報道発表資料本文

アジア地域における環境面から見た持続可能な交通に関する名古屋宣言
(仮訳)



 交通と環境に関する名古屋国際会議は、経済協力開発機構(OECD)、日本の環境省及び国土交通省の主催により、2003年3月23日から25日まで名古屋市で開催された。会議では、アジア諸国における主な動向をレビューし、政策の進展や依然として残されている課題を明らかにするとともに、環境面から見た持続可能な交通(EST:Environmentally Sustainable Transport)に関するOECDのこれまでの成果を学び、ESTを実現するための政策と手段について検討を行った。本宣言は、この会議での主な見解と結論を取りまとめたものである。

 持続可能な開発という文脈から見ると、ESTとは、将来世代のニーズをそこなうことなく現在世代のニーズに応えることのできる交通の開発を意味する。ESTを実現することは、世界中の国々が直面する主要な課題であり、OECD加盟国に限らず、アジア諸国のどこにおいても課題となっている。アジアでは、交通混雑、非効率なエネルギー消費、大気汚染、水質汚濁、騒音を含む、交通に関連する経済面や環境面の深刻な問題が発生している。これらの問題は、急激な経済成長及び都市化に起因する交通需要の顕著な増大、不十分な自動車排出ガス対策、適切なインフラの不足により引き起こされている。

 アジアの多様で特徴的な交通システムは、タイプの異なる交通需要に一世紀以上の期間にわたり対処してきた。特に旅客交通(Passenger Transport)に関しては多くの顕著なアジアモデルが世界中に知られている。そのような事例としては、日本や韓国における、高密度の都市内及び都市間の鉄道網、シンガポールにおけるロード・プライシングを含む先進的な交通需要管理システムが挙げられる。いくつかのアジアの国々では、公共交通機関が多数の住民に対して、継ぎ目のない(seamless)、ほとんどドア・ツー・ドア(door to door)とも言えるサービスを提供できる。その他の国々では、内燃機関によらない (non-motorized)経済的な交通システムが基幹的なサービスを提供している。

 しかしながら、モータリゼーションによる二輪車、乗用車やトラックを含む道路交通の急速な発展により、これらのアジア型システムの利点が部分的に失われつつある。この急速なモータリゼーションは、弱体な土地利用計画と相まって、自動車をして都市空間を占拠させるとともに、不必要なエネルギー消費や環境への負荷をもたらす非効率な都市構造の形成を促進するような郊外への拡大を加速している。

 途上国では、通常、公共交通は非常に強く道路に依存している。都市内及び都市間の鉄軌道交通システムの新たな開発やさらなる拡大、改善が必要である。経済的な理由から、質の悪い燃料や整備の不十分な性能の悪い車両が使用される場合があるが、その結果、著しい汚染や非効率な燃料消費が引き起こされている。

 アジアは、21世紀において著しい経済成長が期待されている。この成長は、交通に関わる大気汚染問題と化石燃料消費の問題に対処することなくしては、持続可能なものとはならない。このため、地域の状況に適した、明確な環境上の目標とタイムテーブルを設定するとともに、社会的経済的な発展を実現しつつ、これらの目標に至る道筋を明らかにすることが必要である。このことは、経済成長と都市化がより短いサイクルで進展し、効果的な対策を適切なタイミングで実施することが必要な、途上国において特に重要である。

 アジア全域にわたるこれまでの特筆すべき成果は、アジア型ESTの実現に向けたさらなる進展の確固たる基盤となる。アジア型ESTの発展と推進のためには、技術及び交通需要管理の両面における相当な改善が必要である。そのための効果的な政策手法には、プライシング、空間計画、環境に負荷の少ない交通インフラの整備、技術関連投資、より厳格な排出基準、車検システム、その他の経済的・規制的政策手法が含まれる。アジア型ESTは、アジアの交通の特徴とニーズを考慮しつつ、「OECDのESTガイドライン」や目標指向型(goal-oriented)のアプローチの利用提案などの、ESTに関するOECDのこれまでの成果を踏まえて構築することができる。

 アジアの国及び地域においては、以下の取り組みが奨励される:




 報道発表本文に戻る