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第5節 

1 基本的考え方

 地球環境問題は、国際社会において、問題提起の段階から、南北、東西を超えて「持続的開発」が人類の現在及び将来にとっての基本的課題であるとの共通認識が形成され、いまや具体的行動に移すべき段階になっている。
 地球環境問題は、これまでみたように個々の国が具体的利害を有する経済、国際貿易等の構造と深いかかわりを持っており、各国が共通のルールのもとで、具体的行動をとっていかなければ十分な成果が期待できない場合が多い。したがって、国際機関等において、地球環境の保全、あるいは「持続的開発」を目指して、関係国が協調して行動するための国際的なルールを形成していくことが望まれる。
 また、開発途上国を中心にして顕在化している諸問題は、これまでの開発途上国の諸政策自身が自然資源等の管理に対して十分な配慮を行ってこなかったこともその大きな背景となっている。開発途上国における「持続的開発」への取組は、基本的には、開発途上国の自助努力が前提となることはいうまでもない。
 一方、我が国は、地球環境の保全に関し、その国際的地位にふさわしい行動をとるとともに、積極的に世界へ貢献するという対応が必要である。
 このためには、まず、国際社会における環境に関する認識に即応した政府や企業行動、国民一人ひとりの生活の場に至るまでの意識の変革が前提となる。すなわち、単に我が国の環境問題の歴史である公害の防止や自然の保護といった視点のみならず、水、土壌、森林等からなる環境は、微妙なバランスのうえに成り立つ生態系の構成要素であるとともに、生活・文化の場、経済的に価値のある資源であるなど現在及び将来にわたって人類に様々な恵みをもたらす経済・社会の持続的な発展の基盤であるという認識を持つことが必要である。
 第二に、この対応は、人類共有の地球環境を保全するということにとどまらず、世界のあらゆる地域で活動を展開し、国際的に相互依存関係を深めている我が国自身の持続的な発展の基盤を確保することでもあることを認識しなくてはならない。

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