環境省廃棄物・リサイクル対策部廃棄物処理の現状

引越時に発生する廃棄物の取扱いについて

-引越を行う方、引越を請け負う事業者のためのマニュアル-


目次

1.はじめに

2.マニュアルの目的

3.事務所の引越廃棄物の処理-発生から処理の依頼まで

3.1 引越廃棄物の発生

3.2 処理の責任

3.3 処理の依頼

3.4 引越請負業者の役割

4.事務所の引越廃棄物の処理-引渡し

4.1 産業廃棄物管理票(マニフェスト)

4.2 処理の確認

5.家庭の引越廃棄物の処理

5.1 引越廃棄物を排出する者の役割

5.2 引越請負業者の役割

6.おわりに

 

表1 事務所の引越廃棄物の種類と主な処理先

図1 廃棄物管理票(マニフェスト)の流れ様式

参考 廃棄物の処理の流れ(産業廃棄物一般廃棄物

 

PDF形式全文(77KB)

平成15年2月

環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部作成


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1.はじめに

 引越をする皆さんは、安易に引越業務を請け負う方に、引越時に発生する廃棄物(以下「引越廃棄物」と記載します。)の処理を頼んでいないでしょうか。また、引越業務を請け負う方は、引越時に発生する廃棄物の処理を安易に請け負っていないでしょうか。

 不要とされ、廃棄されるものは、引越荷物とは異なり、自分の目の前からなくなればそれで良いのかもしれません。けれども、もし、どこかで不法投棄されるとしたら、目の前からなくなればよいということではすみません。不法投棄されることがないよう、最後まできちんとした取扱いが必要です。

 このため、引越をする事業者(以下「引越を発注する事業者」と記載します。)、国民、引越を請け負う事業者(以下「引越請負業者」と記載します。)の皆様が、引越廃棄物についても、引越荷物と同じように、注意を払っていただくようお願いします

 


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2.マニュアルの目的

 事務所、住居などの移転、引越に伴って、机などの家具、テレビなどの電気機器、書類などの事務用品等が不要物として発生します。引越時に生ずるこうした不要物は、引越作業と並行して廃棄されるため、その取扱いがおろそかになりがちです。確実できちんとした処理が行われるようにするには、引越をする側で、引越荷物と同じように、こうした不要物についても最後にどこに行くのかまで把握していただくことが必要です。

 そこで、本マニュアルでは、引越をする方(事業者、国民)、引越請負業者の方のそれぞれに参考としていただくよう、引越廃棄物の取扱いに当たっての注意事項をとりまとめました。枠の中にポイントを記述し、枠の外に簡単な解説を付しています。

 引越を発注する事業者、引越請負業者の方は、事務所の引越に関して、3.及び4.を参照して下さい。これらの項に、事務所の引越時に発生する廃棄物の取扱いに関する話を記述しました。

 また、引越をする家庭の方、その引越業務を請け負う引越請負業者は、家庭の引越に際して、5.を参照して下さい。この項に、家庭の引越時に発生する廃棄物の取扱いに関する話を記述しました。

 


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3.事務所の引越廃棄物の処理-発生から処理の依頼まで

3.1 引越廃棄物の発生

 事務所の引越に伴い、これまで使われてきた机、椅子、ロッカー、書棚、応接用の家具、テレビ、コンピューター、バインダー、書類など様々なものが不要になり、廃棄物となると考えられます。

 これらは、産業廃棄物と一般廃棄物に大別されますが、どちらも排出する事務所の責任で処理することが原則です。

 自分で処理する場合以外は、産業廃棄物は産業廃棄物処理業者、一般廃棄物は市町村又は一般廃棄物処理業者に処理を委託することになります。

[解説]

  1. まずは、まだ使えるものはいたずらに廃棄せず、再度使用することが重要です。また、紙類などのようにリサイクルできるものはリサイクルに回すことが重要です。また、使えるものと不要なものが混在する場合がありますが、できる限り分別を行い安易に廃棄物として処理の委託をしないようにしましょう。
  2. 自社が排出した不要物を、ただで引き取るか、あるいは極めて低価格で購入する人がいる場合であっても、その不要物が客観的・社会的にみておよそ利用価値のないような物であるときには、引き取る側で廃棄物として取り扱われることにならないか、注意する必要があります。
  3. 事務所の引越に伴い発生した廃棄物について、[1]産業廃棄物と一般廃棄物の区分、[2]自ら処理を行わない場合に、誰に委託すれば良いかについて、本マニュアルの末尾の表1に示します。

