報道発表資料本文

(別添)

新石垣空港整備事業に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見


 新石垣空港整備事業実施区域及びその周辺地域では、ヤエヤマコキクガシラコウモリ、カグラコウモリ、リュウキュウユビナガコウモリ(以下、これら3種を「小型コウモリ類」と言う。)、カンムリワシ、コガタハナサキガエル、オカヤドカリ類等の希少種、固有種が生息・生育しており、また、前面の海域には北半球で最大級の規模であると言われているアオサンゴ群集を含むサンゴ礁生態系が広がっている。
 本事業の実施に当たっては、小型コウモリ類やサンゴ礁の保全をはじめとして、これら希少な生物や生態系の保全を図るため、本事業の環境影響評価書について、下記のとおり意見を述べる。
  1. 小型コウモリ類への影響

     当該地域の洞窟群を利用している小型コウモリ類個体群(集団)は、石垣島全体の個体群の相当な割合を占めることから、その個体群の繁殖に重大な支障が生じた場合、石垣島の全個体群の存続に著しい影響を及ぼすおそれがある。このため、事業実施に当たっては、当該洞窟群を利用している小型コウモリ類に与える影響を可能な限り回避又は低減する必要がある。
     以上の観点から、以下の措置を講じること。
    (1)小型コウモリ類が出産・ほ育の場として利用しているA洞窟及びD洞窟については、その保全に万全を期すること。
    (2)本事業の実施に伴い消失するとしているB洞窟、C洞窟及びE洞窟については、できる限り小型コウモリ類が継続してこれらの洞窟を利用できるよう、実態、機能等について専門家の指導・助言を得た上で、可能な限り保全すること。また、検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。
    (3)事業実施区域及びその周辺で、A〜E洞窟以外に確認されている洞窟については、小型コウモリ類の利用について、追加調査を行うこと。調査の結果、小型コウモリ類の利用が確認された場合は、できる限り小型コウモリ類が継続してこれらの洞窟を利用できるよう、専門家の指導・助言を得た上で、可能な限り保全すること。また、検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。
    (4)ヤエヤマコキクガシラコウモリが出産・ほ育を行うA洞窟奥部の上部にドレーン層が設置される場合は、A洞窟奥部の地下水に影響を及ぼすことがないよう、ドレーン層の位置、浸透方法についてさらに検討を行い、それらの見直しを含めた適切な措置を講じること。また、検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。
    (5)小型コウモリ類が生息する洞窟の周辺において樹林、草地等の改変を行う場合には、移動経路及び餌場を確保すること。また、移動経路及び餌場が出来る限り早く確保されるよう樹林、草地等の改変の工程を工夫すること。これらの検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。
    (6)本事業の実施に当たっては、専門家の指導・助言を得た上で、工事の施工方法、時期等を検討し、これら小型コウモリ類の生息環境に急激な変化を与えないように配慮すること。特に、工事中の騒音・振動に対する環境保全措置については、小型コウモリ類の出産・ほ育の時期における工事を避けることも含め、適切な措置を講じること。
      また、これらの検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。
    (7)事後調査については、事業実施区域及びその周辺区域の小型コウモリ類が利用する洞窟を対象とし、調査項目に工事中及び航空機の離発着による騒音・振動を加えること。事後調査の結果により影響が著しいと判断される場合は、専門家の指導・助言を得た上で、適切な措置を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。
    (8)今後、新たに、事業実施区域及びその周辺で洞窟が確認された場合は、すでに確認されている洞窟と同様に小型コウモリ類の利用について調査を行い、利用が確認された場合は、できる限り小型コウモリ類が継続してこれらの洞窟を利用できるよう、専門家の指導・助言を得た上で、可能な限り保全すること。また、その旨を評価書に記載すること。
    (9)人工洞窟については、専門家の指導・助言を得た上で、補正評価書の公告後のできる限り早い段階で設置すること。また、小型コウモリ類の習性を踏まえ、他の洞窟の形状及び気温・湿度等の生息条件、周辺の地形・地質や植生などの立地条件等を考慮しつつ、適切なものを整備すること。
    (10)小型コウモリ類の保全については、事業実施区域や事業者が取得する地域の周辺の洞窟の保全や採餌場としての林地の保全等周辺の土地利用が極めて重要であり、小型コウモリ類の生息に影響を与えないような土地利用が図られるよう、小型コウモリ類の保全、保全に関する情報の提供、石垣市や沖縄県等の関係機関への要請などを行うこと。また、その旨を評価書に記載すること。


