環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌の含有量リスク評価検討会

土壌の含有量リスク評価検討会(第3回)会議録


1.日時

平成13年2月23日(金)14:00~17:00

2.場所

合同庁舎第5号館共用第10会議室(別館7F)

3.出席者

(1)委員
林 裕造 座長
櫻井 治彦 委員 佐藤 洋 委員 鈴木 庄亮 委員
中杉 修身 委員 永沼 章 委員 平田 亜古 委員
(大野 泰雄 委員、米谷 民雄 委員、吉永 淳 委員は欠席)
(2)事務局
伊藤   洋 水環境部土壌環境課長 他。

4.議題

(1)土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価等について
(2)その他

5.配付資料

資料3-1 土壌の含有量リスク評価検討会委員名簿
資料3-2 土壌の有害物質の含有量によるリスク評価について(改訂案)
資料3-3 土壌汚染の環境リスクのとらえ方について
(参考資料)
参考資料3-1 関連資料

6.議事

【事務局】 ただいまから第3回の土壌の含有量リスク評価検討会を開催させていただく。 まず、本年の1月6日付で環境省が発足したことに伴い、事務局の体制が一部変わったので、簡単に紹介申し上げる。水質保全局は大気保全局と統合され、環境管理局水環境部として組織された。地球環境局や廃棄物リサイクル対策部に一部業務が移管されているが、水と土壌の関係については、この水環境部が引き続き対応することになった。水環境部については、企画課のほかに水環境管理課、閉鎖性海域対策室が所属している。
 土壌の関係では、従来の土壌農薬課が土壌環境課になり、その中に農薬環境管理室が新たに設置された。また、従来まで企画課の中にあった地下水・地盤環境室は、土壌と非常に密接な関係があるということで、土壌環境課の中の室として組織された。
(事務局メンバーを紹介)
 それでは、本日の配付資料について確認させていただく。
(配付資料を確認)
 なお、本日は大野委員、桜井委員、米谷委員及び吉永委員から欠席の連絡をいただいている。それでは林座長に議事進行をお願いしたい。

【座長】 それでは、議事に従い進めさせていただく。
 本日は、前回検討会で事務局から説明のあったとおり、まず「土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価について」に関して、個別課題ごとに具体的な議論を行っていきたいと思う。続いて「土壌汚染の環境リスクのとらえ方」についての議論を行いたいと思う。
 まず最初に「土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価について」に関して、事務局から説明願いたい。

【事務局】 それでは、資料3-2により説明させていただく。
(資料3-2に基づき説明)

【座長】 資料3-2について、事務局から説明あった主な確認事項、検討事項あるいは配慮事項を含め、何かご意見はあるか。

【D委員】 土壌の有害性の考え方で、「対策要件」と「汚染の判断基準」という2つの尺度があるが、「対策要件」は対策を実施するなど何らかの措置が講じられるのでいいと思うが、「汚染の判断基準」は人為的な汚染があると判断したときに何をするのかという議論が出てくると思う。どういう言葉を使ったらいいかということに絡むのかもしれないが、従前、環境汚染では環境基準を超えていなければ汚染でないというような考え方が地方自治体でとられることがあるので、表現については注意をしなければならない。人為的な汚染の有無を判断して、汚染はあるが対策をとらないことについて合意を得てからでないと、このような表現は誤解を招くおそれがある。

【事務局】 この点については、事務局としても非常に悩んでいるところである。ここでは含有量参考値の決め方を踏まえて仮にそのように表現しているが、今後これをどのような表現でどのように使うべきかということについては、各委員からご意見をいただきたい。
 また、前回は、いわゆる対策を実際に講ずる、何らかの処理が必要だとするレベル以外に、望ましいレベルがあるかもしれないとのご指摘をいただいた。現状としては、自然的な要因でかなり濃度的な幅のある状況で有害物質が土壌中に存在しているので、望ましいレベルについての例としてお示しした。

【D委員】 他の経路からの理論摂取量を考えて議論をした場合に、理論摂取量を足し合わせていって、それがある数字を超えるか超えないかということについて、食物からの摂取量が多くなると思うが、その値をどのようにとるのかを議論する必要がある。例えば飲料水については基準があるので理論摂取量を求めることができるが、食物は求めることができない。食物については、例えば平均的な値をとるのか、あるいは食物の調査をトータルで何サンプルか実施しているはずなので、その数値のばらつきを考慮しつつある値をとるのかということである。

【事務局】 ご指摘の議論も必要かと思う。何らか行政的な数字があるものについては理論最大摂取量は計算できるが、それがない食品の場合には例えば個人差、日変動などがあるため、平均的な値を解析して活用する。最大値を使うことは、必ずしも実態を反映していないので活用するのは難しいと考えている。ご指摘のような評価を行うためにはトータルダイエットスタディに関する詳細なデータが必要であるが、事務局では入手できていない。いずれにしても平均的な数字しか評価できないだろうと思っている。

【D委員】 手持ちの資料としては個々の食物のデータを把握しておく必要がある。トータルダイエット調査も公表されているのではないか。学会誌等などには載っていないのか。

【事務局】 事務局として入手できるものとして、どういうデータがあるのか確認はさせていただく。次回までに間に合えば確認して報告する。

【B委員】 この4物質のTDIについてはどうなっているか。

【事務局】 TDIについては、平成11年度の含有量参考値再評価業務報告書で、文献調査等をもとにまとめている。参考資料3-1にその後確認し整理した情報を載せている。これについてご指摘があれば修正する必要があると思うが、現時点で事務局として整理できる数字として準備した。

【B委員】 鉛については吸収率が大人と子供で違う。実際に計算するときに、それはどのように勘定しているのか。

【事務局】 子供の時期を6年間とし、吸収率を50%、土壌摂食量を200ミリグラムを使用して計算している。7歳以上は大人として、吸収率を10%、土壌摂食量を100ミリグラムとして計算しているので、その部分で子供と大人の吸収率の違いを考慮している。

【B委員】 TDIについて、例えば鉛の3.5μg/kg/日はどのように計算したのか。

【事務局】 参考資料3-1に計算の考え方を記した。

【B委員】 仮に土壌からの摂取がTDIの1%を占めるということは、要するに生涯のトータル暴露の中で子供の時期に1%ということか。

【事務局】 これは、子供の時期6年間と大人の時期64年間で異なる吸収率と土壌摂取量の値を用いて、土壌からの生涯の平均暴露量を計算した場合、その値がTDIの1%である0.035μg/kg/日になるという意味である。

【D委員】 多分、今の指摘は、生涯の平均的な暴露量を考える場合、子供の時期も体重50kgで割っていいのか、子供の時期は体重が軽いので、その辺をどう扱うのかということだと思う。今のところは平均的な暴露量を考えているが、1日の暴露量を考えた場合、子供の時期は体重10kgとして計算し、子供の時期についてのTDIで評価しなければならないというのは一つの考え方としてあるかもしれない。

【座長】 現在の計算方法は、非常に荒い計算のようにも思えるが、何かご意見はないか。

【E委員】 各委員の指摘と同じようなことを感じた。確認したいが、TDIというのは体内に取り込まれた量か。

【座長】 基本的には取り込まれた量である。

【E委員】 吸収される量ということか。

【座長】 そうである。

【E委員】 鉛の場合は子供と大人の吸収率の違いを考慮しているが、他の金属でも考えなくてはいけないだろうと思うので、文献調査を進めなければならない。カドミウムについても、子供の時期のほうが吸収率が高いという文献がある。