3.2 処理の責任

 引越時に発生する机、椅子、ロッカー、書棚、応接用の家具、テレビ、コンピューター、バインダー、書類など様々な不要物について、最後まできちんと処理されるようにする責任は、これらの引越廃棄物を排出した、引越を発注する事業者にあります

 引越を発注する事業者は、引越廃棄物の処理責任を引越請負業者に負わせることはできません。また、引越請負業者も、引越を行う事務所の処理責任を引き受けることはできません

 処理責任が移転されることは、処理責任があいまいになり、不法投棄などの不適正処理が発生する温床となります。この結果、仮に、不法投棄など不適正処理された場合には、引越を発注する事業者は、撤去などの原状回復をしなければならない責任を負うこともあります。

[解説]

  1.  廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」と記載します。)では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」(法第3条第1項)とされており、引越時に発生した廃棄物の処理責任は、引越請負業者ではなく、引越を発注する事業者にあります。
  2.  特に、産業廃棄物については、「事業者は、…産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の工程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」(法第12条第5項)とされています。
  3.  産業廃棄物については、具体的には、自ら適正に処理をするか、第三者に委託をすることになりますが、他人に委託する場合には、都道府県知事の許可を有している産業廃棄物処理業者に責任関係を明確にして委託する必要があり、この場合には産業廃棄物管理票(以下「マニフェスト」と記載します。)により運搬、処分等の処理の工程を把握することが必要になります。これらの具体的な内容に関しては、委託について3.3に、マニフェストについて4.に、それぞれ記述します。
  4.  なお、仮に、産業廃棄物が不法投棄等された場合、引越を発注する事業者が直接不適正処理を行っていなくても、次項以下に記述するように委託やマニフェストに関する法違反があれば、不適正処理を行った者と同様に、撤去などの原状回復をする責任を法に基づき問われることがあります(法第19条の5第1項)。この場合には、そもそも適正に処理を委託した時に要する費用と比べ、多大な費用負担を求められることになりますし、また、法に基づく責任を問われることによる社会的な制裁も決して無視できないと考えられますので、産業廃棄物の処理の委託に当たっては、委託の方法が適正であるかどうか、マニフェストの交付もれがないかなどについて十分に注意してください。

3.3 処理の依頼

 引越を発注する事業者は、引越廃棄物の処理を第三者に依頼する場合には、産業廃棄物については産業廃棄物処理業者、一般廃棄物については市町村又は一般廃棄物処理業者に委託をしなければなりません。

 特に、産業廃棄物については、引越を発注する事業者は、収集運搬は産業廃棄物収集運搬業者に委託し、処分は産業廃棄物処分業者に委託しなければならず、委託契約は書面(委託契約書)によりなされなくてはいけません

 この委託契約の際に、自分の引越廃棄物をどこに運び、どのように処分し、最後はどこに最終処分するのか、そして、これらを誰に委託するのかを、自らの責任で、自分の引越荷物を依頼するときと同じように、きちんと確認することが必要です。引越を発注する事業者は、引越に当たって、あらかじめ、このような委託契約をし、そして処理を依頼する事業者と処理の流れの確認を行っておくことが重要です。

 一般廃棄物については、原則、市町村が処理を行っているので、地域の市町村の粗大ごみ処理サービスなどを調べるなど、市町村に問い合わせをすることが適切です。その上で、市町村の指示などに従って、市町村に収集してもらうか、一般廃棄物処理業者に、市町村の処理施設までの運搬を委託するなどしてください。

 引越請負業者が都道府県知事(保健所設置市の場合は市長)の許可を有している産業廃棄物処分業者でない場合などに、引越荷物と併せて、引越請負業者に引越廃棄物の運搬と処分を一括して請け負わせてしまうことは、引越を発注する事業者と引越請負業者のそれぞれが、法に違反することになります。引越請負業者は、産業廃棄物収集運搬業の許可を有していても、産業廃棄物処分業の許可までは有していないことが多いと考えられます。

 法に違反して引越請負業者に引越廃棄物の処理を一括して請け負わせてしまうことは、処理責任があいまいとなり、不適正な処理が行われるおそれがあります。不適正な処理が行われた場合には、引越を発注する事業者が、その原状回復の責任を問われることもあります。

[解説]

