報道発表資料本文

「移入種対策に関する措置の在り方について」
移入種対策小委員会中間報告の概要



1.現状と問題

(1) 問題に係る基本認識
  外部から導入される生物種は、ある地域に人為的に導入された又は導入される種(亜種又は変種を含む。)で、当該地域を自然分布域とする在来種のいずれにも属しない種として捉えられる。
  こうした生物種を表す用語は、これまで「外来種」と「移入種」が使用されているが、生物学用語との整合の観点から本報告では原則として「外来種」を用いることとし、国内のある地域から他の地域に導入される生物種についても「外来種」として取り扱う。
  既存文献によれば、現在、我が国では少なくとも脊椎動物で108種、昆虫類で246種、維管束植物で1,553種の外来種が定着しているとされている。
 
(2) 外来種による問題点と事例
  外来種による影響は、マングースやオオクチバスによる在来種の捕食、ノヤギによる採食や踏みつけによる自然植生への影響、在来種との競合・駆逐などの生物多様性への影響、人の財産等(農林水産業等)への影響、人の健康への影響等がある。
  外来種は、定着から一定期間を経過した後、急激に分布を拡大することがあり、一度蔓延してしまうとその駆除には困難な点が多い。
 
(3) 外来種の導入経路
  悪影響を及ぼしている外来種の中には、人間が意図的に放出したもの、過失により野外に逸出してしまったもの、人や物の移動に伴って非意図的に導入したものがある。
 
(4) 外来種対策に関する近年の動向
  平成14年3月に決定した新・生物多様性国家戦略において、移入種問題を我が国の生物多様性の危機の一つと位置付け、取組を着実に進めていくことが必要としているとともに、平成15年3月に閣議決定した「規制改革推進3ヶ年計画」で、外来種対策について法制化も視野に検討することとされた。
  平成13年の内閣府世論調査において、移入種問題に関する国民の関心が高まっていることがうかがえた。
 
(5) 外来種対策に関する取組の現状
  海外から持ち込まれる動植物に対し、植物防疫法や感染症法等の既存の制度が、国内における生物の取扱いに関して、動物の愛護及び管理に関する法律等があるが、これらは人の健康の保護や産業の振興等を目的としたものである。
 
(6) 外来種対策に関する課題
  既存制度には、生物多様性の保全をも対象とした制度はない。
  外来種の問題について、国民や業者の理解が希薄である。


2 外来種対策に関する措置のあり方

(1) 基本的考え方
  生物多様性条約締約国会議の指針原則での侵入の予防、早期発見・早期対応、防除(影響緩和)は、我が国における外来種対策の考え方としても基本となる。
  悪影響のある外来種の導入、定着を予防することが、環境の面からも費用対効果の観点からも、望ましい措置であり、侵入した場合は早期排除が効果的である。
  我が国では、過去から多くの外来種が移入し、長い時間をかけて共存したものがあるが、その一方で、生物多様性や農林水産業等への影響を生じており、特に、こうした影響が懸念される侵略的な外来種に対する制度的な措置を検討すべきである。

(2) 制度化に当たり検討すべき事項
  [1] 我が国に新たに外来種を持ち込もうとする者に、当該外来種の生態等の基礎的情報を提出させ、国が当該外来種の生物多様性等への影響の可能性を評価する。悪影響と判定された種の輸入については、適正な管理を実施できることが公的に確認されている者以外には認めない。
  [2] 悪影響と判定された種については、在来種との接触が発生しないよう、その種の個体を利用しようとする者が適正な管理ができる施設や能力を有するか公的に確認するとともに、利用状況が確認できるような仕組みを設ける。
  [3] 既に定着し問題を生じているか、あるいはそのおそれが高い外来種については、計画的に防除実施できる仕組みを設ける。国が全国的な観点から防除に係る基本的な事項を示すとともに、防除が必要な地域毎に国及び地方公共団体が防除実施計画を策定する。
  [4] 固有種が多く生息するなど、生物多様性の観点から、特に外来種による影響を防止することが必要な地域に関しては、別途、当該地域の特別な管理ができるようにするための措置を検討する。
  [5] 我が国に持ち込まれた外来種について、生物多様性等への影響の観点から、その状況を監視し、問題が生じた場合には緊急的な防除など早期の対応がとれるようにする。
  [6] 外来種対策の重要性と制度の内容について国民に分かりやすく普及啓発を図るとともに、移入種に係る定着状況、生態的特性等に係る調査研究を推進する。
 
(3) 制度化及び対策の実施に当たって配慮すべき事項
  [1] 制度化及び対策の実施に当たっては、現在の科学的知見、実行可能な実施体制等を勘案の上、優先度の高いものから早急に措置を講ずることが重要である。
  [2] 外来種対策制度の構築に当たっては、関連する既存の諸制度との整合性に留意しつつ、外来種問題への対処を進める見地から連携・協力体制を構築し、総合的に効果的な対策を推進することが必要である。
  [3] 外来種の防除が必要な事態になっている現状について、本来管理下にあれば失われない生命であることを十分認識し、今後の制度構築に際しては、予防的な観点から検討することが極めて重要である。
  [4] 輸入に関する制度を検討する際には、加盟国間の貿易関係を規律する世界貿易機関(WTO)との関係について留意する。



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