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第2節 

1 自然環境の保全の現状

 「自然環境保全法」は自然環境保全の基本理念を明らかにするとともに、国の責務として、基本的かつ総合的な施策を策定し実施することを定めている。
 同法に基づいて、ほとんど人の手が加わっていない原生の状態が保たれている地域や、貴重な動植物、地形、地質等を含む自然がすぐれた状態を維持している地域等について、原生自然環境保全地域、自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域が指定され、我が国に残されている原生的な自然やすぐれた自然が総合的に保全されることとなった。59年度には、新たに、都道府県自然環境保全地域が4地域指定され、59年12月末現在、原生自然環境保全地域は5地域5,631ヘクタール、自然環境保全地域は9地域7,550ヘクタール、都道府県自然環境保全地域は486地域76,186ヘクタールとなっている。合計面積では89,367ヘクタールであり、全国土面積の0.24%である。
 これらのうち、原生自然環境保全地域は、人の活動によって影響を受けることなく原生の自然状態を維持している地域であり、本来の自然の姿を調査研究する場としてもきわめて重要な地域である。このため、55年度から毎年一地域を対象として、その自然環境の現況を詳細に把握するための総合的な学術調査が実施されている。5年目の59年度には、遠音別岳原生自然環境保全地域において調査が行われた。
 遠音別岳(おんねべつだけ)原生自然保全地域(面積1,895ヘクタール)は、南知床遠音別岳を中心として標高450メートル〜1,331メートルにわたり、ハイマツを主体とする高山性植生を有する原生状態の地域であり、国の遺産として後代に伝えるべき重要な地域である。今回の調査により、同地域には、高山植生としては、知床半島固有のシレトコスミレ群落が存するほか、ヒグマについては、秋期を中心に多くの活動痕跡が確認されるなど貴重な自然環境が残されていることが改めて明らかとなった。
 「自然公園法」は、すぐれた自然の風景地を保護するとともにその利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び自然に対する愛情とモラルの育成に資することを目的としている。同法により、59年度には、新たに都道府県立自然公園が鳥取県と島根県においてそれぞれ1か所指定された。これにより、59年12月末現在、国立公園27か所202万ヘクタール、国定公園54か所129万ヘクタール、また、都道府県立自然公園298か所201万ヘクタール(合計532万ヘクタールで全国土面積の14.09%)が指定されている。また、海中の景観を維持するため、国立公園及び国定公園の海面内の57地区2,398ヘクタールが海中公園地区として指定されている。
 「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」は、野生鳥獣の保護と狩猟の適正化を図ることを目的としている。同法により、鳥獣の保護、繁殖を図るため、58年度末現在、国設鳥獣保護区255か所86万ヘクタール、都道府県設鳥獣保護区2,950か所277万ヘクタール(合計313万ヘクタールで全国土面積の8.28%)が設定されている。
 特に、絶滅のおそれのある鳥類については、「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」に基づき特殊鳥類として指定し、その譲渡等に関し規制を行うことによって種の保存が図られている。59年度末現在における国産の特殊鳥類はアホウドリ、コウノトリ、トキ等の35種類となっている。

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