報道発表資料本文

基本的な考え方及び同評価指針(試案)


目次

1. バイオレメディエーション技術について(略) ・・・・・・・・・・ P.1
2. 地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価の基本的な考え方(試案)及び同評価指針(試案)について ・・・・・・・・・・ P.5
 2.1 地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価の基本的な考え方(試案)
・・・・・・・・・・ P.5
 2.2. 地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価指針 (試案) ・・・・・・・・・・ P.9
3. バイオレメディエーション実施の動向及び微生物利用に関わる海外の規制(略) ・・・・・・・・・・ P.21

2.

地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価の基本的な考え方(試案)及び同評価指針(試案)について

  地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価の基本的な考え方(試案) 及び地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価指針(試案)は、環境庁の委託を受けた社団法人環境情報科学センターが専門家からなる検討会を設置し、バイオレメディエーション技術を適用する際の環境影響評価の指針を試案としてとりまとめたものである。
  これらについては、広く各方面から意見をいただくとともに、専門家による検討を加えることにより、指針をよりよいものとすることができると考えている。

 2.1

地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価の基本的な考え方(試案)

  2.1.1

はじめに

        地下水汚染を浄化する技術の一つとして、微生物のもつ汚染物質の分解能力を利用するバイオレメディエーションがある。この技術は、直接汚染物質を分解する方法であり、二次廃棄物の発生がないこと、処理に要するエネルギーが少ないことが期待される。
  しかし、バイオレメディエーションついては、微生物の栄養分等の注入や、場合により微生物の注入が行われるほか、微生物による分解過程で生じる分解生成物の残留等の可能性も考えられることから、これらの点について事前に環境影響評価を行うことが必要である。
本指針は、地下水汚染の浄化を図るバイオレメディエーションのうち、天然の微生物を地下に注入する技術を適用するに当たって事前に環境影響を評価するための基本的な要件を定め、環境保全を図るとともに、本技術の推進に資することを目的とする。
  2.1.2 調査項目の選定及び評価の考え方
(1) 基本的な考え方
 地下水汚染のバイオレメディエーションで微生物を注入する場合は、人及び環境中の生物等が利用微生物に暴露されることが想定される。したがって、バイオレメディエーションの環境影響評価に当たっては、人の健康に対する影響及び生態系に対する影響に係る調査項目を設定し、評価を行う必要がある。また、バイオレメディエーションにおいて投入される栄養分、分解生成物等についても評価を行う必要があるが、以下では微生物の環境影響評価を行う場合の調査項目等の考え方を述べる。
(2) 人の健康に対する影響に係る調査項目等の考え方
 人の健康に対する影響の評価に当たっては、人への暴露が想定される経路及び形態を考慮して設定した調査項目により評価を行う。バイオレメディエーションの場合、作業者が口、皮膚、気道から微生物に暴露される経路及び地下水等を介して人が微生物に暴露される経路が想定されることから、評価に当たっては、経口、経皮、経気道及び静脈内投与による動物試験、眼一次刺激性及び皮膚感作性に係る動物試験を行う。バイオレメディエーションに利用しようとする微生物の安全性評価については、人の健康に対する影響を未然防止する観点から、病原性、毒性及び感染性が認められないことを基本とする。
(3)

生態系に対する影響に係る調査項目等の考え方
  生態系に対する影響については、微生物の動植物一般に対する影響について既存情報の調査を行ったうえで、暴露が想定される生物種に対する影響に係る試験等を行い、評価を行う。
  一般には、環境中の微生物相は安定なものであり、外部から環境中に微生物を導入しても、その微生物が環境中で著しく増殖する可能性はそれほど高くない。また、地下水中における微生物の移動性もそれほど高いとは考えにくい。
 しかし、地下水は、いずれ湧水、河川水等の表流水になることや汲み上げられて農業、養殖に利用されること等が考えられる。このため、バイオレメディエーションの実施に当たっては、微生物の特性、環境中での挙動等を考慮して生態系に対する影響を予測、評価することにより環境影響の未然防止を図ることが必要であり、淡水魚、淡水無脊椎動物及び藻類についての調査項目を設定する。
  また、土壌中には多種多様な微生物が生息している。地下水については、これら土壌微生物との接触が想定されることから、利用微生物の導入による土壌微生物相に対する影響を調査項目とする。ただし、土壌微生物相は、地域、土壌の種類によって大きく異なっており、普遍的な土壌微生物相を想定することが困難であることから、バイオレメディエーションを適用する場所の土壌微生物相に対する影響を考えて調査項目を設定することとする。
 一方、地下水から離れた地表近くの土壌中に生息する土壌動植物や地上に生息する生物(植物、昆虫類、鳥類等)がバイオレメディエーションに利用する微生物に暴露される可能性は低いと考えられることから、これらの生物に対する影響については、個々の状況により必要に応じ調査することとする。
  バイオレメディエーションに利用しようとする微生物の安全性評価については、生態系に対する影響を未然防止する観点から、水生生物その他の調査項目として選定された生物への有害な影響が認められないことを基本とする。また、バイオレメディエーションは利用微生物を活性化させる技術であり、土壌微生物相に一定の変化をもたらすものであることを踏まえて安全性評価を行うこととする。なお、既知見において、ある動植物に対する影響が認められる場合、微生物の管理方法、影響の程度等の微生物の特性に関する知見等に十分配慮した上で、利用の可否を検討する。