  2. サンゴ礁生態系への影響

     濁り、栄養塩などの水質の変化、赤土等の堆積がサンゴ礁生態系に影響を与えることが懸念されるため、以下の措置を講じること。
    (1)事業実施区域及びその周辺区域への降雨及び流入水が、轟川に流入し、又は海域に浸出する経路及びその量について把握し、その結果を評価書に記載すること。
    (2)濁水をそのまま地下浸透することにより赤土等を除去する手法については、浸透ゾーンとして予定している場所における浸透の状況、浸透させようとする濁水の濁度、浸透能やその低減の程度等を把握した上で、浸透ゾーンの浸透能、ろ過機能等の評価を行い、集水計画、浸透ゾーンの容量及び調整池の必要性、濁水の前処理の必要性などを検討すること。さらに、計画どおりの浸透能を維持していくための浸透ゾーンの管理、降雨前の集水施設の点検、降雨中の監視など、施設の管理方法についても検討を行うこと。また、これらの結果を評価書に記載すること。
    (3)河川を通じて海域にもたらされる赤土等による濁り、堆積の影響については、現在の土地利用において当該事業区域及び事業区域上流から轟川に流出している赤土等の濃度及び総量を調査し、これらバックグラウンドとの比較や事業区域からの現在の赤土等の流出との比較により、本事業による影響の評価を行うとともに、機械処理設備からの排水濃度について検討を行うこと。また、降雨前の集水施設の点検、降雨中の監視を含めた機械処理設備の管理方法についても検討を行うこと。これらの結果を評価書に記載すること 。
    (4) 地下水については、濁りの変化について事後調査を実施すること。また、調査の結果、著しい変化が認められる場合には、地下浸透を一時中断する、調整池等に濁水を貯留するなど、適切な赤土等流出防止対策を講じること。その旨を評価書に記載すること。
    (5)サンゴ類、海草藻類等の海域生物及び海域生態系の環境監視については、調査監視項目に赤土等の堆積量(SPSS)を加えるとともに、トゥールグチから轟川河口南側の海域も含め、調査地点を設け、年間を通じた調査及び大規模な降雨後の調査を行うこと。また、その旨を評価書に記載すること。
    (6)本事業の実施にあたっては、自らの流出防止対策を実施するとともに、調査結果の提供など関係者への働きかけを行うなど関係者と一体となって、赤土等流出防止対策を行うこと。また、その旨を評価書に記載すること。
    (7)旅客ターミナルから発生する汚水の処理について、全窒素(TN)、全燐(TP)の処理能力を持つ浄化槽を設置すること。また、その旨を評価書に記載すること。


  3. その他の重要な生物への影響
    (1)環境監視については、カンムリワシに加えてリュウキュウツミ及びズグロミゾゴイを対象種とし、これら3種の監視項目については、カンムリワシと同様の項目に航空機騒音の影響を加え、専門家の指導、助言を得た上で、繁殖期を含めた適切な時期に実施すること。また、その旨を評価書に記載すること。
    (2)各工区において工事に着手する際には、事前に、工事区域及びその周辺区域においてこれらカンムリワシ、リュウキュウツミ、ズグロミゾゴイの営巣の有無について確認調査を行い、営巣が確認された場合には、専門家の指導、助言を得た上で、適切な措置を講じること。また、この旨を評価書に記載すること。
    (3)繁殖のため陸域から海域に移動するヤシガニ、オカヤドカリ類については、専門家の指導、助言を得た上で、移動経路の位置及び構造等についてさらに検討し、必要に応じて新たな移動経路を確保するなど、適切な措置を講じること。また、検討の過程及び講じる措置を評価書に記載すること。
      また、事後調査を実施すること。その旨を評価書に記載すること。
    (4)生息地の消失に伴いビオトープや生息適地への移動を図るとしているハナサキガエル類、コガタノゲンゴロウ、サキシマヌマエビ、オカイシマキガイ、ムラクモカノコガイ、コハクカノコガイについては、段階的に移動を行うことも含め、移動先、移動時期、方法等について事前に検証を行いつつ、実施すること。また、ボックスカルバートに工事の濁水が流れ込み、ビオトープに甚大な影響を与えることがないように、濁水の管理を行うこと。これらについてはその旨を評価書に記載すること。
    (5)今後、重要な生物が新たに確認された場合は、専門家の指導、助言を得た上で、必要な調査を実施するとともに、適切な措置を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。


  4. その他
    (1)空港管理用車両及び作業用の車両について、二酸化炭素の排出の少ない車両の導入に努めること。また、空港利用事業者等に対して、航空貨物取扱自動車等関連車両に二酸化炭素の排出の少ない車両の導入に努めること、地上動力支援施設(GPU)の設置に努めること等を要請すること。
    (2)今後、環境影響評価の前提となった飛行経路等に変更があり航空機騒音による影響が拡大することが懸念される場合には、必要に応じて、環境への影響を改めて予測、評価し、所要の措置を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。



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