要がなくおかしくなるのではないか。単に並べてしまうとどのような区分をするのかわからない。

【事務局】 遮断型・遮水型のどちらを選択するかはある条件があるかもしれないが、ここではむしろその後ろの方にある、いわゆる外に出ないという意味での管理を強調して見ていただければと思う。覆土舗装との違いをある程度明確にする上で書いているので、遮断型と遮水型をどうやって使い分けるのかというのは議論があるという前提で、上だけをふたをするという場合と、少なくともそこから外には出ないというような管理のされ方の場合との違いがあってもいいのでは、ということでご議論をいただければという趣旨である。

【C委員】 また暴露管理のオプションで「等」が書いてあるからいいのかもしれないが、一番厳しいものは住民退去という例が日本でもあるし、アメリカでも例がある。そこから住民を避難させてしまうというのは、移転させてしまうというのは一番極端な例としてあった。
 もう一つその下の用途制限のところで、上部の土地利用と書いてあるが、具体的には、むしろ土壌をどういうふうに扱うかという意味での土地利用の区分ではないかと思うが、上に何が建とうと下が同じであればあまり問題がなくて、土壌を攪乱するかどうか、上にただ舗装してその上を駐車場で使うか、あるいは基礎を打って土壌を掘り出したり、攪乱してやるかという話なので、上部の土地利用というのとはニュアンスが違うような気がする。意味としては多分下のところをどういじるかということではないか。

【事務局】 ご指摘のとおりで、それをとりあえず用途制限という言葉にしており、中身はご指摘のとおりである。

【A委員】 健康リスク管理という言葉の使い方だが、リスク管理の中にリスクアセスメント、それからリスクマネジメントの部分、それはもうほとんどリスク削減であって、リスク管理と言うと、その場合にハザードと、それから暴露を考え合わせて順位づけをするという基本的な考え方だと思う。その場合に一定の基準を超えた土壌があるとすると、既に管理が必要であると判断する形になっている。そこからさらに暴露の可能性はどれだけあるかというステップがなくて、一挙にリスクの削減という形になっている。汚染された土壌が存在するということ自体はまだハザードの段階であって、少なくとも何段階かに分けられるのではないか。

【事務局】 健康リスク管理という表現の仕方自体が不適切かもしれない。当初は対策という言葉もあったが、対策という言葉はどうも土壌の世界だと浄化とかなり近いので、ここではこのような用語を使っている。ただ、ご指摘のようなところまで踏み込んで使わなければいけない言葉だとすると、当方の意図しているところとは違う。ご指摘のようにある意味で土壌環境基準という数字があったとして、それを超えた時点で何らかの措置をしなければいけない。その措置をするときの考え方ということが本当は正確であって、リスク管理という言葉を、いわゆるリスクマネジメントとかいったことと同じにしてしまうのはどうか、といったご指摘のような意見も内部であり、適切な言葉があればご教示いただきたい。事務局の意図はご指摘のとおり、ある数字を超えたら何かしなければいけないという数字があるという前提で、そのときの対処の仕方としてどういったものがあるかということをリスク管理と書いているが、誤解があるなら言葉を整理する必要がある。ただ、対策という言葉も別の意味で誤解が出そうなので、他に適切な言葉があればと考えている。

【C委員】 ここで議論しているのは暴露を防ぐという対策である。暴露の管理というのは、暴露を防ぐことができるかという話だと思う。暴露を防げる場合と完全には防げないという、二つの観点から分かれてくるのではないか。健康リスク管理といったときに、そのやり方が幾つもあるので、暴露の管理をするという考え方で少し言葉を修正すれば誤解がないと思う。

【座長】 暴露管理、経路遮断、土壌浄化、この用語はよろしいか。

【C委員】 基本的には下と合わせればいいので、暴露の管理が可能な場合は暴露管理という言葉があって、暴露の管理が困難な場合は暴露管理という言葉が外れている、その二つの分類でよいと考える。

【座長】 健康リスクの管理のという用語を少し考える必要がある。何か用語があれば、教えていただきたい。

【C委員】 地下水汚染について、先ほど事務局から健康リスクの管理ができる場合に地下水の監視をしなければならないが、その際周辺をやればよいのではないかと言われたが、事業者がやるとしたら周辺の地下水の監視は事実上難しいと思う。自分のところはできるが、周辺住民のところへ行って井戸水を取らせてもらうのは難しいのではないか。行政がやるというのであれば可能だと思う。事業所の中では、汚染の一番もとを見ることになるので、より安全な管理でもあると思う。

【D委員】 地下水について、飲用の有無で区別した場合、地下水を調べて例えば汚染があったとしても飲用の有無の判断はそこではできない。そうすると、どの程度範囲を広げて調査するかという、基準が必要になってくると思う。
 それから、金属というのはある意味ではどこにでもあるから、地下水の汚染があったとしても全く別の原因によるという可能性の否定はできない。その辺が難しいと思う。