【委員長】 生物学的半減期などを取り込もうとすると、物質によって大分違うのではないか。

【E委員】 カドミウムは圧倒的に長い。

【座長】 圧倒的に長く、30年くらいである。それを考慮に入れるとかなり難しくなると思う。非常に荒い計算であるという感じはするが、やむを得ないということだろうか。

【E委員】 そう思う。水銀に関しては非常に複雑だという話があったが、それについては別に考える必要があるかもしれない。

【C委員】 カドミウムに関しては、日本にはさまざな場所がある。汚染の程度、あるいはバックグランドの値について、いろいろな場所で1日摂取量がどういう分布をしているのかというデータがかなり重要かと思うが、その情報は丁寧に集めた方がいいのではないか。また、最近のカドミウムを巡る国際的な動向について、日本政府はさらに厳しくなることを憂慮しているという状態があると聞いているが。

【事務局】 ご指摘のとおり、カドミウムの問題は相当難しい課題を含んでいるので、十分検討する必要があると考えている。ただ前半のご指摘については、米以外の食品の摂取量は一般論としてできるが、米の問題については非常にデリケートな問題もあり、また一方で、国際的にはこのTDI自体についてもまだ議論をしているという状況であるので、それを踏まえると結論についてはカドミウムだけは少し先にならざるを得ないかもしれない。

【C委員】 20~30年前のデータと最近のデータを比べると、かなり改善されているとは認識している。

【D委員】 極端なケースを考えて、定性的な議論をしておいた方がいいのではないかと思うのは、例えば家庭菜園等を考えると、自分の家の庭で汚染土壌を直接口に入れるという話になってくると思う。そのときに、家庭で一般に作られる作物からの暴露の割合というのは大体どのぐらいかというのを、非常にラフな整理でいいのでしておいた方が安心ではないかと思う。自分の庭が汚染されていて、そこで作った作物がどうかという議論になると、難しい問題が生ずると思う。非常にラフなことしかできないと思うが、検討しておいたほうがいいのではないか。

【事務局】 ご指摘は、家庭菜園をされているような場合に、直接土と接するという意味か、それとも作物経由という意味か。

【D委員】 直接摂取を考えればいいと思う。作物経由については、定性的な議論で済むのではないか。まず最初に、食物経由のうち家庭菜園の野菜からの摂取割合がどのぐらいかというのを検討する。それが非常に小さければ、家庭菜園の土壌が多少汚染されていても余り影響しないだろう。それがかなりの割合を占めていると、汚染土壌の濃度が高くなると、それが全体に影響してくるというようなことが考えられる。そのように考えればいいと思う。データがない現時点では何とも言えないが、多分大丈夫なのではないかとは思う。

【事務局】 それについては、先ほどのトータルダイエットスタディの個別データが確定できればお答えできる可能性があると思う。

【C委員】 インドネシアのジャワ島で土壌や作物を調べたが、自給率が非常に高い。だから、ダイレクトにその農業生態系の影響を受けるという意味で、モデル的にいい地域であった。そのようなところでは確かに土壌と作物、それから計算上の摂取量、あるいは糞便中の濃度は非常によく比例する。日本では、外国あるいは他の土地から入ってくる食物がどんどんふえてきており、その場所での影響というのはどんどん小さくなっていると思う。古い話であるが、鉛の蓄電池などを埋め立てており、その菜園で取れたキャベツを食べて胃腸障害が起きたという例があるのを記憶しているが、これはかなり特殊な例かと思う。

【座長】 土壌の摂食量については、平成13年度早々に報告されるということであるが、ダイオキシン類の場合、子供が1日200mg、大人が100mgというデフォルト値を使った根拠はあるか。

【事務局】 根拠については、ダイオキシン類に係る検討の際の文献を提示できる。これは諸外国のケースであり、これをもとに検討を行い決めている。日本のデータが豊富にある状況ではなかったように思う。

【座長】 平成13年度早々に報告されるデータによるが、当面、我が国でも大体このような値でいいということか。

【F委員】 環境省の調査データによると思うが、調査対象の子供の年齢が高いのではないかと思う。1歳や2歳の子供について、どのようにデータを補正するかを考えなければならないと思う。

【座長】 それから、暴露頻度や吸収率の定義をきちんと示さなくてはならないと思う。計算に使われているいろいろな用語について、きちんと定義をする必要がある。例えば、皮膚面積当たりの土壌の皮膚接触量として0.5mg/cm2とするということだが、実際の接触面積というのは考えなくていいのか。

【事務局】 ダイオキシン類の検討の際には、子供が2,800cm2、大人が5,000cm2という数字を使った。

【座長】 0.5mg/cm2等の値についても日本ではなく外国のケースをもとに決めているのか。

【事務局】 恐らくそうであると思う。これについてまとめていただく際には、ダイオキシン類の検討の際に収集した文献を改めて提示することになると思う。

【座長】 このような案外細かいことが問題になるのではないかと思うので、よろしくお願いする。
 次に土壌汚染の環境リスクのとらえ方について議論したいと思うので、事務局から説明願いたい。

【事務局】 それでは、資料3-3に基づき説明をさせていただく。
(資料3-3に基づき説明)

【座長】 説明のあった資料3-3について、溶出基準、含有量基準1、それから含有量基準2の順でご意見いただきたいと思う。

【D委員】 資料3-3の最初のページにある人の健康の保護の観点について、地下水等の飲用とあるが、表流水は地下水とは分けて考えた方がいいと思う。地下水は飲用されるので、その汚染源である土壌については溶出基準でいいと思うが、表流水の場合には、ダイオキシン類に係る環境基準の議論でもペンディング事項として残っているが、汚染土壌は流出水とともに流出するので、溶出するものを含めて含有量基準として考える必要があるだろう。その場合には、飲用だけではなく、魚との関係を考慮する必要がある。ただしその場合、土壌は周辺環境の汚染源であり、魚への影響そのものは水の基準でとらえ、水など周辺環境の何らかの基準をターゲットとして、土壌の基準を考えるという整理がいいかと思う。
 それから、生活環境の保全の観点で、農作物の影響については、直接影響としてとらえたほうがいいと思う。
 もう一つは、表流水への流出という意味で生態系への影響があると思う。水については、例えば生態系の保全の観点からの水質環境基準を検討しているが、それに対応して土壌についてはどう考えるかという周辺環境の汚染源としての土壌の議論が出てくる。これは当然直ちに検討すべき課題ではないが、将来的な課題としてそういうものを分けて整理したほうがいいのではないかと思う。

【B委員】 土地が私有であるということについては何となくわかったような気がしているが、それは深さ方向も含めてある空間を専有しているという意味か、その空間を占めている土壌も含めてその人のものという意味か。

