5 化学物質の環境リスク対策

 現在、国内で約5万種以上流通しているといわれる化学物質の中には、発がん性、生殖毒性等多様な毒性を持つものが多数存在し、これらが大気・水等の媒体を経由し人の健康や生態系に影響を与えているおそれがあります。環境中に残留する化学物質の調査結果によれば、PCB、DDT等の残留性の高い化学物質をはじめとするさまざまな化学物質が環境中から検出されています。その中には、地球レベルの汚染を起こしているものもあり、その対策を国際的に進めるための条約が平成13年に採択されています。
 このような影響を未然に防止するためには、化学物質の環境保全上の支障を生じさせるおそれ(環境リスク)の評価を行い、適切な対策を講じていく必要があります。
 国民の関心の高いダイオキシン類については、人が一日に平均的に摂取するダイオキシン量は年々着実に低減し、生涯にわたって継続的に摂取したとしても健康に影響を及ぼすおそれがない1日当たりの摂取量である耐容一日摂取量と比較しても、それを下回っていることがわかります。

ダイオキシン類の一日摂取量の経年変化

わが国におけるダイオキシン類の1人1日摂取量

 また、内分泌系に影響を与えて、生体に悪影響を及ぼす内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)については、未解明な点が多いため、科学的知見を集積すべく調査研究を進めています。
 さらに、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、環境中への排出量や、廃棄物に含まれて移動する量を把握、集計し、公表する仕組みであるPRTR制度がわが国にも導入され、平成14年秋以降、これらの結果が公表される予定となっています。今後は、化学物質による環境リスクに関し、市民・産業・行政の間での情報の共有・相互理解の促進を図るリスクコミュニケーションの推進がより重要となります。

化学物質の排出量の把握等の措置(PRTR1))の実施手順

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