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第6節 

2 交通公害対策の総合的推進

 以上のように各交通機関別に騒音、振動及び大気汚染因子に着目して発生源対策、交通施設の構造対策・周辺対策が鋭意講じられてきており、一定の成果を収めた地域のあるが、なお一層の対策を総合的に推進していかなければ問題解決が困難な地域がある。
 道路交通公害対策としては、全国一律の対策としての自動車構造の改善、地域特性を踏まえた交通管理や道路構造の改善・住宅防音工事の助成等障害防止対策などが行われてきているものの、個々の対策のみで問題の抜本的解決には至っていない地域が多い。自動車に起因する大気汚染のうち二酸化窒素については、大都市圏を中心として依然として環境基準を超える状況のまま推移している。また、自動車騒音について、当該地域の騒音を代表すると思われる地点または騒音に係る問題を生じ易い地点で継続して測定している全国の測定結果をみても環境基準の達成状況はここ数年横ばいで顕著な改善の傾向がみられない。このため、59年11月の閣議において、環境庁長官は今後とも、関係省庁の連携を図り各種自動車騒音対策を総合的に進めていくことが必要であるので、関係省庁に理解と協力を求めたところである。
 今後とも自動車交通量の増大が予想される状況下において問題の解決を図っていくためには、自動車構造の改善、交通管理、道路構造の改善、障害防止対策などの対策のほか、引き続き環境保全に配慮した効率的な交通体系の形成や交通施設と周辺土地利用が整合するよう配慮していくことが必要である。特に、問題となっている大都市地域等においては共同輸送の推進、自家用トラック輸送から営業用トラック輸送への転換等物流の合理化、大量公共輸送機関の整備による自動車交通量の抑制、バイパス・環状道路の整備による道路機能の分化、幹線道路の沿道の整備に関する法律の積極的活用を図っていくことが重要である。
 道路交通公害対策の所管は多岐にわたり、また相互に密接な関係があることから、53年に実務レベルの道路交通公害対策関係省庁連絡会議が設置され、以来各種対策の現状、問題点、対策相互の関係等について意見の交換を進めてきているところであるが、道路交通公害問題は、また極めて地域に密着した問題であり、地域の自然的、社会的特性によって対応の方途も異なってくる問題である。このため、例えば、公害防止計画策定地域においては同計画に基づき、各種対策が総合的に講じられているところであるが、さらに環境庁では、地方公共団体における計画的な交通公害対策の推進を図るため、58年からそれぞれの地域の自然的、社会的条件を踏まえた総合的な交通公害防止に関する計画の策定手法について調査・検討を進めている。
 航空機騒音対策については、環境基準の達成に向けて鋭意対策が推進され、特に発生源対策の強力な推進により主要な公共用飛行場周辺では騒音影響範囲が縮小するなど改善傾向が見られるが、なお達成に向けて努力を要する状況にある。このため、今後とも発生源対策や周辺土地利用対策などを総合的に推進していくことが必要であるが、特に発生源対策や飛行場構造対策だけでは環境基準の達成が見込まれない地域については、住居系の土地利用から騒音による障害の少ない土地利用への転換を図るなどの対策を強力に講じていくことが必要である。
 新幹線鉄道騒音・振動対策についても、音源・振動源対策及び障害防止対策を中心に対策が講じられてきているが、今後とも環境基準等の達成に向けてこれらに対策のほか住居系の土地利用から騒音・振動による障害の少ない土地利用へ誘導するなど周辺土地利用面からの対策を加え総合的に推進していくことが必要である。

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