平 成 １１ 年 ３ 月 １０ 日
中央環境審議会廃棄物部会
中央環境審議会廃棄物部会
近年の社会経済活動が，大量生産・大量消費・大量廃棄型となり，また高度化するにつれ，資源採取から廃棄に至るまでの各段階で環境負荷が高まっており，廃棄物に係る量と質の両面からの環境負荷の増大が深刻な社会問題となっている。この問題は，飲料容器等に見られるようなリユースの停滞や古紙のだぶつき等に見られるようなリサイクル推進上の各種課題の発生，最終処分場の残余容量の逼迫，廃棄物の中間処理施設や最終処分場からのダイオキシン類，重金属等による環境汚染のおそれなどに表れている。このような廃棄物を巡る問題の解決のためには，「出された廃棄物を適正に処理する」という対応ではもはや限界であり，一方通行となった物質の流れと下流への負担のしわ寄せを招いている現在の社会システムの抜本的な見直しが求められている。
このような要請に対応し，近年，廃棄物の適正処理の観点から廃棄物の処理及び清掃に関する法律の大幅な改正が，また，個別製品廃棄物の再商品化の推進の観点から容器包装や家電製品に関する個別法が制定されるなどの対応が図られてきた。これらの措置は，順次施行に移され，着実に成果をあげつつあるが，依然残された課題も多い。特に，廃棄物の排出・処理と資源の循環的再利用との円滑な連携・システム化という点で問題が指摘されている。従って，資源投入→製造→流通・販売→消費→収集→再生→製造段階への再投入というとぎれのない物質循環の輪を完結させるとともに，環境保全上隙間のない包括的なシステムの構築が求められている。これに対応するため，環境保全の観点から廃棄物対策と資源の循環的再利用の促進を一体的に進め，「環境負荷の低減」と「物質循環」という視点からの基本的な対応方針の検討が求められている。
このような状況を踏まえ，中央環境審議会は，平成８年11月に，環境庁長官から「廃棄物に係る環境負荷低減対策の在り方について」の諮問を受け，平成９年11月には第１次答申を行った。この答申においては，「第１章 廃棄物の最終処分の基準等の一部改定について」，「第２章 有害物質を含む使用済み製品に起因する環境負荷の削減について」の提言とあわせ，「第３章 総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策について」の課題と方向性についてとりまとめた。
本部会では，この第１次答申の第３章において示された課題と方向性を踏まえ，さらに検討を重ね，平成10年７月，「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方（たたき台）」をとりまとめた。また，この基本的考え方を議論のたたき台として，全国的な活動を行っている団体を対象としたヒアリング，全国を３ブロックに分けてのブロック別ヒアリング，郵便・ファックス・電子メールによる意見公募を行い，総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の在り方についての国民各界各層の幅広い意見を集めた。
今般，寄せられた国民各界各層の意見も踏まえ，良好な環境を維持・保全し，これを将来の世代に引き継ぐことができる社会を目指し，廃棄物・リサイクル一体となった環境保全上適切なとぎれない物質循環の輪を構築することを通じ，環境への負荷の少ない持続可能な経済社会の実現を図るため，「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方」についてとりまとめを行った。
コラム：我が国の廃棄物処理の状況
＜特に出典を注記していないものについては、厚生省資料より作成＞
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１．廃棄物に係る環境負荷の最小化のための基本原則
【一方通行の現代社会の問題点】
今日の我々の社会経済活動やライフスタイルは，多大な資源を必要とするとともに，多量で質的にも自然界では分解することが困難な物質を廃棄物，排出ガス，排水等の不要物として環境中に排出することによって成り立つ，「一方通行」の社会となってしまっている。この問題は，特に大都市圏において，圏内で処理しきれないほどの大量の廃棄物が排出され，その最終処分場も深刻な逼迫状況におちいる，という事態に典型的に表れている。また，質的にも，廃棄物の焼却に伴うダイオキシン類の発生や最終処分場からの浸出水による重金属等の汚染のおそれなどの問題もある。このような，量的・質的な廃棄物に係る環境負荷は，現在の我々の経済活動や生活環境への悪影響のみならず，将来の世代へも負の遺産を残すことになる。
このような問題に適切に対処し，廃棄物に係る環境負荷の最小化を図るため，環境保全上健全な物質循環がとぎれなく進められるとともに，物質循環全体に渡り適切な環境保全対策が隙間なく講じられることが必要である。また，循環型社会の構築に当たっては，社会全体として最も効率的に環境負荷を低減するシステムの構築が必要である。
【問題対処のための基本的方向性】
(1) とぎれのない物質循環の輪の構築
大量の資源を投入し，廃棄するという社会経済活動の下，資源投入から生産，流通，消費，廃棄，再生利用等に至る物質循環の各段階において，廃棄物に係る環境負荷が生じている。加えて，廃棄物が大量に発生し，その再利用が社会全体として円滑に進まないことにより，廃棄物処理というモノの流れの下流に量と質の両面の環境負荷とその負担をしわ寄せしている。
このため，下流における環境保全上の要請が適切に上流に反映され，物質循環の各段階における廃棄物の発生抑制とあわせて，とぎれのない物質循環の輪を完結するようなシステムを構築することにより，廃棄物処理に係る負担を少なくしていくことが重要である。すなわち，焼却や処分等に流れている物質について，製造段階から再利用を念頭においた工夫や，下流において廃棄物として排出された際の物質特性に応じた分別，再生処理，再利用が図られるような社会システムの構築が必要となる。
また，生産・物流・製品使用・不要物の収集運搬などに伴う物質循環の各段階での温室効果ガスの排出等による環境負荷の低減もあわせて考慮することにより，「大量生産・大量消費・大量リサイクル」とならないようにすることも必要である。
いずれにしろ，一次資源の多くを海外からの輸入に頼っている我が国の物質収支にかんがみれば，我が国への資源の安易な新規投入は，再利用可能な資源の利用の妨げとなる。加えて，我が国の国土に対する物質の過剰な蓄積（例：窒素，リン，鉛など）や海外における資源採取等に伴う環境破壊といった環境負荷を生じさせる要因となる。
このような環境保全上の負のストックの蓄積は，短期的には廃棄物処理コストを抑えた形での経済活動を可能とさせよう。しかし，中長期的に見れば，生活環境や生産環境の悪化をもたらすばかりでなく，その処理コストも膨大になり，今後の社会経済活動の展開の足かせとなりかねない。従って，廃棄物の発生抑制・リサイクルを通じたとぎれのない物質循環の輪の構築は，資源の有効利用のみならず，環境負荷の低減を通じた環境コストの削減と持続可能な経済社会システムに不可欠なものとなっている。
コラム：我が国のマテリアルバランス（物質収支）平成８年
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(2) 効率的な環境負荷低減システムの構築
廃棄物の発生抑制・リサイクルの促進と適正処理の確保による物質循環型社会を形成していくためには，国民，事業者等の社会経済活動における主体的な取組が重要である。そして，全体として効率的な環境負荷低減システムの構築が必要である。
具体的には，
