環境省水・土壌・地盤環境の保全土壌関係中央環境審議会等における検討中環審答申及び検討会土壌の含有量リスク評価検討会

土壌の含有量リスク評価検討会(第1回)会議録


1.日時

平成12年6月22日(木)10:00~11:52

2.場所

環境庁第1会議室

3.出席者

(1)委員
林 裕造 座長
大野 泰雄 委員 櫻井 治彦 委員 佐藤 洋 委員
中杉 修身 委員 永沼 章 委員 米谷 民雄 委員
(鈴木 庄亮 委員、平田 亜古 委員、吉永 淳 委員は欠席)
(2)事務局
遠藤 保雄 水質保全局長
伊藤 洋 水質保全局土壌農薬課長 他。

4.議題

(1)公開の取扱いについて
(2)土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価の進め方について
(3)その他

5.配付資料

資料1-1 土壌の含有量リスク評価検討会委員名簿
資料1-2 土壌の含有量リスク評価検討会設置要領
資料1-3 土壌の含有量リスク評価検討会の公開の取扱いについて
資料1-4 土壌の汚染に係る環境基準及び含有量参考値について
資料1-5 土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価の進め方について
(参考資料)
参考資料1-1 土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年環境庁告示第46号)
参考資料1-2 市街地土壌汚染問題検討会報告書
参考資料1-3 土壌中のダイオキシン類に関する検討会 第一次報告
参考資料1-4 ダイオキシン類による土壌の汚染に係る環境基準の設定等及びダイオキシン類土壌汚染対策地域の指定の要件について(答申)
参考資料1-5 ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準について(平成11年環境庁告示第68号)
参考資料1-6 含有量参考値再評価業務報告書

6.議事

【事務局】 定刻となったので、これより土壌の含有量リスク評価検討会の第1回を開催する。冒頭、水質保全局長より、ごあいさつ申し上げる。

【水質保全局長】 (挨拶)

【事務局】 第1回目の検討会であるので、名簿順に委員及び事務局の紹介をする。(資料1-1に基づき、各委員の紹介の後、事務局の紹介)
 続いて、配付資料の確認に移る。(配付資料の確認)

【事務局】 検討会の設置について、本検討会の設置要領についてご説明させていただく。(資料1-2に基づき説明)

【事務局】座長の選出につき、設置要領にあるとおりお願いをしたい。座長は委員の互選によりお決めいただくことになっている。もしよろしければ、事務局としては林裕造委員にお願いしたいが、いかがか。
                (異議なし)
 それでは、林裕造委員に座長をお願いすることとし、今後の議事進行をお願いしたい。

【座長】 水質保全局長の挨拶のとおり、(土壌の含有量リスク評価は)未解決な点が多く、非常に多くの専門分野にまたがっている、非常に重要だが難しい問題の座長をお引き受けすることになった。よろしくご協力をお願いする。
 議事次第に従って議事を進める、最初は公開の取扱いだが、事務局から説明いただきたい。

【事務局】 公開の取扱いについて、ご説明させていただく。(資料1-3に基づき説明)公開の取扱いについては設置要領にあるとおり、第1回目の本検討会にてご検討をいただきたい。決めていただきたいことは3点あり、1点目は会議の公開・非公開、2点目は会議に提出する資料の公開・非公開、3点目は会議録の公開・非公開である。

【座長】 公開・非公開については、かなり重要な課題であるが、何かご意見はあるか。

【A委員】 ほかの会議でどのような扱いをしているか説明いただき、それを参考にしてはどうか。

【座長】 では、事務局に説明いただく。

【事務局】 中央環境審議会では、部会レベルでは会議、資料、会議録は原則公開。ただし、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、または特定な者に不当な利益もしくは不利益をもたらすおそれがある場合には、会議あるいは資料を非公開にすることができるとされている。
 専門委員会では、会議が非公開、資料及び会議録が原則公開となっている例が多い。また、局長の私的諮問機関となる検討会については、局長が専門的な意見を伺う場なので、会議が非公開、資料・会議録は原則公開、場合によっては非公開のものが多い。報道関係者のみ会議公開とすることもある。会議を公開する場合には、あらかじめ傍聴者の募集、あるいは抽選等を行うことになる。

