2 大気環境の保全


(1)光化学オキシダント
光化学オキシダントは、眼やのどへの刺激や呼吸器に影響を及ぼす光化学スモッグの原因となっており、依然として、全国ほとんどの地域で環境基準(1時間値が0.06ppm以下であること)を越えています。

光化学オキシダント濃度レベル毎の測定局数の推移

光化学オキシダント対策の一つとして、工場等の固定発生源から排出される揮発性有機化合物(VOC)については、平成18年4月からは、VOC排出事業者に対してVOCの排出施設の届出義務、排出基準の遵守義務等が課されました。自動車から排出されるVOCについては、大気汚染防止法に基づく排出ガス規制を引き続き実施しました。
また、「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめ君)」により、都道府県等が測定している全国の大気環境データや光化学オキシダント注意報等発令情報をリアルタイムで収集し、インターネット等で公開しています。

(2)窒素酸化物
窒素酸化物の主な発生源には工場等の固定発生源と自動車等の移動発生源があります。窒素酸化物は光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、酸性雨の原因物質となるほか、二酸化窒素は高濃度で呼吸器を刺激し、好ましくない影響を及ぼすおそれがあります。
二酸化窒素に係る環境基準達成状況は、平成17年度には一般環境大気測定局(一般局)で99.9%、自動車排出ガス測定局(自排局)で91.3%であり、自排局では前年度に比べやや改善しています。

二酸化窒素の環境基準達成状況の推移


(3)浮遊粒子状物質(SPM)
大気中に浮遊する粒径が10μm以下の浮遊粒子状物質は、工場等から排出されるばいじんやディーゼル自動車から排出されるディーゼル排気粒子、土壌の巻き上げ等の一次粒子と、窒素酸化物等のガス状物質が大気中で粒子状物質に変化する二次生成粒子からなります。微小なため大気中に長時間滞留し、肺や気管等に沈着して高濃度で呼吸器に悪影響を及ぼすおそれがあります。
浮遊粒子状物質に係る環境基準達成状況は、平成17年度には、一般局、自排局ともに前年度に比べやや低下しています。また、近年健康影響との関係が懸念されている粒径2.5μm以下の微小粒子状物質やディーゼル排気粒子等についての検討・調査を進めています。

浮遊粒子状物質の環境基準達成状況の推移


(4)有害大気汚染物質
近年、多種多様な有害大気汚染物質が、低濃度ながら大気中から検出されており、これらの物質に長期間にわたってばく露することによる健康影響が懸念されています。環境基準が設定されている4物質のうち、ベンゼンについては環境基準超過の割合が3.9%(平成17年度)に改善しており、その他の3物質については、全ての地点で環境基準を満たしていました。
環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るため、今までに設定されていた4物質に加え、平成18年度に新たに、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,3-ブタジエンについて、指針値を設定しました。

(5)石綿対策
大気汚染防止法では、吹付け石綿を使用する一定規模以上の耐火性建築物の解体等作業には作業基準等が定められていましたが、石綿の大気環境への飛散防止措置を拡充・強化するため、平成18年3月からは、規制対象となる建築材料の範囲が拡大され、建築物の規模要件等が撤廃されました。また、18年10月から、解体等の作業に伴う規制対象が建築物のみから建築物その他の工作物に拡大しました。

(6)騒音・振動、悪臭
騒音・振動の苦情件数は、ここ数年増加しており、平成17年度はそれぞれ16,470件、3,599件でした。悪臭苦情の件数は、17年度は19,114件で2年連続で減少しました。

騒音・振動・悪臭に係る苦情件数の推移

平成17年度の道路に面する地域における騒音に係る環境基準の達成状況は、全国2,914千戸の住居等について、昼間または夜間で環境基準を超過していたのは456千戸(16%)、このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある1,240千戸のうち昼間または夜間で環境基準を超過していたのは317千戸(26%)でした。17年度の航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、測定地点の約73%の地点で達成しました。

平成17年度 道路に面する地域における環境基準の達成状況


(7)ヒートアイランド現象
ヒートアイランド現象は、都市部の気温が郊外に比べて高くなる現象です。この現象により、夏季においては、熱帯夜の日数が増加しています。また、冷房等による排熱が気温を上昇させることにより、更なる冷房のためのエネルギー消費が生ずるという悪循環が発生しています。
ヒートアイランド対策大綱に基づき、人工排熱の低減、地表面被覆の改善、都市形態の改善、ライフスタイルの改善の4つを柱とするヒートアイランド対策の推進を図りました。また、関連する調査研究として、ヒートアイランド現象の実態や環境への影響に関する調査・観測や、熱中症の予防情報の提供とモニタリングを継続的に実施しました。


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