報道発表資料本文

国民の皆様へ

1997年6月9日
中央環境審議会企画政策部会長
森嶌 昭夫

 1994年末に「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会」を目指した「環境基本計画」が閣議決定されてから、はや2年半が経過しました。環境基本計画では、国が行うべき施策はもちろんのこと、地方公共団体、事業者、民間団体、そして国民に対しても、どのような取組が期待されているかを明記しています。
 中央環境審議会では、環境基本計画に定められた取組がどの程度進んでいるかについて、各種の取組進捗状況調査や国民の意見聴取を行った上で、定期的に点検を行い、その結果を内閣総理大臣に報告しています。
 今回、第2回目の点検を行いましたが、残念ながら、多くの方々の努力にもかかわらず、環境問題は、全体として改善しているとは言えません。特に、地球温暖化問題に関して
は、本年12月に気候変動枠組条約第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議)が開催されるなど重要な年であるにもかかわらず、我が国の二酸化炭素排出量は削減どころか増加基調にあり、解決の目途が立っていません。さらに、政府の様々な施策が、各省庁に分かれて行われており、全体としてまとまった効果が現れていないという憂慮すべき状況です。
 そのため、中央環境審議会では、第2回点検報告の中で、地球温暖化対策、経済的措置、里地における自然との共生など、国の施策がうまく進んでいない項目について、今後とるべき課題をとりまとめ橋本内閣総理大臣あてに意見を述べました。
 しかし、国に注文をつけるだけでは問題は解決しません。例えば、地球温暖化の大きな要因である二酸化炭素排出量の約半分は、家庭でのガスや灯油、自動車の使用、家庭で使う電気をつくる発電所からの排出、日用品の製造や運搬など、我々国民の消費活動に伴うものです。また、年間で東京ドーム約130杯分という膨大なごみを出しているのも、我々国民の消費活動に他なりません。環境問題は、国にまかせておけば大丈夫というものではなく、我々国民一人ひとりが役割を果たしていかなければその解決はおぼつきません。
  そこで、次のとおり、中央環境審議会から国民の皆様へ直接訴えます。

国民の皆様へ直接訴えます
=行動を起こすのは明日からでは遅すぎます=

【地球温暖化防止のため省エネなどに努めましょう】

 地球の温暖化が進めば、気候が不安定となり、自然災害が頻発する恐れがあります。また、海面が上昇し、21世紀末には日本では砂浜の約7割が失われる一方、森林や食糧供給に大きな被害を与えるとの予測があります。今年の地球温暖化防止京都会議では、2000年以降の地球温暖化対策の目標や取組を国際的な約束という形で取りまとめる予定です。
 地球温暖化防止京都会議の成功に向けて、地球温暖化の深刻さを直視し、一人ひとりが「環境家計簿をつけて電気やガスの節約に努める」、「冷暖房の温度設定を夏は28度以上、冬は20度以下にする」、「車のアイドリングを控える」、「車の使用を控え、自然とふれあいながら歩く」など、身近な行動からチャレ ンジしましょう!

【少しでもゴミを少なくしましょう】

 本年4月から施行された容器包装リサイクル法では、分別排出の徹底や、リターナブル容器や簡易な包装の商品の購入に努めることとなっています。さらに、廃棄物のなくなる社会を目指し、環境コストは一人ひとりが負担すべきであるという認識のもと、「使い捨て製品の購入を控える」、「再生紙などのリサイクル商品や、エコラベルのついた商品などを購入する」、「必要以上に白い紙は使わない」、「買い物袋を持参する」、「食材をムダなく使うエコクッキングを行う」などの取組を着実に実行しましょう!
 今回の点検に当たって実施した国民アンケート調査によれば、環境によい行動をよく行っていると自己評価した人は1割に留まっています。「自分ひとりぐらいやらなくても、大勢に影響ないのでは・・・」といった気持ちが、この結果に表れているのではないでしょうか。一人ひとりの力は小さくても、その行動の積み重ねが環境を良くするのです。私たちの子供や孫が恵み豊かな美しい地球に暮らすことが出来るよう、環境にやさしい行動を、今日から始めましょう!




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