【座長】 事務局のご説明も含めて何かご意見はあるか。この検討会は局長の諮問の検討会となり、会議は非公開でもいいということになるが、ほかに非公開・公開を決める要素はあるか。

【事務局】 参考までに申し上げれば、例えば土壌の摂食量の調査については、海外の例を見ると、保育園や幼稚園をフィールドにして個別の調査を行い、そのデータの評価をしているものがある。それから、土壌汚染のレベルとして、工場跡地の状況について必要に応じて個別のケーススタディをお願いする可能性がある。

【座長】 B委員、例えば厚生省の専門委員会や分科会で、こういう例があるとどうか、ご説明いただきたい。

【B委員】 正確には覚えていないが、先ほどと同じように部会に関しては公開であり、それ以外の検討会や調査会は非公開、資料は必要に応じて公開するという構図だったと思う。

【座長】 ほかにご意見はあるか。

【A委員】 基本的に会議は非公開という方向がよいのではないか。個人的な情報あるいは個々の事業場の情報が出てくる可能性があり、会議自体は非公開の扱いで、会議録については、個人的な問題とか個々の事業所の問題に係るものについては非公開、それ以外については公開という扱いでよいのではないか。

【座長】 ほかに何かご意見はあるか。
 今までのご意見まとめると、会議は非公開、資料は公開できるものは公開ということか。会議録については公開の部分と非公開の部分があり得るが、事務局の方でご意見をまとめてもらえるか。

【事務局】 もう一度確認させていただくが、会議は非公開とし、資料は原則公開で、場合によっては非公開とするものがある。それから会議録については、中央環境審議会の例では出席した委員の了承を得た後に公開し、発言者の氏名を伏せて作成をするということになっており、原則会議録も公開だが、中央環境審議会の例に細則を倣わせていただいてよいか。

【座長】 では、今のご意見を取りまとめ、公開要領として次回に提出願いたい。
 それでは、次の議題として土壌中の有害物質の含有量によるリスク評価の進め方についてだが、事務局の方から説明願いたい。

【事務局】 それでは、これまでの土壌汚染の評価の考え方、それから昨年度までに行ってきた基礎的な調査について、まずご説明をさせていただく。
 これまで土壌の汚染については、環境基本法に基づく環境基準、あるいはダイオキシン類対策特別措置法に基づく環境基準が定められている。また、表題に含有量参考値とあるが、これはガイドラインとして定めているものである。この考え方をそれぞれご説明させていただく。(資料1-4に基づき説明)
 また、これらの状況を踏まえ、A委員、C委員のご協力をいただき、基礎的な調査を実施したので、参考資料1-6について詳しくご説明させていただく。
 (参考資料1-6に基づき説明)
 この検討会においては、曝露評価のアセスメントを行った場合に、どのように考えたらいいか、ぜひご意見をいただきたい。

【座長】 議論は資料1-5の説明の後にする。今までの説明について何かご質問、コメントあるか。

【A委員】 資料1-4で、ダイオキシンについて、曝露経路のところで直接摂食(経口摂取)と皮膚吸収という説明あったが、大気への飛散吸入も考慮した上で、直接摂食と私は解釈しているが、そうではないのか。それはどこで決めたか、どこまで考慮したかは、またもう一つ別な情報であると思うが。

【事務局】 参考資料1-3にあるダイオキシン類に関する検討会第一次報告の時点では、土から舞い上がるとか、わずかだが蒸発するという部分も含めて検討したが、ダイオキシン法で大気・水・土壌の環境基準を一斉につくるときに、大気の環境基準でいわゆる粉じん状のものも含めて大気として評価をすることになり、肺に入り得るものについては、大気の環境基準で見ることとなった。ただ、粒が大きくなると鼻から吸っても胃に行くという話があり、一方、土壌の摂食量調査は排泄物中の重金属トレーサーを見て、とにかく胃の方に入ったものを測っているようなので、鼻から大きな土ぼこりが入った場合は、直接摂取の方にカウントされ、肺に入るものは大気でカウントするというふうに仕分けたところ。

