59年度は、環境汚染の未然防止対策に関し環境影響評価実施要綱が定められ、また、環境基準の確保が緊要な湖沼の水質改善を図るため湖沼水質保全特別措置法が成立する等環境行政が新たな展開をみた年であった。こうした成果の下に、安全でより快適な環境を目指して、環境政策の着実な展開を図っていくことが重要である。
このための最も基本となるべき課題は、今後とも環境汚染から国民の生命・健康を保護し、国民が安全で安心できる環境を確保することである。まず、環境の状況を十分把握し、それに基づき公害防止のための排出規制等を適切に実施することである。また、交通公害問題あるいは閉鎖性水域の汚濁等複雑化した問題に対しては、社会資本の整備や土地利用の調整をも含めた多角的取組をより一層推進していくことが必要である。さらに、経済社会の進展に伴なって増加してきた化学物質については、その環境安全性の点検を積極的に展開する等の対策の充実に努める必要がある。
次に、公害の防止とともに、自然環境の保全と自然とのふれあいの増進を図ることが環境保全にとって重要な課題である。
加えて、近年、公害からの健康の保護や生活環境の保全にとどまらず、快適な環境への国民のニーズが高まっている。このため、環境政策の視野を拡大し、より質の高い環境を目指して、国、地方公共団体が相互の密接な連携を図りつつ、環境政策の展開を図っていくことが必要となっている。
以上のように、環境政策の総合的、計画的、予見的な展開を図ることにより、環境と調和のとれた人間活動が可能となり、我が国の長期的に安定した社会の繁栄の基盤が形成されるものと考えられる。
なお、国際化する環境問題への取組についてもみていく。