第3章 環境コミュニケーションで創造する持続可能な社会

<第3章の要約>
 持続可能な社会の構築のためには、個人、企業、NGO、行政などの各主体が、各々の社会経済の営みの各段階において、意識や行動に環境配慮を織り込みながら、パートナーシップを確立していくことが必要です。
 この章では、環境コミュニケーションが、各主体が問題認識を共有した上で、環境意識を向上させ、信頼関係を深め、パートナーシップを形成しながら共通の目標に向かって自主的に取り組んでいくことを可能にすること、それが社会のあり方を変えていくことの重要性を考えます。

第1節 環境コミュニケーションの役割と今後の可能性を考える


1 社会と環境コミュニケーションの関わり
 「環境コミュニケーション」は比較的新しい言葉ですが、環境基本計画では「持続可能な社会の構築に向けて、個人、行政、企業、民間非営利団体といった各主体間のパートナーシップを確立するために、環境負荷や環境保全活動等に関する情報を一方的に提供するだけでなく、利害関係者の意見を聞き、討議することにより、互いの理解と納得を深めていくこと。」という意味で用いられています。
 この図は「環境コミュニケーション」を環境に関わる情報の社会的なやり取りととらえ、その基本的な流れを示したものです。環境情報を受け取った者が、環境意識を高め、相互理解をし、信頼関係を築き、グリーン購入や環境保全活動への参加といった様々な形の行動につなげていくなど、連鎖反応や相乗効果が生まれます。また、このような環境コミュニケーションが、多主体間において様々な時間や場所で行われることにより、社会全体における環境問題に関する合意やパートナーシップを形成するための土台となり得ます。

環境コミュニケーションの基本的な流れ

2 環境コミュニケーションの動向
 環境コミュニケーションを取り巻く大きな状況の変化の一つは、メディア(情報伝達媒体)のあり方の変化だといえます。インターネットなどの新しいメディアの登場、普及やメディア同士の融合、電子メールの活用などによる双方向性の増大、多主体が受発信を行えるようなネットワーク化などにより、メディアや各主体の関わり方が多様化し、情報の伝達範囲が広がり、伝達スピードも向上しました。環境コミュニケーションについてもこれらの新しいメディアの活用が見られます。
また、新聞に取り上げられる環境関連記事の増加傾向や、企業による環境広告の内容の具体化、詳細化なども見られます。
このような状況の変化を受け、環境コミュニケーションの態様も変化し、各主体はその変化から影響を受け、さらに環境意識を向上させ環境保全へ取り組む動機付けにつながっていくといえるでしょう。

環境関連の記事数の推移

3 環境コミュニケーションに期待する効果
 環境コミュニケーションの効果は、大きく分けて、各主体の環境意識の向上、各主体の自主的取組の促進、各主体間の相互理解の深化・信頼関係の向上、そしてパートナーシップの形成による環境保全活動への参画という一連の流れに整理できます。
 まず、環境情報を受け取り、環境に関する知識を得ることにより、受け手の環境意識が高まります。環境意識の向上は自省を促し、自らの行動やライフスタイルを見直す契機となって、自主的に環境保全活動に取り組む可能性を高めます。さらに、環境情報の能動的なやり取りの繰り返しに伴い、各主体が相手をより理解し、問題意識を共有し、さらには信頼関係を徐々に構築していくことができます。
このように、環境コミュニケーションに期待される効果は、社会の構成員が参加・協働して持続可能な社会を構築していく上で欠かすことのできない大変重要な要素であるといえましょう。
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