【C委員】 土地は、原則は地球の芯まで及ぶ。所有権については、上下全部である。

【B委員】 そうすると、土地の上下全部、土壌も土地所有者のものという考え方でいいのか。

【C委員】 基本的にはそうである。現在は所有と使用が別になりつつあるが。

【B委員】 その辺の考え方でその土地に対する対策というのは随分変わってくると思う。

【D委員】 ただ土という、土地という空間という意味であればそうかもしれない。そこに流れている水、地下水はどうなのかというのは、以前から私水か公水かという議論はあった。一般には現在のところ公水という面が強いのではないか。昔は私水という議論もされており、水が動かなければ私水としてとらえることはできるだろうが、隣地へ移動して隣地に影響を与えるという意味ではどうか。法律の専門家に聞かなければわからないが、土自体はそういう考え方もできるだろうが、地下水というものを考えると、あるいは極端な話として土壌ガスが動くことを考えると、必ずしもそのようにはとらえられない。含有量で考え、汚染がその土地の中に限られていれば、その土地に立ち入らせず、そこにいる人は構わないという議論は成り立つのだろうと思うが、有害物質が土壌から土壌へと移動して、隣地の土壌を汚染すれば問題ではないか。有害物質の揮散等を考えたときに、当然揮散したガスが移動し、あるいは有害物質が地下水に溶けて流れれば、その土地を持っている人が管理・制御できる範囲外に出てしまう。そこで例えば、土壌汚染について、地下水を飲んでなければいいではないかという議論のときに、それでは隣の人が今は飲んでいないけど飲みたいと言ったときにどうするのか、それは飲んではいけないということが言えるのか。今のところは飲んでいないからリスクが全くないと言えるかどうかわからないが、ただ、そういう権利についてどう考えるのかという議論がある。

【C委員】 温泉に関しては、温泉権というものがあり、これは井戸を横に掘ってはいけないとか斜めに掘ってはいけないとされている。温泉井戸は、真っすぐ垂直に掘ればそれが自分の権利になる。ただし、過失等により他人の権利を侵害しなければという条件がつく。

【座長】 事務局に聞くが、地下水汚染を伴う場合と伴わない場合と、二つに分けるのは確かにいいと思うが、これで本当に区別ができる場合とできない場合があるのではないかと思う。地下水汚染を伴うか伴わないかというのは、土壌の中での移動の速度で決まるとすると、その区別というのができない場合もあるのではないかと考えられるがどうか。【事務局】 ここはあくまでも現時点で、その地下水を測定するという行為をしたときに汚染があるかどうかという見方をしている。潜在的にはその原因となり得る汚染土壌はあっても、例えばある方法で測定したときに、そこに汚染があるかないかという見方しか多分できないと思う。ただ先ほどの議論にあるように、地下水汚染については将来どうなるかわからないといったような整理で区別していただきたいと思う。だから現にある方法で測定したときに、環境基準を超えているかどうかということで一応整理をしているが、将来どうなるかというのは別の議論でのポイントになるだろう。

【D委員】 今の議論は非常に難しいので、おそらく一律に決められる話ではないと思う。逆に言うと、選択肢で幅を持たせて選ばせるというのも一つの考えだと思う。土壌は汚染されているが、地下水は汚染されていないという状況を考えた場合、常に地下水の監視だけは必要だと思うが、今は地下水を汚染していないから汚染土壌はそのままにしておいて、例えば上に建物を建ててしまうと、地下水汚染が発生すれば、場合によっては建物を壊してまで浄化をしなければならないということが起こり得る。そのようなことを踏まえ、汚染が地下水に移行しないという判断をして建物を建てるか、汚染土壌を浄化してから建物を建てるかということを選択させるという考え方もしていかないと、実行上うまく動かないのではないかと思う。この場合は、座長ご指摘の移動速度の議論もあるが、地下のある深度までで有害物質が動かないということもあり得るのではないか。土壌に十分な吸着容量があれば、ほとんど問題ないということがあり得ると思う。その土地所有者が、それを十分勘案して判断をするという余地、そういう選択をできるような余地を残しておくというのは一つの考え方ではないだろうか。一律にすべて浄化するという考え方はないだろうと思う。

【座長】 次に、含有量基準1と直接摂取も含めて、ご意見はないか。

【D委員】 人への暴露の遮断については、飲用指導だけではなく、飲料水と水道水の浄化という選択肢が当然入ってくる。飲用指導しなくても、水をきれいにしてから飲むというのは、暴露の防止の重要な対策である。溶出量と含有量のどちらを考えるかというのは、普通は厳しいほうを選択するのだろうが、具体的なことを考えると、溶出量と含有量の2つの試験をやらなければいけないのかという議論があるかと思う。もしかすると、他にも揮散等の基準が別にできて、土壌の場合にはいろんなケースから考えて、いろんな基準で試験を実施しなければいけないということが起こり得ると思う。そのときにどうするかという判断については、それを全部実施するという考え方もあるが、例えば目的によって含有試験だけを実施し、他の試験は実施しないという考え方もあり得ると思う。その場合には、含有と溶出の間、含有と揮散の間の相関関係、これは多分1対1のきれいな形にならないので、ある幅の中で安全サイドを見て厳しい数字をとらざるを得ないと思うが、それを選択するか、実際にすべての試験を実施し確実な値で評価するか、これも先ほどと同様に選択の幅の中で、どちらかを選ぶというようなことも一つの方策ではないか。まだその点についてどういうふうに考えたらいいかというのは難しいが、どれかに決めてしまうのがいいのか、選択できるような余地を残して制度を作っていくのがいいのかというのは検討していかなければならないと思う。

【事務局】 今のご指摘について、溶出量と含有量の関係については、これまで幾つかのデータを見た感じでは、相関はほとんどないようである。今後データがかなり集積して、一方の数値がわかれば他方もある範囲内におさまり、統計学的にも有意であるということになればそういう考え方もできると思うが、その可能性はいかがか。

【D委員】 多分、一つはそのデータ自体の信頼性の問題が絡んでくると思う。今はあるフィルターを通過した検液をはかっているが、その数字がどれぐらい信頼性があるのか。そういう意味では地下水の水や溶出した後の水について、もとの土壌とどういう関係を見ているかである。完全に溶け出したものを見てるかというと、必ずしもそうではない。確か廃棄物の溶出試験より土壌の溶出試験のほうがフィルターの目が細かくなっているが、それは、土壌の粒子が一つでも通過してしまうかしてしまわないかで濃度が大きく違ってしまうからであり、測定精度を上げるため土壌のほうはメッシュの細かいフィルターを使っていると理解している。その辺のことが関係してくるのではないかと思う。
 そういう意味では、ダイオキシン類についての地下水の調査結果も含めて、どのようなはかり方をすればいいのかというのは、リスクの面からも考えてみる必要があるだろう。別なところで水道の研究者と話をした際に、井戸水を飲むときに、その井戸水の中にどのぐらいのSSがあると、目視で判断して飲まないかがわかったということを尋ねたが、それに合わせてフィルターの大きさを決めるのが本当は一番いい。溶解態だけ取り出してやれば、もう少し整理できるだろうと思うが、土壌の粒子が入るか入らないかで1桁ぐらいデータ自体が違ってしまうので、そういう意味での誤差が出てくるのではないかと思う。溶解態だけで試験をしても、かなりのばらつきがあるとは思うが。

【C委員】 蛇足ではあるが、物質によっても随分違うし、また環境における存在状況によっても違うと思う。人への暴露を中心に考えると、例えばカドミウムの場合は米があり、その次が土壌であるが、土壌にも階層があり、生物学的に吸収可能なところにあるカドミウムと、土壌の粒子の深いところから取り出さなければはかれないカドミウムとがある。そういう意味でいくと、土壌に含まれるカドミウムの絶対量で押さえるのがいいかと思うが、現実的に考えるととりあえずは米のカドミウム量を押さえればいい。その米のカドミウムの量を決定する生物学的に吸収可能な土壌中の濃度は、その土壌の種類やpH、酸化還元電位等で様々に変わり、米のカドミウムと土壌のカドミウムの量にはほとんど相関がないと言われているので、土壌中のカドミウムの量を基準にするのは無理だということから米の基準を決めている。そういう意味では、ケースバイケースではあると思うが、人に一番近い部分で基準を決めるのが望ましいと考える。

