報道発表資料本文


(別添)
                 環境関連分野

1.成長が期待される産業の将来像

 今日の環境問題は、地球規模の空間的広がりと将来世代にわたる時間的広がりを
持ち、同時に、地球温暖化問題、都市・生活型公害、廃棄物問題等に見られるよう
に、通常の事業活動や日常生活一般に起因する部分が多い。深刻な環境問題を克服
するためには、社会を構成する全ての主体の参加のもと、環境への負荷の少ない持
続可能な経済社会を構築する必要があり、そのための重要な役割のー端を担う本分
野には、大幅な成長が期待される。
 具体的には、エコマテリアル、低公害車等の環境調和型製品製造業、廃棄物処理
・リサイクル産業、公害防止装置、廃棄物処理・リサイクル装置、環境分析装置等
の環境関連装置産業、土壌浄化、水質浄化、都市緑化等の環境修復・創造産業等が
挙げられる。

2.雇用規模・市場規模予測

          現状       2010年
雇用規模予測   約64万人    140万人程度
市場規模予測   約15兆円     37兆円程度

(注)環境関連産業の範囲はー般的に定まったものはなく、今回の予測値はひとつ
   の見通しである。

3.総合的な施策パッケージ

 環境関連産業は、環境への負荷の低減に資する製品やサービス等の開発・提供等
を通じ、環境への負荷の少ない持続可能な経済社会を構築する上で重要な役割を担
う。既に、環境を新たなビジネスチャンスと捉え様々な取り組みがなされているが、
他方、環境関連産業の発展には多くの解決すべき課題も存在する。
 このため、行政としての役割としては、環境への負荷の少ない持続可能な経済社
会の構築に向け、潜在的なニーズの発掘、顕在化を含め、環境関連産業の健全な発
展のための基盤整備を行うことが重要である。
 具体的には、
1 地球温暖化への対応
2 リサイクル施設・廃棄物処理施設等の整備や廃棄物の広域処理の促進といった社
 会システムの整備
3 環境への負荷の低減に資する環境関連技術の開発・普及の促進
4 事業者・消費者の環境マインドの醸成やこれをりードする人材の育成
5 事業者の環境配慮を促す制度等の構築・改善
6 環境関連産業の創業利益水準を確保するに足る市場の創造
7 途上国への環境協力の促進
等を図ることが重要である。

<地球温暖化への対応>
 地球温暖化問題の抜本的解決のためには、100年単位の長期にわたる世界全体
のニ酸化炭素等の排出の大幅な削減を要するが、これは現在の技術レベルのみでは
困難。このため、国、地方公共団体、産業界、国民等あらゆる主体が、本問題に積
極的に取り組み、省エネルギー、新エネルギー導入促進など、直ちに実施できる対
策を推進するほか、現在の技術レベルを超えた革新的な環境・エネルギー技術の開
発・導入や途上国への技術移転等を推進することが不可欠である。
 このため、地球温暖化防止行動計画に基づき、省エネルギー、新エネルギー導入
促進等の施策に取り組むほか、技術開発・移転の目標となるような長期計画を提示
するとともに、革新的な環境・エネルギー技術の開発・導入及び技術移転の促進等
を積極的に行う。
○直ちに実現に着手すべき施策
 ・地球温暖化防止行動計画に盛られた各施策の実施
 ・地球再生計画の再構築
 ・CO2の固定化・有効利用技術、回収・貯留技術、緑化等の自然固定技術等の
  基礎的・革新的技術の開発
 ・民間の共同実施活動への支援
 ・地方自治体のモデル事業の実施
 ・温暖化効果の小さい新規フロン代替物質の開発
 ・国民に対する普及・啓発の推進

<社会システムの整備>
 環境への負荷の少ない持続可能な経済社会の構築のため、リサイクル施設・廃棄
物処理施設等の社会インフラの整備促進や廃棄物の適正かつ円滑な広域処理の促進
といった社会システムの構築を官民の適切な役割分担のもとに進めていく。
 また、廃棄物処理・リサイクル対策は地域の取り組みが鍵であり、こうした観点
から、再生資源の利用等により廃棄物をゼロにすることを目指した環境調和型まち
づくりに対して支援を行う。
 さらに、製品の使用・廃棄・リサイクル段階を考慮した生産・流通システムの見
直しを行う。
○直ちに実現に着手すべき施策
 ・リサイクル施設・廃棄物処理施設の整備促進と廃棄物の広域処理の促進
 ・ゼロ・エミッション構想(ある産業から出るすべての廃棄物を他の分野の原料
  として活用し、あらゆる廃棄物をゼロにすることを目指す構想)の推進のため
  の支援
 ・下水道資源の有効利用、都市廃棄物収集・処理の新たなシステムの整備
 ・リターナブルシステム(中身の詰め替えによる繰り返し利用)等による使用済
  製品の再使用(リユース)の促進
 ・容器包装リサイクルシステムの構築

