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第3章 地球環境問題と我が国の貢献

 今日における環境問題は、一国内にとどまらず、国境を越え、さらには地球規模にまで広がっている。
 環境問題を人類共通の課題としてとらえ、世界各国が協調して取り組むべきであるとする認識は、1972年の国連人間環境会議以降急速に広がり、国連環境計画(UNEP)を中心とする国連機関のイニシアティブのもとで対応が図られてきた。しかしながら、近年、地球上における人口の急増をはじめとする経済社会活動の拡大、開発と環境の相互依存の進化を背景に、環境問題は地球的規模で広がりをみせ、深刻化する可能性を強めており、これに対する世界的な取組を強化する必要性がますます高まってきている。先般発表された「開発と環境に関する世界委員会」報告(1987年)でも、地球の未来を守るため、「持続的開発」に向けて世界が早急に具体的行動をとるよう求めている。
 ひるがえって、経済大国となった我が国は、地球環境とのかかわりも大きく、地球の未来に対する責任も大きい。その半面、我が国は豊かな経済力、技術力を備えているだけでなく、環境保全の分野でも多くの経験と蓄積を有しており、地球環境の保全に貢献できる可能性を持っている。「世界に貢献する国家」の道を歩む我が国は、今日における地球環境をめぐる状況や国際社会での我が国の立場にかんがみ、将来の地球環境の保全に向けてどのような貢献を行うかが正に問われているといえよう。
 こうした状況を踏まえ、本章では、地球環境問題を取り上げる。まず、前半の第1節から第3節においては、近年における地球環境問題の動向及びその背景について分析するとともに、この問題に対する国際社会での認識の高まりと取組の進展を振り返る。後半の第4節、第5節では、地球環境問題と我が国とのかかわりに焦点を当て、地球環境に依存している我が国の姿と国際環境協力に対する我が国の取組状況について明らかにするとともに、地球環境保全に向けて今後の我が国の取組の方向を述べる。

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