(別紙1)
国際自然保護連合(IUCN)からの書簡について
(経緯)
- 平成16年7月20~26日にかけて、国際自然保護連合(IUCN)のデビッド・シェパード保護地域事業部長が来日し、現地調査を実施した。
- 今般、IUCNから届いた書簡は、推薦地域の重要性や陸域部分の管理レベルについて高く評価するとともに、IUCNが世界遺産委員会の事務局であるユネスコ世界遺産センターに提出する知床の評価報告書の準備に当たって、IUCNの関心事項について追加コメントを伝え日本政府の考え方を求めるものとなっている。
1.IUCNからのコメント概要
(1)推薦地の海域部分
- 短期的には、推薦地域内(海岸線から1km以内の国立公園普通地域内)において、保護のレベルを高めること。推薦地を特徴づけている野生生物を保護していくためには、それらの餌資源となっているスケトウダラなど、主要魚種について、その繁殖、産卵、生育場所の保護を確実に目指すべき。
また、主要魚種の生活史に関する分析と保護手法の検討にあたっては、できる限り最高の科学的知見に基づくべきであり、そのプロセスには漁業産業の合意と参画が必要。
- 長期的には、推薦地及びその周辺地域における代表的海洋保護区の設定に向け、オホーツク海及び根室海峡における主要魚種の繁殖及び採餌のための生息地について調査を行うこと。その際には、最高の科学的知見に基づくとともに、世界の他地域における事例を利用できる。
(2)推薦地内の河川工作物
- サケへの河川工作物による影響調査を急ぐこと、管理の目的を河川本来の流れとプロセスの回復と維持に置くことを提案する。これには、人間の福祉や生活に深刻な危険を及ぼさない場合には河川工作物を将来的に撤去することをも含む。その上で、推薦地内に存在する全ての河川工作物に関して、サケの自由な移動ができるよう、所要の魚道を設置することについて政府の確約を求める。
(3)その他
今回送付のあった書簡ではコメントがなかったものの、7月26日の評価ミッション最終日に非公式の意見として以下のコメントがあった。
- 世界遺産に登録されれば、利用者が増加し、観光管理の問題が出てくるので、エコツーリズムに関する戦略を早急に開発すること。その際には研究成果に基づく登山道の管理戦略、国立公園のゾーンに応じた利用、他地域への利用分散などを検討することが必要。
- エゾシカの管理については、調査研究に基づく明確なポリシーが必要。
- 世界遺産に登録されたら、管理のための指標や水準(ベンチマーク)を開発し、管理計画に組み込むことが必要。
2.今後の予定
- IUCNは、今後、日本政府との協議や各分野の専門家からの意見聴取を経た上で、本年12月頃にIUCNとしての評価を確定し、来年2月末までにユネスコ世界遺産センターへ報告書を提出する予定。
- その後、その報告書を基に、来年7月に南アフリカのダーバンで開催される世界遺産委員会で登録の可否が決定される予定。