2 廃棄物処理対策
将来の廃棄物行政の在り方を検討していた、厚生大臣の諮問機関である生活環境審議会は、昭和58年11月「今後の廃棄物処理行政の基本的方策について」と題する答申を行った。答申の骨子は、?適正処理の推進、?廃棄物の資源化有効利用、?廃棄物の広域処理の推進、?廃棄物処理行政の基盤の強化、?技術開発の推進、?国際協力・国際交流の強化であり、廃棄物処理行政全般にわたる基本的方策を示している。
(1) 一般廃棄物
一般廃棄物処理施設の整備については、廃棄物処理施設整備緊急措置法に基づき、第5次廃棄物処理施設整備計画(昭和56年度〜昭和60年度)が策定されているところであるが、昭和58年度においてはし尿処理施設整備費補助金180億円、ごみ処理施設整備補助金422億円、埋立処分地施設整備費補助金52億円をもって施設の整備拡充を図った。
また、モデル事業として行われている廃棄物運搬用パイプライン施設整備事業及び都市廃棄物処理管路事業に対して、それぞれ2億4,468万円及び2億8,000万円の補助を行った。
さらに一般廃棄物の処理について、廃棄物の減量化・資源化に関する調査のほか、「家庭排水処理技術調査」及び「廃棄物処理施設改良技術調査」等を実施した。
(2) 産業廃棄物
近年発生量が増大してきた建設木くず(建設業者が工作物を除去する際に排出される木くず)は一般廃棄物として市町村による処理が行われてきたが、処理の広域化等の処理体制の整備を図るため、58年4月に廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令を改正し、産業廃棄物として指定した(59年4月から施行)。
また、厚生省においては産業廃棄物の不法投棄等の不適正処理の防止を図るための「産業廃棄物不法投棄等防止対策調査」、政令で指定されていない産業廃棄物の処理施設の実態調査としての「未指定産業廃棄物処理施設精密実態調査」等を実施した。
なお、57年度における行政処分の状況は、立入検査50,738件、報告徴収14,843件、許可の取消し又は一時停止20件、措置命令又は改善命令16件となっている。
通商産業省では今後の廃棄物処理及び再資源化対策に必要な調査を行っており、都道府県又は大規模なコンビナート単位ごとに国、地方公共団体、事業者等が共同で、廃棄物の収集、中間処理、再資源化、埋立処分等を有機的に結合して行う総合システムの調査、設計を行った。
なお、製造業(電気・ガス業を含む)からの廃棄物の再資源化の状況は第5-2-6表のとおりである。
また通商産業省においては、廃棄物の再資源化を促進するため、(財)クリーン・ジャパン・センターのモデル都市における実証プラント・分別回収等の再資源化モデル事業、啓蒙普及、空缶等の散在性廃棄物の再資源化対策の推進、廃棄物交換のための情報提供、家庭から排出される粗大ごみ等の再資源化に関する調査研究等の各種の再資源化事業に対する補助を行った。
環境庁においては、前年度に引き続き大量に発生する廃棄物について環境保全上適切な埋立処分に関する調査を行った。
(3) 広域処理場整備の推進
廃棄物の最終処分場の確保が極めて困難になってきている大都市圏域において、圏域を一体とした広域的な最終処分場確保の要請に対処するため、厚生省及び運輸省においては、関係地方公共団体及び関係港湾管理者が共同で整備、利用する広域的な廃棄物の埋立処分場計画の推進を図ってきたが、大阪湾圏域においては、57年3月広域臨海環境整備センター法に基づき、大阪湾広域臨海環境整備センターが設立され、同センターでは昨年に引き続き広域処理場の位置、規模等を定める基本計画の作成に向けて所要の調査を実施した。
また、首都圏については、厚生省及び運輸省において前年度に引き続き広域処理場の整備に関する調査を実施するとともに、厚生省において中部圏についても基礎調査を行った。
(4) その他
港湾における廃棄物処理対策として48年度から廃棄物埋立護岸の整備等を行っているが、58年度は、16港1湾において事業費約334億円(うち国費約94億円)をもって廃棄物埋立護岸を整備したほか、海岸性廃棄物処理施設、廃油処理施設の整備及び一般海域における浮遊ごみ・浮遊油の回収事業を行った。