【E委員】 どのくらいの広さで考えるかということもある。局所的な汚染ということもあり得る。

【E委員】 溶出基準と含有量基準をどのように関連づけて考えなければいけないかというのは理解できていない部分があるが、溶出基準をもとにして考えると、その土壌中の含有量基準をどのように考えるかということをまず決めてから、溶出基準との関連性を考えた方がいいのではないかと思う。

【事務局】 ご指摘の趣旨とはずれるかもしれないが、本日ご議論いただき再度確認したいのは、資料3-2でいえばTDIの割り振りの考え方自体はどうかというところであり、ぜひ各委員からコメントをいただきたい。
 それから資料3-3について、ここで考えている含有量基準というのは直接摂取であって、カドミウムについても自然由来あるいは鉱山からの排出よりは、工場・事業場などで実際にカドミウムを扱っており、既に汚染されている負の遺産としての土地が、例えば住居などに用途変更された場合などを想定している。そこで汚染が判明したときにどうするのかというイメージであり、むしろ一般に広く汚染があるとは思っていない。要はそういったケースのときにどこまでのレベルであれば許容でき、どこまで以上であれば汚染の管理あるいは除去までも含めた対策がいるのかという議論になると思うので、カドミウムもそういう形で考えていただきたい。
 それから溶出基準についても、溶出基準自体が環境基準であり、そういう意味では含有量基準というのをある程度決定していった方がいいと思うので、本日ご指摘をいただいているようにいろいろな管理手法があり、まず土地の用途によらず本当に一律の数字でいいのかどうか。要するに数字は一つだけども、管理の手法を変えていく方法がいいのか、場合によっては数字までも2つ3つあった方がいいのかということについてご議論いただきたい。

【E委員】 確認であるが、地下水を飲用しないということだけで問題はないかということであるが、これは溶出基準として見たときには地下水だけでいいかという解釈でいいか。溶出したときに地下水の飲用だけでいいのかという議論になると、先ほどの表流水の話があり、一般的にはあまり問題にはならないと思うが、溶出して表流水に入り、それから生物や食物、魚介類、作物に吸収されて、それにより暴露されるというケースが考えられる。ケースとしては十分考えられるので、地下水の場合も、極端な話をすれば農業用水として地下水に依存している場合が多いので、ストーリーとしては同様のことがあり得るのだろうと思う。それがどのぐらい問題になるか。溶出試験という観点でみると、魚などへの蓄積はあまり問題にはならないので、生物濃縮しないという意味でそれほど多くないのではないかと思うが、農作物の場合にはその組織に吸収すること、農作物には非常に大きな割合で水分が含まれているので、その吸収した水の中に有害物質が含まれているということを考えると問題になるのではないか。だから例えば野菜の90%が水であれば、その野菜を食べると90%の水を食べることになる。そのときに、農作物中の水が地下水をそのまま吸い上げているとなると、そのような議論があり得るのではないかと思う。

【事務局】 ご指摘のあったようないろいろな場面があると思うが、整理の上では、現在の溶出基準は一定の溶出方法で分析をした結果であって、その先の基準はあくまでも地下水と公共用水域の水質の環境基準であり、その先は全く問わないということにしている。だから環境基準を達成しているということ、一定の方法で達成しているという状況の中で、それ以上何か求める必要があるのかという解釈をしていただいたほうが整理がつくので、それでご議論いただければと考えている。

【D委員】 こういうふうに問われるからそういう答えが出てくるので、地下水の基準でそのようなことも考慮して基準が決まっているということ以上のものではないと思う。このような問われ方をすると、あえて言うとそういうことが出てくるということである。

【座長】 次の含有量基準1も含め、何かご意見はないか。

【D委員】 土地利用の状況によりどう考えるかということについて、土壌汚染の調査が行われる事例で多いと思われるのは、あるいはよく問題になるのは、土地の売買にかかわる事例なので、そのときの土地利用というのをどう考えるか。土地の売買をした後の土地利用が多分問題になると思うので、その点を考えなければならないと思う。通常、工場敷地の中であれば何ら問題はなく、それがまた工場として利用されるということであれば、汚染の事実を知ってその管理すればいいという話になるが、例えば住宅地などとして販売されるということになれば、そこに住む人が汚染土壌を直接口に入れる機会もあり、家庭菜園を行ったり、井戸を掘る可能性もあるなどの議論になっていくのだと思う。だから、単に土地利用ということではなく、土地の用途がどう変化していくと想定されるかという話が絡んでくる。将来のことはわからないが、将来用途が変わる可能性を踏まえて今対策をするか、将来用途が変わったときに対策をするのか。いずれにせよ、汚染情報の伝達ということ、将来用途が変わったときあるいは売買をしたときに汚染情報を十分が伝達されているかどうかというところが非常に問題になってくるのだろうと思う。

【事務局】 例えば、現にあるいは将来も含めて工場・事業場敷地のような特定の人しか入れず労働安全衛生の観点からの管理ができるような場所である場合、あるいは将来そのように使われる場合、あるいは個人の住宅のような私有地である場合、あるいは一般にだれでも入れるような公園などに使われる場合というように分けていただく。それで用途の変更により新たなリスクが発生する、あるいは増大するという理解をしている。そのときに、それぞれの土地利用に応じてどうしたらいいのかという場合、ご指摘のあったとおり情報の伝達が制度の枠組として担保できるのであれば、工場・事業場敷地について対策が必要なのか必要でないのかということについてご議論いただきたい。その場合、管理手法を変える理屈や、あるいは事業場に関する数字を決めるのか決めないのか、あるいは同じ数字だけども管理の方法で差をつけるのかということについてもご議論いただきたい。そのときに難しいのが私有地の問題で、どこまで管理をしなければいけないのか。その個人が例えば何もしなくてもいいと言ったらそれでいいのかどうか。事務局としては、周辺への拡散、周りに迷惑をかけるかどうかという観点から線引きをしている。日本の場合は諸外国と比べて土地はどちらかというと私有物という意識が強く、そのような中でどういう方法をとればいいのか。地下水もそうだが、周辺を汚染をしてしまったときは、当然何らかの責任が発生すると思うが、周辺を汚染しないようにある適当な措置を講じた場合にはどうしていくのかということについてご議論をいただきたい。現時点では、一般の受けとめ方としては、そこに土壌汚染があれば離れていても何らか影響があるというようにとらえているが、その点についても十分議論をしておかなければならない。近い将来、いわゆる土壌汚染のリスクについて考え方を示し、いろいろな場面でご議論いただかなければならないと考えられるので、あるケースを想定しての管理のあり方はこのようにするべきではないかというご意見をいただけるとありがたい。

【座長】 非常に難しい問題である。具体的には、例えばカドミウムで汚染された土地については、少なくとも農用地としては利用できないということになる。しかしながら、土壌中のカドミウムは、米に移行すれば人体に影響があるが、米に移行しなければ人体にそんなに入るものではない。少なくとも個人の住宅等への転用は構わないということになるが、汚染の種類によってかなり考え方が違ってくる。