  1.  引越廃棄物を自ら処理する場合、産業廃棄物については、法に基づく産業廃棄物処理基準に従って処理をしなくてはなりません(法第12条第1項)。この基準は、収集運搬や処分に際しての保管の方法、飛散しないように運ぶ等の収集運搬の方法、焼却や最終処分などの処分の方法を定めたものです。こうした基準に違反する行為のうち、投棄禁止(不法投棄)や野外焼却禁止の違反に対しては直接罰則が課されることがあります(法第16条及び法第16条の2)。
  2.  第三者(他人)に処理を委託する場合、一般廃棄物については市町村又は一般廃棄物処理業者に委託することになります。事務所の所在する市町村に問い合わせを行い、市町村の指示に従って処理をしてください。
  3.  第三者(他人)に産業廃棄物の処理を委託する場合は、収集運搬については、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物収集運搬業者に、処分については都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処分業者に委託しなければなりません(法第12条第3項)。パソコンなどの一部情報通信機器については、当該機器のメーカーが回収・再生利用を実施するため、環境大臣の広域再生利用指定を受けていること(末尾に付された表1の脚注を参照して下さい)があり、この場合には、メーカーに委託することができます。
  4.  また、不要となった家電製品のうちテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の4品目については、家電リサイクル法に基づいて小売店等に引き渡すことが必要になります。小売店が引取義務を負うのは、自らが過去に販売した製品の引取りを求められた場合、又は、製品の販売に際し、同種の製品の引取りを求められた場合です。小売店が引取りを行うことが困難な場合には、製品のメーカーが指定する引取場所へ搬入するか、又は、許可を有している産業廃棄物処理業者へ委託して下さい。
     この場合、いずれの者に引き渡すにせよ、適正なリサイクル料金を負担しなければなりません。
  5.  産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、委託基準に従わなければなりません(法第12条第4項及び法施行令第6条の2)。委託する場合には、運搬を委託する産業廃棄物収集運搬業者及び処分を委託する産業廃棄物処分業者についてあらかじめ把握し、運搬先である産業廃棄物の処理施設の所在地や処分の方法を確認するとともに、最終処分される場合には最終処分場の所在地を確認することが必要です。引越荷物と同じ様に、引越廃棄物についても、最終的な行き先、そこに至るまでどのような流れになっているかを十分把握することが必要です。
     なお、具体的な委託基準の内容(施行令第6条の2)は次の1.~5.に示すとおりです。委託基準に違反した場合には直接罰則が課されることがあるほか、仮に、不法投棄等された場合には、不適正処理を行った者と同様に、撤去などの原状回復をする責任を法に基づき問われることがあります(法第19条の5第1項)。
    1.  産業廃棄物の運搬を委託する場合には、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者(産業廃棄物収集運搬業者)であって委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること
    2.  産業廃棄物の処分又は再生を委託する場合には、他人の産業廃棄物の処分を業として行うことができる者(産業廃棄物処分業者(再生を行う処分業者を含む。))であって委託しようとする産業廃棄物の処分又は再生がその事業の範囲に含まれるものに委託すること
    3.  委託契約は、書面により行い、委託契約書には、以下の事項についての条項が含まれていなければならないこと
      1. 委託する産業廃棄物の種類及び数量
      2. 運搬を委託する場合にあっては運搬の最終目的地の所在地
      3. 処分又は再生を委託する場合にあってはその処分又は再生の場所の所在地・方法・施設の能力
      4. 処分を委託する場合にあっては最終処分の場所の所在地・方法・施設の能力
      5. その他委託契約書の有効期間・料金等(法施行規則第8条の4の2に定める事項)
    4.  委託契約書には、委託をする産業廃棄物処理業者の許可証の写しその他の受託者が産業廃棄物処理を業として行うことができ、委託しようとする処理がその事業の範囲に含まれていることを証する書面(許可証等)を添付しなければならないこと
    5.  委託契約書及び委託契約書に添付する4.の書面をその契約の終了の日から5年間保存すること
    6. ※ また、引越が終了した場合は、もとの事務所ではなく、引越先の事務所にマニフェストの写しを送付してもらう必要がありますので、委託契約書に引越先の事務所の住所も記載しておくべきでしょう。

