環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌の含有量リスク評価検討会

土壌の含有量リスク評価検討会(第2回)会議録


1.日時

平成12年11月24日(火)10:00~12:00

2.場所

環境庁第1会議室(22F)

3.出席者

(1)委員
林 裕造 座長
大野 泰雄 委員 櫻井 治彦 委員 佐藤 洋 委員
中杉 修身 委員 平田 亜古 委員 米谷 民雄 委員
吉永 淳 委員
(鈴木 庄亮 委員、永沼 章 委員は欠席)
(2)事務局
遠藤 保雄 水質保全局長
伊藤   洋 水質保全局土壌農薬課長 他。

4.議題

(1)これまでの取組状況について
(2)土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価について
(3)その他

5.配付資料

資料2-1 土壌の含有量リスク評価検討会委員名簿
資料2-2 土壌中の含有量リスク評価検討会(第1回)議事録(案)-委員限り
資料2-3 土壌中の含有量リスク評価検討会の公開の取扱いについて
資料2-4 土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価の検討のための調査研究の進捗状況について
資料2-5 土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価の検討について
- 暴露アセスメントのシナリオ(案) -
(参考資料)
参考資料2-1 土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価の検討の進め方(第1回検討会資料1-5)
参考資料2-2 「土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会」の開催について

(公表資料)

6.議事

【事務局】 定刻となったので、ただいまから土壌の含有量リスク評価検討会第2回を開催させていただく。
 それでは、まず配付資料の確認からさせていただく。
(配付資料を確認)
 資料2-3の検討会の公開の取扱いについて確認をさせていただきたい。前回、先生方でお決めいただいた内容を記述している。まず、会議そのものは、原則として非公開としている。また、会議資料については、原則として公開する。ただし、非公開を前提として収集したデータが記載されている資料、関係者と調整中の資料など、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれのある場合、または特定の者に不当な利益、もしくは不利益をもたらすおそれのある資料は座長の判断に基づき委員限りである旨を記載し、非公開とする。それから会議録は、出席した当該会議の構成員の了承した後、公開する。公開する場合は、発言者の氏名等を伏せて作成する。ただし会議録を公開することにより、公正かつ中立なということで問題があると座長が判断した場合には、会議録を公開しない。
 以上が今回の会議の公開の取扱いであり、前回の確認である。

【座長】 まず議事録の案の確認であるが、事務局から簡単に説明願いたい。

【事務局】 お手元に議事録(案)についての事務連絡をお配りしているが、再来週の月曜日12月4日までにファックス又は郵送でご返答願いたい。

【座長】 よろしくお願いする。
 議事次第に従い議事を進めるが、まず事務局から説明事項があるとのことなので、説明願いたい。

【事務局】 議事の前に時間いただきご報告させていただく。
 参考資料2-2の「土壌環境汚染対策の制度の在り方に関する検討会」の開催についてというタイトルの資料を見ていただきたい。先週の17日(金)に大臣から記者発表した件であり、新しく環境庁にこの検討会を設置するということである。
(参考資料2-2に基づき説明)
 本検討会では、土壌中の有害物質の含有量のリスク評価について検討いただいているが、この成果を「土壌環境汚染対策の制度の在り方に関する検討会」に生かしていきたいと考えている。土壌汚染がどのような状態にあるかということを踏まえ対策が始まるわけであり、本検討会で検討を十分にしていただいた上で、具体的にどのような制度が考えられるかを新しく設ける検討会で検討していきたいと思う。
 スケジュールとしては、今のところはっきり決まっていないが、できるだけ早く本検討会の成果を、制度の在り方に関する検討会に生かしていきたいと考えている。

【座長】 何か質問はあるか。
 一つ聞きたいのは、土壌環境基準に適合していない事例がたくさんあるということであるが、何を基準としていたのか。

【水質保全局長】 今までは、地下水など水に溶出することに着目した基準で対応していた。ただ、規制改革委員会等の指摘のとおり、土地の用途の応じた形での基準を考える際には、必ずしも溶出基準だけで適切かどうかが問題となる。ドイツの場合は、住宅用地や産業用地、あるいはその他いろいろな土地での多段階の基準が設定されている。そのような場合には、含有量による基準を考えていかなければならないのではないかと考えている。その前例としてダイオキシン類の基準があるが、本検討会では、他の有害物質についても検討いただいているところであり、これから開始する制度の在り方の検討会と、車の両輪の関係になるということを説明させていただいた。

【座長】 溶出基準というのは二次情報による基準であるが、直接の一次情報による基準を考えてみたいということか。

【水質保全局長】 そのとおりである。

【座長】 ほかに何かなければ、議事次第に従って進めたいと思う。第1のこれまでの取組状況について事務局から説明願いたい。

【事務局】 資料2-4に基づき説明させていただく。
(資料2-4に基づき説明)

【座長】 何か質問はあるか。

【A委員】 土壌の摂食量調査について質問するが、親子の調査は食べ物や大便を1週間分まとめて調査し、それを補うために成人の調査で毎日毎日の詳細な調査を実施するということか。

【事務局】 そのとおりである。

【B委員】 土壌の摂食量調査で、食品を食べる量と土壌を食べる量は、圧倒的に量が違うので、土壌にあって食品にほとんどないという項目が必要だろうと思う。両方に存在してしまうと、食品と土壌の量の違いに紛れてしまい解析しにくいと思うが、ここに提示されている項目についてはどのような状況か。

