報道発表資料本文

第11回アジア・太平洋環境会議(エコアジア2003)議長サマリー
(仮訳)
2003年6月7日 神奈川

はじめに
  
(1)   第11回アジア・太平洋環境会議(エコアジア2003)は、環境省の主催により、2003年6月7日に、5名の大臣を含む20か国の政府高官及び12国際機関の代表者を始めとする多数の参加を得て、神奈川県において開催された。
(2)   本会議の目的は、アジア・太平洋環境会議を、持続可能な開発に関するアジア太平洋地域の閣僚レベルでの意見発信の場のひとつとして位置付け、ヨハネスブルグサミット後の持続可能な開発に関する本地域の取組を評価するとともに、今後の地域協力の方向性について討議することであった。こうした目的に沿って、以下のような議論が行われた。
(3)   会議の議長は、鈴木俊一環境大臣が、副議長は、マレーシアのラウ・ヒン・ディン科学技術環境大臣及びラオスのブンティエム・ピッサマイ内閣府大臣兼科学技術環境庁長官が務めた。
  
  
循環型社会実現のための取組
  
(4)   今回の会合では、まず、開催地の地元自治体の神奈川県から環境政策の発展の歴史と国際環境協力の取組、横須賀市から廃棄物・リサイクル対策の取組、葉山町から清流づくりに向けた取組が紹介された。続いて、各国から多様な循環型社会構築への取組及び国際協力の取組が紹介された。また、日本国環境省からは、循環型社会形成推進基本計画を紹介し、2003年6月1-3日にフランスのエビアンにおいて開催されたG8サミットにおいて策定された持続可能な開発のための科学技術行動計画にも盛り込まれた、循環型社会構築のための「資源生産性」向上の重要性を提示した。
(5)   このような取組を進めるに当たっては、次のような点が重要であることが確認された。
    環境政策を経済政策及び社会政策へ統合していくこと。
    循環型社会の構築のために、森林保全及び水を含む天然資源管理、廃棄物・リサイクル、並びに越境環境問題に関する施策の着実な実施を図っていくこと。
    アジア太平洋地域及び地球規模での、各主体によるパートナーシップ及び参加の促進、並びに協力の推進、特に能力開発、人材開発及び資金面における協力を推進すること。
(6)   アジア太平洋地域の沿岸部や島嶼諸国、山岳部は気候変動の影響に対し、特に脆弱であることが指摘された。また、南太平洋の島嶼諸国を含むアジア太平洋地域における温暖化対策を推進することの重要性が指摘された。多くの参加者は、地球温暖化に対応するために、京都議定書の重要性を確認した。さらに、エコアジアで各国・機関の取組をフォローアップしていくことが確認された。この中で、島サミットの共同行動計画にも盛り込まれている、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)の科学的能力の開発・向上プログラム(CAPaBLE)の成果を支持していくことが確認された。
  
  
持続可能な開発に関する世界サミットの具体的実施
  
(7)   アジア太平洋地域におけるヨハネスブルグサミットの成果の具体的な実施に関して、エコアジアによって開始された2つのプロジェクト、[1]アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)、及び[2]アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)についての報告が行われた。
  
(8)   APFEDに関しては、エコアジア2001での設置以降の取組状況、WSSDへの提言及びタイプ2イニシアティブの実施を含む今後の作業計画の報告がなされるとともに、2005年に開催予定のESCAP大臣会合における最終報告に向けた今後の取組のあり方について議論がなされた。参加者は、WSSDへのAPFEDの貢献に言及しつつ、同フォーラムがアジア太平洋地域において達成すべき課題を明確化するために重要なフォーラムであることを確認した。参加者は、また、APFEDの現在進行中の取組み、限定された優先課題に焦点を絞った問題解決型の成果に対する大きな期待を表明した。参加者は、また、APFEDの取組へのあらゆる支援を表明するとともに、APFEDの活動との相互連携への期待を示した。
(9)   APEISに関しては、プロジェクトの成功は、その成果に実用的な価値があるか否かにかかっていることが強調された。このために、エコアジア参加者が、政策決定者と科学者との緊密な連携のもとでまもなく開始される対話型活動に参加することが求められた。
(10)   特に、統合モニタリングに関しては、人間活動及び潜在的に気候変動によっても引き起こされうる大規模な環境劣化がアジア太平洋地域において顕著になっていることが報告された。また、こうした環境劣化が、範囲、頻度及び程度において予測を超えて深刻化していることが報告された。これに対応する政策手法として、とりわけ統合的流域管理手法が有効であることが紹介された。また、統合アセスメントモデルでは、環境保全に係る技術革新の潜在性が非常に大きいことが示された。グローバル化により環境や経済への様々な影響が生じる可能性が示され、アジア太平洋地域において、貿易と環境の問題に協働して取り組む必要性が確認された。
(11)   ヨハネスブルグサミット実施計画のアジア太平洋地域における実施の具体化に関しては、以下の事項が議論され、その重要性が確認された。
    グッドガバナンス(良き統治)を推進すること。
    実施計画に基づき、地域及び準地域(サブリージョン)レベルでの各主体のパートナーシップによる具体的な行動及び多様な主体に対する能力開発を推進すること。
    地域及び準地域における経験及び情報の交換を進めていくこと。
    貧困の解決は持続可能な開発の実現のために必要不可欠であり、アジア太平洋地域でこれに取り組むこと。これは、ミレニアム開発目標の達成にも貢献する。
    全てのレベル及び全ての主体における持続可能な開発のための教育を推進すること。こうした取組は、地域レベルでの教育拠点に基づいた地球規模での学習の場の創造によって推進される。
    第3回世界水フォーラム、第3回島サミット及び持続可能な交通に関する名古屋会議のフォローアップを行うこと。
    APFEDの活動及びタイプ2イニシアティブに盛り込まれた3つのコミットメントを実施すること。これは、地域での持続可能な開発の実現に向けて重要な役割を果たすものである。
(12)   以上の議論を踏まえ、エコアジアの今後の位置付けに関し、 次のような点が確認された。
    地域の視点を強化するために、エコアジアを、ヨハネスブルグサミットに関するアジア太平洋地域の閣僚レベルでの意見発信の場として位置付け、CSDの新しい作業段階にインプットしていくこと。
    エコアジアを、ESCAPやASEAN+3環境大臣会合などの地域会合における協力推進のために活用していくこと。
(13)   参加者は、本会議を組織し、開催した日本国環境省並びに共催者である神奈川県、横須賀市、葉山町及び財団法人地球環境戦略研究機関に対し、感謝の意を表明した。




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