<技術開発の推進>
 環境技術は、良好な環境の保持に貢献するとの意味で公共的性格を有すると同時
に、その開発は中長期的には、産業にとっても競争力の源泉となり得るものである。
しかしながら、短期的には、現状の経済原則に照らしてコスト負担増となりがちで
あり、民間における開発インセンティブが働きにくい側面がある。
 したがって、国自らが将来の環境関連産業の発展のためのシーズとなる環境技術
の開発やその普及及び技術開発の基盤となる科学的知見の充実に全力を挙げて取り
組み、また、コスト低減化等の開発、技術普及施策について検討を行う。
○直ちに実現に着手すべき施策
 ・高度な廃棄物処理・リサイクル技術の開発
 ・ダイオキシン等の難分解物質の処理技術の開発
 ・革新的技術開発のみでなく、コスト低減化等の開発、技術普及にも重点
 ・土壌、地下水等の環境浄化技術の開発及び普及
 ・エネルギー・水の循環等により環境負荷ゼロを目指した住宅の開発
 ・社会資本整備における環境関連技術の導入・開発・研究基盤の整備
 ・環境影響評価手法(LCA;Life  Cycle Assessment)
  の開発・標準化・普及
 ・地球変動予測の実現に向けた研究開発の推進
 ・生態系の解明と保全技術の開発
 ・環境計測技術の研究開発

<人材育成>
 今後の環境関連産業の展開においては、環境保全に対する国民各層の意識改革が
その駆動力となる。したがって、環境への負荷の少ない持続可能な経済社会の構築
の必要性への理解を促進するための社会・消費者啓発やこれをりードし得る人材の
育成、環境教育のー層の推進を図る。
○直ちに実現に着手すべき施策
 ・展示等による消費者.事業者への啓発及び教育
 ・ISO14001外部認証制度の普及・促進
 ・情報ネットワークの活用等による実践的な環境教育の推進

<環境配慮が最大限促されるような制度等の構築・改善>
 環境に関する規制や制度の導入は、環境への負荷を低減させ、これらの実行面を
支える環境関連産業の発展を促すとともにその方向性を提示することになる。この
ため、環境負荷の低減のための規制的措置等を適切に活用するとともに、環境に配
慮した商品や企業活動に対する評価手法の標準化とその社会的な促進制度を確立す
る。
○直ちに実現に着手すべき施策
 ・リサイクル品に関する標準化・規格化の推進(リサイクルJIS等)
 ・低公害車の普及を促す環境整備
 ・環境悪化に伴う社会費用を経済活動に反映させるルールの幅広い検討

<市場創造>
 環境関連産業の育成を図っていくためには、その創業利益水準を確保するに足る
市場規模の確保が不可欠であるが、当初の市場の立ち上がりは、市場メカニズムの
機能のみでは、困難である。
 したがって、生活環境の保全に留意しつつ、リサイクル用途の拡大によるリサイ
クル製品の新規需要開拓等の環境への負荷の少ない製品を導入促進する施策の検討
を図る。
○直ちに実現に着手すべき施策
 ・リサイクル製品の新規需要開拓
 ・「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動
  計画」の推進
 ・低公害車の導入促進

<途上国への環境協力の促進>
 環境問題の克服は世界共通の課題であり、とりわけアセアン、中国等の開発途上
国において、工業化の進展に伴う環境問題が今後一層深刻化していくことが懸念さ
れている。
 したがって、我が国が有する環境技術の移転促進などが強く求められており、積
極的な国際貢献を行う。
○直ちに実現に着手すべき施策
 ・環境・エネルギー分野の海外への協力の充実
 ・開発途上国における持続可能な森林経営への協力

<ネットワークの形成>
 環境関連産業に関する情報の流通の円滑化を国、自治体、民間がー体となって進
める。





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