「ローカルアジェンダ21」策定状況等調査結果について
本文


  1. 調査目的
     
     1992年の地球サミットで持続可能な開発の実現に向けた行動計画として「アジェンダ21」が採択された。ここでは、持続可能な社会の実現に、地方公共団体が重要な役割を有していることから、地方公共団体は市民及び民間企業などと対話を行い「ローカルアジェンダ21」に取り組むべきとされている。
     本調査は、国内のローカルアジェンダ21の取組状況を把握し、地域の持続可能な開発の実現の一層の推進に資することを目的として実施した。
     
     
  2. 調査方法
     
    調査内容 ローカルアジェンダ21の策定状況、改定状況、策定及び実施プロセスにおける市民等の参加の方法、点検体制、点検結果の活用及びローカルアジェンダ21による効果又は成果について調査を実施した。
    調査時期 2002年2月(2月28日現在の状況を回答)
    調査対象 47都道府県、12政令指定都市(策定状況についてのみ、すべての地方公共団体(政令指定都市以外の市町村は都道府県を通じて回答を得た。)
    調査方法 調査票の配布
    評価方法 策定、改定及び点検体制の整備については、団体数を集計。
    その他の項目は、策定されたローカルアジェンダ21を1単位として集計。
     
     
  3. 結果
     
    (1) ローカルアジェンダ21の策定・実施状況と市民・事業者等の参加
    ア. 策定状況
       平成14年2月28日現在でローカルアジェンダ21を策定済みの地方公共団体は47都道府県、12政令指定都市、184市町村(政令指定都市を除く)である。 


     
    イ. 策定における市民の参加
       ローカルアジェンダ21の策定における市民、民間企業等の参加に関し、推進会議への参加など策定主体として参加は、都道府県レベルで39%、政令指定都市レベルで74%である。策定主体としての参加以外では、アンケート調査での意見の回答、素案作成後の意見公募や公聴会等による意見聴取による方法が多く、それぞれ都道府県レベルで53%、34%、34%、政令指定都市レベルで47%、53%、21%である。 


     
    ウ. 実施における市民等の参加
       都道府県レベルで95%、政令指定都市レベルで89%が、ローカルアジェンダ21の実施プロセスで市民等の参加があるとしている。参加主体の内訳は、都道府県レベル、政令指定都市レベルで、それぞれ市民(又は県民)90%、84%、事業者84%、74%、その他40%、26%である。その他の参加主体は、NGO、管下の市町村など関係する地方公共団体、観光旅行者、学校、公益法人などがある。
     市民等の参加は、市民や事業者などの役割や行動目標をローカルアジェンダ21に記載する(都道府県レベル94%、政令指定都市レベル95%)や、参加を促進する体制を整備する(都道府県レベル50%、政令指定都市レベル32%)ことにより進められている。 



     
    (2) ローカルアジェンダ21の策定・実施による効果又は成果
       ローカルアジェンダ21の策定・実施による効果又は成果は、「持続可能な開発の取組に関する市民等の関心、意識の高まった」が最も多くのケースで認められた(都道府県レベル79%、政令指定都市レベル68%)。その他「行政の取組における市民等の参加が促進した」は都道府県レベル45%、政令指定都市レベル37%、「行政と市民等のバートナーシップによる取組が進展した」は都道府県レベル45%、政令指定都市レベル37%で認められた。
     バートナーシップによる取組事例として、市民、事業者、行政機関など様々なセクターから構成される「みやこのアジェンダフォーラム」による幅広い取組み(京都市)や、県民、事業者、行政で構成する「環境にやさしいひろしま県民会議」の設置とそこで実施する環境にやさしい行動の推進などがある。
     
         表 ローカルアジェンダ21策定・実施による効果又は成果
    効果又は成果 都道府県 政令指定都市 全体
    持続可能な開発の取組に関する市民等の関心、意識が高まった 79% 68% 77%
    行政の取組における市民等の参加が促進された 45% 37% 43%
    行政と市民等のパートナーシップによる取組が進展した 45% 37% 43%
    その他 9.7% 16% 11%
     
     
    (3) フォローアップ
    ア. 点検体制及び改定状況
     41都道府県、11政令指定都市が、ローカルアジェンダ21の点検体制を整備している。また、都道府県レベルで8団体が既に改定を行っており、毎年改定を行っている団体(大阪府)もある。さらに、都道府県レベルで5団体、政令指定都市レベルで6団体が来年度までに改定を予定している。
     
    イ. 点検の内容と結果の活用
     点検を実施した地方公共団体は、都道府県レベルで26団体、政令指定都市レベルで6団体ある。点検は、数値目標の達成状況など定量的な評価(都道府県レベル8団体、政令市指定都市レベル6団体)や、各行動主体の取組内容の取りまとめ(都道府県レベル3団体、政令指定都市レベル2団体)が主流である。
     点検結果は、地方公共団体の環境白書、広報誌やホームページへの掲載による市民等の啓発(都道府県レベル7団体、政令指定都市レベル4団体)、ローカルアジェンダ21の改定に反映(都道府県レベル4団体、政令指定都市レベル1団体)などに活用されている。
     
     

  4. まとめ
     
    ローカルアジェンダ21は、すべての都道府県と政令指定都市で策定されており、近年は、より規模の小さい地方公共団体である市町村レベルで策定が進んでいる。
    策定プロセスにおける市民、事業者等の参加は、市民等を交えた推進会議への参加など策定主体としての参加、素案策定後の意見公募、アンケート調査での意見回答、公聴会等による意見聴取が主流である。特に政令指定都市レベルでは、策定主体としての参加の割合が高く、より主体的な市民等の参加が多くみられる。
    ローカルアジェンダ21の実施プロセスでは、市民や、事業者等の参加が認められる。市民や事業者の役割又は行動目標の明記といった受動的な関与が多いが、いくつかの地方公共団体では、市民、事業者、行政のパートナーシップによる推進組織の設置し、推進組織で幅広い取組が行われている。
    多くの地方公共団体で、ローカルアジェンダ21の策定・実施を通じ、市民、事業者等の持続可能な開発に関する意識の向上など市民等の啓発に関わる部分で成果又は効果が認められている。
     
     
  [参考]
  1.  本調査は、各地方公共団体から回答のあったものをまとめたものであるが、必ずしも「ローカルアジェンダ21」という名称がつけられているものに限られない。また、地方公共団体によっては、複数の計画等をローカルアジェンダ21と位置づけているところもある。
     
  2.  また、環境省では、平成11年度にアジア諸国におけるローカルアジェンダ21の策定を支援するため、当該諸国向けの「策定・実施マニュアル」を作成し、平成12年度には韓国及びタイにおいてワークショップを開催した。このような活動を通じて、アジア太平洋地域におけるローカルアジェンダ21の推進に貢献していく。


  戻る