【E委員】 飲用の有無で分けること自体がそもそも適切なのかどうか疑問である。

【座長】 事務局としては、飲用の有無をどうやって決めるか、だれが決めるかは別として、とにかく二つに分けて考えてみたということだが、それが適切なのかということだ。

【事務局】 ここでは単純に飲用の有無としているが、例えば水質汚濁防止法に基づく浄化措置命令では、こういう表現ではなくて人の健康のおそれ、つまり飲むか飲まないかという話があって、例えばそこは水道が入ってくれば、水道水を飲んだ方がいいということで全員がそちらにいけば問題ない。少なくともその地下水を、飲む可能性があるかどうかといったイメージでとらえていただいた方がよい。また、ある決まった方法で調査したところの井戸の水が汚染しているかどうかでもって判断をしたり、言葉としては人の健康のおそれというところで線を引くときに、やはり飲用の可能性の有無で線を引かれているという実態が一方であるということで分けている。それが不適切かどうかは、ご意見をいただきたい。やはり何らかの措置を講じるには人の健康のおそれということに到達して、それは水道があってみんな水道を飲んでいるからいいということで済むのか、例えば沿海域みたいにはなから塩水が入って飲まない場合も当然あるだろうし、水道が全然ない場合もあるし、いろいろなケースがあるが、人の健康へのおそれというのをどのように判断するのかが分かれ目になってくる。これについてもご議論をいただきたい。????、・/p>

【座長】 飲用の可能性があると考えた場合の対応とないとした場合の対応と、二つに分けているということか。

【事務局】 基本的にはそういう趣旨である。

【C委員】 水の環境基準が必ずしもそういうような対応をして決められているかどうかは別として、仮に水の環境基準は様々な経路からの暴露を考慮して決められているとすると、揮発性の有機化合物の場合には飲用だけではなく、シャワー・ふろ等からの揮発による暴露も考慮して水の基準、地下水の基準が決まっていると考えるのであれば、単に飲用でいいのかどうか。庭にまく水というのは、そんなに問題はないのかと思うが、例えば生活用水の雑用水に使うというのもどう考えるのかというのは一つ非常に悩ましい問題である。必ずしも地下水の基準はそれを考慮して決められているわけではないと思うが、そういった部分をどのように考えるのか。考慮しないのか、あえて踏み込むのか議論があるところだと思う。

【B委員】 確かに、これからいかなる環境基準を決めようとするのかというのを詰めておかなくてはいけない。現在の環境基準も健康を確保するための基準と生活環境を確保するための基準の二つに分かれている。今話があったとおり、使用価値を減ずるというのが汚染だと思うが、これは将来のことも考えるのか否かで随分変わってくる。次の世代が使う使用価値が減じている状態でいいのかということになる。こういったことも含めて、一体どのようなレベルでの基準を定めようとしているのか、はっきりさせた方がよい。先ほどC委員からあったように、いわゆる住民退去基準という非常に危機的なレベルもあるし、これは売買を禁止しないと責任関係があやふやになるから、売買禁止基準をつくるとか、行政的なアクションをとる登録とか、そういう基準であるとか、あるいは今の環境基準のように行政が環境管理をする目安の値とか、どういった種類の環境基準を我々は想定するのか、はっきりしておいた方がよい。

【座長】 今の意見について、いかがか。

【事務局】 そこは非常に難しいと思っている。現に今様々な制度があって、そこに踏み込むとある種の限界はあるが、純粋にここでは地下水をどうとらまえるかというようなことでもご意見をいただきたい。例えば永久にここは飲み水として使いようがない地下水、例えばもう塩水が入っているような海の近くというのは、仕方ないが、少なくとも地下水として飲み得る可能性があるような部分については、現に飲用がなかろうが将来も含めて飲用の可能性があるという前提で、そこで線を引くべきだという意見等あればいただきたい。今の制度と絡めてしまうと意見が出しにくいかと思うので、このような感じでもご意見をいただきたい。

【C委員】 多分飲めない水というのは、健康項目では飲めないという話ではなくて、飲用に適さないという飲めない水もある。そういうものは飲用に伴うというのを当てはめるということ自体無理だろう。現実問題として一番大きいのは、海で浚渫をして埋め立てをやっているところの土壌というのは、多くの場合、砒素が土壌環境基準を超えてしまう。そういうところでは、基準を超えてしまっても海へ流れていけば、そこの地下水を飲むわけではない。海へ流れていくと、また生物の中に入れば有機態になってという議論になってしまって、それほどリスクが高くないだろう。そんなところに、砒素の土壌環境基準を適用するのかというのも一つの議論で、どう判断するかは非常に難しい。例えば海水が入ってくるということで塩素が水道に似たような基準、基準値がたしか200ぐらいで、塩味がするとかいうことらしいが、それを単に基準として考えたとしても、例えば海の水が入っても塩素が200を超えるし、埋め立て処分地の浸水が地下水に入ると一番に流れやすいのが塩素で、ナトリウム、カルシウムが流れてきて基準を超えることが問題になっている。人為的に塩素が200を超えてしまうからそれはいいのかというと全くそうではないというところの難しさがある。
 また、もう一つ気になるのは、この地下水汚染があるなしという定義は、また非常に難しい。何をもって地下水汚染のあるなし、基準超過、検出されるということになるのか。

【事務局】 環境基準を超えているということで整理している。

【C委員】 ただ、環境基準を超えている超えていないというのは時間的な経緯の話もある。汚染の継続期間というような話と、一般に地下水の場合そんなに濃度が上昇していくというようなことがあまりないと思う。基準を超えているか、超えていないかというのをどのレベルまで判断するのか。1年、2年かかって動かない、上昇しないということまで確かめてやるのかということも含めて細かい議論も必要である。

