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第6節 

2 各種施設・地区の整備等

(1) 自然公園の施設整備
 昭和61年における自然公園の利用者数は約9億700万人に達し、10年前と比較すると約9,400万人の増加となっている。このような国民の自然に親しむ欲求に適正に対応するためには、多様な自然環境を保全しつつ、自然の質に応じた利用を推進することが要請されている。
 このため、自然の質に応じて自然歩道、野営場等の各種の利用基幹施設の整備を行っている。これを体系的に示せば第7-6-1図のとおりである。
ア 国立公園・国定公園の利用施設
 国立公園、国定公園は、優れた自然環境を有する地域であるので、これら自然環境に配慮しつつ、自然とのふれあいを求める国民のニーズに応え、安全で快適な利用を推進するため、園地、歩道、野営場、公衆便所等の利用の基幹施設を整備した。なお、62年度における国立・国定公園における利用施設の整備状況は第7-6-2表のとおりである。
イ 国民休暇村
 国民休暇村は、国立公園、国定公園の自然環境の優れた休養適地に、低廉で健全な宿泊施設を始め、自然に親しむための各種の施設を総合的に整備するものであり、現在、30地区が利用に供されている。
 国民休暇村の施設のうち、園地、歩道、野営場等の公共施設については、国又は地方公共団体が整備し、宿舎、ロッジ、スキーリフト等の有料施設については(財)国民休暇村協会が整備、運営している。
 国民休暇村の年度別利用者数の推移は第7-6-3表のとおりである。
ウ ふるさと自然公園国民休養地
 ふるさと自然公園国民休養地は、都道府県立自然公園内で、公園を訪れる都市近郊の住民が、積極的に自然に働きかける活動を通じて、より深く自然とふれあい、自然と人間との調和のあり方を身につけることに重点を置き整備する地域であり、5ヶ年で博物展示施設(ふるさと自然公園センター)、園地、野営場、歩道等必要な施設の整備を行うものである。62年度は、継続7地区の整備を行った。
エ 長距離自然歩道
 長距離自然歩道は、国民が広く自らの足で自然や史跡などを訪ねることにより、健全な心身を育成し自然保護に対する理解を深めることを目的とするもので、自然公園や文化財などを有機的に結ぶ長距離にわたる自然歩道として、45年度から整備を進めている。四季を通じて利用できるよう、また、都市住民が容易に利用できるよう配慮しつつ、整備を行っており、総延長は5,292kmである。現在、四国地方と関東地方を一巡する四国自然歩道と首都圏自然歩道を整備中である。なお、その利用者数は、61年には1,887万人に達した。それぞれの概要は第7-6-4表のとおりである。


