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第3節 

1 産業構造の変化と環境への影響

 我が国の産業構造を産業別就業人口の構成割合でみると、戦後は第一次産業が大きな割合を占めていたが、高度経済成長の過程で第一次産業の割合が次第に低下し、第二次産業及び第三次産業の割合が増大している。また、昭和45年以降、第二次産業の割合が横ばいとなっているのに対して、第三次産業の割合が年々高まっており、いわゆるサービス経済化が進んでいる。
 製造業についてみると、戦後の我が国においては繊維産業等の軽工業が中心であったが、30年代半ばから始まった高度経済成長に伴い、鉄鋼、石油、化学等の重化学工業が飛躍的に発展した。我が国の、重化学工業化比率(付加価値でみた鉄鋼、非鉄金属、機械、化学、石油、石炭の合計の製造業に対する比率)をみると、30年には35%程度であったが、40年には50%程度、50年には60%程度にまで上昇している。このような重化学工業化は、環境への負荷を増大させ、大気汚染や水質汚濁等の公害問題を発生させることとなった。
 その後、二度にわたる石油危機による原油価格の大幅な上昇に伴い、資源、エネルギーを多く消費する素材型産業の生産が急速に鈍化する一方、加工組立型産業が比較的高い成長を続けている。第2-3-1図は、製造業に占める素材型産業と加工組立型産業の割合について、その推移をみたものである。
 素材型産業は、35年には製造業の4割強を占めしていたが、しだいに低下し、50年以降は3割程度となっている。一方、加工組立型産業は35年から40年にかけて製造業の3割程度であったものが、現在では4割弱にまで上昇している。
 加工組立型産業は素材型産業に比べてエネルギー消費量や用水使用量が小さく、環境への負荷が相対的に小さい。このため、素材型産業から加工組立型産業への産業構造の変化は、石油危機以降の省資源・省エネルギーの進展とともに、環境に対する負荷の増大を抑制する効果をもたらしてきたといえよう。
 また、近年は、エレクトロニクス、バイオテクノロジー、新素材等の先端技術の進展がみられる。これらの先端産業は、概して知識集約型、高付加価値型の産業であり、高度成長期において問題とされてきた硫黄酸化物等の汚染物質による公害問題を発生させる可能性は小さいと考えられる。例えば、IC(Integrated Circuit、集積回路)を中心とするエレクトロニクスは、加工組立型産業の中心的な産業となっており、関連産業における製品の小形化、省エネルギー化を可能にしている。
 しかしながら、先端技術の進展は化学物質の利用拡大と使用形態の変化をもたらすとともに、廃棄物の性状を変化させる可能性がある。
 先端技術は、21世紀へ向けて急速に進展していくものと予測されており、今後、これに伴う産業活動の変化が新たな環境問題を発生させることのないよう十分に留意していく必要がある。

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