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第2章 都市化社会における環境問題

 我が国の都市化の動向をみると、高度経済成長期には大都市圏への人口集中が急速に進んだが、近年は、地方中枢・中核都市を中心に人口が増加し、市街地の外延的拡大を伴いつつ都市圏の形成が進んでいる。加えて都市的生活様式が地方都市や農村にまで普及しつつある。このように、我が国が全面的な都市化社会に移行するのに伴い、すでに顕在化しつつある都市的な環境問題がさらに広がることが懸念される。
 このため、本章では、都市化の動向を踏まえ、都市類型別に環境保全上の課題を概観した後、重要な環境問題ごとの現状と課題及びその取組について述べることとする。
 まず、都市類型別の環境保全上の課題をみると、大都市圏においては、人口・産業の集積が高く、高密度の都市活動が営まれていることから、各種環境問題が顕在化しており、交通公害問題、ごみの処理・処分問題、水質汚濁、近隣騒音等への対応についてなお一層の努力が必要となっているほか、身近な自然とのふれあいの機会も少なくなってきている。このため、大都市圏においては、このような環境問題に適切に対応していくことがまず基本である。これに加え、大都市圏中心部においては、居住環境を改善し、快適な都市環境を積極的に創出していくことが、また、大都市圏の周辺都市においては、人口の急増化傾向に対応した計画的な社会資本の整備を進めつつ、地域住民が愛着をもてるような個性ある街づくりを行うことが大きな課題となっている。
 地方都市においては、モータリゼーションの進行とも相まって低密度、拡散的な市街地が形成されるとともに、周辺部では農家と非農家との混住化が進んできており、水質汚濁等の環境問題がさらに広がるおそれがある。計画的な都市整備を進め、自然環境に恵まれているという地域特性を生かした快適な都市環境の形成が課題である。
 このような環境問題への取組に関しては、次の3つが重要と考えられる。
 第1は、発生源等における公害対策の推進である。
 都市活動の密度に応じた発生源対策等に加え、大都市圏では、広域的な対応も重要である。また、下水道などの公害防止のための社会資本については、地域特性に応じて、効率的・重点的な整備を図っていく必要がある。
 第2は、都市構造を公害の生じにくいものとしていくことである。
 まず、都市活動を適正に分散したり、効率的な都市活動システムを形成することにより、適正かつ効率的な都市活動を実現することである。こうした観点から、人口・産業の地方分散等を進めるとともに、効率的な輸送システム、資源・エネルギーの有効利用システムを形成することが重要な課題である。次に、生産、輸送等の都市活動の営まれる場と住居とを分離すること等により、都市活動による環境への影響が軽減される都市構造とすることである。工業系、商業系、住居系等の用途区分に応じた適正な土地利用を実現していくことや幹線道路沿道に適した施設立地を誘導していくことなどが必要である。さらに、都市の再開発は、快適な都市・生活空間の実現への役割が期待されるものであり、環境への影響にも配慮して進めることが望まれる。
 第3は、よりよい都市環境の保全・創出に向けて、住民の行動を広げていくことである。
 このためには、都市住民の環境への理解を深め、日常生活における環境保全への配慮及びよりよい環境の保全・創出活動への参加を促進していくことが必要となっている。

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