【座長】 ほかにご意見はないか。
 地下水の溶出基準、含有量基準の問題も含めて意見があればお願いする。
 含有量基準の中の揮発性有機化合物、こういうものが本当に必要なのかどうかということも問題だと思うが、これはいかがか。

【C委員】 ほかの経路の揮発性をどのように評価するかわからないが、ほかの基準でこの経路は管理できているということであれば、あえて取り上げる必要がない。そこのところの見極めが必要である。例えば、VOCの場合には、土壌を直接摂取するより揮発による吸入摂取の方が暴露量としては多分高いだろう。それがある幅を持っているのだが、こちらの方が高いということがわかれば、単にそちらの方の基準を考えれば、こちらのリスクは十分クリアできるという判断であればそれで構わないだろう。そういう意味では、全ての基準でやる必要は決してないと思う。

【事務局】 そこで一番気になっていたのが、先ほどの汚染の深さみたいなものに絡んでくると思うが、直接摂取というのは表層だろうと、事務局では考えているが、今、言われたような揮散・揮発であれば深さというのが線が引けなくなるのではないか。そうすると、そもそも含有量基準と言いながら全く違う基準があり得るのではないか。そのときには非常に複雑になるので土壌ガス基準のようなものも一つあり得るのではないか。含有量基準という用語の中で、揮散というのは表層だけでとらえられないとすると、二つのものを一緒にした一つの基準をつくるのは大変難しいと考えているが、その辺も含めてもう少しご意見をいただきたい。

【C委員】 揮発性のVOCの場合は、感覚的には、土壌ガスをはかる、基本的には表層近くの土壌ガスとすべきだろう。土壌ガスが揮散して、その表層の下の土壌ガスというのはその周辺の土壌から揮散するものもあるし、その下から揮散してくるものもある。その下から揮散して上がってくるというのは当然減衰をしているから、実際には上から下までの濃度にそれぞれの深さ、そこまでの距離の減衰率、単に距離だけではなくて地質等を含めて減衰率のようなものを掛け合わせて足し合わせたものがそこに出てくる。非常に複雑なものになると思う。そういう意味で大気中に出てくる直前の表層、どのぐらいの穴を掘るかというのはある程度割り切りで、そこでガスをはかると、土壌の含有量とガス中の濃度もまた土質によって随分違いが出てくる。こういった紛らわしさを排除するという意味では、揮発については、土壌ガスの濃度をはかるのが一番よいと思う。

【事務局】 いわゆる土壌ガスをはかるということと、それによる大気への影響という意味で、例えば大気の環境基準みたいなものとの比較というのは可能なのか。ある方法でとった土壌ガスの量と、結果として大気中で考えるというのは、モデルにしても何にしても結びつけられるものなのか。

【C委員】 モデル的にはいくつもやれると思うが、それも条件がかかってくるので、ある程度割り切りが必要だと思う。土壌ガス濃度が上に出て、多分、人間が吸う高さの1.5メートルないし2メートルの高さでどのぐらいの濃度まで薄まるかというと、一番は出た途端に薄まるという形になると思う。割り切りでどのぐらいにするかというのは、論拠はない。大気の拡散計算をかませて、土壌から上がってくるというところもあるし、オーダーで割り切るしかないと思う。このぐらいに割り切ればいいという裏をつけるためにはモデル的な検討あるいは実際に現場ではかるということが必要かもしれない。

【座長】 他に何かないか。

【土壌環境課長】 土壌ガスの量というのは、粒子の場合恐らく土の粒子と完全にくっついていない状態で存在していると思う。土壌ガスは、土の中から揮散してきている量をはかっているのか、それとも土の中に混ざって存在しているものになるのか。実際、存在している量をはかっているのか、それとも出てきたものをはかっているのかどちらになるのか。

【C委員】 基本的には存在している量だと思う。含有量基準にしろ、溶出基準にしろすべてについて言えることだが、普通だと大気だとか水というのは、大気1立方メートル当たり何ミリグラム、水は1リットル当たり何ミリグラムあるいは何マイクログラムという形で決めるが、土壌の場合には土壌1立米当たりの量ではない。土壌ガスと言うと、本来であれば煙突と同じように考えるとすれば下からの、土壌の間隙がどのぐらいあってということで1平米からどれだけ上がってくるかという、基本的にはそういうことをしないと大気の汚染とは直に結びつかないと思うが、土壌の環境基準自体の宿命で土壌を取ってきて、取り出した量でも、その土壌がどのぐらい1立米のところを表しているか、粒子が占めているかということもわからないし、そういう意味では土壌の環境基準を考える、本来であれば土壌、下の1立米の空間に汚染物質がどのような状態でどの程度存在しているかというのが厳密な意味では土壌の汚染をあらわすことになるが、実際には重量あたりの濃度でみざるを得ないということになる。

【座長】 事務局が示された3つの選択肢について、汚染地としての登録管理は要るか、要らないとか、作業者の健康リスク管理という言葉がいいか悪いか別として、必要かどうか、何かご意見はないか。

【C委員】 汚染地の登録をするかどうかという話は、新しい話であって、健康リスクを管理するところを少し細かく見ていると思う。ただ、どちらか選べということではなくて両方淡々とやらなければいけないので、汚染地の登録管理をするというのは、土壌特有の話で、大気や水はだれかが持っているわけではない。汚染地の登録管理などは行政が淡々とやっている。土壌の場合は、そうではないので健康リスクの管理のところに少し、今まで単純に環境基準のところで使うということではなくて、少し分けたみたということではないのか