【事務局】 ご指摘のとおりであり、欧米ではケイ素、チタン、アルミニウムを使って調査を行っている事例があるが、これらについては食品と土壌の差がないのではないかという委員のご指摘があった。イットリウム、ジルコニウム、ウラン、ハフニウムは、食品と土壌の差が大きそうなので新たに選定した元素である。

【座長】 今のは非常に重要なことだと思う。
 次に、土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価についてを議題にしたい。事務局から説明願いたい。

【事務局】 資料2-5に基づき説明させていただく。
(資料2-5に基づき説明)

【座長】 事務局からの説明によると、本日、ご検討いただきたい事項は、資料2-5における論点1から6についてであり、その他に委員からさらに追加の論点があれば、それについてもご検討いただきたいということである。時間が非常に限られているので、論点1つについて10分程度を目安にしたいと思う。
 また、ただいまの事務局の説明をまとめると、本日の議論の目的は、まず第1番目に、現時点で考えられる論点の中で考えなければいけない事項を洗い出すということである。それから第2番目に、当面半年程度で追加調査が可能なものと困難なものとを整理したいということである。それから、当面半年程度で準備可能な資料によって、複数の選択肢の提示も含め、各論点に対して結論を取りまとめることができるかどうか整理したいということだと思う。個別課題ごとの詳細な議論は、次回以降に順次実施していきたいと思う。それでは論点1から順番に進めていきたいと思う。全体で60分から70分程度で、まず最初に論点の1についてご意見をいただきたいと思う。

【A委員】 暴露経路をどうするかという話であるが、参考資料にある「含有量参考値再評価業務報告書」を取りまとめる際には、皮膚接触による皮膚吸収をほとんど考えなかった。一般に自然に存在するような土地での重金属を考えるとすれば、皮膚接触による皮膚吸収は余り考えなくてもいいと思う。割合としても非常に低いだろうと考えられる。
 ただ、事務局の説明を聞いていると、人為的に汚染された土壌を考えた場合に、例えば重金属の化学形態として比較的皮膚から吸収されやすいようなものによる汚染があった場合どうするのだと言われると、皮膚吸収を考えていないというのは成り立たない。だから、人為的な汚染、例えば工場や廃棄物による汚染を考えるとすれば、皮膚吸収を考えなけばいけない。環境庁ではそのように考えているようなので、だとすれば、皮膚吸収をある程度考える必要がある。ただ、実際問題として、有害な化学物質の中で皮膚吸収されやすいものは、そんなにないだろうという感じがする。だから、皮膚吸収は考えるけれども、土壌からの皮膚吸収を考えるという方向からいくと非常にやり方が難しいので、化学物質の中でかなり皮膚吸収されて中毒を起こしそうな物質があり得ると同定されれば、皮膚吸収を考えるべきだろうと思う。

【座長】 貴重な意見だと思う。この点について他に何かご意見はあるか。

【B委員】 皮膚吸収を考えた場合に問題となる含有量濃度が、ほかの経路を考えた場合に問題となる濃度よりはるかに高いだろうということで無視できるという話に多分なるだろうと思う。だから、皮膚吸収を考えた場合に問題となる含有量濃度について、出せるものであればオーダーぐらいは出してみる。それで、実際に少し不確かな数字であっても、例えば1けたぐらい変わっても、他の経路を考えた場合の濃度に比べたらはるかに高いという感じで整理をしていくのがいいのではないかと思う。

【事務局】 文献調査をしてみて吸収率のデータがなかった場合に、類推という方法をとって、とりあえず数字をまとめてもよいのかどうか。多分、現実にデータがないものが出てくるのではないかと思う。データがあるものについては、一番高い数値から少し安全を見るということができるが、データがなかった場合に試験をするのは非常に難しいと思う。それまでの間は、例えば皮膚吸収のある他の重金属のうち最も吸収されやすいものの吸収率を用いて仮の計算をするなどの方法でよいかどうかという方向を出していただけるとありがたい。先ほどのご指摘のとおり、化学物質の中で皮膚吸収のありそうなものを調べるのはできると思うが、多分試験結果がないのではないかという懸念もあり、その場合の扱いとしてどんな方法があるのか、ご示唆いただけるとありがたい。

【A委員】 具体的な話になるとかなり難しいと思うが、例えばアルキル鉛のようなものは多分皮膚吸収があると思う。そうすると、汚染土壌が皮膚に付着したとすると、やはり皮膚吸収も考えなくてはいけないという話になると思うが、ただ、そういうケースが実際にあり得るかどうか。アルキル鉛でなくてもいいが、ほかに重金属の化合物の中で皮膚吸収されるようなものが土壌汚染しているとしても、かなり可能性としては低いと思う。いろいろ文献調査していく中で、皮膚吸収で中毒を起こし得るようなものは、幾つか出てくると思うが、かなり少ないと思う。しかしながら、それで土壌の中に含まれる重金属の化合物の全てを類似で考えてしまうと、かなり厳しい数値を出さなくてはいけないという結果になると思う。だから、今の質問に答えるのはかなり難しく、数値のあるもので類推をしてしまうとすると、かなり厳しい数値にならざるを得ないというのはある程度推定がつくと思う。かといって、それは特殊な例として削ってしまうのか、あるいはその何分の1かにするのかというのも難しい問題だと思うが、ただ、私は特殊な例として扱ってもいいのではないかという気はする。