【B委員】 基本的にはその点について今まで議論してきたと思うが、水を汚染するのか、地下水を汚染するのか、あるいは近隣の大気を汚染するのか、そうでないのかというのが一つの大きなキーポイントだろうと思う。そういう意味では溶出基準と有害物質の含有量そのものというのは、ある意味で切り離して考えないといけないと思う。存在する有害物質の化学的形態や物性については、現時点ではよくわかってないので、結局は結果としての汚染ということを、水や大気、違うメディアなどについて考えざるを得ないと思う。
 それと、先ほど工場の話が出たが、これも周辺への汚染がないという前提で考えれば、割り切ってしまうと、例えばそこにいるのは8時間、35年ということになる。そうすると、簡単に言えばTDIから見ると6倍の基準でもいいのではないかという考え方はあると思う。逆に、例えば大気環境基準などを決めるときに、実際に暴露のデータがなく、許容濃度などを労働現場から持ってくることが結構ある。その場合に、そのデータは8時間のもので、一般大気だと24時間だということや、何十年労働しているので、一生に換算する場合は何十年というような、ある意味の不確定係数を掛けるわけだが、今回の場合には不確定係数は考えず、存在する時間で割り切ってしまうという方法はあると思う。そうなると、2とおりの基準というか、土地利用によって違う数字が出てくるということになるが、ベースとしては一般環境で24時間70年存在すると考えて、土地利用によってそれに掛け算なり割り算なりをするという方法はあるのだろうと思う。このような考え方が社会的に受け入れられるかどうかはわからないが、そういう割り切りはあり得るだろうと思う。

【事務局】 そのような整理をしたときに結構複雑になってしまうのは、資料3-2の暴露の頻度というところで、皮膚接触については、大人の場合は週末の2日間だけ、子供は毎日という数字が既にあり、さらに晴天率もある割合を考慮しているが、それと比べると作業者がもし外で作業をしているとすれば長く暴露されるなど、非常に複雑な考え方が必要であり、数字としては単純に例えば6分の1にならないような状況となっており、非常に難しいと思っている。
 だから、二つの数字を作るには、ある程度思い切った割り切りをすると矛盾がでる可能性がある。現実には、現在行っている計算ですら人によって全然違うことを割り切って行っており、外で働いている人もいれば、室内で仕事をしている人もいるので、本当は暴露の形態が全然違うはずである。安全を見込んだ数字も入っているが、そのような割り切りもあるので、暴露時間については難しい。それで、もう一つの方法として管理のあり方といった別の考え方もあるのではないかということも含めて、ご意見をいただきたいと思っている。

【座長】 難しい問題なので、直接的なご意見は本日はいただけないかもしれないが、これから検討を行っていくための資料にはなると思うので、ご意見をいただきたい。

【D委員】 全体としてシナリオをもう少し整理をした方がいいのではないかと思う。事務局から説明があったとおりいろいろなケースがあるので、それを具体的に整理して示してもらった上で、この場合にはこう考えるといった議論をしたほうがいい。例えば、ある土地があると、そこに住んでいる人については、どのような暴露があるかを考えたときに、食物から直接暴露されるというのは家庭菜園ぐらいであり、井戸水を飲用していれば、水からの暴露もある。そのようにケースを分けて整理をしてみると、もう少し議論が進むのではないか。
 また、事務局としては、周辺地下水の汚染拡散防止と汚染地下水処理をどのように考えればいいかということも質問したい事項と考えていいか。例えば、周辺の汚染地下水の拡散防止というのは、一つの側面で言えば汚染対策であり、要するに汚染をこれ以上外に出ない対策でもある。周辺に汚染を出さないという意味では、敷地の中が汚染されていてもいいという考え方であれば、この対策でもあるいは構わないのかもしれない。積極的に浄化しなくても、そこで拡散を防止していれば土壌はきれいにしなくても構わないということである。その場合には揚水という方法や矢板で囲んでしまうという方法がある。
 一方で、汚染地下水の処理といったときには、過去に流れ出してしまっている汚染について、どのような対策を実施しなければならないかということである。周辺の人の健康を保護するための対策であるように思う。
 また、周辺に拡散した汚染について、個々の汚染者が浄化を実施するのは非常に難しい。実際に浄化を実施するとすれば、他人の土地へ行って水をくみ上げるなどの対策を行わなければならない。自分の土地で地下水をくみ上げて周辺の地下水も引き込むということはできるが、距離的に離れているものは難しい。そうなると、そのときのリスクはどの程度かということを考えなければならないが、一番難しいのは地下水汚染は通常いつから始まったものかがよくわからない点である。例えば生涯70年という議論について考えると、現在は何年目ということがわかればいろいろな考え方ができるが、それができない。だから、もう70年前からというように考えるか、その工場では何年前から有害物質を使っているからこのぐらいだと考えるか、その辺の考え方が非常に難しい。そこで区別ができるかどうか。そうなると、もうリスクのアセスメントを、暴露と影響について個々のケースで行わなければならないという判断になりかねない。

【E委員】 土壌汚染が地下水汚染にどの程度影響してくるかというのは、考え方によっては土壌を汚染している重金属等の総量に関係する。一方で直接影響というのは濃度が影響するものだと思う。それを一緒に考えるのは難しい。特定の地域、例えば事業所など狭い範囲での汚染で、濃度については問題があるが、総量についてはあまり問題はないということも考えられるので、その辺を分けて考えたほうが整理しやすいのではないか。
 それから、先ほどご指摘があったとおり、カドミウムの場合は米からの暴露がほとんどだとしても、本当に高濃度で人の健康に直接の影響があるようなカドミウムがたまっている土地がある場合には、土の摂取だけで影響が出るかもしれない。

【座長】 今回、事務局は水を経由する摂取と土壌からの直接摂取を考え、それぞれによる摂取量を設定しようとしているのだろうと思う。水については溶出基準の立場から、直接摂取については含有量基準の立場からの基準を考えようとしている。溶出基準と含有量基準が分けられない面もあるかもしれないので、最終的には総合的に考えなければならない場合もあり得るが、一応はそれぞれを分けて議論してもよいと思う。

【D委員】 多分、先ほどのご指摘は、重金属等の汚染物質を生涯でどれだけ吸い込むかを考えるには、そこに存在する量が何人分かという議論になるだろうという趣旨だと思うが、今のところ安全サイドで考え、無限にあるという割り切りで、その状態が一生涯続くと仮定している。実際には地下水の濃度も少しずつ下がっていき、土壌についても汚染物質が溶け出してしまえば当然その瞬間から濃度が下がる。土壌や地下水の汚染が生涯70年の間に簡単にきれいになることはおそらくないだろうと割り切りをして考えているのだと思うが、そこは厳密に言うと先ほどご指摘があった存在量、絶対量が問題になり、どれぐらいのリスクがあるかということになるが、把握するのは困難である。そのようなことを考えると、その割り切りをせざるを得ないのではないかと思う。

【座長】 ダイオキシン類のときにも全く同じ議論があった。確認であるが、ダイオキシン類の検討の際には揮散を無視しており、科学的には実際そうかもしれないが、パブリックコメントでは、その点について何か質問がなかったか。

【事務局】 ダイオキシン類の検討については、幾つかの課題が残っている。揮散についても、全く問題がなくこれ以上検討しないということではなく、現時点では摂食と皮膚接触に着目して基準を定めたものである。課題としてこの先検討しなければならないと考えている。当面は、オーダー的に見ても問題はないだろうという整理である。