【事務局】 今、座長から言われたところは、3ページの主な課題の一つ目だが、ここは数字は一本しかないと考えている。ただ、その先のやり方として地下水の状況、土地利用によって、管理、対策のやり方を変えてもいいのではないか、選択してもいいのではないかという形にした。諸外国で土地利用によって数字を変えているという例がある。そういういくつかの選択の中でこういうものを考えてみたが、やはり数字を違えた方がいいのかというあたりがポイントになっており、ご意見をいただきたい。ここでは数字一本で非常にシンプルに線を引きながら土地利用の状況に応じて選択をできるようにしていて、浄化までやらなくてもいいという言い方をしているのであって、あくまでも浄化する場合の目標は、環境基準である。それがなくならない限り汚染地であるというようなことを書いているのは、数字は単純でやり方を少し変えている。もう一つは、数字だけを変えてもっと簡単にするという選択肢があるというところをご意見をいただきたい。

【座長】 ご意見をお願いする。

【C委員】基本的な話としては、事務局からあったように、土壌としてあるべき姿、今の環境基準が望ましい状態という意味では、土地用途に関係なく望ましい状態というのはある。その後で管理の方策を考えるときに、対策をやるためのコストと、それを管理できることによるベネフィットの比較考慮というような観点でいけば、その暴露がないようなところについては少し緩くするといった可能性はある。そういう考え方で整理していかざるを得ないのではないか。これは、土壌が一番端的なのだが、ほかの環境基準、水にしても大気にしても今の環境基準の抱えている大きな矛盾が明らかになりつつあるところなので、そういう意味では土壌が一番直にそれが出てくると思う。

【A委員】 この土壌の基準は、標準的な暴露をデフォルト値で既に想定していて、比較的安全サイドで切っている。そういう基準に該当してしまうような土地があって、そこでさらに暴露評価が入ってくるとすると、実際にリスクを削減する必要があるかないか。ここの1ページの一番下に書いてある3行では、まさにそこで暴露評価をやり直す、追加するということになる。暴露人口とか、暴露レベルとか、暴露の期間あるいは規模・広がり、全部そうなる。この場合に基準値を一つにしておいて、その次に暴露評価で取り扱い方を変えるというのが一つのオプションで、もう一つは暴露が違うレベルが最初から想定されるような場合には基準をつくっておく。つまり飲用だったらどうするか、これは暴露レベルが違うことが最初からわかっているから最初から違う想定で基準をつくっておくということも可能だと思う。どちらが効率的かということに尽きると思うが、最初から全部つくってしまって後で暴露のレベルを何段階かに分けて判断するか、どちらかにならざるを得ないと思う。

【B委員】 大体同じ意見である。健康のための基準と環境保全のための基準という二つをつくっているのは、賢い方策かなと思う。ご説明のあった、一つについていろいろなアクションを飲用のレベルで考慮していくというやり方もあるし、複数の基準をつくってそれぞれ基準に定義をつけて運用していくということもあろうかと思うが、まず健康確保のための基準策定し、必要に応じて環境の方をつくっていくというのもある。

【事務局】 ご存じのようにダイオキシンをつくるときにいろいろなデフォルト値を使ってある想定をしており、これは複雑であって、非常に細かくやればやるほどいろいろなオプションができてくる。今回は、ダイオキシンの数字をつくったときと同じような考え方で、既にある暴露を想定して安全側に立って一般の人のパターンでつくっており、ある種の暴露も入れ込んだ一つの基準ができている。基準をつくった後で子供時代は土に接する時間が長いとか、大人になったら週末だけだとかいうこともある程度入れて、暴露のオプションを入れてから基準をいくつかというのも、両方何か混ざったようなものが既にあって、数字を複雑にしても根拠が難しいので、ある程度暴露のことも考えた数字を1つつくって、その先は土地利用によって選択肢を入れながらやってみた。それ以外に提示できるようなものはないので、何かよい方法があれば、そのときには最初の数字の計算の仕方から変えていかざるを得なくなる。どこが変えられるのかというと結構難しく、先ほど申し上げた一般の生活だと週末しかないので、それではその作業労働環境だったら週5日間、何日間というふうに計算をして出てきた数字を出せばいいのかというようなこともあり得るが、その後の用途が変わるときに、数字が複雑だと大変なので、なるべく数字は少ない方がいいのではということもある。例えば、せめてこういう用途については数字を変えた方がいいとか。あるいは今みたいな中庸にあるような数字の設定自体を考え直した方がいいのかというのもご意見いただきたい。

【A委員】 余り複雑に数字をたくさん出してもしようがないので、そのときに想定されている暴露の状況と著しく異なるような状況があったらそのときにどう取り扱い方を変えるかというのが現実的であると思う。

【C委員】 ここにあるスキームは、基準を二つ設定するという話ではなく基準は一つで、後は管理をどうするかという話で、基準という言葉自体がどういう意味合いで使うかでもすごく違ってくるので、注意して考える必要がある。対策の方針云々と考えようとすると、極端な話、そこの土地の事業者がどのぐらいの資金力を持っているか、コストとデメリットを考えればどれだけ支払えるかによって違ってくる。例えばクリーニング屋さんと大企業と同じような一律の切り方をしない方がよい。その両方をしっかりつくることが必要ではないか。これは行政が一律に決めて、あとはいろいろな要素が絡んで、いろいろな管理ができていくと思う。さきほど選択できる幅をと言われたが、概念的にはそんな感じで整備をすると納得してもらえるのかと思う。この場で同意が得られても社会的な公認を得られないと全く通用しないので、言葉一つ一つの定義をしっかり、考え方を整理をし直してから出していかないと誤解を招く可能性がある。

