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第3節 

1 国境を越える環境問題

 国境を越える環境問題として酸性雨についてみよう。
 酸性雨は、化石燃料の使用によって発生する硫黄酸化物、窒素酸化物が原因となって生じると考えられているが、発生源から数千キロも離れた所に降下することがあり、欧州や北米において国境を越えた問題となっている。
 特に欧州においては酸性雨は大きな社会問題となっている。西ドイツが昭和58年に行った調査によれば、西ドイツにおいては酸性雨によるとみられる広範な森林被害が生じており、森林全体の約3分の1(34%)にあたるおよそ250万ヘクタールが何らかの被害を受けている(第1-3-1図、写真「酸性雨被害の事例」(132頁の次))。特に針葉樹については、モミで約75%、松で約44%の木が被害を受けている。
 また、西ドイツ南西部に位置するシュヴァルツヴァルト(黒い森)内の河川においては、酸性物質の量が人為的な影響のない自然水の数倍というかなり高い水準を示す等の影響が生じている。
 建物、文化財等の被害も甚大なものがあり、西ドイツ全土の各種文化財の損害は年間3億マルク以上、これらを含めた各種建物、施設等の物的な損害は30〜40億マルクに及ぶと推計されている。

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