瀬戸内海における新たな環境保全・創造施策のあり方について(諮問)
平成9年9月19日 諮 問 第 4 号 環水規 第305号 環 境 庁 長 官 |
標記について、瀬戸内海環境保全特別措置法第23条第2項の規定に基づき、次のとおり諮問する。
「瀬戸内海における新たな環境保全・創造施策のあり方について貴審議会の意見を求める。」
(説明資料)
瀬戸内海においては、環境保全を推進するため、瀬戸内海環境保全特別措置法や同法に基づく基本計画等に沿って、各種施策を実施しているところであるが、近年、水質は横這いであり、累積する埋立て等により藻場、干潟、自然海浜等の貴重な自然環境は徐々に減少している。
一方、環境への負荷が少ない持続的発展が可能な社会の構築を目指して、自然的環境の回復や生物多様性の確保等の新たな施策の方向性が環境基本計画等において示されている。瀬戸内海においても、環境を健全な状態に保全・回復して後代に引き継ぐため、従来の施策に加えて、環境を創造する観点に立った新たな施策の展開が今後必要になると考えられる。
今回の諮問は、このような観点から、瀬戸内海における新たな環境保全・創造施策のあり方について、貴審議会の意見を求めるものである。
(1) 現行の規制型保全施策だけでは瀬戸内海の環境は取り戻せない |
現在、瀬戸内海環境保全特別措置法(以下、瀬戸内法という。)やこれに基づく瀬戸海環境保全基本計画等に沿って、規制を主とした保全施策を実施していますが、近年 、水質の改善ははかばかしくなく、また、藻場、干潟、自然海浜等の貴重な自然環境は徐々に減少していることから、従来の施策のみでは環境の一層の改善を図ることが難しいと考えられます。
(2)規制型保全施策に止まらず環境については新たな流れが生まれつつある |
平成4年の国連環境開発会議以降、「環境への負荷が少ない持続的発展が可能な社会の構築」が共通の認識として定着しつつあり、環境基本計画等においても、その達成に向けた新たな環境保全施策の方向性が示されています。
また、近年の環境保全意識の高まり、環境関係技術の進展等を踏まえて、瀬戸内海の一部の大規模埋立てでは、埋立てにより失われる環境の復元、新たな環境の創出のための事業が実施されつつあります。
現行の規制を主とした環境保全施策は、高度成長期の危機的な公害への対応を契機として整備されたものであることから、このような環境保全に関する新たな流れに対応した施策の展開が必要と考えられます。
(1)環境基本計画(平成6年12月閣議決定)
◆循 環 | ・自然海岸、干潟、藻場、浅海域の保全 ・自然浄化能力の回復(人工干潟・海浜等の整備) |
◆共 生 | ・自然が減少した所等での自然的環境の回復、量的確保 ・生態系の健全性の維持・回復 ・人と自然とのふれあいの確保 |
◆参 加 | ・住民等の環境保全活動への積極的参加 |
◆国際的取組 | ・国際的な連携の下に生物の多様性の保全、持続可能な利用を促進 |
(2)5全総(H9年度末に策定予定)
環境基本計画に関するものの他、自然的環境を円滑に回復するための沿岸域管理計画、ミティゲーション等が盛り込まれる予定
(3)生物多様性の確保、生物生息地保全の要請
(4)埋立てにおける環境創造の導入事例
(a)生物生息環境への関心 |
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(b)環境創造事業の計画的実施 |
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(3) 閉鎖性海域保全のフロントランナーとしての瀬戸内海の役割 |
瀬戸内海は、環境保全に関する地域立法としては他に例をみない瀬戸内法に基づき、 国や関係する地方自治体等が連携した環境保全対策を進めており、わが国における閉鎖性海域の環境保全の先導的役割を果たしてきました。
今後においても、「環境への負荷が少ない持続的発展が可能な社会の構築」に向けて 、わが国のみならず世界の閉鎖性海域の環境保全の先導的役割を果たすことが期待されています。
前述のように、瀬戸内海では、藻場、干潟、自然海浜等の貴重な自然環境は徐々に減少を続けており、また、近年に限れば、水質は横這いの状態が続いています。
今後、現行施策を継続した場合、水質の更なる改善は難しく、藻場、干潟、自然海岸における生態系や自然景観、水辺とのふれあいの機会についてはさらに状況が悪化するものと考えられます。従って、現行施策の課題を解決し、瀬戸内海の環境を健全な状態に保全・回復して後代に引き継ぐためには、以下の2点に考慮する必要があると考えられます。
(1) | 水質の一層の改善を進めるとともに、今後の開発行為に対して、現在の自然環境を極力保全すること |
(2) | これまでの開発等で消失した貴重な自然環境を取り戻すこと |
(1)については、これまでの施策をさらに進めるものであり、「現行施策の充実」と考えられます。また、(2)については、従来施策にない部分であり、新たな施策の導入が必要となります。本諮問においては、これらを合わせて、新たな環境保全・創造施策と考えています。(図−1参照)
なお、米国等で導入されているミティゲーション手法については、新たな開発行為に伴う環境への影響をトータルとしてゼロとするように開発行為者に義務を課すことから、ここでは、(1)の現行施策(保全型施策)の充実に該当すると考えられます。
これから検討すべき今後の施策案については表−1のように想定しています。施策の目標や具体的な内容についは、前述の環境基本計画等の新たな流れや下記の瀬戸内海の特徴を踏まえて検討を進めることとしています。
◆瀬戸内海の特徴◆
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注 図−1及び表−1は別ファイル参照
期 日 | 内 容(予定) |
H9/12月
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◇第1回部会 ・審議の進め方等 |
H10/1月
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2月
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◇第2回部会(現地開催) ・関係機関の意見等の聴取等 |
3月
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◇現地小委員会(小郡町) ◇一般の意見 |
4月
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◇現地小委員会(高松市) の募集 ◇現地小委員会(大阪市) |
5月
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◇第3回部会 ・関係機関の意見等の聴取等 |
6月
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◇第4回部会 ・部会報告骨子とりまとめ等 |
7月
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<公表、一般の意見募集> |
8月
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◇第5回部会/総会 ・部会報告最終とりまとめ |
9月
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・答申 |
本諮問の答申を受け、新たな環境保全・創造施策を具体化するために、瀬戸内海環境保全基本計画の見直し、埋立ての基本方針の見直し等について、さらに審議を進めることを予定しています。