前のページ 次のページ

第2章 科学技術の進歩と環境問題

 科学技術の進歩と環境問題とは密接な関係がある。
 科学技術の進歩は、産業を発展させるとともに、国民生活を豊かで便利なものにしてきた。しかし、その反面、科学技術の利用形態によっては、各種の公害や自然環境の破壊などの環境影響をもたらしてきた。
 我が国では、科学技術の進歩が産業の発展を促し、高度経済成長を支えたが、一方で、狭い国土における生産活動の急激な高度化・大規模化、都市化の急速な進展を背景に、大気汚染、水質汚濁等の各種公害が発生し、また、自然の著しい改変が進んだ。
 その後、環境保全のための技術開発が活発に行われ、各種規制措置等とあいまって、環境の状況は全般的には改善されてきている。
 しかしながら、交通公害の分野、湖沼等の水質汚濁の分野等では、環境改善が遅れており、また、その他の分野においても環境保全のために引き続き努力が必要な状況にある。このようなことから、環境保全技術の果たす役割も大きい。このため、新しい環境保全技術の開発や、既に開発された公害防止技術の普及等が求められている。
 その推進に当たっては、地域特性、自然の浄化機能等を考慮しつつ、ニーズに応じた多様な展開を図っていくことが期待されている。また、環境政策を進めるに当たっては、環境と人間の関係の科学的解明が不可欠の基盤であり、環境科学研究の一層の充実が重要である。
 ひるがえって、近年の状況をみると、IC、バイオテクノロジーなどの先端技術が急速に進展し、21世紀へ向けて科学技術に支えられた社会が到来するものと予測されている。先端技術を中心とする新たな技術革新は公害の防止のみならずよりよい環境の創造へ向けて積極的な活用が期待されているが、一方で環境に対し新たな環境負荷をもたらす可能性も考えられる。このため、環境汚染の未然防止の観点から、環境保全に留意していくことも必要である。
 また、国際的な視野でみると、我が国は他国に例をみない環境汚染を経験し、その対策について相当の知見を蓄積するとともに、環境保全技術についても国際的に有数の水準に達していることから、環境保全分野の国際協力について各国から寄せられる期待が大きくなっている。このため、今後、環境技術協力等を一層推進していくことが課題となっている。
 以上のような状況を踏まえ、第2章においては、科学技術と環境のかかわりについて述べることとする。

前のページ 次のページ