  6.  引越を発注する事業者が、引越請負業者に対して、引越業務と併せて産業廃棄物の運搬と処分を一括して請け負うことを依頼する場合があります。しかし、引越請負業者が、産業廃棄物収集運搬業や、産業廃棄物処分業の許可を有しているとは限らないので、引越請負業者に運搬又は処分を依頼する場合には、許可を有しているかどうかを確認しなければなりません。引越請負業者は、産業廃棄物収集運搬業の許可を有していても、処分業の許可までは有していないことが多いので、運搬と処分を一括して請け負うことを依頼しようとする場合には、特に注意が必要です(許可の有無については、引越請負業者が有する許可証により確認することが原則ですが、事務所の所在するの都道府県に問い合わせることも可能です。)。
     なお、このように一括して運搬と処分を引越請負業者に請け負わせることは、引越請負業者が、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物収集運搬業者であり、かつ、産業廃棄物処分業者である場合以外の場合は、法違反になります。さらに、仮に、産業廃棄物の不法投棄等が行われた場合、引越を発注する事業者が直接不適正処理を行っていなくても、このような委託に関する法違反があれば、不適正処理を行った者と同様に、撤去などの原状回復をする責任を法に基づき問われることがあります(法第19条の5第1項)。
  7.  なお、不要となった書類等古紙を紙製品の原材料としてリサイクルするために回収する場合については、引越請負業者が当該廃棄物を引き取ることは可能です。
  8. ※ 法では、「もっぱら再生利用の目的となる廃棄物(いわゆる専ら物)」のリサイクルを行う者については、廃棄物処理業の許可が不要とされています(法第7条第1項ただし書、第14条第1項ただし書等)。これは、沿革的に法制定時以前から再生資源回収業者の手によって回収されてきている、古紙(紙くず)、くず鉄(古銅等を含む。金属くず)、空き瓶類(ガラスくず)及び古繊維(繊維くず)の4品目について、製品の原材料(古紙であれば製紙原料等)として再生利用を行う場合は市町村長・都道府県知事による個別の許可にかからしめなくとも適正なリサイクルが期待されるため、許可の対象から除外したものです。

3.4 引越請負業者の役割

 引越を発注する事業者が不要とした廃棄物の処理については、引越請負業者が産業廃棄物の処理業者の場合、その許可の範囲で産業廃棄物の処理を請け負うことができますが、都道府県知事の許可を受けていないのに、産業廃棄物の収集運搬や処分を引受けることはできません

 引越を発注する事業者から、引越と併せて引越廃棄物の処理を依頼されることがままあると考えられますが、このような場合には、法に違反して処理を請け負うのではなく、産業廃棄物処理業者を紹介するなどのサービスを提供したり、引越廃棄物の処理に関わるサービスは行っていない旨説明するなど、引越を発注する事業者の責任により取り扱われるように対応してください(あらかじめ、パンフレット等に明記しておくことも考えられます。)

 また、引越請負業者の引越の際の廃棄物にかかわる役割としては、引越の際に引越請負業者が用いる資材が不要となった場合の廃棄物の処理に関することが重要です。

 引越請負業者が用いる養生用の資材、梱包用の資材は、引越請負業者が不要として排出する廃棄物として処理することが原則です。なお、繰り返し使用することができるものは、再使用するよう努めて下さい。

 ダンボールのように荷物を梱包する資材については、荷物を開梱するまでは排出されないため、引越を発注する事業者が開梱を行う場合には、引越業務中に排出されず、引越を発注する事業者が排出する廃棄物となることがあります。一方で、引越業務終了後でも、引越請負業者がこうした資材を回収し、自らの提供した資材であるから自らの廃棄物として処理したり、再使用できる段ボールなどは再使用することがあり、こうしたことは望ましいことといえます。梱包材については、いずれの取扱いをするにしろ、引越を発注する事業者の廃棄物とするか、引越請負業者の廃棄物とするか、あいまいとならないように、あらかじめはっきりさせておくことが必要です。また、今後は、ダンボール箱などの梱包資材の再使用という観点からも、積極的に引越請負業者が回収することを検討することが重要です。

[解説]

