6 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進

「自然と共生する社会」を実現するためのトータルプランである「新・生物多様性国家戦略」の実施状況については、平成18年度に第4回目の点検を行い、その結果を中央環境審議会に報告しました。また、「新・生物多様性国家戦略」は、策定後5年後程度を目途に見直すこととされていることから、18年8月より「生物多様性国家戦略の見直しに関する懇談会」を公開で開催し、見直しに向けた論点等を取りまとめました。

新・生物多様性国家戦略の実施状況の点検結果(第4回)概要

絶滅のおそれのある野生生物種の現状は、レッドリストに取りまとめられており、それに関連して平成18年までに対象とする全分類群のレッドデータブックを刊行しました。またこれらのレッドリストを見直すための検討を鳥類等の4分類群で行い、その結果も含め、我が国に生息する爬虫類、両生類の3割強、哺乳類、汽水・淡水魚類、維管束植物の2割強、鳥類の1割強に当たる種が絶滅のおそれが高いとされました。また、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種には、哺乳類4種、鳥類39種、昆虫類5種、植物19種等計73種が指定されています。

我が国における絶滅のおそれある野生生物の種数(環境省版レッドリスト掲載種数表)

国立・国定公園においては、公園区域及び公園計画の全般的な見直しを行っており、全国初となる利用調整地区の指定(吉野熊野国立公園)、口永良部島の公園区域への編入(霧島屋久国立公園)等を行いました。また、特別地域において捕獲等に許可を要する動物として9種類の動物を指定し、管理の強化を図りました。
外来生物法に基づき、セイヨウオオマルハナバチ等3種類を新たに指定し、特定外来生物は計83種類となりました。
鳥獣保護法の一部が改正され、休猟区における特定鳥獣の狩猟の特例や、「網・わな猟免許」の「網猟免許」・「わな猟免許」への分割など狩猟規制の見直しが図られるとともに、鳥獣保護区における生息環境改善のための保全事業の制度化等が図られました。
人里にクマ類が大量に出没した事態を受け、平成19年3月、クマの出没を減らす、クマによる被害を減らす、有害捕獲数を減らすこと等を目的とするクマ類出没対応マニュアルを作成しました。
平成19年1月以降に国内で発生した高病原性鳥インフルエンザ等に関する野鳥関係の調査では、発生現場に職員及び専門家を派遣し、野鳥の生息状況の把握及び野鳥のウイルス保有状況調査を緊急的に実施しました。
また、自然再生推進法に基づく18の自然再生協議会(平成19年3月末現在)が設置されており、自然再生に向けた取組が始まっています。

自然再生協議会(設置場所)の全国位置図

生物多様性に関する国際的な取組としては、平成18年10月に国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)の議長国として、「国際熱帯海洋生態系管理シンポジウム」及びICRI総会を開催しました。また、アジア太平洋地域における渡り鳥性水鳥の保全に関する国際協力の一層の推進を図るため、日豪政府のイニシアティブにより、18年11月に「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ」が発足しました。さらに19年1月に、生物多様性条約の第10回締約国会議を日本で開催すべく立候補することを閣議了解しました。
自然や人を大切にする豊かな心を育むとともに、自然との共生に関する理解を深めるため、自然公園ふれあい全国大会の開催や子どもパークレンジャーの実施など自然とのふれあいを推進しています。また、エコツーリズムの普及・定着を図るため、引き続き、エコツーリズム憲章、エコツーリズム推進マニュアル、エコツアー総覧、エコツーリズム大賞、モデル事業の5つの推進方策を実施したほか、フォーラムや全国セミナーを実施しました。
国民の温泉に対する関心とニーズが増加・多様化する中で、温泉成分等に係る情報提供の充実等様々な課題が生じていることから、温泉利用事業者に対し温泉成分の定期的な分析と分析結果の掲示の義務付けなどを内容とした温泉法の一部を改正する法律案を第166回通常国会に提出しました。
飼養動物の愛護・管理においては、実験動物の飼養及び保管に関する基準及び動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針の策定等を行いました。また、飼養放棄等により都道府県等において引き取りや収容される動物の譲渡及び返還を促進するため、再飼養支援データベース・ネットワークシステム(迷子動物・譲渡動物の検索サイト)の運用を開始しました。


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