6 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進

(1)自然環境の保全と自然とのふれあいの推進
「自然と共生する社会」を政府全体として実現する「新・生物多様性国家戦略」においては、平成17年度に第3回目の点検を行いました。点検の報告を受けた中央環境審議会からは、生物多様性に関する施策は前向きに進んでいるものの、いまだ危機の進行を食い止められていないという現状認識が指摘され、自然環境の科学的な基本データの整備、生物多様性に係る教育の重要性、NPO等に対する支援等の体制の充実等を今後の施策の方向性とすべき旨の意見が示されました。

図 生物多様性の危機への主な新たな対応状況(第3回点検)

絶滅のおそれのある野生生物種の現状は、レッドリストに取りまとめられ、日本に生息する哺乳類、両生類、汽水・淡水魚類、維管束植物の2割強、爬虫類の2割弱、鳥類の1割強に当たる種が絶滅のおそれが高いとされています。また、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種には、哺乳類4種類、鳥類39種類をはじめとする計73種が指定されています。

表 わが国における絶滅のおそれある野生生物の種類

日本の生物多様性を保全するため、さまざまな施策が展開されています。
自然公園の適正な保護及び利用の増進を図るため、公園を取り巻く社会条件等の変化に応じ、公園区域及び公園計画の全般的な見直しを行っています。
国際的に重要な湿地の保全を推進するため、湿原、干潟、サンゴ礁、カルスト地形等さまざまなタイプの湿地を含む国内湿地20か所について新たにラムサール条約湿地に登録しました。
また、自然再生推進法に基づく18の自然再生協議会(平成18年3月現在)が立ち上がり、自然再生に向けた取組が始まっています。
さらに、平成17年6月に施行された特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)に基づき、第一次指定において37種類、第二次指定において43種類の生物を特定外来生物に指定しました。

表 外来生物法に基づく特定外来生物のリスト

近年、シカやイノシシなどの鳥獣が地域的に増加し、鳥獣の捕獲の担い手である狩猟者の減少が進む中で、農林業や自然植生に深刻な被害を与えており、他方、鳥獣の生息環境が悪化し、一部の地域では渡り鳥の飛来数が減少している事例などが存在します。こうした状況を踏まえ、狩猟を活用した鳥獣の保護管理及び鳥獣の保護施策の一層の推進を図るため、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案を国会に提出しました。
一方、飼養動物については、改正動物愛護管理法が平成18年6月に施行され、動物取扱業者の登録制及び特定動物(危険な動物)の全国一律の飼養許可制が導入されるなど、飼養動物の愛護及び管理が強化されました。
このほか、健全な心を育み、人間性を回復するとともに、自然との共生に関する理解を深める自然とのふれあいを推進しています。
エコツーリズムの普及・定着を図るため、平成16年度に引き続き5つの推進方策①エコツーリズム憲章、②エコツーリズム推進マニュアル、③エコツアー総覧、④エコツーリズム大賞、⑤モデル事業を実施しました。すぐれた取組を表彰する④の「第1回エコツーリズム大賞」では大賞1団体、優秀賞4団体、特別賞6団体を選定し、愛・地球博において環境大臣表彰式を行ったほか、シンポジウムを開催し各団体の取組を紹介しました。⑤「モデル事業」では13のモデル地区においてルールづくりやガイドの育成など各地区の状況に応じた支援を行うとともに各モデル地区の取組を発表及び情報交換するためにオリエンテーションを開催しました。新たに、エコツーリズム事業者等を対象に全国エコツーリズムセミナーを開催したほか、国立公園内でのエコツーリズム推進を目指し2地区で調査を実施しました。
また、温泉事業者による表示のあり方など温泉に関する課題へ対応するため、加水、加温、循環装置(循環ろ過装置を含む。)、入浴剤又は消毒方法について掲示項目に追加することを内容とした改正温泉法施行規則が平成17年5月24日に施行されました。
(2)国際的な自然環境の保全
世界の森林は、2000年から2005年にかけて、年平均732万haの割合で減少しました。特に、熱帯林が分布するアフリカ地域、南アメリカ地域及びアジア地域のうち東南アジアで森林の減少が続いています。その原因として農地への転用、森林火災、違法伐採等が挙げられます。このため、平成18年2月に開催された国連森林フォーラム第6回会合では、世界の森林に関する今後の国際的枠組みの強化について議論が行われました。

図 世界の森林面積の年当たりの変化率(2000年~2005年)

乾燥地域、半乾燥地域等における土地の劣化である砂漠化は、全陸地の4分の1の土地と、世界人口の6分の1に当たる9億人の人々に影響をもたらしています。その背景には、開発途上国における貧困、人口増加等の要因が絡んでいます。このため、砂漠化対処条約の下で、国際的な努力が進められています。

グラフ 砂漠化の現状



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