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温室効果ガス排出量取引シミュレーション事業の実施について
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1.背景・目的

 京都議定書においては、国際排出量取引制度などの市場メカニズムを活用する京都メカニズムの導入を規定しています。これを受け、本年3月に策定された政府の地球温暖化対策推進大綱においては、「京都議定書の約束を費用効果的に達成するためには、京都メカニズムの利用が国内対策に対して補足的であるとの原則を踏まえつつ、これを適切に活用していくことが重要である。」としています。京都メカニズムは、民間の事業者による活用も認められています。
 
 また、国内施策としても、規制による削減ではなく、市場メカニズムを活用して効率的に排出量削減を実現する「経済的措置」の一つとして、事業者等を対象に国内で排出量取引を行う「国内排出量取引制度」が注目されています。海外でも、英国では既に本年4月より導入されており、EUでも2005年からのEU域内での排出量取引制度の開始を検討しています。
 
 しかし我が国において、国内排出量取引制度を実施した経験がないため、我が国に合った制度設計を行うための政府の知見、制度を活用する側としての民間の知見等について蓄積がないのが現状です。これを受け、環境省では、昨年度、「排出量取引・京都メカニズムに係る国内制度検討会」(座 長:大塚直 早稲田大学教授)を設置し、本年7月に報告書をとりまとめました。この中では、国内排出量取引について、第1ステップ(2002-2004年)においては自主的、試行的な取引の実施し、第2ステップ(2005-2007)においては、第1ステップでの成果、海外の動向等も踏まえつつ、制度の見直しを行うことを提言しています。
 
 これを踏まえ、地球温暖化対策に率先して取り組んだ努力が報われる仕組み(CO2の削減に経済的価値を付与)としての国内排出量取引システムの構築を目標として、三重県と共同して、「排出量取引シミュレーション事業」(三重県事業名:三重県型CO2排出量取引制度提案事業)を実施します。
 なお、三重県では、森林環境創造事業やRDF発電施設の建設に取り組んでおり、これらの事業によって吸収・削減されるCO2のクレジット化についても検討します。
 
  
2.事業概要
  
 [1] 実施主体
 三重県(環境省委託)
 
[2] 実施方法
 三重県と当事業に賛同する県内立地の複数の企業等(約30事業所)が連携しながら、シミュレーションを検証の手段とし、地域特性も生かした制度提案事業として実施
 
[3] 事業内容
   参加企業の削減対策による温室効果ガス削減量や、森林整備によるCO2吸収量(シンク)等を「クレジット」とみなし、クレジットを売買する市場を、コンピューター上に仮想的に設置します。各企業はこの仮想市場に参加し、自社の削減コストを勘案しながらクレジットの売買を行います。
 また、シミュレートに至るプロセスにおいては、各参加企業の排出量の把握方法や削減戦略についての検討を行うほか、県の森林整備事業によるCO2吸収量やRDF発電、バイオマス発電等による削減量のクレジット化及び高効率省エネ型製品の販売・供給による削減量のクレジット化、NPO等の取り組みによる削減量のクレジット化等に検討を加えます。
 シミュレートの結果とクレジット化の検討結果は、国内排出量取引の制度設計に資するような内容に取りまとめるものとします。
 
 
3.スケジュール
  
 [1]  12月までは、2〜3週間に1回のペースで、行政と参加企業等による打ち合わせ会議を開催します。打ち合わせ会議では、京都メカニズムの基礎知識やGHGプロトコル(世界標準の温室効果ガス排出量算定ガイドライン)を習熟するとともに、シミュレーションを実施する際に必要となる前提条件(森林吸収やバイオマス発電、RDF発電によるCO2削減量の炭素クレジット化、キャップの考え方、基準年の考え方)等について議論します。
 
[2]  上記と平行して、シミュレーションに必要なデータとして、現状の温室効果ガス排出量の把握や、内部削減案件の抽出など、各参加企業のプロフィール診断を行います。
 
[3]  2003年1月に排出量取引シミュレーションを実施します。シミュレーションにおいては、前提条件を数パターン変えて実施し、シミュレーションの精度を上げます。
 
[4]  2003年2月にシミュレーションの結果をまとめ、報告書を作成します。報告書の内容は、国の制度設計に資する内容とします。
 

委託・参画関係図