【C委員】 存在形態としてどういうものがあるか、それに基づいて判断すべきだと思うが、やはり評価しなければいけないとなった場合は、どうしても微量での実験というのは吸収率が少なくてやりにくいと思う。インビトロでいろいろな方法が開発されているので、それに基づいて、類似した形態のものと比較して相対的な吸収率を求めるという方向がいいのではないか。ただ、OECDのガイドラインでまだインビトロの皮膚吸収試験というのは確定されていない。まだ十分確認されていないことが原因であるが、そういうことで絶対的な吸収率を求めるのにはまだ問題がある。ただ、類縁した化学物質の中で相対的に比較するのは、結構可能ではないかと理解しているので、インビトロなら若干役に立つのではないかと思う。

【座長】 ただいまのご意見をまとめると、従来までの既存データとOECDのインビトロのモデルなどを使うと、物質によってどの程度の皮膚吸収率があるかのランク分けができるかもしれないので、それに従ってやった方がいいのではないかということになる。多くの場合は吸収しないことが多いと思うが、全てを例えばアルキル鉛のように吸収率がいいもので類推すると、これはかなりシビアな評価になってしまうのではないかということだと思うが、その辺について何かお考えをいただきたい。

【D委員】 吸収率の程度を予測する指標の一つの可能性としては、脂溶性の程度である。それだけで処理していいかどうかは、いろいろ難しい点があるかもしれないが、水溶性だけでは余り吸収されないと思う。有機溶剤などのように、脂溶性であって、水溶性のものが一番よく吸収されると言われているが、そういう割り切り方もあるのではないかという気がする。

【座長】 急性・亜急性毒性の影響の観点、それから子供などある特定の期間における短期・中期的な暴露の問題について、何か意見はないか。

【D委員】 カドミウムなどは、極めて生物学的半減期が長く、現在問題になっているような基準は40歳、50歳になったときに最もボディバーデンが上がったときでも安全なようにという考えで決めている基準なので、短期・中期暴露の影響を特段考える必要はないことは明らかだと思う。一方、鉛は、子供の吸収率が極めて高く、しかも脳が非常に感受性が強いということもよくわかっており、アメリカでも子供の中毒がいっぱい起こっている。けれども、現在の国際的に認められている基準は、子供の時期を考慮した基準であり、確認する必要はあるが、資料にも明記してあるとおり幼児や子供のために確定された値である。

【座長】 食品については、そのようになっている。

【D委員】 だから、このような基準を使う限り、特段特定の時期の影響を考慮する必要はないと思う。
 それともう一つ、汚染土壌の上に30年、非汚染土壌の上に40年というのは、ダイオキシン類のような極めて生物学的半減期が長いものであったからこそ、トータルに考えるときに、こういう配分を考えることによって、より精度を上げようとしたわけであるが、他の生物学的半減期がそんなに長くないものについては、こういう暴露期間について配慮する必要はほとんどないのではないかという気がする。これは実際計算してみないとわからないが、どうか。

【B委員】 汚染土壌の上に30年、非汚染土壌の上に40年という話は、汚染土壌の上に住むあるいは生活するのが30年程度で、人は30年程度経つと移動するだろうということだと思うが、人によっては70年、一生涯移動しない場合も当然ある。1日の間で動くことをどう考慮するかはあるが、そういう意味では、平均的な人で見るのか、高暴露を受けるような人に対して配慮するのかというのは、一つのポイントになるかと思う。
 それと、汚染土壌の上に30年、非汚染土壌の上に40年といったときに、非汚染土壌といっても、今回検討しようと考えている物質は、全くゼロというわけではないことをどのように扱うかというのは、もう一つの問題として位置づけられる。これはダイオキシン類のときに、どのように扱ったのかわからないが、一つの問題になってくるのではないかと思う。
 論点2に入ってしまうが、土地利用で異なった基準をつくる必要があるかどうか。これは、もう一つ違った観点から議論ができるのではないかと思う。ダイオキシン類の場合には一律の基準をつくったが、一律の基準にしたときに、それが非常に大きな負担になることがある場合にはケース分けをして基準をつくり、ほとんど問題にならない稀なケースでしかないのであれば、あえてそこは土地利用によって分ける必要もないのかもしれない。そういう視点からも、議論が出てくるのではないかと思う。土地利用による科学的な根拠の議論がかなり難しい場合には、その辺も踏まえて考えていく必要があるのではないかと思う。

【座長】 論点2に入ったので、論点2について何かご意見はないか。

【D委員】 当然、子供の場合、鉛が最大のポイントになるが、JECFAが1986年に定めた鉛の基準が幼児や子供のことも考慮して確定した数値であるということが事実であるとすれば、暴露期間を分けて類推することは必要ない。もし、それが非常に厳しい数値であって、適用することが難しいというようなケースであれば、また別に大人のための健康上の基準を計算して、別な取り扱いが必要になるかもしれないが、データを見たところでは、そんなに鉛の汚染はないようなので、これを全地域に適用していいのではないかと思う。
 先ほどの30年と40年というのは、ダイオキシン類の場合、非常に慢性暴露であるから平均的にはこの程度の住み分けであると仮定するということで、こういうことを考慮すると実際は少し緩くなる。そういうことを考えて、他のものを緩めるということの妥当性はないと思う。