【座長】 ほかに何かあるか。

【A委員】 参考資料1-6について補足的に説明しておくと、含有量参考値全体の決め方で平均値プラス3σという決め方をしているが、今の方式でいくと一般環境の濃度が下がると、土壌環境基準も下がっていく。それがどういう意味を持っているかという疑問点が出ていることが一つ。
 それから、大気への飛散については、土壌から大気へどれだけ水銀が移行するかはまだ不確かな部分があるので、一応この結果ではどうも揮散が問題でありそうだという方が大きそうだということになっているが、その部分について若干の不確かさが残っているということを申し上げる。

【座長】 ほかに何かあるか。

【D委員】 歴史的なことを補足説明する。参考資料1-2に市街地土壌汚染問題検討会報告書というのがあるが、これが第一次の市街地土壌汚染問題検討会のもので、対象が国有地に限られている。これは、当時国立の試験研究機関が筑波などに移った後の跡地に、重金属がたくさん出たために早急に基準値をつくらなければならないということでつくられたものである。当然ながら委員には土壌の専門家の方が参加されている。
それで、基準値が昭和61年の1月に出たが、その後、昭和61年度から平成元年度まで第二次の市街地土壌汚染問題検討委員会が土壌農薬課でつくられ、そこで土壌、地下水汚染経由ばかりでなく、土壌を直接摂取すること、あるいは大気を通した経気道摂取もありうるということで、食品経由では私が委員として参加している。
 それから、経気道では公衆衛生院の先生が担当したと思う。つまり直接摂取の検討は今回初めてでなく、当時から直接摂取あるいは経気道摂取の検討も必要と考えられており、ダイオキシンの問題を契機にして、今回この会議が開かれているのだ理解している。

【座長】 C委員、何かコメントあるか。

【C委員】 改めて吸収率と聞くと、かなり嫌な感じがある。調査会社ともだいぶん相談して文献を調べたが、わからない部分が多い。

【座長】 ほかに何かあるか。

【B委員】 参考資料1-6のケース1とケース2の比較において、汚染レベルが低くなるとケース1よりケース2の方が曝露レベルが大きくなる。これは、ケース1は汚染土壌に曝露するケースと表現してあるが、汚染土壌でなくある濃度の金属を含有する土壌に継続して曝露されることである。ケース2はある濃度の土壌に30年間曝露し、その後はバックグラウンドのレベルで曝露するということによる。

【A委員】 横軸が土壌の濃度だが、土壌のバックグラウンド濃度はある程度設定しているので、設定している濃度がバックグラウンドより低くなると、逆にケース2の方がケース1より高くなることが起こる。そういう意味では、大野委員が言われたとおり、設定しているバックグラウンド濃度より低いところまで計算すると逆転現象が起こってくる。

【B委員】 含有量参考値は、安全性の問題よりも行政的に対応する優先順位を決めるための基準か。

【事務局】 位置づけを再度ご説明する。参考資料1-2を参照いただきたい。含有量参考値の現在の位置づけはガイドライン値である。まずは当時市街地の土壌中の濃度を測定し、対数をとったヒストグラムをとって平均値プラス3σのところで線を引き、ある程度の目安となる数値を求めた。55ページのグラフのように分布があって、54ページから平均値プラス3σのところの数値を丸めている。例えば44ページは飛散を摩擦などから、風が吹いたときにある程度土壌濃度が飛散したときに、WHOの大気中のクライテリアや労働安全衛生法の管理濃度の3分1を想定すると、それに比べて設定した含有の参考値は安全側か、あるいは47ページの表4-2のように、1日平均土壌摂食量が0.2gというEPAの文献値で見ると評価基準をWHOの値から見て安全側かといった試算をしたものである。当時もいろいろなリスク評価をしようとしたが、例えば土壌摂食量は1984年ごろに比べてデータがかなり蓄積をされていることを踏まえて、ダイオキシンについては摂食で初めて環境基準に位置づけられる基準を設定したところ。

【座長】 ほかになければ、次の後半の説明をお願いする。

【事務局】 資料1-5の事務局としての進め方の案を示して、なるべくたくさんのご指摘をいただき、今後の進め方の参考にしたい。(資料1-5に基づき説明)
 吸収率に関する文献の追加的な調査については、E委員とD委員に特にお力添えをいただきたい。土壌摂食量調査については、本日欠席しておられるが、F委員、G委員、H委員にお願いをしたい。重金属の消化管吸収率調査については、B委員とH委員にご協力をいただきたい。
 以上のような形で今年度を進めていきたいと思っており、委員のご意見をいただきたい。