【事務局】 そのとおりで、ある意味では今ご指摘のまけられないところとゴールを一本にしたらどうかと。そういう意味では例えば望ましいという基準ではなく、ある意味では対策の目標で、ある意味では望ましい基準だが、線の引き方は、前回までにご議論いただいたように、例えばTDIのある配分をしてみて、それはまけられない数字に近い意味での望ましい数字であって、少なくともそこからは何かしなければいけないというので一本引いてしまって、それもまたここではとりあえずゴールとしても使う。それ以下の数字というのはあえて示していない。仮に示すとすると、前回お示ししたのは含有量参考値のような数字があって、余力のある人は、そこまでいってもらえば非常にベターだということは示すこともあるというのは出してみたが、あくまでもここは一本になっている。まけられない数字でかつゴールというので今議論をいただいており、より適切な数字をというのであれば、別に何か数字をつくらなければいけないと考えているので、どちらかというとここはまけられない数字を土壌環境基準のようににしてご議論をいただきたい。

【座長】 基準として一つの値を設定するというのはよろしいか。その一つの値を何を想定してつくるかが問題だ。例えば公共用地ということを念頭に置くと、公共用地として使い続ける条件でまけられない値と、一般居住地等の私有地として使う場合のまけられない値とは違ってくるはずである。

【C委員】 まけられない数字と言ったときに、その状態が達成できなければ非常に危険だというレベルを言っているわけで、当然達成できない場合には罰則等が加えられないとおかしい。そうすると、今の環境基準自体は、霞ヶ浦の水質も含めて望ましいという言葉を入れていて、まけられない数字とは言っていない。だから、可及的速やかにと言って、何ともならなくても、行政が管理しているから責任をとらなくても済んでいる。まけられないという言葉を使った途端にこの辺の話が出てくると思う。土壌環境基準については、今のところはまだあいまいな望ましい基準ですよと言っており、その使いようでうまく使っている。そのまけられない基準に対してどういうものが後ろにつくのか。今懲罰と言ったが、そういうふうになるのかどうか。そこら辺をもう少し整理をしないと、実効性がないし、非常に大変になってしまう話ではないか。基準という言葉で今全部整理しているが、それもいろいろ使い分ける必要が出てきて、ほかのものも含めて難しくなっている。

【座長】 ほかにご意見はないか。基準として一本というのは非常によい。

【事務局】 ご意見をいただいたので、資料の3-2の、委員限りの資料については、規制的なレベルの基準という場合とある程度望ましい基準というのは、どのくらいのレベルを考えたらいいのかというのが考えなければいけないことで、そのときに土壌というのは規制的なレベルというのはどのくらいTDIを許容できるのかも、そこでいわゆる規制的なレベルという意味ではどのぐらいの数字を考えるべきなのか。あるいはもう少し緩やかな環境基準的なものであったらどのくらいかということについて、ご意見をいただきたい。

【C委員】 これは、今は含有量だが、溶出についても同じような話が出てくると思う。そのときにさっきの場合分けみたいな話が出てきて、地下水の汚染がある場合には、土壌環境基準についてはまけられない数値ということ。ところが、地下水汚染については、土壌環境基準の10倍はまけられない数字だという決め方になっている。含有量の方も例えばこの摂取でこのぐらいといった場合に、それに対してどのぐらいの上のところに持ってくるかというのは、そこは余り根拠がない。例えば工場の中であれば、まけられない数字というところで変わってくると思う。望ましい数字というのは、工場の敷地であれどこでも同じであって、まけられない数字は、そこでの暴露の仕方によってその何倍にするかなど変わってもいいのではないか。

【座長】 まけられない数字というのは、土地の使用目的によって変わってくるのか。

【事務局】 実はそこの議論がポイントで、変える必要があるが、場所によって数字を変えるとしたらどう変えればいいのか、ご意見をいただきたい。本日お出ししているのは、それが難しいということで別の手法を考えてみたもので、もしそういうのができるのならどういう根拠で、TDIのどういう数字でもってそれぞれ分けられるのかというところをご意見をいただきたい。

【座長】 この数字で暴露管理にするか、経路遮断にするか、土壌浄化にするかということは、やはり土地の使用目的を考えて選択肢を選ぶと思う。現在の汚染がどれくらいあるかということから、望ましい値に近づけるにはどういう選択肢がいいかということになるので、この方法を採用するとしても、やはりそれぞれの土地の使用目的によって参考値が必要になってくるのではないか。

【A委員】 工場・事業所敷地内では、例えばほかと全く同じような基準を満たすのはもちろん望ましいわけだが、金属を扱っている工場だと、それを超えている確率は極めて高い。その場合に、例えば10倍の数字あるいは100倍の数字、100倍って高過ぎてとても選べないでしょう。10倍の数字をえいと決めて、これは絶対守らなければいけませんよというようなのは現実的ではない。皆さんの了解は得られないと思う。つまりその工場の中の状況によって暴露の可能性は全く違うと思う。どれだけ覆われているか、土地の覆われていない部分がどれだけあるかとか、その中で人の動きとか、全く違うため、その数字の方で持っいっても到底了解は得られない。むしろ、そういう場合には暴露管理ということで、作業者の健康リスクがどれぐらいあるかを個別に判断してもらえばいいので、そういう判断をすることは可能と思う。