【A委員】 やはり30年、40年に分けるというのは、重金属の汚染を考えた場合、土壌中にもともとある物質なので、分けて考える必要はないだろうと思う。汚染の定義というのは問題であるが、人為的な汚染があるにしろ、ないにしろ、何らかの格好で重金属が土壌中に入っているのは当たり前の話なので、そういう意味では暴露期間を分ける必要はなく、70年なら70年でいいと思う。
 それから鉛について、短期、中期の暴露、特に子供の影響ということであるが、これもほとんど考える必要はないというか、既に考慮に入っていると考えていいだろうと思う。一般に重金属の場合には半減期が長いわけであり、蓄積性の方が大きな問題になるだろうと思う。
 この鉛の話というのは、土壌摂食量の調査にもかかわるが、子供の行動を見て、異食症というような明らかに問題がある子供以外に、通常に生活している子供の中でかなり土壌摂食量の幅が広かったとしたら、これは考えなければならないと思う。だから、現在計画されている土壌摂食量調査の中で、例えば100mgあるいは200mgと結果が出てもいいが、普通に生活している子供の中で飛び抜けて土壌を食べる量が多い子がいたら、これは考慮しなければいけないということで、その調査結果を見てから態度を変更してもいいのではないか。今の段階では余り考慮しなくてもいいのではないかと思う。

【E委員】 多分、幼稚園で行われている調査なので、異食というわけではないが、異物を口に入れる時期はもっと早いはずである。べろべろなめたり、砂場に子供を置いておくと口の中に何か入れるのは、やっぱり幼児期では少ないと思う。また最近は、例えば月齢が大変低い時期に日光浴を余りさせなくなってきており、土で遊ばせるのも前ほどしなくなってきているので、暴露の機会は少ないと思う。

【座長】 そうすると、土壌摂食量調査の結果を待って、もう一度考えてみるということでよいか。
 先ほどの土地利用により異なった基準値を検討する場合の科学的根拠について、ご意見はないか。

【B委員】 先ほどの負担の議論を加味すると、基本的に土地利用によって異なる基準をつくっていかなければならないものが出てくると思う。土壌の場合、特に浄化するのに非常にコストがかかるので、環境基準とするのか、あるいは制度をこれから検討して浄化を義務づける基準という位置づけにするのかの整理が必要だが、浄化の基準を考えるときには、ある程度土地利用などを考える必要が出てくるだろう。それをどのように科学的に決めるかというと、単に暴露がどう違うかという議論を積む以外のものはないだろうと思う。
 そういう意味でいくと、深さをどうするかという話が、もう一つ議論として加わってくるだろう。土壌環境基準を適用するのに、単に面的な土地利用がどうであるかということとともに、深さ方向についてどのように適用されるかという議論が出てくるだろう。例えば土壌摂食というと表層のごく一部、もう少し言えば、巻き上げではそれよりもさらに表層になり、農用地であれば耕作範囲となる。また、地下水汚染という話であれば、これは一応全部の深さ、それから平面的にも全部という話になるが、実際には重金属などを見てみると、地下水面から離れた場合に適用する必要があるかどうかは、もう少し議論していく必要があるだろう。そういう意味でいくと、科学的な根拠というのは、暴露がどうなるかを考えるしかないが、実際には多分土地利用、あるいは深さも含めて、3次元的に何か基準をつくっていくような話になるのではないかと思う。

【事務局】 今、ご指摘いただいた暴露という考え方について、事務局としては、例えば作業時間とか、大人だけしかいないような場所だとかいうこと以外に思いつかない。もし科学的にこういう考え方であれば、例えば10倍ぐらい緩い基準を考えられるとか、あるいは作業時間だけだと、どう見積もっても2、3倍とかいうことがあれば、ご意見をいただきたい。居住している部分もあるので、例えば労働時間8時間は緩くなっても、あとの16時間を計算すると高い暴露がないなど、暴露という観点で見て、土地利用ごとに、例えば工場地域とかでは、こういう考え方だから少し緩くしてもいいのではないかというようなことがあるかどうかご意見をいただきたい。

【座長】 先ほどの30年、40年といった期間、あるいは子供の問題は、その物質の健康影響あるいは体内動態の特性によってかなり決められることもある。逆に、土地利用によって異なった基準値案ということで、もし工業用地が割合軽いとすると、昔から工業用地がだんだん外へ移っていくことにより土地利用ができなくなってしまうことが考えられるので、汚染の濃度を低下させることが人為的にできやすいものと、できにくいものがあるとすると、土壌汚染への対応がしやすいもの、しにくいものということで、かなり取り扱いが変わってくるのではないか。この点について事務局の考え方はどうか。

【事務局】 今のご指摘の対応のしやすいものというのは、対策がしやすいということでとらえたらよいか。

【座長】 対策がしやすいということである。あるいはもう少し言うと、濃度の上がったものを何とか減らすことができるような対策、そういうものがとりやすいようなものと、とりにくいようなものということである。リスク・リダクションがやりやすいものとやりにくいものと、物質によってかなり違いがあるのではないかという感じを受けた。

【B委員】 土地利用について、一つの考え方として、例えば工業用地の中であれば、その中に70年という話は必要ない。これはせいぜい20歳から50年ぐらいの暴露という考え方で、それ以外の期間はバックグラウンドというような整理の仕方ができる。ただ、それは土壌の表面の状態がどうかということがあり、被覆されていれば暴露は全くないということになる。被覆したところをはがして、掘り起こして土を持っていくということについては別なことを考えなければならないが、摂食や皮膚吸収という暴露でいえば、表面が被覆されていれば、適用しないということにできると思う。

【A委員】 私は、余り土地利用によって基準を分けない方がいいのだろうと思う。それはなぜかというと、土地利用というのは、長期的に見れば変わる可能性がかなりあるからである。そのときは、今ご指摘があったとおり、対策がとりやすいもの、あるいはとりにくいものがあるのかどうか、大部分がとりにくいのではないかと思われる。そういう理由で、余り利用によって変えない方がいいだろうと思う。もし、そういうことを考えるのだとすれば、むしろ土地を被覆してしまって、その上に工場を建てるなどの救済的な措置などを考えておいて、基準そのものとしては一律のほうが、長期的に見た場合にはいいような気がする。