(4) その他
 地下水の水理学的状況や有害物質による汚染の状況等は、各汚染地域により様々であり、利用微生物についてもその特性が異なることが考えられる。したがって、具体的な調査内容の設定に当たっては、これらの点に考慮するとともに、調査結果によっては、さらに情報が必要となることもありうる。
  本指針は、これまでの知見を踏まえ策定したものであり、今後の知見の充実等を踏まえ、必要に応じ見直しを行うものである。

 2.2

地下水汚染に係るバイオレメディエーション環境影響評価指針(試案)

  第一 基本的事項
  本指針は、天然の微生物を注入して実施するトリクロロエチレン等の有機塩素系化合等による地下水汚染の浄化を対象とする。
バイオレメディエーションの実施者は、個別の浄化作業毎に、本指針に定められた項目について調査を行うとともに、環境影響評価を行うことにより、バイオレメディエーションの実施に伴う環境影響の未然防止を図ることとする。
  第二

定義
  本指針における用語の定義は次のとおりとする。

1. 「バイオレメディエーション」とは、天然の微生物(ウイルスを除く。また、遺伝子組換え体を除く。)を注入して地下水汚染の浄化を行う技術をいう。
2.

「有機塩素系化合物等」とは以下のものをいう。

  1. ジクロロメタン
  2. 四塩化炭素
  3. 1,2−ジクロロエタン
  4. 1,1−ジクロロエチレン
  5. シス−1,2−ジクロロエチレン
  6. 1,1,1−トリクロロエタン
  7. 1,1,2−トリクロロエタン
  8. トリクロロエチレン
  9. テトラクロロエチレン
  10. ベンゼン
3.