【B委員】 ミニマムイフェクティブドーズという言葉があり、またNOAELというレベルが普通実験で決められて、生活のバリエーション、環境のバリエーションを考えて安全幅というものを考慮して基準を決めようとしている。これは普通に暮らしていれば何年住んでも健康に影響がないレベルとして決められた基準である。これは普通の日本の生活の仕方を想定して決めればいいことで、環境保全の立場、生活環境保全の立場からそれ以外に波及するいろいろなものについて基準を決めていってもいい。まずは健康確保のための基準という考えでいいのではないか。

【C委員】 今の意見とは違うのだが、例えば工場の中は被覆されており、被覆されていること自体が対策であるという考え方もできる。全部裸地であるという考え方をして、そこにいる工場の労働者が暴露されるというシナリオを考えるとそのときにそこでどのぐらいまで見るかというと、その場合には、当然、子供は配慮されないので、そこだけ違ったものの考え方があってもしかるべきと思う。例えば子供の遊び場であれば、子供で何年、大人で何年生活するかという考え方をするが、安全サイドで見れば一生涯子供だという考え方をして望ましい基準をつくってもいいのではないか。逆に言えば基準というものの考え方を従来の環境基準と同じような考え方で設定しようとするとそこが非常に苦しくなる。考え方をもう少し変えないと、上に振るにしても下に振るにしても怖くてできない。だから、そういうものではないという新たな環境基準の考え方を打ち出さないといけない。それが難しいということであれば、やはりどこか一律の基準をつくらざるを得なくて、それに対してここで提案されているようなあるオプションで、対策の方でこのことをしなさいというような考え方を整理していくということになるのかもしれない。

【事務局】 今ご意見のようなことがあって、3-2委員限りの資料にあるのは、TDIという安全に立って数字が出ているという前提で、今までの環境基準のつくり方と同じように、ある種TDIの何%か、一般の住居みたいなものを想定して一つの数字をつくって、それ自体をもう一つの土壌環境基準のようなものにするやり方である。それ以上の数字はつくらずに、工場・事業所であればむしろ管理のやり方で暴露というものを考えて、数字ではなくてやり方の選択肢の中で幅を持って対応していく。あくまでも一般的な計算の中から出てきた数字だけを使うというのが今回のシナリオで、それ以外の選択肢を、今、委員が言われたようなことをすると、今の環境基準自体すべてを一度全部見直した上で整理をしなければならない。これを見直して数字を二つつくる必要があるのであればそうしなければいけないが、土壌の場合は難しいと考えている。物質によって自然に存在するかどうかも含めてかなり難しい。ダイオキシンの基準を例にとれば、健康リスク上、基準を下回れば特に影響があるわけではないという意味では望ましい値かもしれないが、一般の環境にはあってはならないものだと一般の方は思っているから、基準を望ましい値だと思わない人もたくさんいるだろう。同じような考え方で3-2はつくっている。それを土壌環境基準と称するとこのようなやり方しかなく、逆にその暴露のシナリオを全部変えて、事業所、子供の遊び場それぞれについてシナリオを変えて数字を設定すると、恐らくダイオキシンも含めて見直しが必要になると思われ、悩ましいところである。

【C委員】 委員限りの資料の1ページにある4の(1)の土壌環境基準、その下の①、②というのをここに置くのはおかしい。土壌環境基準は土壌環境基準として淡々としてあるので、要するに健康管理、リスク管理の要否の判断基準ではなくて、判断要件だと思う。環境基準とは全く別の考え方でそこで設けておかなければいけないはずである。この中に入ってしまっているからあたかもこの基準値を、これを左右するようなものだというふうに考えがちだが、そうではなくて管理するための判断要件、土壌環境基準と別のものだとはっきり整理をしないと誤解を招く。

【座長】 確かに判断要件だと思う。この場合に基準というのは、例えば公共用地ということを念頭に置いてつくられるのだろう。実際の汚染の度合いはいろいろあって、汚染の非常に高いもの、低いものもあるわけだが、その土地を何に使うかということになると、どの要件を当てはめるかという判断には、どの程度の値ならばいいのかという参照値が必要だと思う。その環境基準で公共用地として使う場合には、ここから考えた値だと思うが今、具体的にあるのは汚染の値のみで、そうすると、何の目的に使えばどういう要件を当てはめればいいかというと、基準値というものでなくても、参照値があった方が具体的に扱いやすいと思う。参照値を出しても基準値として同じにとらえてしまうということもあるので、そうなるとますます複雑になってくるが、そういう点のお考えはないか。

