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第1節 

4 その他の環境保全のための多国間協力

(1) サミットに基づく環境協力
 近年、酸性雨問題や地球的規模の環境問題等に対する先進国の関心の高まりを背景としてサミットにおいて環境問題が取上げられるようになってきている。59年6月に開催されたロンドン経済サミットでは、経済宣言中環境問題についても言及されている。また、59年12月にはロンドンにおいて環境大臣会議が開催された。同議会では、環境問題は、国内的にも、国際的にも重要な政策課題であること、開発途上国の環境保全のための協力を強化すること、国際的広がりを有する環境問題に対処するための協力を積極的に行うこと等が合意された。
(2) MARPOL73/78条約
 第3章第4節で述べたように、我が国が58年6月に加入した「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1973年の議定書」(MARPOL73/78条約)は、58年10月に発効した。また、同条約の円滑な実施のため、従来から国際海事機関(IMO)において運用上、技術上の問題点の検討が行われているが、59年9月に開催された第20回海洋環境保護委員会(MEPC)では、同条約附属書?(油による汚染の規制のための規則)の改正が採択され、60年7月7日までに締約国による一定数以上の異議通告がなければ、61年1月7日に効力を生じることとなっている。
 なお、同委員会では、附属書?(ばら積みの有害液体物質による汚染の規制のための規則)の改正についても審議が行われ、附属書?の実施上の問題を解決するための総合的な検討が行われた。
(3) 海洋投棄規制条約
 「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(ダンピング条約)は47年11月に採択され、50年8月に発効した。我が国も55年10月に批准し、同年11月我が国について発行した。
 この条約の第8回締約国会議は59年2月に開催され、条約附属書?(海洋投棄が禁止される物等のリスト)及び附属書?(海洋投棄につき特別許可を要する物のリスト)の物質配分のクライテリア作成に資するため、小委員会を設けることを決め、また附属書?(投棄許可発給の際の検討事項)の適用のためのガイドラインが採択された。これに基づき、59年7月には小委員会が開催され、附属書?及び?の物質配分のクライテリア作成に関する検討が行われる等次回締約国会議に向けて附属書のレビュー等に係る作業が行われた。
(4) ワシントン条約
 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)は48年3月に採択され、50年7月に発効した。
 我が国も55年8月、本条約の寄託政府であるスイス政府に受諾書を寄託した。これに伴い本条約は55年11月に我が国についても発効した。しかしながら、我が国の本条約に関する実施体制は必ずしも十分でないとの批判もあり、政府は環境、外務、通産など関係7省庁からなるワシントン条約関係省庁連絡会議を設置し、条約の効果的な実施を確保するための方策について検討を進め、当面の対応策として輸入手続きの改善、通関時のチェック体制の強化等所要の措置を講じた。
(5) ラムサール条約
 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)は、特に水鳥の生息地として重要な湿地を登録する等国際協力による湿地の保全を通じて水鳥の保護に寄与することを目的としており、46年2月イランのラムサールで採択され、50年12月に発効したものである。我が国では、55年6月、本条約の寄託者である国際連合教育科学文化機関事務局長に加入書を寄託し、これに伴い、本条約は55年10月に我が国についても発効した。59年5月にはオランダのフローニンヘン市において第2回締約国会議が開催され、条約改正問題等について討議された。
 なお我が国は指定湿地として釧路湿原を登録し、その保護に努めているところである。

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