6 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進
(1)自然環境の保全と自然とのふれあいの推進
「自然と共生する社会」を政府全体として実現する「新・生物多様性国家戦略」においては、平成16年度に第2回目の点検を行いました。その結果、生物多様性国家戦略の普及啓発にさらに取り組むこと、地域でのさまざまな自然環境保全に対する取組が活発化していることに対して、専門家が関わる体制づくりや、人材育成の強化等が必要とされています。
絶滅のおそれのある野生生物種の現状は、レッドリストに取りまとめられ、日本に生息する哺乳類、両生類、汽水・淡水魚類、維管束植物の2割強、爬虫類の2割弱、鳥類の1割強に当たる種が絶滅のおそれが高いとされています。また、種の保存法に基づく国内希少野生動物種には、哺乳類4種類、鳥類39種類をはじめとする計73種が指定されています。
日本の生物多様性を保全するため、さまざまな施策が展開されています。
自然公園の適正な保護及び利用の増進を図るため、公園を取り巻く社会条件等の変化に応じ、公園区域及び公園計画の全般的な見直しを行っています。
国際的に重要な湿地の保全を推進するため、日本では、平成17年11月のラムサール条約第9回締約国会議までに国内のラムサール条約湿地を22か所以上に増加させることを目標として表明し、優先的に登録を目指す湿地について科学的見地から検討が行われました。
また、自然再生推進法に基づく12の自然再生協議会(平成17年1月現在)が立ち上がり、自然再生に向けた取組が始まっています。
さらに、外来生物法が平成16年6月に公布され、17年6月1日に施行されました。外来生物法は、特定外来生物の輸入、飼養等を規制するとともに、防除を促進することで生態系、人の生命もしくは身体、農林水産業に係る被害を防止することを目的としています。16年10月には、被害の防止に関する基本構想等を盛り込んだ特定外来生物被害防止基本方針が策定されました。これに基づき、37種類の生物が特定外来生物に選定されるなど、具体的な対策を進めています。
このほか、健全な心を育み、人間性を回復するとともに、自然との共生に関する理解を深める自然とのふれあいを推進しています。
エコツーリズムの普及・定着を推進するため、「エコツーリズム推進会議」では、平成16年6月に「エコツーリズム憲章」の制定やモデル事業の実施などを内容とする推進方策を取りまとめました。
また、温泉事業者による表示のあり方など温泉に関する喫緊の課題に対応するため、平成17年2月、既存の表示項目に加え、温泉成分に影響を与える項目を追加し、温泉事業者による温泉利用者への情報提供を充実させるための温泉法施行規則の改正を行いました。
(2)国際的な自然環境の保全
世界の森林は、1990年から2000年にかけて、年平均約940万haの割合で減少しました。その原因として農地への転用、森林火災、違法伐採等が挙げられます。このため、平成14年(2002年)に発足されたアジア森林パートナーシップ等において、アジアの持続可能な経営の推進に向けた取組が行われています。
乾燥地域、半乾燥地域等における土地の劣化である砂漠化は、全陸地の4分の1の土地と、世界人口の6分の1に当たる9億の人々に影響をもたらしています。その背景には、開発途上国における貧困、人口増加等の要因が絡んでいます。このため、砂漠化対処条約の下で、国際的な努力が進められています。