(2) 休養施設、野外活動施設地区の整備
ア 温泉
(ア) 温泉
 我が国は、世界でも有数の温泉国であり、温泉地は国民の保健休養地として極めて重要な役割を果たしている。61年度末現在、全国の温泉湧出源泉数2万759ヶ所(うち自噴源泉5,098ヶ所、動力の装置された源泉9,497ヶ所、未利用源泉6,164ヶ所)、湧出量は1日換算約270万tに及んでいる。「温泉法」は、これらの温泉を保護し、その適正な利用を図ることを目的としており、温泉を掘削又は増掘する場合、動力を装置する場合には都道府県知事の許可を、温泉を公共の浴用又は飲用に供しようとする場合には都道府県知事又は保健所設置市のうち政令で定める市の長の許可を受けなければならない旨定めている。全国の61年の許可件数は、温泉の掘削703件、増掘44件、動力の装置506件、浴用又は飲用1,900件であった。
(イ) 国民保養温泉地
 国民保養温泉地は、温泉地のうち、温泉利用の効果が十分期待され、かつ健全な保養地として大いに活用される場を「温泉法」に基づいて環境庁長官が指定した地域である。61年度末現在75ヶ所1万989.38haを指定している。
 61年度に、国民保健温泉地(国民保養温泉地のうち、医師の協力を得て温泉の保健的利用を促進することが期待できる条件を備えた温泉地)を7ヶ所指定し、62年度も温泉センター、園地、歩道等の施設整備に対し引き続き補助を行った。
イ 国民宿舎
 国民宿舎は、自然環境に恵まれた休養適地における、国民の低廉かつ快適な宿泊休養を目的とした施設である。61年度末宿舎数は315ヶ所であり(第7-6-5表)、61年度の利用者数は862万人であった(第7-6-6表)。
ウ 国民保養センター
 国民保養センターは、自然公園等の休養適地に主として地域住民の日帰りレクリエーション活動と保健休養を目的とした施設である。61年度末センター数は70ヶ所であり(第7-6-7表)、61年度の利用者数は270万人である(第7-6-8表)。
エ 身近な自然活用地域 −自然観察の森−
 自然観察の森は、自然の喪失が著しい大都市及びその周辺において、身近な自然とのふれあいを求める国民のニーズが急速に高まっていることにかんがみ、三大都市圏及び政令市等において身近な自然とのふれあいを促進するための拠点をモデル的に整備し、自然保護教育を推進して行こうとするものである。この事業は、小動物等とのふれあいを通じて、自然の仕組についての理解を深め、自然に対する愛情とモラルを育むため、昆虫や野鳥の誘致林など、小動物の生息環境の創出を図るとともに、自然観察の拠点となるネイチャー・センターやその他自然観察路、観察小屋等の施設を総合的に整備することを内容としている。計画では全国10地区の整備を行うこととしており、62年度は、継続4地区の整備の他、新規2地区の整備に着手した。
オ 自然休養林等
 国有林野のうち森林を主体とした風景が優れ、かつ、林業経営等との調整を図り得るところで、国民の保健及び休養の用に供することが適当と認められる地域を対象として指定された自然休養林(92ヶ所、総面積約11万ha)については、伐採制限、風致施業等を行うとともに、遊歩道、園地等の利用施設を設け、森林の保健休養機能の積極的な発揮を図った。
 また、森林レクリエーションの需要の増大及び利用形態等の多様化に対処して、森林の有する多面的機能との調和を図りつつ、国有林野に各種森林レクリエーション施設を総合的に整備するヒューマングリーンプランを推進することとしており、62年度は群馬県草津町において事業に着手した。
カ 観光レクリエーション地区
 観光レクリエーション地区は、国民が自然の中で容易に観光レクリエーション活動を楽しむことができるよう、豊かで良好な自然環境の中に、キャンプ場、遊歩道、ピクニック緑地、スキー場等の多様なレクリエーション施設を配置したものであり、その整備に当たっては、環境保全に関しても十分配慮している。
 運輸省は、このような観光レクリエーション地区の基盤的な施設の整備を実施する地方公共団体に補助金を交付して、その整備を図っている。
 このうち、大規模な観光レクリエーション地区は、面積約500ha、計画収容人員約5万人(1日最大)を標準規模とし、整備を実施した。
 また、中規模な観光レクリエーション地区(家族旅行村)は、近年国民の間に広く定着してきた家族旅行に対処するため、面積約50ha、計画収容人員約5,000人(1日最大)を標準規模として、53年度から整備を実施しているが、62年度は9地区の継続整備を行うとともに、新規3地区において実施設計調査を行った。
キ 少年自然の家
 少年自然の家は、少年を自然に親しませ、団体宿泊訓練を通じてその情操や社会性を豊かにし、心身を鍛練し、もって健全な少年の育成を図ることを目的とする社会教育施設であり、62年度は、国立夜須高原(仮称)少年自然の家(福岡県)の設立準備室を10月に設置し、63年度の機関設置に備えるとともに、国立第12少年自然の家(山口県)以降の施設整備等を推進するほか、公立少年自然の家5ヶ所の建設事業に対して補助を行った。
ク 国立青少年野営場
 青少年が自然の中でのキャンプ生活を通じて自立心や忍耐力を身につけ、自然の美しさや厳しさを体験することができる国立南蔵王青少年野営場(宮城県)の利用受入れを開始するとともに、当該施設の整備を行った。

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