「感染性」とは、微生物が動植物において増殖する性質又は生存する性質をいう。

4. 「病原性」とは、微生物が動植物に感染した結果、当該動植物に病気を起こさせる性質をいう。
5. 「毒性」とは、微生物の産生する毒素、毒物又は当該微生物の増殖に用いた基材が動植物に対し有害ななんらかの反応を起こさせる性質をいう。
6. 「浄化対象区域」とは、バイオレメディエーションの実施に当たり、個別の浄化作業毎に設定される浄化が行われる区域をいう。
  第三 環境影響評価に当たって必要な事項
1. 現場状況の調査
 現場試験計画や現場適用計画の策定に当たって必要となる情報、及びそれらの実施に係る環境影響評価に必要な情報を収集するため、現場の状況を調査する。調査項目は、別紙1のとおりである。
2. 利用微生物の調査
 利用微生物による人の健康及び生態系に対する影響並びに汚染物質の分解性を評価するために、利用微生物の一般特性、人の健康に対する影響及び生態系に対する影響について既存情報の調査及び実験を行う。調査項目は、それぞれ、別紙2、別紙3及び別紙4のとおりである。
3. 室内模擬実験
 バイオレメディエーションの現場試験に先立ち、あらかじめ、現場試験計画や現場適用計画の策定に当たって必要な情報、及びそれらの実施に係る環境影響評価に必要な情報を収集するため、室内模擬実験を行う。調査項目は、別紙5のとおりである。
4. 現場試験
 現場適用に先立ち、あらかじめ、現場試験を行う。
 現場試験に当たっては、利用微生物、栄養分、分解生成物等の拡散をできるだけ限られたものとするため、地下水流のシミュレーション等を実施し、これに基づき、別紙1〜5の情報を踏まえ、別紙6の項目について現場試験計画を策定する。
現場試験計画においては、第三の1〜4の調査に基づき、現場試験に伴う環境影響の評価を行い、環境への有害な影響が予測されないことを確認する。
5. 現場適用
 現場適用に当たっては、現場試験の結果及びその評価に基づき、現場試験と同様の考え方により、別紙1〜6の情報を踏まえ、別紙7の項目について現 場適用計画を策定する。
 現場適用計画においては、現場適用に伴う環境影響の評価を行い、環境への有害な影響が予測されないことを確認する。
  第四 環境影響評価の実施
1. 環境影響評価の項目
(1) 利用微生物の人の健康に対する影響
(2) 利用微生物の生態系に対する影響
(3) 利用微生物の環境中での残留
(4) 栄養分等の注入する物質の影響
(5) 有害な分解生成物の残留
(6) 作業の安全性
(7) その他の影響
2. 環境影響評価に当たっての基本的考え方
 以下の基本的な考え方を踏まえ総合的に評価を行う。
(1) 利用微生物の人の健康に対する影響
 人に対する病原性、毒性及び感染性がないこと。
(2) 利用微生物の生態系に対する影響
 水生生物その他の調査項目として選定された生物への有害な影響が認められないこと。
 浄化対象区域内では、作業終了後に土壌微生物相、pH等の土壌環境に有害な影響を生じないこと。さらに、浄化対象区域外においては、作業期間中を含めて有害な影響を生じないこと。
 なお、既知見において、ある動植物に対する影響が認められる場合、微生物の管理方法、影響の程度等の微生物の特性に関する知見等に十分配慮したうえで、利用の可否を検討する。
(3) 利用微生物の環境中での残留
 作業実施後、環境中での増殖の可能性が低く、異常な残留がないこと。
(4) 栄養分等の注入する物質の影響
 作業実施後、環境基準値等を超えないこと。
(5) 有害な分解生成物の残留
 有害な分解生成物が環境基準値等を超えないこと。
(6) 作業の安全性
 作業の安全が確保されていること。
(7) その他の影響
 偶発的な事故など、緊急時の措置、対応のための施設が設けられていること。
  第五 バイオレメディエーションの実施体制等
1. 浄化実施機関の長
 浄化実施機関の長は、浄化従事者が行う浄化作業における安全確保について責任を負うものであり、次の任務を行う。
(1) 安全主任者及び浄化実施責任者を任命すること。
(2) 安全委員会の委員を任命すること。
(3) 安全委員会の助言を得て、浄化従事者の健康管理を行うこと。
(4) 安全委員会の助言を得て、浄化における安全確保に必要な事項を実施すること。
2. 安全主任者
(1) 安全主任者は、本指針を熟知するとともに、バイオレメディエーションによる環境影響を防止するための知識、技術等に習熟した者であり、浄化実施機関の長を補佐し、次の任務を行う。
{1} 浄化が本指針に従って適正に遂行されていることを確認する。
{2} 浄化実施責任者に対して指導助言を行う。
{3} その他浄化の実施に当たり安全確保に関して必要な事項を実施する。
(2) 安全主任者は、その任務を果たすに当たり、安全委員会と十分連絡をとり、必要な事項について安全委員会に報告する。
3. 浄化実施責任者
 浄化実施責任者は、本指針を熟知するとともに、バイオレメディエーションによる環境影響を防止するための知識、技術等に習熟した者であり、次の任務を行う。
(1) 現場試験計画及び現場適用計画を含む浄化計画の立案及び実施に際しては本指針を遵守し、安全主任者との連絡の下に浄化において適切な管理・監督に当たる。
(2) その他浄化の実施に当たり安全確保に関して必要な事項を実施する。
4. 浄化従事者
 浄化従事者は、浄化計画の立案及び実施に当たっては、安全確保について自覚し、必要な配慮を行う。
5. 安全委員会
(1) 浄化実施機関に安全委員会(仮称)を置く。
(2) 安全委員会は浄化実施機関の長の諮問に応じて浄化作業における安全確保について、調査・審議し、及び助言又は勧告するものとする。
6. 微生物の菌株の保存
 利用微生物の菌株を保存する。




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