  1.  引越請負業者は、引越を発注する事業者から、引越廃棄物の処理を依頼された場合には、本マニュアルも参考にするなどして、引越を発注する事業者の責任で処理する必要があることを説明してください。また、引越廃棄物の処理を行うことのできる許可を有している産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者を紹介することは、差し支えありません。なお、紹介に当たっては、後々トラブルが生じないよう、引越請負業者及び引越を発注する事業者の間で、十分に相互の責任の範囲を確認していくことが必要と考えられます。
  2.  引越請負業者は、産業廃棄物の収集運搬の委託を受けようとする場合には、産業廃棄物収集運搬業の許可を有していなければならず、産業廃棄物の処分の委託を受けようとする場合には、産業廃棄物処分業の許可を有していなければなりません(法第14条第1項、同条第4項及び同条第9項)。
  3.  なお、これらの許可を有していないにもかかわらず、引越をする事務所の事業者から、産業廃棄物の収集運搬又は処分の委託を受けた場合(引越請負業者自らが運搬又は処分をした場合はもとより、請け負って運搬又は処分を第三者に下請けさせた場合も含まれます。)には、法違反になります。
  4.  引越業務に伴って使用する養生用の資材や梱包用の資材が不要とされ排出される場合については、引越請負業者が、これらの資材を用意し、使用し、不要として排出することになることから、これらの不要となった資材は、原則として、引越請負業者の廃棄物となります。この例外の場合として、例えば、引越荷物を梱包するダンボールのように、引越請負業者が提供しても、引越を発注する事業者が、使用し、不要として排出する物があります。しかし、こうした物についても、引越請負業者が提供した物であることから、その使用が引越業務の終了後であっても、引越を発注する事業者から引越請負業者が回収して、引越請負業者の廃棄物として取り扱うことは望ましいことであり、また、差し支えありません。
  5.  なお、表1の中で一般廃棄物(いわゆる事業系一般廃棄物)に該当するものについては、産業廃棄物のような取扱いは不要です。具体的な処理は市町村又は一般廃棄物処理業者に委託するようにして下さい。

 


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4.事務所の引越廃棄物の処理-引渡し

4.1 マニフェスト

 引越が始まると、引越廃棄物が発生します。その際に、産業廃棄物については、あらかじめ委託契約により収集運搬を委託することとしていた産業廃棄物収集運搬業者に引き渡されることになります。

 この引渡しの際には、引越を発注する事業者は、マニフェストを産業廃棄物収集運搬業者に交付して、引越廃棄物の引渡しから最終処分されるまでの流れを確認できるようにしなければいけません。

 このため、引越を発注する事業者は、引越を発注する事業者の名称、担当者の氏名、産業廃棄物収集運搬業者の名称、引越廃棄物の行き先である処分される産業廃棄物処分業者の場所などをマニフェストに記載し、そのマニフェストを、引越廃棄物の引渡しと同時に産業廃棄物収集運搬業者に交付しなければなりません。

 また、引越を発注する事業者は、これらの事項を記載したマニフェストを用いて処理の確認ができるように、これを整理して委託契約書といっしょに保存しておいてください。

[解説]

  1.  マニフェストは、排出事業者が、産業廃棄物収集運搬業者に運搬を委託したり、産業廃棄物処分業者に処分を委託する際に、これらの処理業者に対してマニフェストを交付し、運搬や処分が終了した後に処理業者からその旨を記載したマニフェストの写しの送付を受けることにより、委託内容どおりに産業廃棄物が運搬、処分されたことを確認するためのものです。マニフェストの趣旨は、これを手段として、排出事業者が自らの委託した産業廃棄物の処理が適正に行われたかどうかを確認するというものです。したがって、3.3に記載した委託契約書とは別に作成、交付等する必要がありますので注意してください。
  2.  マニフェスト全体の流れについては、本マニュアルの末尾に図1により解説してありますので、これを参照してください。
  3.  引越を発注する事業者は、産業廃棄物の引渡しと同時に、産業廃棄物収集運搬業者に対して、産業廃棄物の種類、数量、運搬又は処分を受託した者の名称等を記載したマニフェストを交付しなければなりません(法第12条の3第1項、同法施行規則第8条の21)。複数の素材からなる使用済み製品(例えばパソコン)のように、複数の産業廃棄物が一体不可分な状態となっているものについては、これを一つの種類としてマニフェストを交付することができます。また、この場合の産業廃棄物の種類の記載は、「廃パソコン」などのように一般的な名称を記載することができます。なお、交付すべきマニフェストの様式が定められていますが、その様式は、本マニュアルの末尾に添付しています。
  4.  引越を発注する事業者は、マニフェストを産業廃棄物の種類ごとに交付し、また、運搬先が複数ある場合には運搬先ごとに交付しなければなりません(法施行規則第8条の20第1号、第2号)。
  5.  この交付の際には、引越を発注する事業者は、産業廃棄物の種類、数量及び受託した者の名称等がマニフェストに記載された事項と相違がないことを確認して交付しなければなりません(法施行規則第8条の20第3号)。
     さらに、引越を発注する事業者は、交付したマニフェストの控えを、運搬を受託した産業廃棄物収集運搬業者、処分を受託した産業廃棄物処分業者からマニフェストの写しの送付があるまでの間保管しなければなりません(法施行規則第8条の20第6号)。
  6.  マニフェストの交付をしなかったとき、必要な事項の記載もれや虚偽記載があったときは、直接罰則が課されることがあります。加えて、不法投棄等された場合には、不適正処理を行った者と同様に、撤去などの原状回復をする責任を法に基づき問われることがあります(法第19条の5第1項)。
  7.  交付されたマニフェストの写しが、運搬を受託した産業廃棄物収集運搬業者、処分を受託した産業廃棄物処分業者から送付されることに関しては、次の4.2に記述します。
  8.  なお、パソコンなどの一部情報通信機器については、当該機器のメーカーが回収・再生利用を実施するため、環境大臣の広域再生利用指定を受けている(末尾に付された表1の脚注を参照して下さい)場合には、メーカーに委託することができますが、この場合にはマニフェストの交付は不要となります。