【D委員】 これは工場の場合を考えてみると、現在工場である場合、そこで例えばカドミウムを使って何かを生産している。それにかかわっている労働者は、特定されており、きちっとコントロールして、別の基準で動かすことは可能だと思うが、そこにいるほかの従業員は特段カドミウムに暴露しているという意識はない。そうすると、一般の人と全く同じように扱うべきなのかどうなのかという問題だと思う。これはかなり厳しいかもしれない。実際どういう数値になるかわからない。被暴露者と思われる人についてカドミウムの測定をしても、全然暴露していないというか、血液のカドミウム濃度は上がらない。鉛も同じように、その工場にいる被暴露者と思われる人はやはり上がっていないという実態があるにもかかわらず、こういう基準からいけば、やっぱり問題だということになる可能性があるが、そこをどういうふうにするか。その場合に考えられることは、そのように汚染土壌の上にいる人は、直接生産にかかわっていなくても、食品から余分に入らないように注意するとか、あるいは時々モニタリングするとか、そういう配慮をしないといけないだろうという気がする。それを前提として、基準値がもう少しオーバーしていてもいいとするかどうかということである。

【B委員】 先ほどの一律でやるべきという話は確かにそのとおりかもしれないが、実際問題として厳しくなると分けて基準を設定することも検討の対象となってしまう。これは対象で分けて対策を行わなければならないという話は、環境基準と対策の発動要件が現在のところ一緒になっているので、その問題が解決しない限り、ある程度考える必要がある。例えば土地利用が変わったら、当然そこで変更後の土地利用に応じた基準がかかるのが当然の原則である。例えば多くの場合、土地改変のときに調査を行うことが原則になっており、工場用地が変わり、例えば表面被覆が外されるときには用地を調査するので、そういう意味では、そうでない状態のときには、現在の土地利用による基準で現在はいいのではないか。もちろん選択肢としては、将来の土地利用を考えて事業者や自治体で対策をやるというのは全然妨げないということになると思うが、それは選択の余地で残しておいてもいいのではないかと思う。

【座長】 今回、結論を出すということではなく、問題点を洗い出すということなので、次に半減期の調査をどのように活用するかということも含めて論点3に入りたいと思う。

【D委員】 これは物質ごとに考えるべきことだと思うが、その物質についての暴露に関する基準、JECFAから出している基準の性格によると思う。それはどういう情報からその基準がつくられているかによって決まることであって、重金属でも非常に半減期の短いのもあるし、もっと長いものもあって、おそらく両方ともそれぞれに応じた基準ができていると思うので、確認は必要だが、その物質の半減期が長い短いで、それほど考え方を変える必要はないのではないかという気がする。

【C委員】 基本的に半減期の情報をもとに今までの毒性評価や、これからやろうとする毒性評価に問題がないかどうかを確認することが重要である。もちろん人のデータがあれば、動物実験のデータより非常に有効であるが、情報が集まるかどうかわからないので、今までの評価のあり方で問題がないかどうかの確認になるのではないかと思う。
 それと先ほど暴露期間のところで出てきたが、汚染土壌の上に30年、非汚染のところに40年ということでいいのかどうかという確認も、このような考え方になるのではないかと思う。
 追加になるが、先ほどの暴露期間の論点でいろいろ意見が出てきたときに、はっきりさせておいたほうがいいと思うのが、高感受性の時期である。子供の時期や胎児期など、高感受性の時期があるわけなので、そこの時期も念頭に置いて暴露や毒性を評価した方がいいのではないか。そういうことをメモでどこかに入れておいたほうがよいのではなかと思う。

【座長】 半減期については、今までの調査結果をまとめて、評価の方法、半減期が長いか短いかによって変えなくてはいけないかどうかを従来の個々のデータに基づいて確認することが必要だということだろう。
 例えば、ダイオキシン類の場合は、1990年頃は必ずしも半減期が非常に長いということを考えないで評価していた。ところがそれでは問題があるので、95年頃には半減期が非常に長いことを考慮した評価になった。ダイオキシン類の場合には確かに半減期の長さによって考え方を変えなければいけないということだったが、例えばカドミウムなどについてはどうか。

【D委員】 もちろん半減期そのものは非常に重要であるが、それを考慮した上で基準ができているならば、暴露でさらに半減期の考えを入れ、取り扱い方を変える必要はないだろうと思う。

【座長】 そうすると、取扱いは一応原則的には何か共通のものを使って、その物質の特殊性によって特別のものをつくっていけばいいという考えか。

【C委員】 そうである。

【F委員】 半減期の取扱い方に関しては、これまでの議論のとおり、私も今回の対象4元素に共通のものを使っていけばいいと思う。

【座長】 論点4の含有量参考値について、ご意見はないか。

【事務局】 論点4は、最初に各委員からいろいろご意見をいただいたので、追加があればお願いしたい。

【座長】 そうすると、論点5に移らせていただく。論点5について事務局で一番問題にしているのは、どの点か。

【事務局】 論点5については、例えばTDIがよりどころになるので、最新のTDIが決定されているという前提で、最終的に直接摂取の土壌の評価をする、例えば含有量基準と表現すれば、その基準は一体どのぐらいTDIの割合を占めるとしたらいいのか。それは単に計算上の話であるが、例えば食物から8割程度という一般な考え方もあれば、飲料水は10%程度だという話もある。例えば10%程度しか残りがなくて、大気の問題を考えると、さらにまた減ってくるという中で、土壌について一律に数字を決めることができるのであれば、とのぐらいの数字があるのか、あるいは一律が非常に難しいのであれば、どんな考え方があるのか。ダイオキシン類の場合はもっと難しい観点からいろいろご議論いただき、まとめているが、それでもいろいろと数字が動く可能性もあるので、どのような考え方で整理すればいいのかということについてご意見をいただきたい。特にここが事務局としては一番問題としているところで、例えば一番単純なのは、何%と言っていただければ非常に簡単ではあるが、この点についてご意見をいただきたい。