【座長】 事務局から説明があったとおり、摂食と皮膚接触の経路から見て、無視できる程度と考えて計算をしたということである。

【C委員】 ダイオキシン類の揮散については、焼却灰の埋立地の周辺住民から問題があるか調べてほしいということがあったが、結果的には問題はなかった。
 先ほど事務局から、土地の利用状況によって基準を変えるべきかどうかという問いかけがあったが、基本的には変えていいのではないかと思っている。利用状況によって土壌の摂食量が決まってくるが、おそらく田舎が多くて都市が少ないと思う。そういう意味で都市と郊外、あるいは工業地域、商業地域、住居専用地域と、こういう種別でも変えていいのではないか、そのほうが実際的ではないかと思う。

【事務局】 そういう議論があるとしても、おそらく実際に摂食量の差に関するデータは取れないだろうと思っている。実際には子供がどのくらい土壌に接しているかということは、田舎と都会など単純に考えることはできず、通常は個人差の方がはるかに大きいということも言われている。また、都会に住んでいても、なるべく土壌に接するよう教育している幼稚園もあれば、土がないような場所もあるので、一概に区分するのは困難である。また、我が国の都市計画について見ても、住居と工場用地などが混在していることが多く、明確に分かれているのは工業専用地域だけなので、土地の用途で区別するのも難しい。したがって、もっと単純に区別せざるを得ず、一つの切り方としては、工場・事業場の敷地と、住居など一般の人が立ち入ることができる土地が考えられる。それから、その土地がアスファルトやコンクリートで覆われているのか、土が露出しているのかということがあるが、それは管理の面から考えたほうがわかりやすいのではないかと思いつつも、なかなか難しく、こうしてご議論いただいている。実際にご指摘の摂食量の差に関するデータが取れればいいが、現在実施している土壌摂食量調査についても、1週間を通して食事の採取や行動状況をメモするなど調査自体が非常に難しく、おそらく個人差のほうがはるかに大きいか、メモなどの記載漏れで差が出る原因を把握できないといったことがあるかもしれない。このような点を考慮の上、ご意見をいただけるありがたい。把握できる範囲でデータを準備したいと思うが、ご指摘のデータはとても難しいというのが率直な感想である。

【座長】 例えば、対象となる土地や特別な健康リスク管理が必要な土地利用の考え方について、ご意見はないか。

【F委員】 現在実施している土壌摂食量調査では子供も対象としているということであり、子供の遊び場などもできる限り有害物質を含有していないことが望ましいと思う。
また、工場、私有地、公共的な土地などに単純に分けることができるかどうかは疑問であり、例えば極端な話、工場の隣接地に小学校や保育園が建っており、グラウンドを持っているということもないとは限らないので、その境界の部分はどうするかということを考えると、そこで基準を簡単に線引きできないのではないか。

【座長】 工場・事業場の敷地など特定の人のみが立ち入ることのできる土地での健康リスク管理については、具体的な方策はあると思う。住居等の私有地での健康リスク管理のあり方と関連して、このような土地で土壌からの摂取が問題になっているケースが実際にあるのか。

【事務局】 例えば工場跡地等で汚染のあるケースのほうが多いと思うが、それが例えば住居に転用される場合にどうなるのか。ある土地だけが例えば重金属等で汚染されているとして、安く買えるほうがいいということでその土地だけはある人が買って、他の土地は汚れていない場合に、そこをどう管理していくのか。逆にいうと周辺に広がらないというようなケースとして、私有地を象徴的に出しているだけであって、現実には管理はできないだろうと考えている。制度的に管理ができるのは、おそらく工場・事業場の敷地内のように別の法体系があり得る場合くらいで、個人の土地については多分管理ができない。そういった土地については、やはり他の土地と同様に不特定の人が立ち入る可能性があるということで、一緒に考えたほうがいいのか、何か別の考え方があり得るのか。委員から、私有地は管理できないので公園などと同様の管理が必要ではないかという意見があればいただきたい。私有地のほうが非常に多いので、その部分をどうしていくかが非常に難しく、その人が汚染を周辺に拡散させないための管理ができなければ、当然何らかの対応が必要になると思う。その辺についてご意見をいただきたい。

【座長】 例えば、工場・事業所の敷地を住居に転用するため売却する場合には、やはり住居として健康的に生活できるような状況にしなければならないというのも一つの手段であるが、そのようなことは可能か。

【事務局】 もちろん制度的にはそうすべきであろうと思うが、仮に家ができてしまった後に汚染が判明し、Aの家だけが汚染されていたというケースについて、どういう管理をしたらいいか。当然管理はすべきであるが、個人の宅地あるいは会社であって、その人が管理できないという場合、どこまで踏み込む理由があるのか。周辺に迷惑をかけなければいいだろうと言われた時にどうするのかをご議論いただきたい。

【座長】 そのような制度を作るためには、例えば住居等の私有地の場合にはこの程度でなければいけないという基準が必要になる。例えば、工場・事業場ではこの濃度を達成していればよかったかもしれないが、もし私有地にする場合にはさらにこの濃度まで浄化しなければならないという基準が必要になる。最終的に制度を作るためには、前提としてそのようなことを踏まえた土壌環境基準を作らなければならない。

【D委員】 多分その点については非常に議論があるところだと思うが、極端な話をすると、汚染の情報が十分伝わっていることが大前提であるが、汚染された土地の制御ができる人と、制御ができない周辺の人とを区別し、制御ができる人については選択の問題だと思う。自分が暴露され、他には暴露がない場合、他の土地の人が暴露されるのは自分では対策ができないので、対策をできる人が対策を行うか行わないか、その人だけが暴露されるということであれば選択の問題だと思う。例えば、ダイオキシン類について魚の濃度がこのぐらいあるというときに、それを食べてはいけないとするのか、それを知りながら食べるのは自由だということにするのか。これはだんだん自由にしてしまう必要があるのだろうと思う。例えば、工場の跡地が汚染されており、地下水は汚染されていない場合、土地の価格が非常に安くなるので買うという選択は当然ある。そこから汚染土壌を掘って持ち出すという場合は問題があるが、次第にそのような形になっていく。そうは言いながら、国民の健康を保護する上で一般的にこれ以上許容できない場合の区別はあるかもしれないが、基本的には選択の問題ではないかと思う。だんだんそのようにしていかなければ、一律に決めることは困難であり、今後はいろいろな選択が出てくるのではないかと思う。これまでは、だいたいこのレベルであれば安全だという数字を示してきたが、情報公開を大前提として、自由に選択できるようにしていく必要がある。もちろん、選択の妥当性を評価できるクライテリアを提示する必要はある。対象となる土地の深さ等については、一般的な場所についてはある程度決められるだろうが、そうでないところはそれぞれに応じて情報だけを提供して、どこまでの深さを調べるかというようなことも選択の範囲ではないだろうか。また、そこに住んでいる人と周辺の一般の人など、調査や対策にかかわることができる人とかかわれない人は区別して考える必要がある。もっと難しいことを言うと、子供たちの権利をどうするのかという大きな問題になるが、とりあえずはそういう整理の仕方があるのではないかと思う。

【B委員】 今のご指摘であれば、公共の土地以外は基準を決めなくてもいいということになるのか。

【D委員】 含有量に関してはそうなる。直接摂取なら構わないのではないか。ただ、その土地が汚染されているという情報を周辺の人が十分知り得なければいけない。その家の土地は汚染されているから行かないという話は当然あるわけだが、そこまで縛るのかどうかというのは議論がある。これまではそういうスタイルではなく、悪い言い方すると行政が安全だと保障するような形である。しかしながら、なかなか保障はできなくなってきているので、その辺のところはこのぐらいの不確かさでこういうことが言えるので選択をしてほしいというような形に徐々に変わっていくのではないかと思っている。

