3 環境教育の推進
(1) 環境教育の必要性
「環境教育」の内容については、もとより多義的であるが、その基本理念が、環境の汚染や自然破壊が人類の生存そのものへの重大な脅威であることへの認識を育み、更にそれを環境保全のための行動にまで導くという点にあることについては、47年の国連人間環境会議以降、数次にわたる国際会議の開催等を通じて、国際的な共通認識となりつつある。
我が国においては、近時、工業都市を中心とした産業の集積や生産活動の拡大等に起因する産業公害については、かつての深刻な状況に比べて相当程度の改善がみられるが、その一方において、都市内中小河川、湖沼の汚濁、ごみの処理等、都市における生活のあり方と深く関連する環境問題が大きな課題となりつつある。
これらの問題の解決のために、構造的・制度的な対応が必要であることは言うまでもないが、同時に、都市を構成する市民自らが、環境に配慮した生活・行動に心掛けていくことが大切である。
このような市民の積極的な参加と協力を生みだす基盤として、環境問題に対する理解と認識を深める環境教育の充実・推進が今後ますます重要になるものと思われる。
(2) 環境教育の現状と課題
我が国においては、高度経済成長の本格化に伴い公害問題が顕在化しつつあった40年代以降を中心に、主として学校教育の分野における環境教育の推進が図られてきているが、更に、近年においては、地域社会における環境教育にも力が入れられてきている。
まず、学校における環境保全に関する教育については、従来から、学習指導要領に基づき、社会科や理科を中心に指導が行われている。環境問題の理解と認識を求める上で、学校教育は重要な一翼を担うものであり、適切な教材の利用、自然と親しむ機会の確保などを通じて、地域特性に応じた環境教育の一層の充実を図ることが望まれる。
また、学校以外の分野においては、自然公園内のビジターセンターや自然研究路等の整備を通じて、環境教育の充実が図られているほか、環境教育映画等の作成・普及、各種シンポジウムの開催等の広報・啓発活動や国民が積極的に環境保全に参加できるような機会の設定にも力が入れられている。
しかしながら、こうした学校以外の分野における環境教育を総合的・体系的に推進していくためには、地域社会における適切な拠点、リーダーのあり方、対象者のとらえ方などなお検討すべき課題は多い。
今後、環境教育の必要性について、国民の間により一層理解が深まるとともに、その基本的なあり方について広範な議論が展開されていくことが望まれる。