別添
鉛・セレンに係る暫定排水基準の見直しについて
 
 
1.これまでの経緯
 
 水質汚濁防止法においては、人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質を有害物質として定め、それらの有害物質については、全国一律に適用する排水基準(一律排水基準)を設定し、排水規制を行っている。
 水質汚濁防止法の有害物質については、平成5年12月にセレン等の13物質を追加しそれらの一律排水基準を設定するとともに、鉛等の2物質の一律排水基準を強化し、平成6年2月1日から施行した。
 有害物質の排水基準については、国民の健康を保護する観点から全国一律に適用されるものであるが、追加又は基準の見直しが行われた有害物質のうち、一律排水基準を直ちに達成することが困難な業種に属する一部の事業場に対しては、施行から平成9年1月31日まで暫定排水基準を設定した。
(暫定排水基準が設定された物質は鉛等7物質、適用された業種は45業種)
 その後、平成9年に、当初設定された暫定排水基準の見直しを行い、ほとんどの物質、業種については、暫定排水基準が撤廃されたものの、鉛・セレンを使用する3業種に属する一部の事業場(注)に対しては、一律排水基準を達成することが著しく困難であることから、達成可能な濃度レベルとして暫定排水基準を強化するとともに、適用期間を平成12年1月31日までとした。

有害
物質

 適 用 業 種
 

平成6年に設定した暫定排水基準 

平成9年に見直し
た暫定排水基準

一律に適用される排水基準


黄鉛顔料製造業

    0.5mg/l

   0.3mg/l 

 0.1mg/l 




 

セレン化合物製造業

   4 mg/l

    2 mg/l 


 0.1mg/l
     
 

銅第一次製錬・精製業*
 

   20 mg/l
 

    1 mg/l 
 
 *セレン製造工程を有するものに限る。
 
(注)水質汚濁防止法の排水規制は、約30万事業場に適用(うち、有害物質を排出するものは、約1.8万事業場)
  このうち、暫定排水基準が適用されるものは、3事業場(この他、下水道法の適用を受けるものは、3事業場)
 
 
2.暫定排水基準が適用される業種に属する事業場の現状
 
(1)黄鉛顔料製造業(産業分類:2023)
 鉛化合物を用いて、主として塗料、印刷インキ等の黄鉛顔料を製造するものである。
 この業種に属し、鉛又はその化合物を含む排水を排出する事業場は、2事業場であり、いずれも下水道に接続している。
 当該事業場においては、これまで凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを用いた排水処理により一律排水基準の達成を目指していた。この結果、平成8年当時の排水濃度レベルで最大0.5mg/l程度であったのが平成11年には最大0.2mg/l程度にまで低減したものの、いまだ一律排水基準0.1mg/lを完全に達成するには至っていない。
 今後は、さらに有効な排水処理技術として高分子金属捕集剤を用いた試験研究を実施し、その結果を踏まえて施設の改良等を行うこととしている。
 
(2)セレン化合物製造業(産業分類:2029)
 無機化学工業製品を製造するもののうち、粗製セレンや感光ドラムへの残さ等を用いてセレン化合物を製造するものである。
 この業種に属し、セレン又はその化合物を含む排水を排出する事業場は、2事業場であり、そのうち、1事業場は下水道に接続し、他の1事業場は公共用水域に排水を排出している。なお、排水が排出される公共用水域においては、セレンに係る水質環境基準を達成している。
 当該事業場においては、これまで自社技術の改良に加え、排水処理メーカーの開発による排水処理技術(生物処理、キレート処理等)の導入により一律排水基準の達成を目指していた。この結果、平成8年当時の排水濃度レベルで最大3.6mg/l程度であったのが平成11年には最大0.5mg/l程度にまで低減したものの、共存する物質の影響を受けるなどにより、いまだ一律排水基準0.1mg/lを完全に達成するには至っていない。
 今後は、さらに有効な排水処理技術として硫酸第一鉄を用いた試験研究を実施し、その結果を踏まえて施設の改良等を行うこととしている。
 
(3)銅第一次製錬・精製業(産業分類:2711)
 主として銅鉱石を処理し、銅の製錬及び精製を行うものであり、原料に含まれるセレン化物を排出する。
 この業種に属し、セレン又はその化合物を含む排水を排出する事業場は、2事業場であり、いずれも公共用水域に排水を排出している。なお、排水が排出される公共用水域においては、セレンに係る水質環境基準を達成している。
 当該事業場においては、これまで硫酸第一鉄等を用いた排水処理により一律排水基準の達成を目指していた。この結果、平成8年当時の排水濃度レベルで最大2.5mg/l程度であったのが平成11年には最大0.5mg/l程度にまで低減したものの、セレンの再溶解が生じることが新たに判明するなどにより、十分な除去効果が得られず、いまだ一律排水基準0.1mg/lを完全に達成するには至っていない。
 今後は、セレンの再溶解の防止に係る試験研究を実施し、その結果を踏まえて施設の改良等を行うこととしている。
 
3.今回の暫定排水基準の見直し
 
 平成12年1月31日まで暫定排水基準が適用される3業種に属する一部の事業場においては、これまで一律排水基準の達成に向けて、排水処理に係る各種技術検討・施設改良等が進められ、排出濃度の低減に努めてきた。
 環境庁しても、これらの事業場における排出濃度の実態調査結果から、一定程度の排出濃度レベルの改善が認められているところである。
 しかしながら、これらの事業場から排出される鉛・セレンについて効果的な排水処理等の技術はいまだ開発・実用化の途上にあり、現時点においてなお、直ちに一律排水基準を達成することが困難な状況にある。
 
 環境庁としては、下表のとおり、排水基準を定める総理府令を改正し、現時点において達成可能な濃度レベルにまで暫定排水基準を強化するとともに、暫定排水基準の適用を平成15年1月31日まで延長することとしている。
 なお、各事業者においては、暫定排水基準適用期間内にあっても、これまでの取組の成果を踏まえ、更なる排水処理の技術検討等を急ぎ、一律排水基準の早期達成に努めることとしている。
 
[排水基準を定める総理府令の改正(案)の概要]

有害
物質

 適 用 業 種
 

これまで適用された暫定排水基準*1

今回設定する
暫定排水基準 *2

一律排水基準
 


黄鉛顔料製造業

    0.3mg/l

   0.2mg/l 

 0.1mg/l 




 

セレン化合物製造業

   2 mg/l


   0.5mg/l 

 


 0.1mg/l
     
 

銅第一次製錬・精製業*3
 

   1 mg/l
 
 *1.これまでの暫定排水基準は、平成12年1月31日まで適用。
 *2.今回設定する暫定排水基準は、平成15年1月31日まで適用。
 *3.セレン製造工程を有するものに限る。
 
 
[参考資料]
 
参考資料1.鉛について
参考資料2.セレンについて
参考資料3.環境基準と排水規制・地下浸透規制
参考資料4.排水基準を定める総理府令[PDFファイル]
参考資料5.水質汚濁防止法の特定施設[PDFファイル]