4.2 処理の確認

 引越廃棄物の引渡しの際に交付されたマニフェストについては、引越廃棄物が産業廃棄物収集運搬業者により処分先まで運搬されたときは、排出事業者である引越を発注する事業者のところに、運搬の終了日などが記載されて、マニフェストの写しが戻ってきます。この運搬完了のマニフェストの写しが送付されたことにより、引越を発注する事業者は、当初の処分先に搬入されたかどうかを確認してください。

 また、引越廃棄物の処分を委託した産業廃棄物処分業者による処分が完了したときは、引越を発注する事業者のところに、処分の終了日などが記載されて、マニフェストの写しが戻ってきます。この処分完了のマニフェストの写しが送付されたことにより、引越を発注する事業者は、当初の処分が完了したかどうかを確認してください。

 さらに、最終的に埋立処分などがされる場合には、引越を発注する事業者のところに、埋立処分された場所などが記載されて、マニフェストの写しが戻ってきます。この最終処分完了のマニフェストの写しが送付されたことにより、引越を発注する事業者は、当初の最終処分が完了したかどうかを確認してください。

 もし、これらのマニフェストが送付されない場合には、引越を発注する事業者は、収集運搬、処分を委託した産業廃棄物処理業者に運搬、処分、最終処分の状況について確認、把握し、都道府県に報告することが必要となります。

[解説]

  1.  引越を発注する事業者から、産業廃棄物の引渡しと同時にマニフェストの交付を受けた産業廃棄物収集運搬業者は、運搬が終了したときは、運搬担当者の氏名、運搬終了日等をマニフェストに記載し、そのマニフェストの写しを引越を発注する事業者に送付します。また、産業廃棄物収集運搬業者は、マニフェストを処分を委託された産業廃棄物処分業者に回付します(法第12条の3第2項)。
  2.  引越を発注する事業者から、産業廃棄物の処分を受託した産業廃棄物処分業者は、処分が終了したときは、処分担当者の氏名、処分終了日等を産業廃棄物マニフェストに記載し、そのマニフェストの写しを引越を発注する事業者に送付します(法第12条の3第3項)。
  3.  また、引越を発注する事業者は、産業廃棄物処分業者に産業廃棄物の中間処理(焼却、破砕など)を委託する場合には、中間処理後の産業廃棄物(燃え殻、破砕したものなど)が最終処分される場所の所在地をマニフェストに記載します(法第12条の3第1項、法施行規則第8条の21)。
     引越を発注する事業者から、中間処理の委託を受けた産業廃棄物処分業者は、中間処理後の産業廃棄物の最終処分を行う最終処分業者より最終処分が終了したことが記載されたマニフェストの写しの送付を受けたときは、引越を発注する事業者から交付されたマニフェストに最終処分の場所の所在地及び最終処分の終了年月日を記載し、そのマニフェストの写しを引越を発注する事業者に送付します(法第12条の3第4項)。
  4.  このように引越を発注する事業者が交付したマニフェストについては、運搬の終了及び処分(中間処理及び最終処分)の終了後に、運搬及び処分のそれぞれの受託者から、引越を発注する事業者に対して、運搬が終了した旨を記載したマニフェストの写し、中間処理が終了した旨を記載したマニフェストの写し及び最終処分が終了した旨を記載したマニフェストの写しが順次送付されてきます。したがって、引越を発注する事業者は、これらのマニフェストの写しとマニフェストの控えにより、委託内容どおりに産業廃棄物が運搬及び処分されたことを確認するとともに、送付されたマニフェストの写しを交付の日から5年間保存しなければなりません(法第12条の3第5項)。
  5.  もし、運搬終了と処分終了のマニフェストの写しが、交付の日から90日(有害な産業廃棄物である特別管理産業廃棄物の場合には60日)以内に送付されない場合には、引越を発注する事業者は、速やかに委託した産業廃棄物の運搬又は処分の状況を把握するとともに、生活環境保全上の支障の除去又は発生の防止のために必要な措置(具体的には、処理委託や産業廃棄物の引渡しの中止、すでに委託した産業廃棄物の現状把握など)を講じ、さらにその講じた措置等を都道府県知事に30日以内に報告しなければなりません(法第12条の3第7項)。
     引越を発注する事業者が、産業廃棄物処分業者に中間処理を委託し、中間処理後の産業廃棄物が最終処分される、前記3.の場合は、最終処分終了のマニフェストの写しが送付されます。このとき、マニフェストの交付の日から180日以内に送付されない場合には、引越を発注する事業者は、速やかに委託した産業廃棄物の運搬又は処分の状況を把握する等の前記の措置を講じなければなりません。
     また、運搬終了日や処分終了日など記載されていなければならない事項が記載されていないマニフェストの写しや、虚偽の記載のあるマニフェストの写しの送付があった場合についても同様の措置を講じなければなりません。
  6.  なお、仮に、産業廃棄物の不法投棄などの不適正処理が行われた場合、引越を発注する事業者が直接不適正処理を行っていなくても、マニフェストに関して法違反があれば、不適正処理を行った者と同様に、撤去などの原状回復をする責任を法に基づき問われることがあります(法第19条の5第1項)。