【座長】 難しい問題ではあるが、これからやらなければならない問題点が少し明らかになった感を受ける。今の説明について質問、コメント、ご意見はあるか。特に資料1-5の中で、事務局から特に意見が求められている※印のところについて、説明、コメントはあるか。

【A委員】 資料1-5の2ページ目、化合物の形態のところで、吸収率は化合物の形態によって異なると思うが、有害性の評価値の対比という意味でも、当然違ってくる。特に有機体砒素が土壌中にどのぐらい存在するかも問題だが、有機体砒素は今のところ溶出試験では出ないため、有機体砒素が除かれた形で評価されていると考えられる。有機体砒素の毒性とほかのものとは毒性が随分違う。六価クロムも、土壌の濃度の測定法の制約で、おそらく含有量はクロムのトータル量でしかできない。そこを何かうまく考えて整理をしていかねばならない。その辺りを考えつつ議論をしていかないといけない。

【座長】 D委員は前にカドミウムで化学形態と吸収の問題について研究されていたと思うが。

【D委員】 もともとカドミウムをやっていたが、化学形態ではA委員が言われた有機砒素が一番問題になると思う。特に、第二次市街地土壌汚染問題検討会のときに議論したが、一般的に使われている化学形態だけでなく、例えば工場跡地とか国の試験研究機関等では何かわからないような化合物になっているのではないか、そういう化合物をどのように考えるかは一時議論になったことがある。化合物の形態によっては、溶出試験では出てこないが含有量試験で全分解すれば出て来るものもあるので、その辺の兼ね合いをどうするか等が問題になる。個々の具体的な金属については、今、食品関係におり、水銀、カドミウム、鉛、砒素はいつも問題になる有害金属なので、水銀、カドミウム、鉛、砒素から始めるのが良いのではないか。

【座長】 重要度からいえば、この四つは非常に大切だということか。E委員、水銀について吸収率その他何かコメントはあるか。

【E委員】 具体的な質問で良いか。例えば吸収率に関わる文献追加調査をする場合、A委員の指摘どおり化合物の形態は大変重要と思うが、吸収率は摂取量と年齢によって違い、子供は吸収率が高い場合が多い。それらをどう分けて調べる必要があるか、具体的な項目のようなものを挙げていただけると助かる。ただそれだけ論文があるかどうかが問題だが、それと前年度の調査の再評価と追加文献の必要性をどう考えているのか。

【座長】 A委員、何かコメントはあるか。

【A委員】 先ほどの追加説明であるが、特に砒素の場合、日本では砒素化合物の環境への投入、すなわち有機砒素の農薬がかなり気になる。この場合は有機態(砒素)を農薬に使ってるので、どのぐらいの影響が出てくるのか。これは農用地の話であり、今回の直接摂食という話には絡んでこないのかもしれないが、農用地汚染に関して影響があるとなると、当然後で市街地にも話が及ぶこともあるので気になる。そういう意味では、化学形態の問題というのは、考えなければならないという気がする。

【座長】 文献調査では十分ではないというようなこともあるが、その場合、例えば動物実験でどういう点を補足するかについて何かあるか。

【B委員】 今、永沼委員からご指摘のあったことを十分考慮して動物実験を計画しなければ役に立つデータは得られないと思う。それともう一つ、動物実験での安全性試験の結果とその曝露量との比較をするということになると思うが、重金属の体の中の半減期がどの程度かということを把握しておかないと評価できないと思う。文献調査により、半減期がどのくらいか、半減期はE委員ご指摘のとおり曝露レベルによって当然変わってくるので、そのことも考慮した形でデータが得られていると、後の評価のときに非常に役に立つのではないかと思う。

【座長】 E委員、半減期は例えばカドミウムなどは割合によく調べられているかもしれないが、一般的に重金属についてはどうか。半減期が非常に重要なファクターだとすると、今までの文献ではどの程度調べられているのか。

【E委員】 詳しくは知らないが、カドミウムについては、放射性のカドミウムを人に飲ませたデータがある。水銀もあると思うが、我々が実際に摂取するような量(土とか食品)での半減期が、実験的なレベルとどう違ってくるかというのはわからない。セレンなどでは、動物と人間で吸収率がすごく違うような論文上のデータがある。そういう種差をどのように評価するかというのも難しい問題であると思う。