【米谷委員】 ここで非常に気になっていることがある。例えばここで取り上げているカドミウムや水銀の場合は、典型的な公害の発生原因になったもので、その当時の原因物質と考えられるもの、カドミウムは玄米についての基準値が決まっており、水銀では暫定的であるが魚介類についての基準値が決まっている。そのときは他の経路は無視して、食品だけで決めているので、ここで新たに(他の経路について)何%占めるべきだという意見が出てくると、食品に対してどういう影響をするのか。少なくともカドミウムと水銀に関しては(他の経路に割り当てる分は)もう残っていないという状況である。

【B委員】 多分比率で何%というのは、非常に難しいと思う。カドミウムについて水は概ね10%、ダイオキシン類については10%として、水質環境基準を決めるとき整理をしたが、何%と決めて一律にするということは非常に難しいのではないか。資料の中で実際の摂取量の割合を計算しているが、これはあくまでも実際であって、先ほどから議論しているような汚染を考えているわけではない。そういう意味では、基準に沿ったところで暴露されるとして、例えば米なら1mg/kgといったときに、どのぐらい摂取されるのか、魚ではどうかというように整理をしてみることが必要ではないか。基準があるものについては、それ以上になると別の議論をしなければいけないので、それ以上にならないという前提で、それで配分については分布を見て、平均値をとるのか、少し高いところを見るのか、幾つかのシナリオが出てくると思う。そのような値を見ながら、考えてみるしかないのではないか。ダイオキシン類の場合は、多分そのようなやり方だと思うが、かなり平均を考えているので、実際には幅のあるところを少し抑え過ぎており、高暴露の人についても十分であるかというのが気にはなるが。もう少し資料を追加して議論をしていくしかないのではないかと思う。

【F委員】 追加であるが、水銀の場合、一般に総水銀として0.4、それをオーバーしているのはメチル水銀で0.3と決まっているが、そのときの対象魚種は、マグロ類や深海魚などは除かれている。そっちの方にもかなり入っており、それは汚染ということではなく、自然に入っているということで除かれている。マグロを多食するような漁師などに対しては、特別に行政から衛生的な指導をすることになっているので、規制値だけでいくと、水銀の場合は違った結果になるかと思うが、そういうことがある。

【事務局】 例えば、魚介類の数字を全部の魚介類について1日100gなど、一律に計算してしまうと変な数字になるだろうし、米も全部それでとると、数字としては相当大きな数字になることが見込まれるので、いろいろな誤解を生じるおそれがある。そういう現実を踏まえ、可能な範囲で資料を作成したが、そこはある程度こんな数字だということを各委員ご承知のところで議論いただけるとありがたい。

【A委員】 土壌からの暴露というか、摂食量を、一律に何%と決めるのはやっぱり無理だと思う。ただ、それを全部現実に当てはめたり、食品の基準があるものは、そういうところからいくのもまた難しいような気がする。それをせざるを得ないとは思うが。しかしながら、大部分はおそらく食物であろうということは念頭に置いてもいいと思うし、明確な数字としては出さないけれども、大まかに見て1%前後ぐらいだろうと考えておくのは悪くはないと思う。

【座長】 例えば1%とした場合に、計算する上で具体的な問題があるか。

【事務局】 昨年まとめていただいた含有量参考値再評価業務報告書には、1%の場合の数字を示したが、この数字については、個々にある程度詰めないと、実はわかりにくいものがある。例えば含有量参考値として現在行政的に示しているものと比べて大きくなるものもあれば、小さくなるものある。個別にどういう影響があり得るのかという整理はしなければいけないということはあるが、数字を丸めたりするとすぐにでも1%ぐらい動くことはある。ただ、目安として整理をすることはできるので、あとは個別ケースで全体として整理せざるを得ない。これは今後重金属類以外のものについても、当然同じようにそういう影響が出てくると思うので、個別ケースでとにかく整理をする必要がある。

【座長】 かなり重要な問題だと思うが、他に何かないか。

【G委員】 実際の摂取許容量の割合というのがあるが、これは先ほどの話にあった実際の摂食量の調査結果ということか。

【事務局】 例えば国民が平均的に1日当たりどのぐらい食品からそれぞれの物質を摂取しているかという調査の結果に基づいて、例えば飲料水であれば実際の飲料水、これは実際の地下水の濃度とか、そういったものを平均的なレベルで計算をしており、大気も実際の大気中の濃度から計算をしている。その実際の一般の環境中で生活している場合にどのぐらいになるのかということで、ある意味ではバックグラウンドに近いような線なのかもしれないが、食品にはもちろんバックグラウンドというものがないので、平均的な数字ということになる。そこで計算をして、それぞれ数字を出してみて、割り振りをしてみたらこのぐらいの割合になったという数字である。したがって、許容量とすると誤解を呼んでしまうので、実際の摂取量と考えていただきたい。