【座長】 しかしながら、許容できる汚染の程度はこの程度だというレベルを設定するという考え方もある。これが基準だと思う。それで、以前にこの工場ではこういう操業を行っており、汚染の程度はこれくらいだという情報が必要になると思う。

【D委員】 周辺にあるのはもちろんそうだと思う。しかしながら、含有量が非常に高い場合、例えば溶出や揮散が問題にならない、影響が外に及ばないということにはならないと思う。その影響は別の形では当然押さえられ、そこだけにとどまって異常に高濃度になっているという話には多分ならないと思う。その辺を詳しく議論すると、例えば封じ込めという対策をすると、非常に高濃度だと残ってしまう。封じ込めているからいいということかもしれないが、一律な基準がいいのかどうかについては議論すべきだと思う。現在は飲料水なども含めて一律の基準として決めているが、飲料水についても、例えばトリクロロエチレンで汚染された場合、飲むのをやめるという基準は作られていない。だから、飲むのをやめるということにならないのである。汚染土壌があった場合、それを自分が口に入れるという観点からすると、汚染されていても口に入れてもいいのではないか、好きにすればいいのではないかということになる。ただ、それが他人に影響を与える場合は非常に問題があるだろう。保健衛生の観点からいうと違うのだという議論が当然あるかとは思うが。

【座長】 土壌の転用を考えた場合には、隣の家ではなく、その次の人がその土地に入るということになるが、それについてはどうか。

【D委員】 最低限必要なのは、情報の公開である。単に濃度がこの程度という情報ではなく、その汚染がどのぐらいの危険性を持っているかという情報が全部公開されているということが必要になると思う。ただし、非常に難しい問題ではあるが、土地の値段がそれによって途端に変わるという問題がある。ただ、土地取引の際には、汚染の情報を提供しなければならないということになるのではないかと期待している。

【B委員】 確かにご指摘のとおり、そのように割り切ってしまえばいいのかもしれないが、ただ測定値やリスクも含め情報の公開がうまくいくことが大前提だと思う。だから、その辺で新たな問題が出るのではないかと思う。

【事務局】 先ほどご指摘があったようなケースは、実際にあるのか。ある人が所有している一戸の住宅地が汚染されている場合、他の人に何も迷惑をかけないなら本人がよければいいではないかという話であるが、そのようなケースは、仮にある工場があってそこが汚染されており、ある一人の人が大邸宅を作るためにその工場を丸ごと買った場合であれば当てはまるかもしれない。しかし、現在各地で起きている事象を見ると、だいたいは集合住宅、あるいは一戸建てを含め分譲されるようなケースが圧倒的に多いのではないか。そうであれば、分譲するときに、一つ一つは汚れていてもいいということに果たしてなるのだろうか。だから、個別のケースについてみると、やはり途中の段階では一度は公的な形で、ある程度一律の基準で対策を判断せざるを得ないのではないか。

【D委員】 多分、土を入れ替えるなど土壌の部分での浄化というのはあると思うが、地下水はなかなかきれいにならない。そのような場合、地下水がきれいになるまで土地は売れないかという議論がある。そうしたときに、どのぐらい土地の価格を値引きをするかという交渉はあるかもしれないが、地下水が汚染されていても売っても構わないのではないか。それと同様のことが土壌についてもあっていいと思う。だから、全部買わなくても、そこを安く買いたいという人がいれば、それを売ってもいいのではないかという意味である。その部分だけ工場できれいにしてから売るということも考えられる。

【事務局】 その中に濃淡がいろいろあるということか。

【D委員】 濃淡があってもいいのではないか。ただ、売る側としては、その一部分だけ汚染されたままで安く売るよりは、全体をきれいにして売ったほうがいいという選択があると思う。自分で庭に何かを埋めて汚染された場合はそのままになるだろうが、汚染の原因が以前にその土地を持っていた工場だということが明らかであれば、賠償を請求するだろう。その賠償をもらっても、自分の土地をきれいにしないということはあり得るのだろう。自動車をぶつけられて修理費をもらっても、修理しないでそのまま乗っているというのがあり得るのと同様に、そのような選択を認めるかどうかという話になると思うが、周辺に影響がなければ、それも一つの考え方ではないか。

【E委員】 そのような考え方もあると思うが、ある基準値以上は汚染してはいけないという考え方も、やはり必要ではないかと思う。特に、これから新たに汚染を引き起こす可能性のあるようなところには、やはりそのような規制というのは必要ではないか。

【D委員】 今ほどご指摘のあったとおり、行政として国民の健康保護を図る責任があるという考え方から、条件を作るというのはあり得るのだろうと思う。

【座長】 10年ぐらい前に、都内の某大学が1万坪ぐらいの土地をマンション用地として不動産屋に売った。化学物質を使っていたと思うが、汚染はどうだろうか。

【事務局】 詳しくは把握していない。

【座長】 化学物質の管理は適正に行われていたであろうが、いい事例だと思う。

【B委員】 大学の敷地から、汚染物質が出てきたこともあるらしい。

【D委員】 某大学の周辺で地下水汚染があり、調査したところ穴を掘って不燃性のトリクロロエチレンを燃やしていたということもあった。

【座長】 これから考えなければいけないという問題点はかなりクリアになったと思うので、今日のご意見をなるべく早く事務局で整理して、次回3月8日までに各委員に一読いただき、考えをまとめていただいた上で、引き続き同様の内容を議論したいと思う。

【事務局】 資料3-2について、各委員のコメントをいただけるとありがたい。リスクについては、次回までにもう少し具体的なものを用意させていただき、引き続きご議論いただきたいと思うが、資料3-2はこれ以上変わらないと思うので、この場でコメントをいただきたい。

【座長】 事務局として特にコメントがほしい点は何か。

【事務局】 対策の発動については別途ご議論いただくとして、その対策の目標となる数字についてご意見をいただきたい。

【C委員】 知っておきたいのは、環境中の土壌の濃度分布である。それをもとに考える必要がある。

【事務局】 汚染源がないという前提であれば、いわゆるバックグランドの土壌ということで、一般的な幅をつかんでいる。これは原因がよくわからないものも含まれているが、とりあえずは汚染源のない場所での幅である。それ以外の部分は何らかの原因があるということで、鉱山からの流出や工場跡地などがあるだろうが、そのようなケースはバックグランドの幅の中にある程度入り込んでいるという前提で、事務局としては整理をしている。

【C委員】 懸念しているのは、目標となる数字がかけ離れて高過ぎるような場合がないかということである。

【座長】 カドミウムをイメージしておられるのか。

【事務局】 あくまでも、これは土壌の直接摂取を考えるための数字であって、その他は一切考慮していない。米を経由する場合は、明確な数字が別の法体系であるので、ここでは考慮していない。あくまでも直接摂取のリスクとして、この数字ならこの程度だという目標を考えていただきたい。

【C委員】 この点について、パブリックコミュニケーションで理解を得る必要がある。ここまでは汚染してもいい、土壌の直接摂取という点では問題ないということになるのを非常に心配している。