【座長】 そういう点も実験で補足しなければならないということになるか。

【E委員】 これまでの論文に出ているデータの多くは、この委員会が求める目的に合っていないと思うので、目的に従った新たな検討は必要であると思う。

【座長】 今の吸収率も含め、何かあるか。

【C委員】 おそらく我々考えているのは、曝露量としてはかなり低いレベルであるから、必ずしも実験データや既存データが使えるとは考えない方がいいという気がするが、ほかに何もなければどれを見るのかという話になってくると思う。
 あと、評価値との対比の考え方ということになると思うが、TDIにしろVSPから持ってくる何かにしろ、それが何のどういう影響を見ているのかということも頭の中に置いておかないといけないと思う。一つは、今回の場合に子供は土からいろんなものをとる可能性があることを考えているが、そういう年齢的な違いを考えた上でのエンドポイントの違いといったことを頭の中に置いておいて、今ある例えばTDIをそのまま当てはめていいのかという気もする。曝露のシナリオの中で、デフォルト値として汚染土壌の上30年、非汚染土壌の上で40年ということだが、これも順番がどっちが先でどっちが後かということも、そういうことを考えると気になるところだと考えている。

【座長】 I委員、何かあるか。

【I委員】 一番問題なのは吸収率だと思う。カドミウムについても、一番最近のJECFAで、週7μgというPTWIが一応そのまま変わらないことになった。極めてクリティカルに吸収率が効いてくるという各委員の意見が一致して、非常に緊急にそういった良質のデータが必要だということになっているが、ここで例えば本年度の検討の進め方のところで、動物試験で本当にどれだけ使えるデータが手に入るのか。カドミウムについていえば、例えば吸収率が1%なのか2%なのか5%なのかでまるで違ってくるので、人のデータでないと使えないのではないかと考えている。ただ、その方法は非常に難しいと思うので、何かいい方法がないかと思う。
 それから、これもカドミウムについてであるが、例えば農用地に住んでる人が自家産米を食べているというのが一番問題だと思うが、そういう人たちが田んぼからどれだけ摂食するかという問題があると考えいる。そういう農用地を対象範囲に入れるのか、カドミ汚染地域の田んぼの濃度はどれぐらいだったかということを考えている。

【座長】 ほかに何かあるか。

【事務局】 いろいろとご指摘いただいた中で、幾つかこちらでご説明できる点もあるかと思う。
 まず、工場跡地の水銀、鉛、カドミウム、砒素の測定方法であるが、これは実はヘドロ(底質)の測定方法と同じ、ほとんど全分解する方法であり、したがって、全分解するものに対して吸収率がどうかという話になると思う。一方、農用地の土壌汚染防止法における基準は、カドミウムの場合は米中濃度で決まっており、一応土壌中の濃度もデータがあるが、農用地として評価をする場合には可溶態量として、薄い塩酸分解により測定している。要するに生物に吸収される量の測定自体をどうするかについて、測定方法で制御をするべきなのか、吸収率で制御をするべきなのかというところがあるかもしれない。
 それから農用地のデータは、農用地としての測定方法によるものが、砒素とカドミウムはある程度蓄積されている。
 I委員からご指摘のあった、農家あるいは農用地の摂食量を対象にするかどうかについては、米経由という意味とは別に、あぜ道で子供が通るということがあるので、ダイオキシンの場合は、土壌を摂食する可能性のある場所という意味で対象になっている。
 参考までに、アメリカEPAなどでは個別にサイトアセスメントをする場合には、農業従事者や建設作業者はかなり摂食量が多いという設定をしており、逆に都市労働者はほとんどゼロというように置いている例はあるようだ。農用地を対象とするか対象外とするかの議論の前に、庭いじりや家庭菜園なども含めて、子供と大人について、まずは一般国民という観点からご検討いただきたいと思っている。

【I委員】 それに関連して居住のシナリオであるが、汚染土壌に30年、非汚染土壌に40年でいいのか。農家の方々は一生そこに住んでいる可能性が高いのではないかと思う。