【G委員】 やはりどうしても一律何%という考え方はできそうもない気がする。

【事務局】 先ほど一律につくれないということで、何となく念頭で1%はどうかというご意見もあったが、多少計算に疑義が出るかもしれないがダイオキシン類についてはかなり高い数字をとっている。事務局としては、数字を決めることはダイオキシン類の方にも相当影響があるだろうということで、一律で明確な数字を出すというのは結構大きな問題を含んでいると考えている。ただ数字が全くないと、なかなか決めにくいということもあり、そこが一番の悩みであるが、余り根拠もなくただ一律に線を引くのは結構難しい。逆に言うと、含有量参考値は全く違う次元で数字を決めており、これは汚染の程度ということではなく、実態調査の結果から、標準偏差の3σをとっている。一般に実態調査はどのぐらいやるかによって随分と数字が変わる。結果がよくなればどんどん数字は変わるし、調査の数を増やせばまた変動するということで、科学的な根拠というか、健康という意味での根拠は余りないかもしれない。したがって、そういう決め方は難しいと思う。何か数字が欲しいが、かといって明確に決めてしまうと、それぞれ個別ごとの検討にかなり制約を与えることもあって、どんな観点から整理をしたらいいかご意見をいただきたいという趣旨である。

【B委員】 物質の性質というか、暴露の状況によってランク分けするというのは、一つの考え方であるが、ダイオキシン類の数字がベースになってしまうと、例えばカドミウムや他のものについては絶対もたない。物質の区分をしたときに、ダイオキシン類が比較的土壌からの暴露が多くていいかというと、多分そうならないと思う。そういう意味でいくと、ダイオキシン類の数字は、つらい数字という感じがする。それをにらんでやるとすると、いろいろな意味で並びはどうなるのか。これをベースに暴露量を決めて、カドミウムについて、米がどうなって水がどうなってと計算すると、多分基準を超えてしまう。それは最大限であって、上下はあるので、トータルとしてそんなことはないという説明になるのだろうと思うが、なかなか苦しいと思う。そういう意味で、物質ごとに整理をするという考え方はある。

【座長】 ダイオキシン類の数字を他の物質に適用すると、非常に苦しいことが多いと思うが、他に何かないか。

【事務局】 実はダイオキシンの場合のTDIは、吸収率の50%を割り戻しているが、土壌の場合はダイオキシン類の吸収率を25%程度としているなど、計算については多少事務局として自信がない部分もあり、他の物質については、どういう形でTDIの数字が見込まれるかとなってくると、なかなか単純に比較しにくい数字である。これも計算の方法によっては倍になったり半分になったりしそうな数字であって、多少苦しいが、それでも1,000pgという数字はそれなりの部分を占めている。現実に1,000pgがあるかどうかは別として、そんな数字であるという程度で見ていただければと思う。

【座長】 目安としてはいいが、他に何かないか。

【D委員】 水や食品、土壌など、いろいろな暴露の経路に何を割り振るかというのは、その後、もしそのセクターで超えてしまったら、その部分を減らすための対策をとるということがその先にあるわけで、対策をどこが担当するのかという話になる。したがって、日本全体として、現実に削減の可能性やそれにかかる費用を考えて、食品については極めて困難であるけれども、土壌の方はコントロール可能であるということであれば、食品のほうは緩くしておいて、残ったわずかなところを土壌に充て、それを超えていたら土壌のほうをコントロールするというような話だと思う。それが本質的な部分だと思う。

【座長】 例えばカドミウムであれば食品が主になるわけだが、食品の中にカドミウムが入るというのは、結局土壌の問題になってしまう。

【D委員】 それは土壌の基準を考えるときに、それから吸収されていくという方向をまた別に考える必要があるのかもしれない。それは農用地だけのことであり、一般な土壌から言えば、こういうことになるのではないか。

【座長】 他に何か意見はないか。
 次に論点の6に入る。論点6の問題点はどこにあるか。

【事務局】 この検討会の議論の範囲より多少広くなりそうな部分があるが、まずは含有量の基準として、例えば場所的には表層5センチ程度をイメージしたときに、例えば溶出量と含有量をどの程度結びつけておく必要があるのか、全く別の次元で考えていいのかということが事務局として整理をしなければならないと考えている。含有量リスクの場合には、先ほどの土地利用も含めて、どういう考え方で対策に結びつける過程があるのか。例えば溶出量であれば、今、環境基準は溶出基準としているが、例えば対策までいくときには、地下水への影響をもう少し現実に見て、例えば土地の用途、あるいは地域の特性を念頭に置きながら整理するということもあるが、含有量については、先ほど土地利用についてご議論いただいたが、溶出量基準と含有量基準のようなものを全く別の次元でとらえていいのかどうかということを整理したい。事務局としては全く別の次元として考えてはいるが、一番大きな点は、含有量基準のほうが数字が大きくなりそうだということがあり、含有量基準による対策はなく、例えば全部が溶出量基準で対策するということになるかもしれないということがある。ただ、これは実際に計算をしてみないとわからない部分があり、最初に申し上げたとおり、論点6はもう少し先の議論になるのかもしれないと思いながらも、何かコメントがあればいただきたい。