 


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5.家庭の引越廃棄物の処理

5.1 引越廃棄物を排出する者の役割

 家庭の引越の際には、様々な廃棄物が発生します。特に、日ごろ使っていない物が引越の機会に一度に大量に廃棄されることが多いと考えられます。

 引越をする家庭の方にあっても、自らが排出する引越廃棄物が適正に処理されるよう、市町村の指示に従って排出するなど、責任ある対応をしていただくことが必要です。引越をする家庭の方は、あらかじめ引越の際に不要とするものを調べておき、できる限り引越前に、家具などの大きなものは市町村が行う粗大ごみの収集に、また、家電製品のうちテレビ、エアコン、冷蔵庫及び洗濯機であれば家電リサイクルルートに、それぞれ出してください。

 また、その他の引越廃棄物についても、市町村の分別収集の指示に従って出してください。

[解説]

  1.  引越をする家庭の方は、引越時に排出されることが見込まれる廃棄物を事前に選定し、予定している引越の日の前から、引越廃棄物の処理を計画的に進められるようお願いします。
  2. また、不要となった家電製品のうちテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の4品目については、家電リサイクル法に基づいて小売店等に引き渡すことが必要となります。小売店が引取義務を負うのは、自らが過去に販売した製品の引取りを求められた場合、又は、製品の販売に際し同種の製品の引取りを求められた場合です。それ以外の場合には、地域により取扱いが異なりますのでお住まいの市町村へお問い合わせください。
  3.  家庭から発生する引越廃棄物は一般廃棄物に該当し、これを第三者に引き渡して処理する場合、処理を行う者は法第7条に基づく一般廃棄物処理業の許可を必要とします。引越請負業者が一般廃棄物処理業の許可を有していない場合には、原則として、家庭から排出される引越廃棄物を引き取って運搬や処分をすることはできません。  ただし、引越をする家庭の方の事情から、引越廃棄物をどうしても市町村の指示どおりに排出しがたい場合又は自ら市町村の処理施設まで運搬しがたい場合であって、引越をする者から引越請負業者に対し、[1]引越廃棄物を引越請負業者が管理する所定の場所まで運搬すること、[2]引越廃棄物を所定の場所において市町村又は一般廃棄物収集運搬業者に引き渡すこと、の2点が書面で委任されている場合にあっては、これに従って引越廃棄物を所定の場所まで運搬することは可能です。
  4.  なお、引越請負業者が、引越用に用意したダンボール箱などの梱包資材を回収する場合(5.2を参照してください。)、又は、書類等古紙を紙製品の原材料としてリサイクルするために回収する場合については、引越請負業者が当該廃棄物を引き取ることは可能です。

5.2 引越請負業者の役割

 家庭の引越の場合も、事務所の引越の場合と同様、引越請負業者の役割として、引越の際に引越請負業者が用いる資材が不要となった場合の処理に関することがあります。

 引越請負業者が用いる養生用の資材や梱包用の資材が不要となったものは、引越請負業者が排出する廃棄物として処理することが原則です。このうち、繰り返し使用することができるものは、再使用するよう努めて下さい。