【B委員】 結局、30年は汚染地域、それから40年は非汚染地域にいるということは、両方合わせて平均化し合うということだと思うが、それが本当に妥当か。半減期が何倍かでプラトーに達するので、半減期の値を考慮して見直す必要があると思う。

【座長】 ほかに何かないか。

【A委員】 そもそも環境保全の目的をどのレベルに置くかということがかかわってくると思う。平均的な人の安全を見るのか、それだけではたぶん不十分である程度高曝露の人まで考えていくのだろうけれども、その高曝露がどのぐらいのレベルまで考えるかという議論に入ってしまうと思う。環境基準等を議論するときに、必ずしもそこまで明確に議論して環境基準を決めてるわけではないが。そういう意味では、本当に高い人までという話であれば、ターゲットはある程度絞ってしまうということもある。高い人も押さえなければならないという考え方であれば、そういう高い曝露の人がどうだということを一生懸命調べるのは一つの考え方である。環境基準自体の考え方、それから有害物質の影響から人の健康を保護するという全体の政策の考え方をどう置くかによって、この辺のやり方が随分変わってくると思う。

【D委員】 資料1-5の裏側3の有害性に係る評価値との対比の考え方だが、食品の分野で仕事をしている者としては、たぶん有害金属を摂取する経路で一番多いのは食品だと思う。だから、食品でほとんどTDIを使ってしまうので、水あるいは土壌のは数%を使い、それで対比するのがいいのではないかと思う。この点については今後議論があるかと思うが、100%で比較して安全だというのは不適当であり、食品を考えるとTDIのほとんどを残しておかなければいけないと思う。

【座長】 I委員、これはカドミウムの場合も同じであると考えるが。

【I委員】 現在決まっている週7μgは、なお高過ぎるんではないかという懸念を多くの研究者が持っている状況であるが、下げるに足る根拠が十分ではないということで、一応そのままということになったが、やはり今まで見ていなかったエンドポイントを見るというようなことで、将来は現状よりも下がる可能性もある。先ほどC委員が言ったとおり、ほかの物質でもそういうことが重々あるであろうということと、それから食品でとっている部分が相当の部分をもう既に占めているということも事実で、平均であっても数10%である。10%とか1%とか一定の数値を挙げることができるかどうかは別として、PTWIのようなものが一番使いやすい指標だとは思う。その中の何%という目安を使うにしても、小さい目安にせざるを得ないだろうとは思う。

【座長】 ほかに何かあるか。
 私からも質問したいことがあるが、対象物質としては、重要度からいうと水銀、カドミウム、鉛、砒素ということであるが、重要度ということから離れて、その物質のデータ、考え方を整理すると他への波及効果が大きいというサイエンティフィックな立場から見て、これはやっておいた方がいいというようなものがあるかどうか。それから、事務局で対象物質の(2)のところで掲げているとおり、例えばPRTR法の優先的に取り組まれている物質などを含め、水銀、カドミウム、鉛、砒素の4物質以外にやらなければならない、やった方がいいのではないかという物質があれば教えていただきたい。
 もう一つは、作業を進めていく上で、デフォルト値がいろいろ示されているが、このデフォルト値について、もう少し考えなければいけないのではないか、あるいはこれでもいいということについて教えていただきたい。

【A委員】 多分、化学物質の形態の話で議論していくと、ここで挙がっている4物質の中で水銀、カドミ、鉛というのは多分カチオンで、吸収される場合もカチオンの何かの形で吸収されると思うが、砒素は多分アニオンの形で吸収されるというふうな整理の仕方をしていくと、一応整理ができていると思う。あともう一つは、ダイオキシンでどのぐらい整理ができているかという話があるが、トリクレンなど有機態はほとんど意味がないと思う。また、PCBはダイオキシンの中に含まれるとも言えるが、そういうPOPs系のものについても、一つの候補になりうるのではないかと思う。今回、そこまで手を広げるかどうかは別として、その吸収の形態等を考えて、タイプの違うものがもし考えられるとすれば、有機態のうちPOPs系は一つの候補になると思う。

【座長】 デフォルト値についてはどうか。国際的な整合性を考えるとこれ使ってもいいと思うが、やはり日本に固有の、日本人に固有のデフォルト値を考えなければいけないということもあると思う。この点はいかがか。外国の(文献を基にした)、ここで今まで決まっているデフォルト値を使っても換算はできると思うが、ご意見はあるか。

