報道発表資料概要

  2.平成14年度の調査結果について(概要)


 対象試料の分析は、各分析機関に対して推奨した方法(注1)により行った。
 全体の参加申込機関は、地方公共団体及び民間の分析機関を併せて496機関(内地方公共団体96機関)あり、このうち回答のあった機関は477機関(内地方公共団体95機関)であった。各試料毎の参加機関及び回答機関数については、表1のとおりである。
 土壌試料(重金属3項目)、水質試料(内分泌攪乱作用が疑われる物質5項目)、水質試料(揮発性有機化合物3項目)、大気試料(揮発性有機化合物4項目)及びばいじん試料(ダイオキシン類の毒性当量(TEQ:注2))の代表的なヒストグラムは図1~5のとおりである。また、外れ値等を棄却(注3)後、基本的な統計量(平均値、室間精度(CV:注4))、最小値、最大値及び中央値を算出した(表2)。
 平成14年度は、昨年度に引き続き統計処理手法を導入した高度解析を鉛、ノニルフェノール、ジクロロメタン及びダイオキシン類について実施した。高度解析の結果は、「平成14年度環境測定分析統一精度管理調査結果」に記載しており、環境測定分析統一精度管理調査ホームページ(http://www.seidokanri.jp/)に掲載する。
 各試料についての結果概要を示す。
(1) 土壌試料(重金属)
   外れ値等により棄却される回答は、カドミウムが23%、その他は数%程度であった。また、棄却後の室間精度(CV)はカドミウムが34%、その他は20%程度以下であり、全項目ともほぼ左右対象なヒストグラムを示した。カドミウムでばらつきが大きかったのは、低濃度における分析方法の選定が適切でなかったこと、試料中に含まれる鉄やアルミニウムなどによる干渉が大きいことが原因と考えられる。また、土壌試料で3回の分析依頼を実施したところ、全項目において室内精度(CV:注4)が悪くなると室間精度も悪くなる傾向があった。
(2) 模擬水質試料(内分泌攪乱作用が疑われる物質及び揮発性有機化合物)
   内分泌攪乱作用が疑われる物質の5項目については、外れ値等により棄却される回答は数%~10%であった。棄却後の室間精度(CV)は10~30%程度で幅があり、物質によりヒストグラムは様々な形状を示した。フタル酸ジ-n-ブチルでは、昨年度と比較して良好な結果が得られたが、この原因については、推奨法に示された抽出濃縮及び揮発濃縮などがより適切に実施されたことが考えられる。
 揮発性有機化合物の3項目については、外れ値等により棄却される回答数は、全項目ともに数%程度であった。棄却後の室間精度(CV)は全項目ともに20%程度~30%であり、ほぼ左右対称なヒストグラムを示しており、昨年度と比較して良好な結果が得られた。この原因については、標準溶液を試料とともに配布して分析を行ったことが考えられる。
(3) 模擬大気試料(揮発性有機化合物)
   従来は活性炭吸着等により調査を実施していたが、本調査で初めてキャニスターを用いて大気試料として調査を実施した。外れ値等により棄却される回答は、全項目ともに数%であった。また、全項目ともに棄却後の室間精度(CV)は20~30%であり、ほぼ左右対称なヒストグラムを示しており、比較的良好な結果が得られた。この原因については、試料の濃度が環境基準値程度であり、通常測定している濃度レベルと比較して高濃度であったことが考えられる。
(4) ばいじん試料(ダイオキシン類及びコプラナーPCB)
   A~Dの4種類の試料の中で、外れ値等により棄却される回答は、ダイオキシン類異性体、同族体、コプラナーPCB異性体及びTEQにおいて、数%~40%程度であった。棄却後の室間精度(CV)についても、ダイオキシン類異性体、同族体、コプラナーPCB異性体及びTEQで10~70%程度であり、ヒストグラムについても様々な形状を示し、過去の結果と比較してあまり良好ではない結果であった。この原因としては、ばいじん試料であるために低濃度試料としての扱いをせずに分析した機関が多かった、試料の配布方法を従来と変えた(濃度の異なる4種類のばいじん試料から2種類をランダムに配布した)ことなどが考えられる。
 
(注1)分析方法
 [1] 重金属(カドミウム、鉛及び水銀)
   「底質調査方法」(昭和63年環境庁水質保全局水質管理課)に定める方法等
[2] 内分泌攪乱作用が疑われる物質(フタル酸ジ-n-ブチル、ノニルフェノール、4-t-オクチルフェノール、4-n-オクチルフェノール及びエンドスルファン)及び揮発性有機化合物(エチルベンゼン、塩化アリル及び塩化ビニル)
   「外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル(水質、底質、水生生物)」(平成10年環境庁水質保全局水質管理課)に定める方法又は「要調査項目等調査マニュアル(水質、底質、水生生物)」(平成11年3月環境庁水質保全局水質管理課)に定める方法等
[3] 揮発性有機化合物(ベンゼン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン及びジクロロメタン)
   「ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準について」(平成9年環境庁告示第4号)に定める「容器(キャニスター)採取-ガスクロマトグラフ質量分析法」に定める方法等
[4] ダイオキシン類(ダイオキシン類及びコプラナーPCB)
   「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」(平成4年厚生省告示第192号別表第1)に定める方法等
  
(注2)毒性当量(TEQ)
 ダイオキシン類等の量をダイオキシン類の中で最強の毒性を有する2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(2,3,7,8-TeCDD)の量に換算した量として表していることを示す記号。

(注3)外れ値等の棄却
 両試料の結果とも、分析結果については次のように外れ値を棄却した。((イ)を除いた後、(ロ)を除き、あわせて「外れ値等」とした)
(イ) 「ND」、「○○以下」又は「0」で示されているもの
(ロ) Grubbsの方法により、両側確率5%で棄却されるもの
数値的な外れ値の検定方法であり、JIS K 8402及びISO 5725に規定されている一般的な方法である。
  
(注4)室間精度(CV)、室内精度(CV)
 室間精度は同一試料の測定において、異なる試験室おける測定値の精度をいう。一方、室内精度は同じ試験室における測定値の精度をいう。精度は、測定値のばらつきの程度であり、通常は標準偏差(SD)及び変動係数(相対標準偏差、CV)で表す。なお、過去の調査事例等を考慮し、室間精度(CV)が20%台までの場合は「良好な結果」であると考えられる。




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