1 湖沼法の制定経緯
湖沼は、閉鎖性水域であって、水質汚濁が蓄積しやすい上に、いったん水質が汚濁すると、その改善が容易でないという性格を本来有することから、水質環境基準の達成状況が悪いなどの問題が生じているが、水質汚濁の要因が水濁法の規制対象である工場・事業場によるもののほか、生活系、農畜水産系など多岐にわたっていることから、総合的な対策の推進が要請されている。
このような背景の下で、中央公害対策審議会は、環境庁長官に対し、56年1月、「湖沼環境保全のための制度のあり方について」との答申を行った。また、57年5月には参議院公害及び交通安全対策特別委員会が、同年8月には衆議院環境委員会がそれぞれ湖沼環境保全に関する決議を行ったほか、水質汚濁の問題のある湖沼をかかえた地方公共団体からも同様の要望がなされるようになってきた。
これらの状況を踏まえ、政府は、58年5月、水質環境基準の確保が緊要な湖沼について、総合的かつ計画的な水質保全施策の推進を図るための特別措置を講ずることを主な内容とする湖沼水質特別措置法案を国会に提出した。
同法案は、58年11月の衆議院の解散に伴い廃案となったが、59年3月に国会に再提出され、同年7月20日に可決・成立し、同月27日に公布された。