【C委員】 土壌摂食量について、そのデフォルト値が子供で200mg/day、大人で100mg/dayであるが、これはかなり人の属性によって違うのではないかと思う。おそらく子供のように土を食べるというのは意図的ではないにしても、手が汚れて食べてしまうというのはそんな変わらないかもしれない。しかしながら、例えば巻き上げなどにより、吸入した粉じんが消化管に落ちていくということを考えると、これはやっぱり場所によってかなり違いが出てくる。あるいは、例えば夏と冬の季節的な差みたいなものがかなり出てくるんではないかなという気がする。200mgの根拠というのは、直接的にはよくわからないが、この辺のところはきちんと見ておく必要があるのではないかと思う。
 それから、汚染土壌で30年、非汚染土壌で40年ということだが、これも根拠がよくわからないが、汚染土壌で70年として考えてもいいのではないかという気もする。この辺のところは、計算する上での操作でどうでもできる話なので、幅広く考えておいてもいいと思う。

【事務局】 今の点に関しては、土壌摂食量はダイオキシンのときにもかなり議論になった。参考資料1-3の土壌中のダイオキシン類に関する検討会報告書の22ページと23ページに、ダイオキシン類の検討の際に収集した文献を載せている。アメリカ、オランダの事例が多く、また、子供の例は多いが大人が少ない状況である。それから、200mgという算術平均、あるいは中央値、幾何平均などがあったとしても、標準偏差が非常に大きいというのは、ダイオキシンのときにもかなり指摘されており、個人差も大きく、気候あるいは土などによっても差が大きいだろうということも言われている。
 それから、特殊なグループを対象にするかどうかという話があったが、異食症児についてはグラム単位で土壌を口にしてしまうが、ダイオキシンのときには、これは医学的な分野から特別に取り扱う方が適当で、一般国民のリスクとして異食症をターゲットにするのはやめた経緯がある。ダイオキシンのときも、外国では家の中でも靴を履いているとか、気候が日本の場合は雨が多く有機分も多い土であるなどの差があるだろうというのは、かなり指摘をされたので、可能であれば土壌の摂食量調査を実施し、これも日本全国のすべての土でやるわけにはいかないので、結局ケーススタディ的な部分は強くなるかと思うが、実際にどのぐらいかという目安をつけられればというふうに考えている。
 それから汚染土壌で30年としていることであるが、農家の人も所有の敷地の中から全く外に出ないわけではない。また、汚染土壌自体は農用地の場合は水を経由してヘクタール単位で汚染されているが、実際に市街地において見られるのは非常にスポット的なものであり、それをどのように評価をするかということが非常に難しい。ダイオキシンのときは、日本人がどのぐらい引っ越しをしているかなどを勘案して、このようにした経緯がある。

【座長】 時間となったので、これで意見の交換は終了させていただく。事務局は、各委員のご意見をもとに、必要があれば担当の委員に相談してまとめてもらいたい。その他として何かあるか。

【事務局】 今後の進め方であるが、委員のご指摘を踏まえながら、具体的な試験設計、あるいは試験実施の可能性などについて、この検討会終了後に担当委員に個別にご相談させていただきたいと思う。
 また、本日ご欠席の鈴木委員、H委員、G委員にも、7月にお集まりいただき、本日の結果を報告するとともに、摂食量調査についての打ち合わせをしたいと思う。
 具体的な方向が見えたところで、第2回については9月から10月をめどに改めてご都合をお伺いさせていただくので、よろしくお願いしたい。

【座長】 本日の資料の公開であるが、先ほど決定した公開の取扱いで、会議資料は原則として公開、会議は非公開、会議資料は原則として公開するということになったので、この点について説明願いたい。

【事務局】 先ほど確認させていただいたとおり、会議資料は原則として公開するということで、本日用意させていただいた資料について、事務局としては特に非公開に当たるものがないと思うが、その点をご確認願いたい。

【座長】 今回配付された資料については、事務局としては公開しても差し支えないということだがいかがか。特に問題はないということであれば、今回の資料は公開することにする。
 本日の検討会は以上である。ご協力感謝する。

-以上