【座長】 農用地の場合の濃度とは、かけ離れて高い値になってしまうかもしれないので、その点は注意が必要である。

【事務局】 農用地は別に議論するとして、平成11年度の現地調査から求められる含有量参考値については、バックグランドの参考となるガイドライン的なものである。土壌の濃度レベルは、これから測定データの蓄積が増えればより明らかになるが、このような数字を目安にして、明確に説明すべきだと思っている。

【座長】 例えば、この判断基準を設定するに当たって、TDI等の許容範囲ということについてご意見はないか。

【B委員】 TDIの何%でいいのかという部分については、かなり難しいだろうと思う。物質ごとにパーセンテージが違う場合は、おそらく理解されにくい部分が出てくるだろうと思う。ただ、例えばこれを一つの数値(%)にそろえてしまうというのも、非現実的であるとも思う。この辺のところはわかりにくい部分だろうと思う。例えば水銀などは食物がほとんどであるが、おそらくこれも非常に幅が大きいだろうと思う。先ほどの議論では、事務局としては平均値で見ることを考えているということだが、例えば水銀や砒素はおそらく食生活に非常に幅があるので、おそらく現実にはTDIを超える人が出てくると思う。それは食物で考えればいいのかもしれないが、そういう割り振りをした場合、TDIを超える人にとっては本当にいいのか。特に小さな割り振りをする場合はいいのかもしれないが、少し大きくなると問題が出てくるのではないかと思う。

【座長】 確かに砒素や水銀の場合には、それで超えてしまう場合もあるかもしれない。【E委員】 特に水銀のトータル一日摂取量は人によって非常に幅がある。水銀の一日摂取量というのは、ほぼ100%がメチル水銀である。土壌汚染の対象になるのは、おそらく無機水銀であり、全然違うものだと思う。その辺をどう考えたらいいか。

【B委員】 設定の根拠となるものは何かあるか。

【事務局】 現時点では、根拠となるものはない。一般的には、食品8割ぐらい、飲料水が1割ぐらいで、残りは大気と土壌でシェアされている。一方で、ダイオキシン類の場合は、それよりも高い割合を土壌が占めているという現状も踏まえながら考えていく必要があると思っている。ただ、土壌が1%よりも小さいというのは特別な例だと考えており、今後もし有害物質が増えてきたとしても、そのようなことは少ないのではないかと思っている。カドミウムと総水銀については、その理論最大摂取量についてもまだ問題が残っているが、砒素や鉛の例をもとに考えていただきたいと思う。ただ、鉛や砒素も自然的な要因で高い場所があり、自然的要因で超えることもあり得るので、この点も考慮しなければならないので、単純ではない。

【B委員】 それは物質ごとのバックグラウンド値と目標の比にも表れるだろう。

【D委員】 自然的要因については、おそらく目標となる基準の適用対象外になるのだと思う。基準は対策の目安となる数字なので、そういう意味では自然的要因のところには適用せず、全く別の管理体系の中でリスク管理をしていかなければならないものとして整理すべきたと思う。ただ、先ほどの議論でばらつきによって超えてしまうという話があったが、それがどのぐらいになるのかということは、やはり把握しておく必要があると思う。非常に難しいとは思うが、食物経由では実際にどのぐらいの幅があるかというデータがあれば、それをもとに検討してみることが必要ではないか。それを踏まえ、ある程度超える人はいるかもしれないが割り切るということにしていかなければならないのではないか。ダイオキシン類はまさにそのようにしており、そういう整理をしていく必要があると思う。

【座長】 例えば砒素の場合、食物経由だとすると、水銀とは逆に無機砒素は問題があるが、有機砒素は問題は少ない。逆に土壌の場合、総水銀で例えば毒性レベルからのメチル水銀換算ということを考えると、そんなに小さな数値でなくてもいいのではないかと思う。例えば砒素の場合、食物経由では海苔などの海産物に含まれている有機砒素は無視して計算しているので、土壌の場合でも、水銀などの場合にはその点を考えることも必要なのではないかと思う。

【B委員】 確かに理論的には座長のご指摘のとおりだと思うが、例えば、その観点で吸収率などを考えて、10倍でもいいという考え方もあり得ると思う。ただ、揮散の問題を考えると、それだけではいけないところも出てくると思う。それから、土壌中で毒性が変わる可能性はある。要するに、無機水銀がメチル化される可能性もあると思うし、微生物によって蒸気になってしまうという可能性も両方あり得るのだろうと思う。そこまで考えると非常に難しくなってしまう。

【座長】 水銀の場合には、安全度を考えると無機と有機の両方を一緒に考えた方がいいということか。

【B委員】 安全性から考えればそうだと思う。先ほど食物については大分差があるという議論であったが、多分水銀の場合には1桁ぐらいの差がある。髪の毛の水銀を調査すると、食物の水銀が反映されていると考えられるが、同じ日本人でも、魚を食べない人は0.5ppm程度であるが、魚を食べる人は7ppm程度である。10人ぐらいを対象に調査しても、10倍ぐらいの差があるので、日本の人口全体を考えるとかなりの差があると思う。特に漁村などでは、おそらく10ppmを超えるような人も当然いると思う。

【座長】 鉛については、中枢神経の発達への影響ということで、特に米国では安全量を非常に低くしいるが、鉛のTDIは中枢神経の発達に及ぼす影響も考慮に入れた値か。

【B委員】 参考資料3-1のTDI等に関する情報で、感受性の高い乳幼児の値を使用したとされている。25μg/kg/週だから、7で割ると3.5程度である。

【座長】 非常にリスクを高く見て計算した値であり、米国のある種の疫学データをもとにしているのだろう。

【B委員】 EPAでは、93年頃に米国を横断的に血中の鉛を測定していたので、それをもとにしているのだと思う。

【座長】 この値をどうとるかによって国際的な問題にもつながるので確認したいが、これは米国のものか。

【B委員】 注釈ではWHOとなっているが、そうか。

【座長】 WHOの会議の資料だと思う。たいてい各国からデータを持ち寄って議論している。WHOの食品の会議か、水の会議か。カドミウムはWHOの値か。鉛と砒素のTDIの値は特に問題はないか。

【B委員】 11年度の含有量参考値再評価報告書を見ると、鉛についてはRFDがない。それでWHOの値をとっている。もしかするともっと低くなってる可能性があると思うので、IRISをもう一度調べたほうがいい。

【座長】 米国では水道の鉛管がまだかなり残っているので、水の鉛の量で大きな問題を起こすかもしれないということで、まだEPAで検討中なのかもしれない。

【D委員】 飲料水、水道水の基準が0.05mg/Lであり、これは改めて0.01mg/Lに移行することになっている。

【事務局】 将来的な目標ということだが、その目標が目標のままになっていると思う。

【D委員】 92年の水道水の基準か。

【座長】 そうである。92年であるから、もう10年近くがたっている。
 他に何かないか。なければ各委員には資料を再度読んでいただき、考えをまとめておいていただきたい。進行を事務局に返す。

【事務局】 次回、第4回は3月8日14時からを予定している。場所は合同庁舎5号館別館の共用第11会議室を予定している。本日いただいたご指摘について確認した上で、資料3-3で掲げた事項について、次回も引き続き具体的にご検討いただきたい。資料3-2についても、さらにご指摘の事項を確認し、間に合えば新しい情報を出させていただいた上で、ご議論いただきたいと思っている。

【座長】 検討のポイントをしっかり書いてもらったほうがいい。

【事務局】 これをもって、第3回検討会を終了させていただく。

-以上