【B委員】 クライテリア、ガイド、それからスタンダード、この三つについて考え方の違いがあるかと思うが、クライテリアというのは事実、実験結果あるいは疫学調査、こういう科学的な事実なので、この事実は、ぶつけられた事実が妥当かどうか、信頼性があるかどうかと、こういうことで学問的な領域である。それを整理したものがガイドで、そのガイドは濃度の高い方から低い方にずっとならべていて、どの濃度のところでどういうことが起きるのかということが整理して書かれている。これはだれが見てもよくわかる。それから、クライテリアとガイドをもとにしてスタンダードをつくる。スタンダードはその社会経済的意見及び技術的に可能な水準を入れて、行政が関与してつくるものであり、これはリーガルフォース、法的な強制力を持つものという扱いになっている。今ここでつくろうとしているのはスタンダードでクライテリアではない。クライテリアあるいはガイド、これは単なる物差しで、科学の進歩とともに、改定されていく。それに伴って、スタンダードの方が影響を受けて変えられるということもある。この3段階ははっきりと区別してどれを想定しているのかと。スタンダードについては健康確保の基準スタンダードと、それから望ましい環境管理上の目安としてのスタンダードとか、いろいろな意味づけがなされた上ででてくるものである。

【C委員】 今の整理は非常にわかりやすいが、日本の環境基準の場合には、環境基準はクライテリアであり、スタンダードでそういう説明をしているところが非常に苦しいので、それを二つやはり分けるべきではないかというのは前から議論されており、水質の議論は少し出てきているが、事務局は土壌では難しいと言われたが、多分土壌が一番最初にこれをやらざるを得ないのではと思っている。

【座長】 溶出基準の方はあまり議論がなったが、土壌溶出基準、重金属類等についてはいかがか。これもやはり飲用あり、飲用なしということでいくと大分変わってくる。

【C委員】 地下水汚染ありというのもそのままだと思う。地下水汚染なしのところは、できるかどうかわからないが、例えば先ほどの深さの絡みの話で少し分けられると思う。深さあるいは地質は型で分けず、単に地下水汚染のあり、なしで分けて、それ以上は分けられないという考え方はある。地下水までの距離がどのぐらいという話は、一つの要素としては考え、検討してみるというぐらいのレベルだと思う。

【座長】 例えば基準を公共用地としての使用を念頭に置いてつくると、ほかの使用目的の場合には適切な値ではない。基準値の設定では、暴露管理というだけではそれぞれの使用目的にどの程度まで対応できるかとかいうようなことは考える必要がある。

【事務局】 今、おっしゃったように、ここで考えているというのはあくまでも一般の地域を想定しての数字である。その先の工場敷地内では例えばもう一つの目安をつくって、ここまでの暴露なりの管理をしないということができるかということになる。そんな中途半端な対策を実際にやるのかどうか。例えば10倍ぐらいまでいいよと言ったら10倍ぐらいまで浄化するような措置をとるかと言うと、そういう措置をとるよりはアスファルトで舗装するとか、立ち入りを禁止するとか、選択肢がある。そこで目安を示せないということではなくて、10倍にしろ何にしろそれは条件によって結構変わるものであるから、個々のケースに個々の数字を示さないといけなくなる可能性もあって、何か10倍でつくれるかと言うととても難しい。それよりは方法としてふたをするとかいうのが現実的かと思う。一方で地下水もまた同じように、土地利用を考えていないので土地によって数字が変わるということはない。ただ、飲むか飲まないかによってわける可能性がある。そこはとにかく拡散の防止さえやればよいという選択肢もある。その地域だけで飲んでいて、自分たちが注意すればいいということが可能ならそういう拡散防止でもいいということである。地域ごとに含有量基準の数字を決めるというのは10倍にしろ、20倍にしろ、難しくケースバイケースになってしまう。またそこまでの措置を求めるというのも大変なので、今回は一律の数字として、あとは措置で考えている。達成しているしていないというのは関係なく、一気に遮断してしまう。これなら暴露はないだろうというような、措置としてのやり方で示している。

【座長】 よくわかるが、本当にそれだけでいいのか。現時点ではいいが、土地の荒廃をまねくのではないか。ふさいでしまえばいいとすると、暴露管理という面ではのはよいようにみえるが、暴露管理だけではとても対応できないようなすごい汚染のときに対応できるか。

【事務局】 それで今回は制約条件として例えば登録をするということは、ある意味でこれは逆に言うと、公開を前提に考えているので汚染地だというレッテルが張られるということと、仮に例えば数字をつくろうがつくろまいが、暴露管理、いわゆる舗装だけにしてしまった場合に、次に土地を売るときにはまたそこで制約をかけることになって、一般の住居にするには、やはりどこかでもっと別の措置をとらなければいけなくなるという二重の手間を考えて、それでもいいよというのであればコストが安くなるという選択肢もあってもいいのかと考えており、この方が土地の利用が進むのかなと思う。しかし、これはまた別のいろいろの議論があるかもしれない。ただ10倍のような何か数字をお示しをして、そこまで浄化してもいいよと言っても、また売るときには10分の1にいって、もう一回ある種の浄化の措置をするということもあると。それよりはもう数字は一つどこでも使えるスタンダードが1つあって、あとは措置でやっていって次の土地利用のときにはそれでも使える。あとは、方法としてその舗装だけではだめだから封じ込めまでやれば売れるとか、そういう形の方がいいのかということを考えていて、さらに登録をするということでより浄化を進めるような、そういうインセンティブにならないだろうかということである。