【B委員】 多分、基本的には違うものと考えるのだと思う。それぞれ暴露の経路が違うので、関連を結びつける必要はない。現在の含有量参考値というのは、溶出量基準の裏のような形で考えているが、今回は全く別な経路を考えるわけであり、それは全く独立したものとして考えるべきであろう。ただ、そうは言いながら、全部溶出量基準になるのかという話になったときに、例えば表層の重金属汚染などで下層の土壌に移行しないものについては、表層には溶出量基準を適用しないこともあり得るだろうと思う。そうした場合に、現在のところは、含有量、溶出量は全土壌一律に適用するということになっているが、溶出量が適用されないところが出てくる可能性があるとすれば、そういうものについては、今度は含有量の基準を適用していかなければならない。あくまでも別々に考えていく必要があるのだろうと思う。

【C委員】 これは吸収率の計算に関係してくると考えているが、例えば砂などに金属が多量に含まれているとしても、普通であれば吸収されないので問題はないが、それが水や酸に溶けやすい状況で存在していると、吸収も非常によくなるだろう。溶出というものは実際に吸収に非常に大きく影響してくるので、現在の溶出基準はどういう方法でやっているのかよくわからないが、いつも溶出基準のようなものを含めてやると、実質的に意味のある規制になるのではないかという気がする。

【座長】 溶出基準について説明願いたい。

【事務局】 溶出基準は、単純に言うと、10倍量の水でかなりの時間振とうして、(有害物質を)水に溶け出させ、その検液を水質環境基準と同じ分析法で分析するということである。実際にそれが現実にあっているかどうかは別として、ある仮定で水に溶出させて出たその数字が、地下水あるいは公共用水域の環境基準を超えているかどうかの判断をするという方法である。これは現実の土壌の状況は考慮せずに、とにかく6時間振とうして出た値で評価するというやり方をしている。

【D委員】 先ほどの何%を充てるかという議論とかかわるが、仮に1%を充てるとすると、どこかの場所で1%と決めた基準を超えているという場合に、それを改善したとしても、ほかのセクターで20%を占めていれば、トータルとしては21%が20.?%になるだけである。果たして本当にそこまで必要なのか。だから、10%程度を充てるというのか正しいのではないかと思う。それができない場合には、冷静に周りとのバランスで考える。10%を超えているのであれば、それを下げる意味はある。

【A委員】 溶出基準とか、他の基準との関係は、私も別個でいいと思う。この全体の検討の中で一番大事なことは、やはり暴露のシナリオをきちんと立てることだろうと思う。その暴露のシナリオをきちんと立てるというのは、ある意味ではシミュレーションのようなモデルをきちっと立てるということと、そのパラメーターにどれぐらい幅があるかということである。例えば、今まで議論したとおり、子供では吸収率が高いことや、土をなめる量が多いことなど、いろいろな条件が出てくるわけだが、その高いほうの変動し得るものはどれぐらいかという数値を推定できれば、いろいろなことが一挙に解決するような気がする。そういう意味で考えてみると、この溶出基準というのは、多分水として体内に入ってくること考えた上で決められているのだろうと思うが、むしろ暴露のシナリオそのものを、土壌が体内に入ってくるということだけ考えると割り切ってしまえば、溶出基準はまた別個の基準と割り切れるような気がする。

【座長】 水を介する暴露を考慮した溶出基準のほかに、含有量基準をつくることが必要かどうかを考えてほしいということだろう。
 カドミウムの問題は、農用地基準と含有基準とは別々に考えるべきであるということか。

【D委員】 そうである。

【座長】 他に何かご意見はないか。

【F委員】 一つは溶出基準であるが、別の委員会で土壌からの金属の溶出について検討した際に一番の問題点と思ったのは、溶出基準の方法ではpH5ぐらいの水で抽出しようとしているが、それでは全然抽出されてこないことである。pH1ぐらいの酸性でやれば、きれいにそろったデータも出て、多分含有量とかなり相関が出てくると思うが、pH5ぐらいの普通の水では、なかなか相関が出ず、すごくばらつきのあるデータが出てきた。
 もう一つは、何%を土壌に割り当てるかということであるが、先ほど1%という値が出ていたけれども、例えば1%を土壌に割り当てても、食品のほうの規制値は変える必要はなく、影響がない。ただ、10%ぐらいになってくると、具体的に見直しなどが必要になる。

【座長】 個別の課題ごとに十分に議論ができなかったと思うが、時間がなくなってきたので、他になければ、次回以降、順次詳細な議論を進めていきたいと思う。
 次に、その他として事務局から説明願いたい。

【事務局】 最初に申し上げましたとおり、この検討会は、とりあえず来年の5月か6月ぐらいに一度取りまとめをいただき、制度の在り方に関する検討会のほうにご報告をさせていただきたい。それに向けて、できるだけご検討を進めていただければと思っている。
 次回以降であるが、いろいろと資料の整理もあり、論点の整理を具体的にもう少しさせていただきたいということあるので、来年5月、6月に向けて、あと3、4回ぐらいはお願いしたいと思っている。委員の日程等の調整は改めてさせていただくが、次回は2月ぐらいを考えているので、よろしくお願いしたい。

【座長】 それでは本日の資料の公開のことであるが、会議資料は原則として公開にするとなっており、本日の配付資料の中で委員限りとされている資料2-2の議事録(案)以外は、資料2-1から2-5、参考資料2-1、2-2とも、特に非公開に当たるものはないと思うので、いずれも公開することにしたいと思うが、よいか。資料2-5の内容についても、問題はないか。なければ、いずれも公開することとして同意する。
 進行を事務局にお返しする。

【事務局】 次回の日程については、改めて調整させていただきたいと思う。これをもって第2回の検討会を終了させていただく。

-以上