ダンボールのように荷物を梱包する資材については、荷物を開梱するまでは排出されないため、引越をする家庭の方が開梱を行う場合には、引越業務中に排出されず、引越を行う家庭が排出する廃棄物となることがあります。一方で、引越業務終了後でも、引越請負業者がこうした資材を回収し、自らの提供した資材であるから自らの廃棄物として処理したり、再使用できる段ボールなどは再使用することがあり、こうしたことは望ましいことといえます。今後は、ダンボール箱などの梱包資材の再使用という観点からも、積極的に引越請負業者が回収することを検討することが重要です。

[解説]

 


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6.おわりに

 引越廃棄物は、大量に発生しますし、引越先に持っていく必要のないものです。事務所の引越、家庭の引越、どちらの場合も、その処理は引越する側からみれば、大変面倒なものですから、引越請負業者に頼んで、後は知らないとなりがちです。

 けれども、面倒でも、事務所の事業者の方には法に定められた排出事業者の処理責任があります。また、引越請負業者の方にあっては、引越業務の一環で不要物の引取りを行うことが見られますが、この場合においても、処理責任をあいまいにせず不適正な処理を引き起こすことがないよう努める必要があります。

 そこで、本マニュアルを参考としていただき、事務所の事業者の方、家庭の方、引越請負業者の方がそれぞれの役割を担って、引越廃棄物の取扱いを適切に行っていただくようお願いいたします。

 本マニュアルについては、今後とも、よりわかりやすくするという観点から必要な修正を適宜行っていきたいと考えています。


表1 事務所の引越廃棄物の種類と主な処理先

種類 具体例 区分 主な処理先(誰に委託すればよいか)
家具類 事務用・応接用の机、椅子、本棚、ロッカー、カーペット等 材質に応じ、産業廃棄物である金属くず、廃プラスチック類、ガラス・陶磁器くずに該当 これらの産業廃棄物について許可を有する産業廃棄物処理業者に委託

市町村で粗大ごみとして受け入れている場合もある

金属、廃プラスチック、ガラス、陶磁器と木製又は繊維製若しくは皮製のものの複合製品は、総体として産業廃棄物に該当
上記以外の木製の机、椅子などのものは、一般廃棄物に該当 市町村又は市町村の許可業者に委託
電気機器 コンピューター、プリンター、ケーブルその他の附属機器(情報通信機器)注1 材質に応じ、産業廃棄物である廃プラスチック類、金属くず、ガラス・陶磁器くずに該当 一部のパソコン等のメーカーでは環境大臣の指定注1を受けて回収・再生利用を実施しているので、これらのメーカーに委託することが可能

 または、これらの産業廃棄物について許可を有する産業廃棄物処理業者に委託

テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機(家電4品目) 材質に応じ、産業廃棄物である廃プラスチック類、金属くず、ガラス・陶磁器くずに該当 家電リサイクル法に基づき購入した小売店に引き渡す

これが困難な場合は、産業廃棄物について許可を有する産廃処理業者に委託

掃除機、扇風機、VTR等(その他の電気製品) 材質に応じ、産業廃棄物である廃プラスチック類、金属くず、ガラス・陶磁器くずに該当 これらの産業廃棄物について許可を有する産業廃棄物処理業者に委託

市町村で受け入れている場合もある

その他 パンチ、バインダー等 産業廃棄物である金属くず、廃プラスチック類に該当 これらの産業廃棄物について許可を有する産業廃棄物処理業者に委託

中小規模事業所を中心に市町村で受け入れている場合もある

書類等 雑誌、書籍、書類 通常注2の業務で不要とされるものは、一般廃棄物に該当 他の不要物と分別して、紙類について古紙回収業者に委託

注1:製品のメーカー等が、廃製品の回収・再生利用を全国的に行う場合に環境大臣が指定する仕組み(広域再生利用指定制度)の対象となるものとして、事務所から排出されるパソコン等の情報通信機器を中心に、平成15年1月17日現在で、日本電気㈱、セイコーエプソン㈱、カシオ計算機㈱、ソニー㈱、シャープ㈱、松下電器産業㈱、デルコンピューター㈱、㈱日立製作所、日本アイ・ビー・エム(株)、㈱東芝が環境大臣の指定を受けています。対象機器、対象地域はメーカーにより異なるので、詳細については各メーカーにお問い合わせください。

注2:製紙工場、印刷工場などから出てくるものは産業廃棄物に該当します。