【座長】 その辺は非常にきめ細かく書くとよい。逆に言うと、汚染地としての登録の中にそれを盛り込めば、案外役に立つかもしれない。

【C委員】 細かいところで4ページの一番下にVOCの経路遮断のための覆土舗装が書いてあるが、適切ではない。揮散をよけるという話で、横に動いてその舗装がないところから上がるのではないかという話もあるし、上をふたしてしまうことによって閉じ込めて実際問題、先ほど土壌ガスをはかると言ったが、非常に難しくて、開放系のところは大体土壌ガス方法が比較的濃度が薄くて、舗装してあるところは当然高くなる。VOCについては指針でそういう選択肢を認めていないということだが、VOCの場合にはやはりその上にガスが上がるというのを防ぐという意味で、舗装するのがいいのかどうか、現実的なのか考えた方がよい。

【座長】 汚染地としての登録の中に汚染の実態を示すような項目をきちっと入れるということは大事だと思う。
 同時に標準的な汚染の対策の解説書をつけるということは、これは非常に重要だと思う。その中で、汚染の対策の具体的なものを、あるいは理想的なものを、あるいは標準的なものを少しつけかえることが大切だろう。

【E委員】 非常にプラクティカルでいい考え方ではないかと思うが、やはり一番気になるのが溶出の方の話で、確かに直接摂取みたいなことを考えたときには覆ってしまうとか、そういった形で一般の人たちが接しない状況をつくればそれでいいという考え方は非常にプラティカルでいいとは思うが、結局、地下水への移行に関しては、やはり慎重にそういう場合でも考える必要があるのではないか。そういった意味で、6ページの地下水汚染なしの場合に暴露管理のみという選択肢があるが、やはりこの辺は慎重に考えて、暴露管理のみというようなオプションはなしとか、あるいはそれと関係して飲用があり、飲用なしという分け方というのもやはり今一度考え直していただいた方がいいのではないか。

【座長】 何かほかにご意見はないか。

【D委員】 今のご意見と関連するが、含有量の基準と溶出基準というのを同時に考えることは無理だと思う。まず含有量なら含有量について話し合ってある程度の結論を出して、それから溶出基準を考えた方がよいのではないか。

【事務局】 事務局としても、別のものとしてまずは整理をしたいと考えている。

【座長】 別々に考えるということだが、ほかに何かないか。

【A委員】 さっき議論があった子供の遊び場のような場合に、異なった基準値を設定する必要があるかというようなことだが、必要がないとは言い切れないと思う。子供の遊び場で子供が一定の期間かなり暴露が高いという面が一つあるので、ここに挙げてあるような金属の場合には、慢性の影響で特にカドミなんか、数年間の子供の時期の暴露をそれほど考える必要はないかもしれないが、一応そういうことは考慮した上で基準値は同じでいいという判断になる場合が多いだろう。考慮はするということだと思う。
 それと、子供が特に感受性が強いということも一般にはそれを折り込み済みである場合が多いが、特に極めて感受性が高いというようなデータがあれば当然物によって取り扱いを変える必要がる。常に子供のことは考えるということを置いておけば、通常は基準は同じでいいということだと思う。

【事務局】 ご指摘のとおり、前回もTDIの中で鉛などは子供時代のということで確認しようという点については、一応それを考慮されている基準のようなので数字はよいと考えている。ただ、基準は一つだが、例えば子供の遊び場なんかは何か人工的に汚染があるという、別の参考値が別の世界にあれば、むしろそういうものを推奨いただければと思う。リスク評価をする場合には、子供時代から全部計算した数字がありますので、スタンダードは同じでいいのではと思っているが、ただ一方でやはりそういう場面というのは別の要素が入るような、そういう意味で前回は二つ数字を出したというのは、一つはあくまでも環境基準的なスタンダードを想定しながら、一方で含有量参考値をお示しすることで、一般には自然的な影響で汚染が見られるという幅はこのぐらいというのが日本の国土の状況で、それから3シグマぐらい先は何らかの汚染があって、それは健康リスクを直ちに調査するようなものではないが、そういうものがあるような場所だというようなことを示すやり方もあるのではないかというのが事務局としての準備の段階という状況である。

【座長】 環境基準を例えば公共用地ということを念頭に置いてつくったとすれば、それは即子供の遊び場には適用できるのか。

【事務局】 形式的には全部適用される。

【座長】 他になければ事務局の方で何かあるか。

【事務局】 今年度実施している調査について結果が出てくる時期を見て、次の検討会を開催したい。その際に、この検討会の一次報告について、たたき台をお出ししたい。今年度の調査の結果も踏まえて、修正すべきところがあれば変更するなりしたい。そのときには、前回までに検討をいただいたように、TDIの何%とかというのを案として出させていただくことになるので、よろしくお願いしたい。日程は追って調整をさせていただく。

【座長】  もう一つ、先ほど指摘のあった健康リスクの管理、健康リスクという言葉はここではなじまないのではということで、何か適切な言葉があればお考えいただきたい。
 最後に、本日の資料は、委員限りとなっているものを除いては公表して差し支えないか。

【事務局】 委員限り以外のものについては、特にご異論がなければ、本日の場合は前回の再配付資料だが、それでもって配付させていただきたい。

【座長】 本日は、委員限りの資料がメインのため、前回の資料がそのまま公開ということになる。

【事務局】 委員限りの資料を配布しているが、前回と今回については、委員限りの資料を踏まえたご議論をいただいている部分が多いので事務局の方でその辺が余り明確にならない程度に、会議録を作成することをあらかじめご了解いただいた上で、案をお送りするので、よろしくお願いする。
 これをもって第4回の土壌の含有量リスク評価検討会を終了させていただく。

-以上