全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)
平成14年度夏期観察の実施計画及び平成13年度冬期観察の結果について


 

 1 平成13年度 冬期観察の結果

○観察期間 : 平成14年1月4日(金)から1月17日(木)まで
(この期間中に1日以上観察)
○参加団体・参加者数 : 全国で47都道府県の388団体(前年度比48団体増加)、延べ4,478人(前年度比1,159人増加)が参加
○観察結果
[1] 肉眼による天の川の観察結果
観察方法 : 肉眼により、高度の異なる天の川の3部分(ペルセウス座付近、ふたご座付近、いっかくじゅう座付近)を観察。
 星空を観察する際、観察する部分の高度が低いほど、大気環境の影響を受けやすくなり、星が観察しにくくなる。冬期観察では、天空(高度の高い位置)から順に、「ペルセウス座付近」、「ふたご座付近」、「いっかくじゅう座付近」の天の川の観察状況を調査している。平成13年度冬期における部分別の観察状況(天の川の見えた地点の割合)は、「ペルセウス座付近」42.5%、「ふたご座付近」38.9%、「いっかくじゅう座付近」24.4%であった。
 また、「ペルセウス座」付近の天の川の観察できた割合を、都市の規模別に見ると、巨大都市(人口100万人以上)4.5%、大都市(人口30万人以上100万人未満)9.2%、「中都市(人口10万人以上30万人未満)24.4%、小都市(人口10万人未満)64.5%であり、都市の規模により観察状況に大きな差が生じている。

[2] 双眼鏡による観察結果
観察方法 : 双眼鏡を用い、″すばる(プレアデス星団)″のラケットの中の星を観察し、何等級の星まで見えたかを記録。
 参加者各人に双眼鏡(倍率7倍、口径50mm)により、″すばる(プレアデス星団)″のラケットの中の何等級の星まで見えるかを観察してもらい、その結果を基に、都市の規模別の平均観察等級(観察できた星の等級の平均)を算出した。

表1 すばるのラケットの中に見える星の平均観察等級の都市規模別比較 (単位:等級)
都市の規模
(人口)
巨大都市
(100万以上)
大都市
(30万以上
100万未満)
中都市
(10万以上
30万未満)
小都市
(10万未満)
全観察地点
の平均
平成13年度 7.2 7.9 8.0 8.5 8.2

注)星の等級について
 天体を地上で観測した時のみかけの明るさを表した数字。その星自体の明るさを表す絶対等級と区別して、みかけの等級ともいう。等級は数字が1減るごとに約 2.5倍明るくなる。表1においては、数字が大きいほど暗い星まで見えることとなる。

[3] 夜空のスライド写真撮影結果
観察方法 : おうし座の1等星アルデバランを中心とする夜空のスライド写真撮影。
 夜空の明るさは、撮影範囲・露出時間等を一定条件にして撮影したカラースライド写真から、光の透過量を測定(測定機器:デンシトメーター)している。それから求めた夜空の明るさを星の等級に換算した値で求めており、数値が小さいほど夜空が明るく星が見えにくく、大きいほど夜空が暗く星が見えやすい状態を示す。(表3・図2参照)

表3 夜空のスライド写真撮影による「夜空の明るさ」の都市規模別比較(mag/□″)
都市の規模
(人口)
巨大都市
(100万以上)
大都市
(30万以上
100万未満)
中都市
(10万以上
30万未満)
小都市
(10万未満)
全観察地点
の平均
昭和63年度
平成元年度
平成2年度
平成3年度
平成4年度
平成5年度
平成6年度
平成7年度
平成8年度
平成9年度
平成10年度
平成11年度
平成12年度

17.5
17.0
17.8
17.0
17.7
18.2
18.5
18.0
17.7
18.1
17.9
17.8
18.6
18.3
18.3
17.9
18.1
17.7
18.1
18.4
18.0
17.7
18.1
17.9
17.8
19.7
18.8
18.6
18.6
18.2
18.4
18.9
18.9
19.0
19.2
19.4
18.9
18.6
21.8
21.0
21.0
20.8
20.8
20.6
21.1
21.4
20.8
20.7
20.6
20.8
20.7
20.7
19.9
19.8
19.8
19.6
19.5
19.9
19.7
19.8
19.7
19.9
19.8
19.8
平成13年度 16.9 17.6 18.0 20.4 19.2
* 単位:mag/□″(マグニチュードパー平方秒角)は夜空の明るさを示す単位で数字が大きいほど夜空は暗く、星が見えやすい。

図2 スライド写真から求めた「夜空の明るさ」の推移

(mag/□″)

カラースライド写真に見る都市規模別の夜空の明るさの違い(H13年度冬期実施)
巨大都市の夜空
中都市の夜空
人工光の影響の少ない地域の夜空(小都市の夜空)

 2  観察結果の考察

 スライド写真撮影によるデータ(表3、図2、上記写真)を見ると、夜空の明るさは一般的に人工光が多く大気中の浮遊粒子状物質の濃度が高い大都市において明るく、反対にそれらが少ない地域ほど暗くなる傾向が読みとれる。

図3 夜空が明るくなるメカニズム

 3 良好な光環境の創出

 スターウォッチングとともに、環境省では良好な光環境の創出と地球温暖化対策を目指して、「光害対策ガイドライン」、「地域照明環境計画策定マニュアル」及び「光害防止制度に係るガイドブック」を策定し光害防止活動の推進を図っている。この中で、日本全体の屋外照明器具で上方への無駄な漏れ光をなくした場合、夜間屋外照明に使用される電力量の約18%、国内の年間電力消費量の約0.2%が削減されると試算している(地域照明環境計画策定マニュアルによる)。
 今後とも、過剰な照明の防止と目的にかなった照明の普及啓発を図っていきたいと考えている。

 4 観察結果の公表

 観察結果や実施方法は、環境省ホームページのこどものページの中のスターウォッチング(http://www.env.go.jp/kids/star.html)において、また、上記光害対策ガイドライン等は環境省ホームページの大気環境・自動車対策のところで紹介している。

 5 平成14年度 夏期観察の実施計画

(1) 観察期間
平成14年7月29日(月)から8月11日(日)まで
(この期間中に1日以上観察)

(2) 観察方法
[1] 肉眼により、高度の異なる天の川の3部分(白鳥座付近、たて座付近、いて座付近)を観察する。
[2] 双眼鏡を用い、こと座のベガ(おりひめ星)を含む3つの星の作る三角形の中の星を観察し、何等級の星まで見えたかを記録する。

(3) 参加方法
都道府県・政令指定都市・中核市の大気環境担当部局へ参加申込みを行う。

(4)本年度実施の変更点
[1] 本年度より、夜空のスライド写真撮影について、一般参加団体による撮影から各地の天文台を中心とする全国23地点の定点観察地による撮影へと変更することになった。これは、スライドの分析をしていただいている研究者の方へ多大な負担がかかっていたためである。
[2] 本年度から全国星空継続観察は、文部科学省国立天文台の後援を得ている。 そして、国立天文台と全国の天文台などが毎年8月1日〜8月7日に実施しているスター・ウィークと連携して実施する。本年度は広報普及活動を共同で行っている。スター・ウィークの詳細については国立天文台ホームページに記載がある。
http://www.nao.ac.jp/index_J.html



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